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第5話
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自分に対して嘘をつくのが、多くなってきている。そう実感する事が多くなった。
前の俺なら、嘘など付かずに友達に隠している事全て話し、どうにかわかってくれる様に説得などして、わかって貰おうとした。
でも、年齢を重ねるごとに嘘をつく事を躊躇わない自分がいる事に気づき、段々とそれに甘えてしまい、生活をする。
純粋という物をすり減らしながら。
学校が終わり、放課後に教室で本間と国木田とダラダラと喋り、そこから1人で帰路につく。
今日の晩御飯を何にしようかと考えながら歩いていたら、後ろから声をかけられた。
「ちょっといいかしら?」
「はい、なんですか」と言い振り向くと、足立咲さんが後ろにいた。
「仲間君、ちょっと付き合ってくれないかしら?」
足立さんは近づきながらそう言ってきた。
「何か、俺に用があるのかな?」
後ずさりしながら足立さんに聞く。
「そうね、お姉ちゃんの事で聞きたい事があるの」
『お姉ちゃん』その言葉を聞いて、後ずさりしていた足を止める。
「君のお姉さんの話は学校で聞いたよ」
「学校では喋れない事もあるの」
彼女の目を見つめてみる。嘘をついている様な感じじゃない。ここは、彼女の言葉を信じてみるか。
「わかった。君の話を聞くよ」
「わかってくれて嬉しいわ」
そうしてやってきたのは、カジュアルな感じの喫茶店だった。
そこで足立さんはオレンジジュースを頼み、俺はアイスカフェオレを頼んだ。
ドリンクがきて、本題に入る。
「それで話って何かな?」
「そうね…まずは、お姉ちゃんの事をあなたはいくつ知ってるの?」
「えっ」
「だから、お姉ちゃんの事いくつ知ってるの?」
「あ、ああ。実は俺、足立美沙さんの事何も知らないんだ」
「んっ、それはどういう事かしら?」
「どうもこうも、そのままに意味だよ。俺は、足立美沙さんの事を全くと言っていい程何も知らないんだ」
「じゃあ、あの手紙が来た時初めてお姉ちゃんを知ったって事になるのね?」
「うん」
「と言う事は、あの手紙に書かれた事も、あの手紙を読んで初めて知ったって事なの?」
「そうなんだ」
足立さんはクルクルとストローでオレンジジュースの中の氷を回した。
「って事は、お姉ちゃんの‘‘あの事’’も知らないのね」
「あの事って何?」
「こっちの話だから気にしないで」
そう言って、ぎこちない笑顔を向ける。
「今日はありがとね。仲間君。ここは、私が払うわ」
「いや、俺にも払わせてよ」
「駄目よ。私が呼んだんだから」
「それでも、半分くらい出すよ」
そんな事をやって、結局半分半分の割り勘になった。
喫茶店の前で別れて、再び帰路に向かう。
「お待ちしておりましたよ。咲お嬢様」
「どうしたの杉さん。お姉ちゃんは大丈夫なの?」
「美沙お嬢様の体調に異変はありません。私がここにいるのは、美沙お嬢様に街で見かけたら、私の所に連れてきてと言われたので」
「そうなの。私もお姉ちゃんに聞きたい事があるんだ」
「では、お乗りください」
「ええ、わかったわ」
家について、晩御飯を作る。今日は前から決めてた、炒飯にした。
1人でモソモソとご飯を食べる。
「手紙の返事か…」
今日学校で言われた事を頭の中で反すうする。
「返事楽しみに待ってるからか…」
こうも期待されたら、あの事実を言いにくくなる。
どうしたら、相手を傷つけずにできるだろうか。
どうやったら幻滅されずに済むのか。そんな方法を模索する。
見つからない…
こうなったら、全て本当の事を書けばいいのか?
どうしたらいいんだ。
頭の中で何度も自問自答する。
「うーん」と考え込んでいたら、急にケータイの着信音がプルルとなった。
国木田からの電話だ。
「なんだ、国木田」
「よう、仲間。今日の宿題教えてくれねぇか?」
「んーとな、数学のワークP12からP14までだ」
「そうか、ありがとな」
「あとさ、国木田。聞きたい事があるんだ」
「なんだ。宿題教えてくれたから聞いてやるよ」
「あのさ、見ず知らずの人から突然、手紙が来てさ、その返事書く時さ、国木田ならどうする?」
「やけに設定が細いな。そうか、俺ならどうだろな」
「お前の場合を教えてくれ」
「その時は、ストレートにあなたの事は、何も知りませんすいません。って書くかな」
「でもさ、それだと相手が傷つくじゃん」
「お前は優しいな」
「そうかな」
「そうだよ。あとさ、絶対に傷つけずに済む方法はないよ」
「なんでだ」
「だってさ、知らないって言ってしまえばそれだけで相手を否定してるじゃん」
「うん」
「だからさ、100パーセント相手を傷つけずに済む方法なんてないんだよ」
「そうか」
「お前が何について悩んでるか知らないけどさ、相手を傷つけたくないって方法はゼロに近いぐらいないんだよ」
国木田の声が、ケータイから漏れる。
「わかった。ありがとな国木田」
「おう。じゃあな」
「うん。じゃあ」
俺の考えは、甘いのかもしれない。
相手を傷つけたくないという考えは、偽善という考えという事を改めて国木田に教わった。
なら、俺のできる事は1つしかない。
机の中を探って、ペンと便箋をだす。
『拝啓、足立美沙さんへ
お手紙ありがとうございます。
俺の出来る事は1つ。できるだけ相手を悲しませずに、俺の気持ちをかけるかだ。
前の俺なら、嘘など付かずに友達に隠している事全て話し、どうにかわかってくれる様に説得などして、わかって貰おうとした。
でも、年齢を重ねるごとに嘘をつく事を躊躇わない自分がいる事に気づき、段々とそれに甘えてしまい、生活をする。
純粋という物をすり減らしながら。
学校が終わり、放課後に教室で本間と国木田とダラダラと喋り、そこから1人で帰路につく。
今日の晩御飯を何にしようかと考えながら歩いていたら、後ろから声をかけられた。
「ちょっといいかしら?」
「はい、なんですか」と言い振り向くと、足立咲さんが後ろにいた。
「仲間君、ちょっと付き合ってくれないかしら?」
足立さんは近づきながらそう言ってきた。
「何か、俺に用があるのかな?」
後ずさりしながら足立さんに聞く。
「そうね、お姉ちゃんの事で聞きたい事があるの」
『お姉ちゃん』その言葉を聞いて、後ずさりしていた足を止める。
「君のお姉さんの話は学校で聞いたよ」
「学校では喋れない事もあるの」
彼女の目を見つめてみる。嘘をついている様な感じじゃない。ここは、彼女の言葉を信じてみるか。
「わかった。君の話を聞くよ」
「わかってくれて嬉しいわ」
そうしてやってきたのは、カジュアルな感じの喫茶店だった。
そこで足立さんはオレンジジュースを頼み、俺はアイスカフェオレを頼んだ。
ドリンクがきて、本題に入る。
「それで話って何かな?」
「そうね…まずは、お姉ちゃんの事をあなたはいくつ知ってるの?」
「えっ」
「だから、お姉ちゃんの事いくつ知ってるの?」
「あ、ああ。実は俺、足立美沙さんの事何も知らないんだ」
「んっ、それはどういう事かしら?」
「どうもこうも、そのままに意味だよ。俺は、足立美沙さんの事を全くと言っていい程何も知らないんだ」
「じゃあ、あの手紙が来た時初めてお姉ちゃんを知ったって事になるのね?」
「うん」
「と言う事は、あの手紙に書かれた事も、あの手紙を読んで初めて知ったって事なの?」
「そうなんだ」
足立さんはクルクルとストローでオレンジジュースの中の氷を回した。
「って事は、お姉ちゃんの‘‘あの事’’も知らないのね」
「あの事って何?」
「こっちの話だから気にしないで」
そう言って、ぎこちない笑顔を向ける。
「今日はありがとね。仲間君。ここは、私が払うわ」
「いや、俺にも払わせてよ」
「駄目よ。私が呼んだんだから」
「それでも、半分くらい出すよ」
そんな事をやって、結局半分半分の割り勘になった。
喫茶店の前で別れて、再び帰路に向かう。
「お待ちしておりましたよ。咲お嬢様」
「どうしたの杉さん。お姉ちゃんは大丈夫なの?」
「美沙お嬢様の体調に異変はありません。私がここにいるのは、美沙お嬢様に街で見かけたら、私の所に連れてきてと言われたので」
「そうなの。私もお姉ちゃんに聞きたい事があるんだ」
「では、お乗りください」
「ええ、わかったわ」
家について、晩御飯を作る。今日は前から決めてた、炒飯にした。
1人でモソモソとご飯を食べる。
「手紙の返事か…」
今日学校で言われた事を頭の中で反すうする。
「返事楽しみに待ってるからか…」
こうも期待されたら、あの事実を言いにくくなる。
どうしたら、相手を傷つけずにできるだろうか。
どうやったら幻滅されずに済むのか。そんな方法を模索する。
見つからない…
こうなったら、全て本当の事を書けばいいのか?
どうしたらいいんだ。
頭の中で何度も自問自答する。
「うーん」と考え込んでいたら、急にケータイの着信音がプルルとなった。
国木田からの電話だ。
「なんだ、国木田」
「よう、仲間。今日の宿題教えてくれねぇか?」
「んーとな、数学のワークP12からP14までだ」
「そうか、ありがとな」
「あとさ、国木田。聞きたい事があるんだ」
「なんだ。宿題教えてくれたから聞いてやるよ」
「あのさ、見ず知らずの人から突然、手紙が来てさ、その返事書く時さ、国木田ならどうする?」
「やけに設定が細いな。そうか、俺ならどうだろな」
「お前の場合を教えてくれ」
「その時は、ストレートにあなたの事は、何も知りませんすいません。って書くかな」
「でもさ、それだと相手が傷つくじゃん」
「お前は優しいな」
「そうかな」
「そうだよ。あとさ、絶対に傷つけずに済む方法はないよ」
「なんでだ」
「だってさ、知らないって言ってしまえばそれだけで相手を否定してるじゃん」
「うん」
「だからさ、100パーセント相手を傷つけずに済む方法なんてないんだよ」
「そうか」
「お前が何について悩んでるか知らないけどさ、相手を傷つけたくないって方法はゼロに近いぐらいないんだよ」
国木田の声が、ケータイから漏れる。
「わかった。ありがとな国木田」
「おう。じゃあな」
「うん。じゃあ」
俺の考えは、甘いのかもしれない。
相手を傷つけたくないという考えは、偽善という考えという事を改めて国木田に教わった。
なら、俺のできる事は1つしかない。
机の中を探って、ペンと便箋をだす。
『拝啓、足立美沙さんへ
お手紙ありがとうございます。
俺の出来る事は1つ。できるだけ相手を悲しませずに、俺の気持ちをかけるかだ。
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