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本編
犬と恋人
しおりを挟む「ここで遊んでやる」
床に投げられて、腹の上に乗っかられた。体重をかけられて、内臓が圧迫される。
下から見上げる安里は、それはもう楽しそうに笑ってて。
「ぅあ…、」
「…は、おい、当てんな」
安里が久しぶりすぎて興奮してるらしいそれが、乗っかっている安里の腰に当たる。当てんな、と言われても、静めることなんかできるわけもなく、逃げようとして身をよじらせても、安里にすり付ける形になるだけ。
「あさ、と…、」
「舐めろ」
「…、ん…」
口の中に、安里の指が入ってきた。味なんかはしないけど、それが褒美みたいで嬉しくて、夢中になって舐めまわした。安里の、指が、口の中に。たったそれだけで、興奮してたまらない。
「ふ…、」
「…っは、おい、でかくしすぎだ」
「…っ…!」
もう片方で、それを服越しにぐっと握られて、気持ちよさと痛さに身体が跳ねた。
そんな俺を見て、ふ、と色っぽく笑いながら、安里の手が俺のメイド服のスカートの中に忍び込んでくる。教室の外からは生徒の声が聞こえて、安里はそれ以上触ってはこなくて、その焦らされてるような時間に身体が熱くなる。
パンツまで脱がされて、すーすーする空気がモノに当たる。
「は、完勃ちだな」
「…っあさ、と…っ」
「いい顔だ」
「…っ」
安里が上に乗っかってて、安里の右手の指は俺の口のなかをいじり回してて、俺は下半身脱がされてて、安里の左手は俺の太股を撫ぜる。行き場のない熱が、身体の中で渦巻く。
「足開け」
安里が腹の上から降りて、膝を立てさせられて、その足の間に、口から出ていった安里の指が割り入ってくる。期待した場所は通りすぎて、その奥へ。
「…っ!」
思わず安里の腕を握る手に力がこもってしまって、怒られるかと思って慌てて手を離した。
そしたらその手が、安里の左手に捉えられた。それが、なんか恋人同士みたいで、ちょっと心臓がじくじく痛んだ。
安里の指がゆっくり俺の中に入ってきて、ちょっとずつ思考が薄くなる。半分くらい無意識で安里の手を握ったら、握り返してくれて、もっと心臓が跳ねた。
安里の手を握ったまま、中をいじる指に耐える。指があの変なところを引っ掻いて頭が真っ白になる。その拍子に強く握ってしまったら、握り直されて俺の指と指の間に安里の指が入ってきて、くすぐったくてぞくぞくした。
「…海斗」
耳元で俺の名前を呼ぶ安里の低い声が聞こえて、グチグチ中を擦る水音も聞こえて、クラクラする。
「力抜けよ」
指が増えて、久々のその広がる感覚に、力の抜き方なんかわからない。
痛いほうが好きなわけはなくて、構ってもらえるなら痛くてもいいってだけなのに、容赦ない。
「……ッア、ぁ、…っ!」
「力抜けって」
「っつっても…!!」
こんな痛くて苦しいのに、力なんか抜けるわけがない。とりあえず気を紛らしたくて、萎えきってるものに手を伸ばそうとしたら、気付いた安里に、頭の上で腕を拘束された。
「ダメだ。後ろだけで感じろ」
そのまま、ぐ、と奥まで押し込まれて、激痛に一瞬息ができなかった。
鬼だ。
「…ッ、ァ、ァ、ぅあ゙…ッ」
容赦なく後ろを出入りするその感覚に、ただ耐えて歯を食いしばった。早く終わってほしい。
せめて、それが安里のもので、安里が気持ちいいなら我慢も出来るのに、これじゃただ痛いだけだ。
「…おい、海斗」
「…っは、あ…?」
後ろの動きが遅くなって、やっと目を開いたら、安里と目が合った。
「おまえ、さっきの女のこと聞かねえんだな」
「…、ぁ、…っく」
ゆるゆると痛みが来て、またゆるゆると引いてく。けど我慢できないほどでもない。俺に話させようとして、動きを遅くしてくれたらしい。
「…聞いて、いい、のか…?」
思ったよりも声が震えて出た。そしたら安里の動きが少し止まって、その間はただ圧迫感だけが来る。それからまた、ぐっと押し込まれた。
「おまえは、俺の何だ」
「…ぅ、あ…!」
俺が、安里の、何?
そんなの、俺が聞きたい。犬なのか、恋人なのか。俺が1番聞きたいことだよ。
「答えろ」
ぐり、ぐり、と中を押される。痛くて、痛くて、けど頭の中で必死になって考えてる。
俺は安里にとって犬であるより恋人でありたい。それは考えなくてもわかる。当たり前だ。
けど、俺はそれを安里に言っていいのか。おこがましいんじゃないのか。もし安里にとって俺が犬かそれ以下なら、ここで恋人って答えたら、引かれるんじゃないのか。
…犬って答えたら、安里は。
頭の中でいろんなことを考える。ぐちゃぐちゃの思考回路で、圧迫感はそのまんまで、どう答えるか悩んだ。
プレゼントといえば首輪で、こんな格好してて、こんなことされてて、なんの事情も知らなくて、どこをどうとったら恋人とか言えるんだ。
「海斗」
安里の俺を呼ぶ声が耳元で聞こえて、ゾクッとした。
「……………っ、こ、いびと、だよ、な」
ぐちゃぐちゃの思考で、確認するみたいにそう言った。
…あぁ、もう、目を見るのが怖い。
とりあえず目を閉じて、顔をそらして、安里の視線から逃げた。どんな顔してるのか、どんなことを考えてるのか、怖くて確認も出来ない。
そしたら、顎を掴まれて無理矢理上げさせられた。そのままなにも言われないからゆっくり目を開けたら、楽しそうな安里の顔。
「わかってるじゃないか。…聞きたいことは聞けばいいんだよ」
そう言いながら、べち、と頬を叩かれた。
「……っ」
否定されなかった。
頬を叩かれたのなんかまったく痛くはねぇのに、じわ、と涙がしみてきた。安里にとって俺は、恋人、なのか。
「…ぅわ、やべ、嬉しすぎる…」
「は、泣くな馬鹿。ほら、聞きたいこと聞けよ。…海斗」
「!…っうあ、安里…!」
感動してたら、ぐり、と中の指を動かされて、ビクッと身体が揺れた。
聞きたいこと?そんなのありすぎて、なにから聞けばいいのかわからない。聞けと言うわりに中をいじってくるから思考は邪魔されて、さっきまでいろいろ考えてたはずなのに、肝心なときにあんま思いつかない。とりあえず、一番近いこと。
「…さっきの、女は…っ」
「あれはいきなり入ってきて、いきなり迫ってきて脱ぎ始めただけだ。なんの関係もない。名前も知らない。他には?」
安里は、中のものを出し入れしながらでも質問には普通に答えてくれて、じゃあ他にも聞きたいこと、と思ったら、溶けた頭で考えついたのは一番大物で。
聞いていいのか、と頭で危険信号が明滅したけど、今しか聞けないと思って口を開いた。
「…ポチって…、誰だ…っ」
「…っ、」
俺の選択した質問に、明らかに安里が動揺したのがわかった。そりゃそうだ。ポチと安里が口にしたのは、安里が寝てたときだけだ。安里にしてみれば、俺が知るはずのない情報なわけだ。
「…誰に、聞いた」
「……安里が、寝言で言ったんだよ」
「…………」
安里は、一瞬考えるみたいに目をそらしたあと、じっと俺の目を見てきた。それから、真剣な話をしてるのに、俺は聞けなくてずっと苦しんだっていうのに、ふっと笑った。
「…海斗、おまえ、どこまでも頭が悪いな」
「な、なんだよ!」
「馬鹿な誤解してんだよ」
「…誤解?」
って、なにがだ?深刻な気分で聞いたのに、今なぜか空気は軽い。
安里は楽しそうに、馬鹿にしたように笑いながら、口を開いた。
「ポチは、犬だ。生物学的にな」
名前でわかれ馬鹿、という安里の呆れた声は、頭から少し離れたところに響いたような気がした。思考は停止して、うまく内容が入ってこない。
「……………犬?」
「ダルメシアンだよ。おまえによく似てる、元野良犬のな」
「……………ダル、メシアン…」
とは、あれだ。1○1匹のあれだ。白に黒いブチ模様の、あれだ。
「馬鹿だ馬鹿だとは思ってたが、まさかここまでとはな……く、く」
「…じゃあ、あの黒い首輪は」
「ポチのだな」
「…………」
馬鹿と言われた意味は、そりゃもうよくわかった。ポチという名前から普通なら想像がついてもいいようなものを、何故かねじ曲がった考え方をして、勝手に落ち込んでいたんだ、俺は。
「龍にでも聞けば、変な誤解せずにすんだだろうにな」
他人事みたいに、ふ、と笑う安里が憎い。
「…もし、前の恋人とかだったら、周りに聞くのは駄目かと思ったんだよ…」
「……おまえには、他の誰かから聞くだろうと思うのは通用しないみたいだな」
「うわ、…っ」
「話してやるよ」
ずる、と後ろから指が抜けて、やっと圧迫感がなくなった。安里が床に座って、その横をぽんぽんと叩いたから、俺もパンツを履いてそこに座った。
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