群青に消える桜

ポレロ

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初めての会話

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「あのっ何を読んでるんですか」
桜が降りしきるベンチに腰掛けるその女の子に向かって俺は、心臓のドキドキを最高潮に達した震えた擦れ声で話しかけた。すると彼女は、読んでる本から、目線を上げて小首を傾げた。
「あなたは、誰ですか？」
ごもっともな返しがきた。そうですよねー見ず知らずの男の人に急に話しかけられたらこうなるよねー。
「俺は、野々村青斗。君の名前は何て言うんですか？」
「あお…と？」
「うん、青色の青に北斗七星の斗って書くんだ。ちなみに一年です。」
俺は、生徒手帳のメモ欄に青斗と書いた。
「私の名前は佐倉希。希望の希と書いてのぞみと呼びます。一年です。」
「へぇーそうなんだ。」
おっいいぞ。我ながら出だしの感触はいいぞ。
「何て本読んでるんですか？」
「これ？この本は『群青』って本なの」
彼女は、そう言って彼女は俺に本を見せてきた。
「へぇー面白いのそれって？」
「私の中では好きかな」
彼女はとても、冷淡な声でそう言った。彼女はさっきから全くと言っていいほど表情が変わらない。
「…」
「…」
会話が続かない。てか、本の紹介が終わった瞬間にもう、読書に入っている。
このままではいかん。と思ってもどう話したらいいか、恋愛初心者の俺にはとても難しい問題だ。
「お昼食べたの？」
「うん」
そう言って彼女は読書を黙々としている。
「ねぇ」
そう言って彼女は俺の腕をツンツンとしてきた。
「何？」
「もうそろそろ帰らないとお昼休み終わっちゃよ」
「そ、そうだね」
俺は、そう言って最後に彼女にバイバイをして、教室に戻った。
「って言うことがあったんだよ」
「へぇー」
教室に戻った後、俺は近くにいた健にこの事を相談した。
メロンパンにかぶりついていた健はとても曖昧な返事をした。
「どうしたらいいかねぇー」
俺は1人で購買で買った焼きそばパンを見ながら呟いた。
「どうもこうも、その子の事ちょとは、わかったんだろ。じゃあそこから、会話のネタを掴んで行けばいいんじゃねぇの」
そう言って、健はミルクティーを一口飲んだ。
「佐倉さんってよく本を読んでるんだよね。俺ってさ、本あんま読まないじゃん」
「それも、そうだな」
「どうすりゃいいんですかだよ～」
そうしている間に昼休みのチャイムが鳴った。
テクテクと俺は暖かな太陽の日差しがあたる廊下を渡り図書室前にきた。今日も図書委員の仕事があり、『また佐倉さんに会える』と淡い期待を胸にガチャリと図書室のドアを開けた。
すると、「ヒュー」と春特有の生温い風と共に柔らかい花の香りが俺の花と体をくすぐった。すると本を探している佐倉さんが目の前にいた。佐倉さんは、こちらを「ちら」と見て
「今日昼休みに話しかけてきた人」
そう言ってこちらを見てきた。
「こっ、こんにちわ、じっ、実は俺図書委員でさ昨日さ君の事見てたんだよね」
キモいって思われたな、そう思い
「ごっごめんキモいよね、こんなの」
「いや、別に。それじゃあ」
そう言って、彼女はいつもの窓際の陽が当たる席に向かって行った。
「終わったな、俺の初恋、さよなら…」
虚しい気持ちが俺の体を駆け巡り喉が無性にカラカラしたのをよく覚えてる。
これが、俺と彼女の初めての会話。
見ての通り惨敗の結果で俺のライフはゼロだった。

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