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翡翠挽回 中:グリーン編
ending xxx:深海冥王
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その日魔族達は見た。不死身と名高きレッドが斃され、魔海の王が復活する様を見た。
各領区の広場で、クラーケン社の広告看板を取り囲み、老いも若きもその戦いを目の当たりにした。レッド討伐隊を各地に派遣していた魔王城は当然大変な騒ぎだ。……砂浜には一足遅れてテレポートしてきた魔王軍の兵達が集まり始め、不気味な波音が満ちていた海岸線はにわかに騒がしくなりつつある。
……神の使いを撃ち落とした矢は砂浜を越え、遠く洋上で塵と消えた。込められた魔素が散って、霧中弱く光る。血みどろの肢体を支え起こし、深海冥王ルブルは影で繫がれた彼を揺すった。
「やったね。グリーン」
グリーンは呆然と触腕に身を預け、こちらを見上げている。コートはずれ落ち、嘉名は殆ど裸に近い無様な格好だ。
半開きの口はそれでも形がいい。ルブルは緩慢な動きで青年の頬から血飛沫を拭う。
「…………お前は」
「うん?」
「……僕を殺さないのか?」
少しの間を置いて、魔海の王は空に円を描いた。砕け散ってしまった眼鏡の代わりを、そっと彼にかけてやる。
「君は十三人も殺さなかった。……だからこちらも、それに倣おうと思う」
配下十三貴族代表は深海に囚われているが、その命が魔術の代償に使われることはついに無かった。小魚に変えられた彼らは小瓶の中で今も生きている。
レッドが訪れた晩、青年が先んじてくすねた指輪を使ったから———有無を言わさず先手を打ったから、ルブルの臣下は死神に遭ってなお、一人残らず生き残ることができた。
「それが君の本性だ。あれに殺されぬよう守ってくれた。———今こそ貴君を迎えよう。……魔海へようこそ、ヒーローさん」
深海冥王ルブルの六つ目がそれぞれ眩しげに細められる。吸盤のびっしりついた触腕に支えられ、嘉名は海の巨怪を見上げて放心するしかできない。
……霧が晴れる。濃霧を裂いて、やはり気味の悪い陽光が二人を照らしていた。
各領区の広場で、クラーケン社の広告看板を取り囲み、老いも若きもその戦いを目の当たりにした。レッド討伐隊を各地に派遣していた魔王城は当然大変な騒ぎだ。……砂浜には一足遅れてテレポートしてきた魔王軍の兵達が集まり始め、不気味な波音が満ちていた海岸線はにわかに騒がしくなりつつある。
……神の使いを撃ち落とした矢は砂浜を越え、遠く洋上で塵と消えた。込められた魔素が散って、霧中弱く光る。血みどろの肢体を支え起こし、深海冥王ルブルは影で繫がれた彼を揺すった。
「やったね。グリーン」
グリーンは呆然と触腕に身を預け、こちらを見上げている。コートはずれ落ち、嘉名は殆ど裸に近い無様な格好だ。
半開きの口はそれでも形がいい。ルブルは緩慢な動きで青年の頬から血飛沫を拭う。
「…………お前は」
「うん?」
「……僕を殺さないのか?」
少しの間を置いて、魔海の王は空に円を描いた。砕け散ってしまった眼鏡の代わりを、そっと彼にかけてやる。
「君は十三人も殺さなかった。……だからこちらも、それに倣おうと思う」
配下十三貴族代表は深海に囚われているが、その命が魔術の代償に使われることはついに無かった。小魚に変えられた彼らは小瓶の中で今も生きている。
レッドが訪れた晩、青年が先んじてくすねた指輪を使ったから———有無を言わさず先手を打ったから、ルブルの臣下は死神に遭ってなお、一人残らず生き残ることができた。
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深海冥王ルブルの六つ目がそれぞれ眩しげに細められる。吸盤のびっしりついた触腕に支えられ、嘉名は海の巨怪を見上げて放心するしかできない。
……霧が晴れる。濃霧を裂いて、やはり気味の悪い陽光が二人を照らしていた。
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