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本編
未練
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「ほら海斗、帰るぞ」
「おう」
安里は生徒会を完全に引退した。放課後は割とさっさと帰れるようになって、安里の方から俺の教室に来てくれることも多くなった。約束したわけじゃなくて一方的に迎えに行ってただけだったから、安里が迎えに来てくれるのは嬉しい。
「フランス革命が起きる前の体制のことをなんていう?」
「…あ、アンシャンレジーム…?」
会話は大体こんな感じだ。
受験勉強が終わったら、すぐに卒業式が来て、一緒の登下校もなくなる。もし今までもちゃんと勉強してて、もっと早く受験勉強を始めてたら、同じ大学に行く選択肢もあったのかも、なんて思う。
「あれ、海斗?」
「!」
安里の横で、微妙に覚えてない痛いとこを突いてくる絶妙な問題に答えてたら、聞き慣れた声に名前を呼ばれて振り返った。
「ふふ、知的な会話だね」
「結城さん!」
「や、頑張ってるみたいで安心したよ」
結城さんは手を振りながら、相変わらずにこにこと人当たりの良さそうに近づいて来た。
「まぁ、悪い頭なりになんとか…」
「ふふ、大丈夫だよ。海斗はやれば出来る子だからね。…あれ、そちらはお友だち?」
「…だれだこいつ」
「!」
とりあえず、一瞬でわかった。安里と結城さんの相性は悪い。結城さんは相変わらずだけど、安里がイライラしてんのはなんとなくすぐわかる。なんとなく会わせたくなかったのは、犬の勘でそれがわかったからかもしれない。
「えっと、中学ん時のボスの結城さん」
「よろしくね」
「で、こっちが、安里。生徒会の副会長で俺の…」
「へーえ。君がね」
安里の名前を言った後の結城さんの反応は、ちょっと意外なものだった。
「…え、結城さん、安里のこと知ってんのか?」
「うん。可愛い後輩の飼い主って聞いてね。名前だけは覚えてたよ」
やっぱり、犬やってるっていう噂は結城さんにも届いてるらしい。間違ってはないし別にいいんだけど、なんとなく情けない。
「……あんたが、こいつの前の飼い主か」
「飼い主っていうか…まあ一番なついてくれてたし可愛がってたかな」
「………」
「え、おい、なんだよこの空気」
安里はなぜ結城さんに対してそんな不機嫌なんだ。見るからに害のなさそうな人なのに。
「あ、俺そろそろ行かないと。…じゃあ安里くん、海斗をよろしくね。海斗、がんばってうちの学校来るんだよ」
バイバイ、と手を振って、結城さんがちょっと急ぎ足で去っていく。見なくても気配でわかる、隣から溢れる不機嫌オーラ。
「……」
「…あ、安里?」
「黙れ」
「…」
理不尽だ。そのまま不機嫌オーラ全開で歩き始めた安里の後を、刺激しないようにとにかく黙って追いかけた。
バシッ!
家につくなり脳みそが揺れた。久々過ぎて、咄嗟には何が起きたかわからなかった。
「…っ」
頭をはたかれたなって気づいたのは、安里ん家の廊下に倒れて安里を見上げてから。とりあえずなんで怒らせたのか必死で考えるけど、やっぱりわからない。
「…っ安里、なんで」
「…………」
久々の頭の痛み。打ち付けられた背中の痛み。せめて理由がわかれば謝ることもできるのに、それさえわからないんじゃ俺はどうしたらいいんだ。俺を見下ろす目は冷たい。
「……海斗、おまえ、誰の犬だ」
「…お、れは、安里の」
怒らせないように、安里の言葉の意味をしっかり反芻して、よく考えて口から吐く。
「……ちょうどおまえが学校に資料もらいに行ってる間にな、トラと電話してたんだよ」
「……?」
山元?なんだ?俺は進路指導室に資料をもらいに行った。そのあと、結城さんに会った。俺の全部の行動を思い出そうと頭を回転させる。なにが、なにがいけなかったんだよ。結城さんに会ったのがいけなかったのか?ぐるぐる足りない頭で考える。
「……おまえ、さっきのやつの犬に戻りたいんじゃないのか」
「っなんでだよ!それはねぇ!」
「未練があるんだろ」
「……っ」
ない、と、真っ先に言わないといけなかったのはわかってる。けど、言葉が喉につっかえて出てこなかった。
未練。それは勿論安里の言うような犬になりたいとかってことではないけど、結城さんがいなくなった理由に気付けてたらとか、それでもあの人を探して追いかけてればとか、今更どうしようもないことを悔いる気持ちは確かにある。
けどそれを悔いてても、もし時間が今戻ったとしたって、俺はあの日安里と出会うことを選ぶ。
だから、つまり、未練はあるんだ。それを安里と比べたら、比べようもないけど。
嘘は言いたくないけど、これをちゃんと安里に話して、わかってくれるのか。未練はないと、嘘でも言い切った方がいいんじゃないか。
頭の中で、必死に考えた。
無言で俺を見下ろす安里の目を見てたら、ますますどうしたらいいのかわからない。答えないのは最悪なのに、答えが出ない。
「…そうか、よくわかった」
「…安里!違うんだ!」
「黙れ」
「…っ」
今さら、嘘をつかないで全部話そうとしたって、聞いてさえくれない。最悪だ、本当に最悪だ。
「あいつのところに行きたいなら止めない。さっさと出ていけ」
「安里!」
安里が、俺の横を通りすぎる。なにも聞かない安里の背中は、もういらないって、言ってるみたいだ。
俺を廊下に置き去りにして、安里の部屋のドアが閉まった。どうしたらいいかわからなくて、這うようにしてそのドアに近づく。
「あ、安里…」
たぶん、声は聞こえるはずだ。安里が中で聞いてくれてるかはわからないけど、とにかく思ってることを伝えたい。
「…安里、俺、あの人には世話んなった恩を返しきってねぇから…なんて言っていいかわかんねぇけど、未練はあるけど後悔はしてねぇっつか……俺、うまく言えねぇよこういうの。…安里、出てこいよ…」
「……」
ドアは開かない。もう本当に捨てられたのか。結城さんのところに行けって、出ていけって本気なんだろうか。
「…、」
なんだこれ、視界が滲む。悲しい。
「あ、…安里、殴っていいし、蹴っていいし、なんでも言うこと聞くから…。こ、恋人じゃなくていいから…」
言いながら、頭はどんどん混乱していく。考える余裕もなくて、自分がなにを言ってるかさえわからない。
「安里、好きだ、好きだ……」
手を伸ばして、ドアノブに触れる。鍵なんかかかってないんだから、それを回せばここは開く。わかってる。けど、俺にはここを開けられない。
「……安里、捨てんのかよ…、」
声が震えた。と思ったら、目の前のドアが開いた。へたりこんでる俺と、見下ろす安里。
「…安里、」
「……本気で捨てるつもりなら、無理矢理家から追い出すか、龍んとこでも連れてく」
「あ、安里…」
安里は、半泣きな俺をちょっと撫でて、俺の首輪を掴んで引っ張る。
俺はもたつく足で立ち上がって、引っ張られるまま部屋に入った。
「……ぅわ!」
相変わらず扱いは酷いままで、ベッドに投げられた。けど、横に座った安里の口調と表情は怒ってはなくて、ほっとする。
「……ちょっとからかうつもりが、まさか泣くとは」
「いや泣いてねぇから!」
慌てて目を拭く俺を、安里がぽんぽんと撫でてくる。
「…捨てねぇん、だよな」
「…捨てない。…けど、」
「…?」
あれ…?さっきまでなんか優しく笑ってたはずの安里の表情が、また不機嫌になった、ような。嫌な予感しかしない。
「…撫でられて喜んでたらしいな」
「え!」
…たぶん、資料を取りに学校に言った帰りに、結城さんに会ったときのことだ。その時くらいしか、心当たりない。なんでそんなこと知ってるんだ、と思ってから、そう言えばさっき山元と電話してたとか言ってたのを思い出した。あいつがご丁寧に報告してくれたらしい。
「他の野郎に尻尾ふったお仕置きは…しねえとな?」
「……う、」
尻尾をふった。会長の時はそんなことしてねぇ!と言えたものだが、今回は、確かに尻尾ふったことになるのかもしれない。
「……痛みだけでイけるようにしてやるからな、覚悟しとけよ…」
ふ、と笑う安里に、色んな意味で背筋がぞくぞくした。怖いと、なんか安里が色っぽいのと、久々に勉強以外のことで構ってもらえるっていう的はずれな期待。
「ほら、服脱げ」
「…」
言われた通りに着てた制服を脱ぎ始めたら、安里がベッドから降りて、なにやらをごそごそと漁り始めた。状況から考えて、嬉しいことをしてくれるはずがないのはわかってるから、なんとなく怖くて挙動が気になる。
「龍にな、犬のしつけ用になにかくれって言ったら、こんなものを送りつけて来た」
ゴトゴトッ、と床に投げられる、謎の物体たち。何個かはその用途がわからなくもないけど、全く謎のものもる。
「…ま、うちのドM犬は、こんなものを無理矢理押し込んでも、喜ぶだけだろうからな」
「…う、」
正直期待しているから何も言い返せない。痛くない方がいいけど、安里にされるならもうなんでもいいと思っている。
安里が選んで手に取ったものは、俺には用途がわからないものだった。けど安里が楽しそうにしてるから、怖い。
「あとこれな」
「…そ、それ」
もう1つ、見覚えのある銀色の輪っか。
「消毒済みだそうだ」
「………」
「おう」
安里は生徒会を完全に引退した。放課後は割とさっさと帰れるようになって、安里の方から俺の教室に来てくれることも多くなった。約束したわけじゃなくて一方的に迎えに行ってただけだったから、安里が迎えに来てくれるのは嬉しい。
「フランス革命が起きる前の体制のことをなんていう?」
「…あ、アンシャンレジーム…?」
会話は大体こんな感じだ。
受験勉強が終わったら、すぐに卒業式が来て、一緒の登下校もなくなる。もし今までもちゃんと勉強してて、もっと早く受験勉強を始めてたら、同じ大学に行く選択肢もあったのかも、なんて思う。
「あれ、海斗?」
「!」
安里の横で、微妙に覚えてない痛いとこを突いてくる絶妙な問題に答えてたら、聞き慣れた声に名前を呼ばれて振り返った。
「ふふ、知的な会話だね」
「結城さん!」
「や、頑張ってるみたいで安心したよ」
結城さんは手を振りながら、相変わらずにこにこと人当たりの良さそうに近づいて来た。
「まぁ、悪い頭なりになんとか…」
「ふふ、大丈夫だよ。海斗はやれば出来る子だからね。…あれ、そちらはお友だち?」
「…だれだこいつ」
「!」
とりあえず、一瞬でわかった。安里と結城さんの相性は悪い。結城さんは相変わらずだけど、安里がイライラしてんのはなんとなくすぐわかる。なんとなく会わせたくなかったのは、犬の勘でそれがわかったからかもしれない。
「えっと、中学ん時のボスの結城さん」
「よろしくね」
「で、こっちが、安里。生徒会の副会長で俺の…」
「へーえ。君がね」
安里の名前を言った後の結城さんの反応は、ちょっと意外なものだった。
「…え、結城さん、安里のこと知ってんのか?」
「うん。可愛い後輩の飼い主って聞いてね。名前だけは覚えてたよ」
やっぱり、犬やってるっていう噂は結城さんにも届いてるらしい。間違ってはないし別にいいんだけど、なんとなく情けない。
「……あんたが、こいつの前の飼い主か」
「飼い主っていうか…まあ一番なついてくれてたし可愛がってたかな」
「………」
「え、おい、なんだよこの空気」
安里はなぜ結城さんに対してそんな不機嫌なんだ。見るからに害のなさそうな人なのに。
「あ、俺そろそろ行かないと。…じゃあ安里くん、海斗をよろしくね。海斗、がんばってうちの学校来るんだよ」
バイバイ、と手を振って、結城さんがちょっと急ぎ足で去っていく。見なくても気配でわかる、隣から溢れる不機嫌オーラ。
「……」
「…あ、安里?」
「黙れ」
「…」
理不尽だ。そのまま不機嫌オーラ全開で歩き始めた安里の後を、刺激しないようにとにかく黙って追いかけた。
バシッ!
家につくなり脳みそが揺れた。久々過ぎて、咄嗟には何が起きたかわからなかった。
「…っ」
頭をはたかれたなって気づいたのは、安里ん家の廊下に倒れて安里を見上げてから。とりあえずなんで怒らせたのか必死で考えるけど、やっぱりわからない。
「…っ安里、なんで」
「…………」
久々の頭の痛み。打ち付けられた背中の痛み。せめて理由がわかれば謝ることもできるのに、それさえわからないんじゃ俺はどうしたらいいんだ。俺を見下ろす目は冷たい。
「……海斗、おまえ、誰の犬だ」
「…お、れは、安里の」
怒らせないように、安里の言葉の意味をしっかり反芻して、よく考えて口から吐く。
「……ちょうどおまえが学校に資料もらいに行ってる間にな、トラと電話してたんだよ」
「……?」
山元?なんだ?俺は進路指導室に資料をもらいに行った。そのあと、結城さんに会った。俺の全部の行動を思い出そうと頭を回転させる。なにが、なにがいけなかったんだよ。結城さんに会ったのがいけなかったのか?ぐるぐる足りない頭で考える。
「……おまえ、さっきのやつの犬に戻りたいんじゃないのか」
「っなんでだよ!それはねぇ!」
「未練があるんだろ」
「……っ」
ない、と、真っ先に言わないといけなかったのはわかってる。けど、言葉が喉につっかえて出てこなかった。
未練。それは勿論安里の言うような犬になりたいとかってことではないけど、結城さんがいなくなった理由に気付けてたらとか、それでもあの人を探して追いかけてればとか、今更どうしようもないことを悔いる気持ちは確かにある。
けどそれを悔いてても、もし時間が今戻ったとしたって、俺はあの日安里と出会うことを選ぶ。
だから、つまり、未練はあるんだ。それを安里と比べたら、比べようもないけど。
嘘は言いたくないけど、これをちゃんと安里に話して、わかってくれるのか。未練はないと、嘘でも言い切った方がいいんじゃないか。
頭の中で、必死に考えた。
無言で俺を見下ろす安里の目を見てたら、ますますどうしたらいいのかわからない。答えないのは最悪なのに、答えが出ない。
「…そうか、よくわかった」
「…安里!違うんだ!」
「黙れ」
「…っ」
今さら、嘘をつかないで全部話そうとしたって、聞いてさえくれない。最悪だ、本当に最悪だ。
「あいつのところに行きたいなら止めない。さっさと出ていけ」
「安里!」
安里が、俺の横を通りすぎる。なにも聞かない安里の背中は、もういらないって、言ってるみたいだ。
俺を廊下に置き去りにして、安里の部屋のドアが閉まった。どうしたらいいかわからなくて、這うようにしてそのドアに近づく。
「あ、安里…」
たぶん、声は聞こえるはずだ。安里が中で聞いてくれてるかはわからないけど、とにかく思ってることを伝えたい。
「…安里、俺、あの人には世話んなった恩を返しきってねぇから…なんて言っていいかわかんねぇけど、未練はあるけど後悔はしてねぇっつか……俺、うまく言えねぇよこういうの。…安里、出てこいよ…」
「……」
ドアは開かない。もう本当に捨てられたのか。結城さんのところに行けって、出ていけって本気なんだろうか。
「…、」
なんだこれ、視界が滲む。悲しい。
「あ、…安里、殴っていいし、蹴っていいし、なんでも言うこと聞くから…。こ、恋人じゃなくていいから…」
言いながら、頭はどんどん混乱していく。考える余裕もなくて、自分がなにを言ってるかさえわからない。
「安里、好きだ、好きだ……」
手を伸ばして、ドアノブに触れる。鍵なんかかかってないんだから、それを回せばここは開く。わかってる。けど、俺にはここを開けられない。
「……安里、捨てんのかよ…、」
声が震えた。と思ったら、目の前のドアが開いた。へたりこんでる俺と、見下ろす安里。
「…安里、」
「……本気で捨てるつもりなら、無理矢理家から追い出すか、龍んとこでも連れてく」
「あ、安里…」
安里は、半泣きな俺をちょっと撫でて、俺の首輪を掴んで引っ張る。
俺はもたつく足で立ち上がって、引っ張られるまま部屋に入った。
「……ぅわ!」
相変わらず扱いは酷いままで、ベッドに投げられた。けど、横に座った安里の口調と表情は怒ってはなくて、ほっとする。
「……ちょっとからかうつもりが、まさか泣くとは」
「いや泣いてねぇから!」
慌てて目を拭く俺を、安里がぽんぽんと撫でてくる。
「…捨てねぇん、だよな」
「…捨てない。…けど、」
「…?」
あれ…?さっきまでなんか優しく笑ってたはずの安里の表情が、また不機嫌になった、ような。嫌な予感しかしない。
「…撫でられて喜んでたらしいな」
「え!」
…たぶん、資料を取りに学校に言った帰りに、結城さんに会ったときのことだ。その時くらいしか、心当たりない。なんでそんなこと知ってるんだ、と思ってから、そう言えばさっき山元と電話してたとか言ってたのを思い出した。あいつがご丁寧に報告してくれたらしい。
「他の野郎に尻尾ふったお仕置きは…しねえとな?」
「……う、」
尻尾をふった。会長の時はそんなことしてねぇ!と言えたものだが、今回は、確かに尻尾ふったことになるのかもしれない。
「……痛みだけでイけるようにしてやるからな、覚悟しとけよ…」
ふ、と笑う安里に、色んな意味で背筋がぞくぞくした。怖いと、なんか安里が色っぽいのと、久々に勉強以外のことで構ってもらえるっていう的はずれな期待。
「ほら、服脱げ」
「…」
言われた通りに着てた制服を脱ぎ始めたら、安里がベッドから降りて、なにやらをごそごそと漁り始めた。状況から考えて、嬉しいことをしてくれるはずがないのはわかってるから、なんとなく怖くて挙動が気になる。
「龍にな、犬のしつけ用になにかくれって言ったら、こんなものを送りつけて来た」
ゴトゴトッ、と床に投げられる、謎の物体たち。何個かはその用途がわからなくもないけど、全く謎のものもる。
「…ま、うちのドM犬は、こんなものを無理矢理押し込んでも、喜ぶだけだろうからな」
「…う、」
正直期待しているから何も言い返せない。痛くない方がいいけど、安里にされるならもうなんでもいいと思っている。
安里が選んで手に取ったものは、俺には用途がわからないものだった。けど安里が楽しそうにしてるから、怖い。
「あとこれな」
「…そ、それ」
もう1つ、見覚えのある銀色の輪っか。
「消毒済みだそうだ」
「………」
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