72 / 117
金継ぎの青 下:ブルー編
月が濁りて
しおりを挟む
夢のまた夢、折重ねられた無意識の中で女は目を覚ました。
「…………。」
カンテラの内で炎が揺れる。己にあてがわれた質素な客間には、窓から赤い月が光を差していた。……昨夜まで清廉な白色であった月光が、今は不気味に赤く濁っている。夜も明けていない、月は高く遠く登ったまま、未だここは夜の世界だった。
「大変だわ……」
ブロンドの夢魔、リリスは跳ね起きて着の身着の儘夜の教会を駆けた。こちらが夢から覚めたということは———彼女もそこへやってきているはずだ。
同じように起き出した大鬼と連れ立って教会を出る。赤い月の照らす道を出てすぐ、辿り着いた礼拝堂には、やはり小柄な彼女が困ったように神の偶像を見上げていた。
「リリス様」
「どうしたの!……何があったの」
修道服の裾に雫が伝う。軽く腹部を押さえて彼女は言った。
「少し、早くに迎えがきたようです」
夢は根底から揺さぶられ———今まさに、旅人ごと巻き添えにした崩落が始まろうとしていた。
「…………。」
カンテラの内で炎が揺れる。己にあてがわれた質素な客間には、窓から赤い月が光を差していた。……昨夜まで清廉な白色であった月光が、今は不気味に赤く濁っている。夜も明けていない、月は高く遠く登ったまま、未だここは夜の世界だった。
「大変だわ……」
ブロンドの夢魔、リリスは跳ね起きて着の身着の儘夜の教会を駆けた。こちらが夢から覚めたということは———彼女もそこへやってきているはずだ。
同じように起き出した大鬼と連れ立って教会を出る。赤い月の照らす道を出てすぐ、辿り着いた礼拝堂には、やはり小柄な彼女が困ったように神の偶像を見上げていた。
「リリス様」
「どうしたの!……何があったの」
修道服の裾に雫が伝う。軽く腹部を押さえて彼女は言った。
「少し、早くに迎えがきたようです」
夢は根底から揺さぶられ———今まさに、旅人ごと巻き添えにした崩落が始まろうとしていた。
10
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる