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金継ぎの青 下:ブルー編
月が濁りて
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夢のまた夢、折重ねられた無意識の中で女は目を覚ました。
「…………。」
カンテラの内で炎が揺れる。己にあてがわれた質素な客間には、窓から赤い月が光を差していた。……昨夜まで清廉な白色であった月光が、今は不気味に赤く濁っている。夜も明けていない、月は高く遠く登ったまま、未だここは夜の世界だった。
「大変だわ……」
ブロンドの夢魔、リリスは跳ね起きて着の身着の儘夜の教会を駆けた。こちらが夢から覚めたということは———彼女もそこへやってきているはずだ。
同じように起き出した大鬼と連れ立って教会を出る。赤い月の照らす道を出てすぐ、辿り着いた礼拝堂には、やはり小柄な彼女が困ったように神の偶像を見上げていた。
「リリス様」
「どうしたの!……何があったの」
修道服の裾に雫が伝う。軽く腹部を押さえて彼女は言った。
「少し、早くに迎えがきたようです」
夢は根底から揺さぶられ———今まさに、旅人ごと巻き添えにした崩落が始まろうとしていた。
「…………。」
カンテラの内で炎が揺れる。己にあてがわれた質素な客間には、窓から赤い月が光を差していた。……昨夜まで清廉な白色であった月光が、今は不気味に赤く濁っている。夜も明けていない、月は高く遠く登ったまま、未だここは夜の世界だった。
「大変だわ……」
ブロンドの夢魔、リリスは跳ね起きて着の身着の儘夜の教会を駆けた。こちらが夢から覚めたということは———彼女もそこへやってきているはずだ。
同じように起き出した大鬼と連れ立って教会を出る。赤い月の照らす道を出てすぐ、辿り着いた礼拝堂には、やはり小柄な彼女が困ったように神の偶像を見上げていた。
「リリス様」
「どうしたの!……何があったの」
修道服の裾に雫が伝う。軽く腹部を押さえて彼女は言った。
「少し、早くに迎えがきたようです」
夢は根底から揺さぶられ———今まさに、旅人ごと巻き添えにした崩落が始まろうとしていた。
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