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本編
生徒会長
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安里からご褒美?を貰ってまだ3日目。けどもうムラムラしてる。安里のことを考えないようにしていても、絡まれて殴ってストレス発散してても、安里からの呼び出しはいつも通りに容赦ない。
しかもムカつくことに安里はいつもよりも無防備で、マッサージされながら寝てみせたり、服の前をはだけていたり。挑発してるとしか思えないけど、わかっていてもしっかり挑発される。
それにリングは外そうと思えば簡単にとれるのがまた。とれないならまだここまでは悶々としないのに。
「はー…」
そんなものをつけたままじゃトイレも一苦労で、わざわざ個室に入って用を足さなくてはならない。1日に何回も出入りしているから、腹でも壊してると思われるだろうな。
本日2回目の個室から出て手を洗っていると、なんか、近くがザワザワ騒がしいような気がする。
「なんかあったのか?」
近くにいた同じクラスの生徒に聞いてみると、会長が何やら騒いでるらしい、とのことだった。
顔は忘れたが、会長と言えば安里の幼なじみでかなりの乱暴者という噂だ。始業式で喋ってた内容もなかなかのテキトーっぷりだった気がする、そう言えば。
トイレから出れば、俺のクラスの入り口辺りに人混みは出来ていた。教室に入れないし仕方ないからもう1つのドアへ向かう。
「お、見つけた」
「!?」
素通りしようとしたのに、俺は集団の真ん中にいた体格が良い生徒に、腕を掴まれていた。
「な、なんだよ!」
「てめぇが陽のペット2号か。なるほど、あいつの趣味もわかりやすいな」
聞かなくともわかる。たぶんこれが生徒会長だ。安里に会長には近づくなって言われてたし手を振り払って逃げようとしたが、力が強くて逃げられない。
「離せよ…!」
ペット2号か。それはまぁ山元が1号だとしたら確かに正しいことで、恋人ってよりは俺はペットだって自覚もあった。けどそれを会長が知ってるってことは、安里がそう言ったってことなのか?ペット2号って。
「よしよし、しょげんなよ。犬、ちょっと来い」
「な」
会長は、俺の腕を有り得ないくらいの馬鹿力で掴んで引き摺りながら、集まってる集団を掻き分けて歩きはじめた。
「あーおめえら、目当ての人間は見つかったからもう散れ」
「え、俺…?」
俺もみんなと一緒に散りたかった。
そのまま引き摺って連れていかれた先は、初めて入った屋上だった。途中にあった鍵付きの扉は、会長が持ってたジャラジャラと鍵がついた束で難無く突破した。一介の生徒会長がそんな権限持っているものなのか?会長の権力が垣間見えちょっと怖気付く。会長は俺引っ張ってガシャンと金網に押し付けた。
「瀬川海斗。他校にまで名が知れ渡ってんなぁ…強いんだろ?だが陽に助けられた。それで恩返しってか?」
「く、そ…っ」
抵抗したいのに、押し付けてくる力が強すぎて全く動けない。
「俺はっ、強い安里に惹かれただけだっ!恩返しなんかじゃねぇっ」
「ほー、強いから惚れたのか?」
ぐいっと顎を掴まれて、合わせたくもない顔を無理矢理合わさせられる。
「…なら俺は陽よりも強いぜ?」
顎を掴んでた会長の手がスルッと下りて、今度は首を絞めるみたいに掴んだ。
「な、に」
困惑した俺にフッと笑って、ぐ、と手に力が入れられ、呼吸を止められる。あ、これ、殺される。
「ほら、勝てないだろ?俺の犬になれよ、海斗」
「……っ、っ、っ」
ひゅ、ひゅ、と喉から空気が少しずつ漏れる。苦しい。両手で指を引き剥がそうとしても、苦しくてもう力も出ない。思考もぼやける。
そもそも、俺人間…。
…あ、意識が遠退く…。
「……っ!」
会長にいきなり手を離されて、支えを失った体はドサッとコンクリートの上に崩れた。
「…がはっ、…っ、ごほっ…っ」
急に入って来た酸素に対応しきれなくて、喉がひゅーひゅー鳴って咳込む。うずくまる俺の頭に容赦なく会長の足が乗せられて、無理矢理額を地面に擦り付けさせられた。
「苦しいか?おまえじゃどう足掻いても俺には勝てねぇな?強けりゃ惚れるんだろ?」
「……っは、…は…っ」
「俺にしとけよ」
「だ、れが…!!!」
強ければいいという問題じゃない。本当に幼馴染なのか?安里と何もかも違いすぎる。
「おい龍、人の犬虐めんな」
なんとかして逃げないと、と踏ん張っていたら、突然入口の方から声がした。
「あ、安里……」
顔は見えないけどすぐわかる。張っていた気が緩む。
「おー、陽」
それから呑気な会長の声。本当に殺されるかと思ったのに、飄々としている。
「トラが教えてくれてな。海斗、来い」
「…っど、けっ」
安里に呼ばれて俺は、頭の上の足を払い落としたその隙に安里の方へ逃げた。安里は俺の方をチラッと見てから会長を睨む。
「首に痣出来てんじゃねぇか…ったく」
「おーそりゃあ悪かったな。その犬があんまり可愛いから」
「こえぇよ!」
言ってることとやってることと表情と何にも噛み合ってない。想像していた以上にとんでもない奴だった。クレイジーだ。ほんの少し前に想像していた、七三眼鏡の優等生が恋しい。
「…なんでこいつを探してた」
「そりゃお前が会わせてくれねえから。どんな犬か気になって」
「どんな犬かわかったんだからもうちょっかいかけんなよ」
「ま、気に入ったぜ、瀬川海斗。いじめて悪かったな」
そう笑いながらヒラリと手を振って、会長が出口へと向かう。近くを歩くだけで身構えてしまうが、安里が庇うように前に出てくれた。
「龍、明日の会議は出ろよ」
「その犬くれるならな」
「…じゃあ来るな」
「ははっ」
そのまま会長は屋上の階段を降りていって、安里はやや乱暴にその扉を閉めた。安里が負けてる。噂には聞いていたが、最強というのは事実のようだ。色んな意味で。
「…ったく。悪かったな。首、見せてみろ」
「っ、ああ」
「…あの馬鹿。しばらく隠して歩け。……。そうだな、ついでに」
「うわっ、…っ?」
痣の上をキツく吸われ、見えはしないがたぶんキスマークをつけられた。
「誰にも見せんなよ」
トン、とそこを指で突いて、ボタンが外れていた学ランを直してくれる。さっきまで首絞められてた気もするけど、そんなことはもうどうでもいいくらい俺は幸せだ。早く鏡で見たい。
「トラが知らせてくれて助かったな。礼言っとけよ」
「ワン」
よしよし、と頭撫でられた。なんかもう犬扱いも悪くないなと思い始めている。
さっさと屋上から出て行く安里を追いかけて、俺も急いで階段を降りる。そしたら途中の扉のところで安里が待っていた。鍵は会長しか持ってないから掛からないらしい。いい加減だ。
「……龍のペットになりたかったか?」
「え、んなわけねぇだろ。だって安里が好きだし。あいつ怖ぇよ」
「……ふ。ま、いいけどな。あぁそうだ、今日も遅いからアイツラと待っとけよ」
「ああ」
じゃ、と言って隣の教室に入っていく安里に手を振り返して、俺も自分の教室に入った。入った途端にざわついたので、アザ見えてる?と思って咄嗟に首を押さえたが、どうやら会長に連れていかれた経緯が話題に上っていたらしい。
まさか犬になれと首を絞められたなど言えるわけもなく、曖昧に笑ってごまかすしかなかった。
しかもムカつくことに安里はいつもよりも無防備で、マッサージされながら寝てみせたり、服の前をはだけていたり。挑発してるとしか思えないけど、わかっていてもしっかり挑発される。
それにリングは外そうと思えば簡単にとれるのがまた。とれないならまだここまでは悶々としないのに。
「はー…」
そんなものをつけたままじゃトイレも一苦労で、わざわざ個室に入って用を足さなくてはならない。1日に何回も出入りしているから、腹でも壊してると思われるだろうな。
本日2回目の個室から出て手を洗っていると、なんか、近くがザワザワ騒がしいような気がする。
「なんかあったのか?」
近くにいた同じクラスの生徒に聞いてみると、会長が何やら騒いでるらしい、とのことだった。
顔は忘れたが、会長と言えば安里の幼なじみでかなりの乱暴者という噂だ。始業式で喋ってた内容もなかなかのテキトーっぷりだった気がする、そう言えば。
トイレから出れば、俺のクラスの入り口辺りに人混みは出来ていた。教室に入れないし仕方ないからもう1つのドアへ向かう。
「お、見つけた」
「!?」
素通りしようとしたのに、俺は集団の真ん中にいた体格が良い生徒に、腕を掴まれていた。
「な、なんだよ!」
「てめぇが陽のペット2号か。なるほど、あいつの趣味もわかりやすいな」
聞かなくともわかる。たぶんこれが生徒会長だ。安里に会長には近づくなって言われてたし手を振り払って逃げようとしたが、力が強くて逃げられない。
「離せよ…!」
ペット2号か。それはまぁ山元が1号だとしたら確かに正しいことで、恋人ってよりは俺はペットだって自覚もあった。けどそれを会長が知ってるってことは、安里がそう言ったってことなのか?ペット2号って。
「よしよし、しょげんなよ。犬、ちょっと来い」
「な」
会長は、俺の腕を有り得ないくらいの馬鹿力で掴んで引き摺りながら、集まってる集団を掻き分けて歩きはじめた。
「あーおめえら、目当ての人間は見つかったからもう散れ」
「え、俺…?」
俺もみんなと一緒に散りたかった。
そのまま引き摺って連れていかれた先は、初めて入った屋上だった。途中にあった鍵付きの扉は、会長が持ってたジャラジャラと鍵がついた束で難無く突破した。一介の生徒会長がそんな権限持っているものなのか?会長の権力が垣間見えちょっと怖気付く。会長は俺引っ張ってガシャンと金網に押し付けた。
「瀬川海斗。他校にまで名が知れ渡ってんなぁ…強いんだろ?だが陽に助けられた。それで恩返しってか?」
「く、そ…っ」
抵抗したいのに、押し付けてくる力が強すぎて全く動けない。
「俺はっ、強い安里に惹かれただけだっ!恩返しなんかじゃねぇっ」
「ほー、強いから惚れたのか?」
ぐいっと顎を掴まれて、合わせたくもない顔を無理矢理合わさせられる。
「…なら俺は陽よりも強いぜ?」
顎を掴んでた会長の手がスルッと下りて、今度は首を絞めるみたいに掴んだ。
「な、に」
困惑した俺にフッと笑って、ぐ、と手に力が入れられ、呼吸を止められる。あ、これ、殺される。
「ほら、勝てないだろ?俺の犬になれよ、海斗」
「……っ、っ、っ」
ひゅ、ひゅ、と喉から空気が少しずつ漏れる。苦しい。両手で指を引き剥がそうとしても、苦しくてもう力も出ない。思考もぼやける。
そもそも、俺人間…。
…あ、意識が遠退く…。
「……っ!」
会長にいきなり手を離されて、支えを失った体はドサッとコンクリートの上に崩れた。
「…がはっ、…っ、ごほっ…っ」
急に入って来た酸素に対応しきれなくて、喉がひゅーひゅー鳴って咳込む。うずくまる俺の頭に容赦なく会長の足が乗せられて、無理矢理額を地面に擦り付けさせられた。
「苦しいか?おまえじゃどう足掻いても俺には勝てねぇな?強けりゃ惚れるんだろ?」
「……っは、…は…っ」
「俺にしとけよ」
「だ、れが…!!!」
強ければいいという問題じゃない。本当に幼馴染なのか?安里と何もかも違いすぎる。
「おい龍、人の犬虐めんな」
なんとかして逃げないと、と踏ん張っていたら、突然入口の方から声がした。
「あ、安里……」
顔は見えないけどすぐわかる。張っていた気が緩む。
「おー、陽」
それから呑気な会長の声。本当に殺されるかと思ったのに、飄々としている。
「トラが教えてくれてな。海斗、来い」
「…っど、けっ」
安里に呼ばれて俺は、頭の上の足を払い落としたその隙に安里の方へ逃げた。安里は俺の方をチラッと見てから会長を睨む。
「首に痣出来てんじゃねぇか…ったく」
「おーそりゃあ悪かったな。その犬があんまり可愛いから」
「こえぇよ!」
言ってることとやってることと表情と何にも噛み合ってない。想像していた以上にとんでもない奴だった。クレイジーだ。ほんの少し前に想像していた、七三眼鏡の優等生が恋しい。
「…なんでこいつを探してた」
「そりゃお前が会わせてくれねえから。どんな犬か気になって」
「どんな犬かわかったんだからもうちょっかいかけんなよ」
「ま、気に入ったぜ、瀬川海斗。いじめて悪かったな」
そう笑いながらヒラリと手を振って、会長が出口へと向かう。近くを歩くだけで身構えてしまうが、安里が庇うように前に出てくれた。
「龍、明日の会議は出ろよ」
「その犬くれるならな」
「…じゃあ来るな」
「ははっ」
そのまま会長は屋上の階段を降りていって、安里はやや乱暴にその扉を閉めた。安里が負けてる。噂には聞いていたが、最強というのは事実のようだ。色んな意味で。
「…ったく。悪かったな。首、見せてみろ」
「っ、ああ」
「…あの馬鹿。しばらく隠して歩け。……。そうだな、ついでに」
「うわっ、…っ?」
痣の上をキツく吸われ、見えはしないがたぶんキスマークをつけられた。
「誰にも見せんなよ」
トン、とそこを指で突いて、ボタンが外れていた学ランを直してくれる。さっきまで首絞められてた気もするけど、そんなことはもうどうでもいいくらい俺は幸せだ。早く鏡で見たい。
「トラが知らせてくれて助かったな。礼言っとけよ」
「ワン」
よしよし、と頭撫でられた。なんかもう犬扱いも悪くないなと思い始めている。
さっさと屋上から出て行く安里を追いかけて、俺も急いで階段を降りる。そしたら途中の扉のところで安里が待っていた。鍵は会長しか持ってないから掛からないらしい。いい加減だ。
「……龍のペットになりたかったか?」
「え、んなわけねぇだろ。だって安里が好きだし。あいつ怖ぇよ」
「……ふ。ま、いいけどな。あぁそうだ、今日も遅いからアイツラと待っとけよ」
「ああ」
じゃ、と言って隣の教室に入っていく安里に手を振り返して、俺も自分の教室に入った。入った途端にざわついたので、アザ見えてる?と思って咄嗟に首を押さえたが、どうやら会長に連れていかれた経緯が話題に上っていたらしい。
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