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本編
痛みと快感
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あんなに学校に行くのが面倒だったのに、今では早起きしてさっさと準備して安里を迎えに行く。母親は驚きつつも何も聞かずに朝食の準備をしてくれている。
今日は禁欲週間の最終日だ。学校が終わるまではどうにもならないけど、とにかく早く安里に会いたくて、少し早めに家を出た。
「おい、瀬川海斗!」
「あ?」
名前を呼ばれて振り向くと、他校の生徒が3人立っていた。その風貌からして、なんとなく目的は想像がつく。
最近は俺も安里と真面目に学校に行ってるから、絡まれることはあまり無くなっていた。
「……見てわかんねぇか、急いでんだよ」
「おー噂には聞いてるぜ、生徒会長の犬になったんだろ?」
「副会長だ!大事なとこ間違えてんじゃねぇ!」
「犬は否定しないのか…?」
「そこは好きに言え、じゃーな」
さっさと無視して安里の家に行こうとしたのに、1人が回り込んで道を塞ぐ。俺は今早く安里のところに向かいたい。それを邪魔されるというのは許し難い。
「………どけよ」
「どくわけねぇだろ!」
無視できそうな雰囲気じゃなくなってきた。バレたら怒られるだろうから、とりあえず汚れないように学ランと鞄を遠くに放る。
「5分で終わらせてやるよ!」
…というわけにもいかず、全て終わって時計を見たら40分も経っていた。とりあえずすぐ安里に連絡をするが、もうとっくに始業してるし、既読はつかない。
「……待ってたかな」
もともと約束をしたわけではない。何時に家を出るか聞いて、その時間に合わせて一方的に俺が会いに行ってるだけだ。
「……待ってるわけねぇか」
もうどうせ1限は始まってるし、2限に合わせて行こう。地面に放って結局やや汚れてる鞄と学ランを拾って、近くのファミレスに入ることにする。自動ドアが開いて、カランカランと音がした瞬間。
「瀬川海斗!」
「………またかよ」
今日似たようなことがあってうんざりしながら振り返ると、そこにいたのは会長だった。
「げっ」
もう2度と会いたくはなかった。第一印象が最悪だった。反射的に身を翻して逃げようとしたが、あっさりと捕まった。
「こんな時間に優雅にファミレスかぁ?学校はどうした?」
「あんたもだろ!放せ!」
「俺は成績いいからいいんだよ」
「そういう問題か!?」
腕を掴んできている手を外そうともがいても、ピクリともしない。相変わらず勝てそうな雰囲気もなくて戦意が削がれる。
「一緒に学校行こうぜ」
「………」
嫌すぎるが、相手は一応生徒会長だ。サボっていたのは事実だし、仕方ないか…と半ば引きずられるようにして学校まで連行された。
「…………ちょ、ちょっと待て」
「なんだあ?」
「教室、通り過ぎただろ!もう屋上は嫌なんだよ!」
3年生の教室は3階にある。3階に着いたから廊下へ向かおうとしたのに、そのまま階段を引き摺られている。この上は屋上だ。嫌な予感しかしない。
「しー。うるせえ、授業中だぞ。2限始まるまでいいだろ」
「じゃあファミレスでよかっただろ!?」
「学校の印象に関わるから、あんな時間に制服でウロウロしてるのは見逃せねえんだよ」
「………」
ど正論で返されて、本当にただの生徒会長としての仕事なのかもしれないという気がしてきた。意外とまともに仕事してるのか?
そう油断していたら、ドアを開けるなり俺は若干宙に浮いた。そしてしばらくしてドサッと背中にくる衝撃。どうやら投げられたらしいとわかったのは背中に痛みが来たあと。
「…ッ、…ッかは、……ッッ」
「おー痛そうだなぁ」
100%自分のせいだというのに、感想が客観的すぎる。油断した俺が馬鹿だった。
「は、は…ッは、……ケホッ」
しばらく必死で空気を吸い込んで、ようやく視界がはっきりしてきたその時。
「さて」
「ぐえっ」
ドサッと腹の上に乗る何か。そう、信じたくはないが、何故か会長が俺の腹に馬乗りになってきた。トラウマになっているのか、身体が勝手に強張る。
「痣、まだ残ってるじゃねぇか」
「……っ、」
ぐ、と喉を押されて、また呼吸を止められる。ただし今度はそう強くない力で、ゆるゆるとは呼吸が出来る状態だ。
「…っは、」
「いいぜその顔…興奮するなぁ…」
熱っぽい会長の顔に、背筋がぞくっと震えた。会長はやっぱり怖い。力も強いし、考えていることもわからない。この人がもし本気で1分も俺の首を握れば俺は簡単に死ぬんだ。そんなことさえ考えてしまう。
「色っぽい顔しやがって…」
「……は、…あ、たま、オカシイんじゃねぇの…」
首を押さえ付ける手が離れ、痣を隠すために珍しく着込んでいた学ランのボタンを外していく。シャツのボタンも外されて痣がさらけ出され、それをなぞるように会長の手が動いて、ある一点で、止まった。
「は、陽のやつ、ペットに独占欲見せてんじゃねぇよ…」
「…っ」
ガリ、とそこを爪で引っかかれて、痛みと驚きに思わず頭をのけ反らせてしまった。それはまさに喉元をさらす獲物。
ガブ
「………ッ!!」
ちょうど昨日安里にキスマークつけられた辺り。それを食いちぎるように噛み付かれ、眩暈がした。あまりの痛みに体が痺れて、なんの反応もできない。
「…っァ、ぅあぁ…ッ」
熱い、熱い。血がだらだら流れていくのがわかる。これ、本当にやばいんじゃないか、俺。
「いい顔だな…」
「……ッ、は、はぁ、いでぇ…ッ」
「そそるぜその表情…」
ピチャ、と水音が聞こえて、それが俺から流れる血を会長の舌が舐めとっている音だと気づくまでに時間がかかった。獣が獲物を食したような血のついた口が、視界にちらちら映る。会長の舌の感触が、俺の首筋を這う舌の熱さが。痛みとは別の感覚を生み出す。
なんだこれ、痛いのに、痛いはずなのに。
しばらくされるがままに舐められて、会長の顔があげられた頃には、俺の息は完全にあがっていた。
そんな俺を見た会長の目が細められて、
スル、と俺の下半身に手が伸びる。
フワッとした浮遊感の中にいた俺は、それに気づいて慌てて身をよじらせた。
「……、や、やめろ…ッ」
「そんな顔してなに言ってやがる」
「…く、ぁ……っ」
カチャカチャとベルトが鳴る間に抵抗するが、噛まれたところを舐められるだけで力が抜ける俺の体に、どうにもならないという絶望感が襲ってくる。
この普段は開放されていない屋上に、授業中である今誰かが来る確率はゼロに等しい。
つまり、安里が来てくれることも、この男から解放されることも、ない。
「た、のむから、やめてくれ……ッ」
ジーッとファスナーが下りる音。
最悪だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。
「………ははっ」
「……?」
急に会長が笑い始めた。あまりの短小さに笑ったとかじゃ、ないよな。至って普通サイズなはずだ。
「陽のやつ…いい趣味してんなぁ…」
「…ッ」
ぎゅ、とそれを握られて、ようやく思い出した。俺がなんで浮かれてたんだったか、色々あって綺麗にすっかり忘れてた。
「何日目だ?」
「い、…言いたくねぇ…」
「ほー」
「おい、触んな!」
流石に無抵抗でいるわけにはいかず、両手で会長の手を押し退けようとする。
「邪魔すんな」
「…うぁ…っ」
真っ赤な舌で傷口を舐められ、その隙に力の抜けた両手を頭の上で固定された。
「…溜まってんだろ?イかせてやるよ」
「…っ」
腰が疼くような甘い低音が耳元で聞こえ、さらには耳を舐められ、背筋にゾクッとなにかが駆け上がった。会長の手が俺のものを撫で、首の血を吸われる。
「おまえの今の感度は最高だろうなぁ…こんな面白い獲物誰が逃がすかよ」
「…っ、…」
「ここで出して陽にお仕置きしてもらえ」
銀色のリングが、会長の手によって上げられていく。1週間の禁欲のあとだ。取られてしまえば簡単にイってしまう自信があった。
萎えきったモノを見られたとき、安里になんて弁明すればいいのかわからない。
今朝は迎えにも行かなかった。
恋人とは思われてなくても、せめて出来のいいペットではいたかった。
今日は禁欲週間の最終日だ。学校が終わるまではどうにもならないけど、とにかく早く安里に会いたくて、少し早めに家を出た。
「おい、瀬川海斗!」
「あ?」
名前を呼ばれて振り向くと、他校の生徒が3人立っていた。その風貌からして、なんとなく目的は想像がつく。
最近は俺も安里と真面目に学校に行ってるから、絡まれることはあまり無くなっていた。
「……見てわかんねぇか、急いでんだよ」
「おー噂には聞いてるぜ、生徒会長の犬になったんだろ?」
「副会長だ!大事なとこ間違えてんじゃねぇ!」
「犬は否定しないのか…?」
「そこは好きに言え、じゃーな」
さっさと無視して安里の家に行こうとしたのに、1人が回り込んで道を塞ぐ。俺は今早く安里のところに向かいたい。それを邪魔されるというのは許し難い。
「………どけよ」
「どくわけねぇだろ!」
無視できそうな雰囲気じゃなくなってきた。バレたら怒られるだろうから、とりあえず汚れないように学ランと鞄を遠くに放る。
「5分で終わらせてやるよ!」
…というわけにもいかず、全て終わって時計を見たら40分も経っていた。とりあえずすぐ安里に連絡をするが、もうとっくに始業してるし、既読はつかない。
「……待ってたかな」
もともと約束をしたわけではない。何時に家を出るか聞いて、その時間に合わせて一方的に俺が会いに行ってるだけだ。
「……待ってるわけねぇか」
もうどうせ1限は始まってるし、2限に合わせて行こう。地面に放って結局やや汚れてる鞄と学ランを拾って、近くのファミレスに入ることにする。自動ドアが開いて、カランカランと音がした瞬間。
「瀬川海斗!」
「………またかよ」
今日似たようなことがあってうんざりしながら振り返ると、そこにいたのは会長だった。
「げっ」
もう2度と会いたくはなかった。第一印象が最悪だった。反射的に身を翻して逃げようとしたが、あっさりと捕まった。
「こんな時間に優雅にファミレスかぁ?学校はどうした?」
「あんたもだろ!放せ!」
「俺は成績いいからいいんだよ」
「そういう問題か!?」
腕を掴んできている手を外そうともがいても、ピクリともしない。相変わらず勝てそうな雰囲気もなくて戦意が削がれる。
「一緒に学校行こうぜ」
「………」
嫌すぎるが、相手は一応生徒会長だ。サボっていたのは事実だし、仕方ないか…と半ば引きずられるようにして学校まで連行された。
「…………ちょ、ちょっと待て」
「なんだあ?」
「教室、通り過ぎただろ!もう屋上は嫌なんだよ!」
3年生の教室は3階にある。3階に着いたから廊下へ向かおうとしたのに、そのまま階段を引き摺られている。この上は屋上だ。嫌な予感しかしない。
「しー。うるせえ、授業中だぞ。2限始まるまでいいだろ」
「じゃあファミレスでよかっただろ!?」
「学校の印象に関わるから、あんな時間に制服でウロウロしてるのは見逃せねえんだよ」
「………」
ど正論で返されて、本当にただの生徒会長としての仕事なのかもしれないという気がしてきた。意外とまともに仕事してるのか?
そう油断していたら、ドアを開けるなり俺は若干宙に浮いた。そしてしばらくしてドサッと背中にくる衝撃。どうやら投げられたらしいとわかったのは背中に痛みが来たあと。
「…ッ、…ッかは、……ッッ」
「おー痛そうだなぁ」
100%自分のせいだというのに、感想が客観的すぎる。油断した俺が馬鹿だった。
「は、は…ッは、……ケホッ」
しばらく必死で空気を吸い込んで、ようやく視界がはっきりしてきたその時。
「さて」
「ぐえっ」
ドサッと腹の上に乗る何か。そう、信じたくはないが、何故か会長が俺の腹に馬乗りになってきた。トラウマになっているのか、身体が勝手に強張る。
「痣、まだ残ってるじゃねぇか」
「……っ、」
ぐ、と喉を押されて、また呼吸を止められる。ただし今度はそう強くない力で、ゆるゆるとは呼吸が出来る状態だ。
「…っは、」
「いいぜその顔…興奮するなぁ…」
熱っぽい会長の顔に、背筋がぞくっと震えた。会長はやっぱり怖い。力も強いし、考えていることもわからない。この人がもし本気で1分も俺の首を握れば俺は簡単に死ぬんだ。そんなことさえ考えてしまう。
「色っぽい顔しやがって…」
「……は、…あ、たま、オカシイんじゃねぇの…」
首を押さえ付ける手が離れ、痣を隠すために珍しく着込んでいた学ランのボタンを外していく。シャツのボタンも外されて痣がさらけ出され、それをなぞるように会長の手が動いて、ある一点で、止まった。
「は、陽のやつ、ペットに独占欲見せてんじゃねぇよ…」
「…っ」
ガリ、とそこを爪で引っかかれて、痛みと驚きに思わず頭をのけ反らせてしまった。それはまさに喉元をさらす獲物。
ガブ
「………ッ!!」
ちょうど昨日安里にキスマークつけられた辺り。それを食いちぎるように噛み付かれ、眩暈がした。あまりの痛みに体が痺れて、なんの反応もできない。
「…っァ、ぅあぁ…ッ」
熱い、熱い。血がだらだら流れていくのがわかる。これ、本当にやばいんじゃないか、俺。
「いい顔だな…」
「……ッ、は、はぁ、いでぇ…ッ」
「そそるぜその表情…」
ピチャ、と水音が聞こえて、それが俺から流れる血を会長の舌が舐めとっている音だと気づくまでに時間がかかった。獣が獲物を食したような血のついた口が、視界にちらちら映る。会長の舌の感触が、俺の首筋を這う舌の熱さが。痛みとは別の感覚を生み出す。
なんだこれ、痛いのに、痛いはずなのに。
しばらくされるがままに舐められて、会長の顔があげられた頃には、俺の息は完全にあがっていた。
そんな俺を見た会長の目が細められて、
スル、と俺の下半身に手が伸びる。
フワッとした浮遊感の中にいた俺は、それに気づいて慌てて身をよじらせた。
「……、や、やめろ…ッ」
「そんな顔してなに言ってやがる」
「…く、ぁ……っ」
カチャカチャとベルトが鳴る間に抵抗するが、噛まれたところを舐められるだけで力が抜ける俺の体に、どうにもならないという絶望感が襲ってくる。
この普段は開放されていない屋上に、授業中である今誰かが来る確率はゼロに等しい。
つまり、安里が来てくれることも、この男から解放されることも、ない。
「た、のむから、やめてくれ……ッ」
ジーッとファスナーが下りる音。
最悪だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。
「………ははっ」
「……?」
急に会長が笑い始めた。あまりの短小さに笑ったとかじゃ、ないよな。至って普通サイズなはずだ。
「陽のやつ…いい趣味してんなぁ…」
「…ッ」
ぎゅ、とそれを握られて、ようやく思い出した。俺がなんで浮かれてたんだったか、色々あって綺麗にすっかり忘れてた。
「何日目だ?」
「い、…言いたくねぇ…」
「ほー」
「おい、触んな!」
流石に無抵抗でいるわけにはいかず、両手で会長の手を押し退けようとする。
「邪魔すんな」
「…うぁ…っ」
真っ赤な舌で傷口を舐められ、その隙に力の抜けた両手を頭の上で固定された。
「…溜まってんだろ?イかせてやるよ」
「…っ」
腰が疼くような甘い低音が耳元で聞こえ、さらには耳を舐められ、背筋にゾクッとなにかが駆け上がった。会長の手が俺のものを撫で、首の血を吸われる。
「おまえの今の感度は最高だろうなぁ…こんな面白い獲物誰が逃がすかよ」
「…っ、…」
「ここで出して陽にお仕置きしてもらえ」
銀色のリングが、会長の手によって上げられていく。1週間の禁欲のあとだ。取られてしまえば簡単にイってしまう自信があった。
萎えきったモノを見られたとき、安里になんて弁明すればいいのかわからない。
今朝は迎えにも行かなかった。
恋人とは思われてなくても、せめて出来のいいペットではいたかった。
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