イケニエヒーロー青井くん

トマトふぁ之助

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金継ぎの青 下:ブルー編

癒合

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 夢の終わりは呆気ないものである。目元を拭う懐かしい温度に目を開くと、馴染みの赤鬼がそこにいた。
 「よう。良い夢みれたかよ」
 「……バルド、おかえり!」
 「うおっと、こりゃ大歓迎だな」
 オーガの巨躯に抱きつくと、軽々持ち上げられて膝に乗せられる。
 巖のような大鬼は出立の日と変わらず、着崩した軍服姿である。帰ってきたばかりなのかバルドは上着すら脱いでいない。真っ直ぐ会いに来てくれたことが嬉しくて、久々の再会につい声が大きくなる。
  バルドは腕一本で青井の背から腰を支え、挨拶がわりに鼻っ柱を甘噛みしてきた。柔らかな人間の皮膚を傷つけないよう配慮した触れ方がくすぐったくて心地いい。
 「上機嫌だなあ、いいこった。……どんな良い夢見てたんだ?」
 「……覚えてない……。俺何してたっけ……?」
 束ねた髪を整えようと後頭部に手を伸ばした青井は、ふと違和感に眉をひそめた。後頭部がすかすかとしていつもの手応えがない。青年の黒髪はいつの間にか首筋の裏で切り揃えられていた。
 「あれ……ギレオさんが切ってくれたのかな」
 「あー?……少し勿体ねえな。尻尾みてえで気に入ってたんだが」 
 筋肉の薄くなった首筋を牙の腹でなぞられる。バルドは強めに鎖骨周辺を吸い上げては、我が物顔で青井の首筋に所有印を残していく。青年は寝起きで覚束ない仕草ながらにたてがみをかき抱いて、恍惚と愛撫を受け入れた。首を舐めしゃぶられながら、だぶついたパーカーの下では大鬼の手が膨れた腹をまさぐってくる。
 「んン……あんま……腹さすっちゃ、だめ……っ♡あ、あ……」
 「……そろそろヤりてえ頃じゃねえか?栄養つけてやる」
 「あう、だめだって……!ちがっ、なんか今日変だから!我慢できねえから……っ!」
  青井は違和感に戸惑い身を強張らせた。
 息を荒げて抗議する間にも太腿から下腹部の紋にかけて、ぞわぞわと皮膚がさざ波立つ。医者は安定したと言っていたのに。青年は急激に襲いかかってきた空腹感に、腹を庇って鬼と距離を取ろうとした。到底扱き合うくらいでは収まりそうにない。味わったことのない飢餓感に手先が痺れて力が入らない。
 「我慢だぁ?必要あるか?……おおかた精気不足だろうよ」
 「ぐ、ぅう……っ!精気って言っても……!くぁ、ふぁあっ」
 「可哀想に、悪かったなあ。留守にしちまったせいで腹減ったんだろ……医者も言ってた。不足のないようにってよ……聞いてただろ?なあ清一」
 そう言うとバルドは、膝に乗せた人間の顎を掬い上げた。頰を押して口を開かせ、オーガ族の長く分厚い舌を差し入れる。体格差が激しい異種族間のキスは、難色を示していた青年を数秒で沈黙させた。舌を伝って滴る唾液が青井の喉を潤していく。
 唾液が舌先に浸透した刹那、抗い難い欲求が青井を支配する。
  「ふ、……っ♡?ちゅ、ん、ンく……っ!!は♡……ぁ、ひえ……っ?」
  美味しい。凄まじい美味であった。唾液に混じった魔素、しかもよくよく刷り込まれた番いの魔力が麻薬のように思考を焼き潰す。今身体に不足しているのはこの養分であると脳が判断したその瞬間に、自制のため身を離したがっていた青井はふらふらと激しい口付けに身を委ねた。分厚い舌へ追いすがり、自らその甘露にしゃぶりつく。精液に比べれば精気の薄い、だが濃く番いの匂いを纏ったバルドの唾液は、青年の薄い舌を甘くひりつかせて焦がす。
 青年の瞳が飢えに揺れた。唾液を送り込むたび金混じりの青が潤んで溶ける。唇を深く合わせては離し、キスの主導権を握ったオーガは数分に及ぶ愛撫の後ゆっくりと身を離した。陶然と精気酔いに惑っている番いの背を撫で上げて、未だしがみついたままの青年に呼吸を促す。
 抱き締められる安堵にくしゃくしゃの顔で青井が泣きだした。
 『切り取られた』直後はひどく心が揺れるものだ。バルドは素知らぬふりで猫撫で声を出し、腕の中の青年をあやしにかかった。
  「おうおう、寂しかったのか?よく泣くやつだ」
  「……ン、寂し、かった……寂しかった……!!ご、ごめっ……わかんない、わかんねえよ、なんでこんな……ヒ、ぇっぐ、うぇっ……!!」
 当の本人は急激な感情の波に戸惑いが隠せない。子供のようで恥ずかしいが止めることができなかった。……起き抜けで情緒が不安定なのかもしれない。長く懐かしい夢を見ていたような気がするが……思い出せない夢が悪いものだったのかもわからない。とにかく青井は不安で怖かった。いきなり支えだったものを失ったような気分だ。自分の中から何かが欠けた事だけがはっきりとわかって、青年は混乱に声を荒げる。
 「なに、おれっ!何っ!?なくした、なんかわかんないけど、失くしたんだよぉ……!」
 「落ち着け。悪い夢でも見たんだろ。ひとりにして悪かったなぁ」
 「ちがっ……ちがう、違うぅ……っ。聞いて、ばるど、きいて」
 「大丈夫だ、俺様がいるだろ?こっち見ろ。俺様の目を見ろ」
 「あ、ぁう……」
 金の瞳がこちらを覗いている。バルドの厳しい顔、青井が潰した左眼と対をなす黄金の右眼がぎろぎろと青年を射抜いていた。
 「お前は俺様の捕虜で、番いで、正妻だ。その魂死ぬまでが丸ごと俺様の所有物。誰にも渡さん。誰にも侮辱させねえ……お前自身にも傷つける権利はやらん」
 だからそのまま、忘れちまえ。
 そう耳元に囁かれた瞬間だった。強張っていた青井の肉体が不自然に弛緩し、目の前のオーガに対して適切な距離感が図れなくなる。力無くもたれかかる青年の体の呼吸は浅く、頭の中はほぼ真っ白に漂白されていた。
 「は、……はひゅ、ふぁ……?らに、……ぁに?」
 「…………。」
  腕の中でパニックに陥りかけている青年を膝から丁寧におろし、寝台へと仰向けに寝かせる。抵抗の術も刃向かう気力も、更には削がれた記憶すら辿ることの出来なくなった人間が不安を訴えて身を震わせた。虐め抜かれた戦士の体。かつて荒野で鎬を削りあったヒーローも、今や力無い子ども同然である。張り出した孕み腹が獲物の全てに奇妙な色香を纏わせていた。……オーガは生唾を飲み込んでその妊夫腹を暴きたい衝動を飲みこむと、つとめて優しく語りかける。
 「……お前には俺様だけだ、お前の身内は俺様と腹のガキ。それだけいれば十分の筈だ。だよなぁ」
 「ン、ぅん?……う、ん……」
  青井の耳に届くのは甘ったるい雄の低音。今から口説くぞとでも言いたげな、欲の篭った低い声だった。ほぼ強制的に発情させられ、問いかけの意味すら理解できないまま青井は何度も頷く。
 身内、家族。家族はバルドと、お腹の子ども。
 大鬼の顔が悪どく歪んで笑みをつくった。
 「いい子だ。ブルー……。なァ、俺様のことが好きだろう?」
 「き、……すき、す、きぃ。っぁ」
 「はァ……っ!ずっとこうしていたいだろ?気持ちいいのが好きだよなあ」
 「ンンっく、ふぅ♡すき、すきぃ……っ♡」
 柔く肉のついた青年の体を大鬼の手が滑りおりる。大きく突き出た腹の下を弄り、もうそこだけでは達することの出来ない陰茎をしごく音が響き始めた。何か忘れているような違和感があったが、囁かれる声に疑問はかき消されてしまう。新妻が内腿を擦り合わせて熱い吐息を溢す。青年は大きな手で体をさすられ、揉み込まれて、いつの間にか体を弄る快楽しか感じ取れなくなっていた。
 「いい子だなあ、本当に可愛いやつだ……清一、なあ、もっと言えよ……!」
 「すき、ばるど、すきだからぁ!ばるどっも、ぅ……!」
 名前を呼ばれると青年の顔がいっそう蕩けて情けなく緩む。体温の高いオーガの手で弱い箇所を優しく扱きあげられた。起きたばかりで緩く勃ち上がっていた青井のペニスは、バルドの手の中へと薄い精を放つ。射精後の余韻に身体を震わせていると、胸に濡れた感触があった。
 「やだぁ……見るな、見ないで……♡」
 「……ハハ。絞らねえでも出るようになったか」
 やわく変化した胸から生温い母乳が垂れている。パーカーに乳の染みが滲み始めていた。青井が必死に服を引っ張って隠そうとするも、手首ごと寝台へ縫いとめられてしまう。白いシーツに薄い精液と、はねた母乳の痕跡が残された。———仰向けで力なくオーガを見上げる青年に、何倍もの巨躯が覆いかぶさっていく。

 分厚い手がパーカーを捲りあげると、ぼってり育った孕み腹と、陥没した両の乳首が現れた。胸筋が変異した雄乳は絞って欲しそうにはり出している。不健康に骨張っていた体は今や薄く柔らかい肉がつき、傍目に見ても抱きやすく育っていた。あまりいやらしい獲物の肉体にバルドの喉が鳴る。今すぐ腰を引っ掴んで思う様貪り尽くしたい欲望を押し留め、悪漢らしく悪どい笑みを浮かべると剥き出しの乳首へ唾液を纏った舌を這わせ始めた。
 「!?え、むねっ……♡!?や、きもちっから……すごいのきちゃっ……!!ヒぁ♡!や、めぇえっ♡!!」
 嬌声があがる。敏感なそこをざらついた舌で執拗に舐めしゃぶっていると、青井は激しい快楽に怯えてバルドの頭を両手で押しやり始めた。好きに抵抗させつつ、もう片方の乳首も指先で刺激してやる。最初は掠める程度に、徐々により直接的な愛撫へと。母乳を舌先で吸い出せば、じゅわりと舌に甘さが広がった。奥ゆかしくしまわれていた先端は真っ赤にしこって、牙と舌先で嬲られる刺激に外へと引きずり出されてしまう。鍛えた胸筋を執拗に揉み込んでは乳を吸い、膝で股座を緩く刺激してやる。バルドの頭を胸から押しのけようとしていた青井の手は、その内にすっかり力を失って、やがてただ陽色の豊かな髪をくしゃくしゃと撫で付け、外巻きの立派な角にしがみつくばかりになった。
 「ア、ぁああ……ッ♡!!やあぁ……っ♡!!」
 じゅるっ♡じゅぅう♡とわざとらしく音を立てて吸い上げられるたび、鼻から甘ったるい泣き声を漏らす。パーカーの布地は、オーガの怪力によって邪魔だと言わんばかりに引き裂かれ、上半身に纏うものはもうなくなっていた。手術痕の残る皮膚にキスマークが散らされる。揉みほぐすような愛撫を受けて、太腿がじっとりと汗をかいて痙攣し始めていた。大鬼の熱い呼吸が雄乳全体を敏感に煽り立てていく。限界が近い。青井が鼻声で強請り始める。
 「ねがぃ、お願い……っ♡頼むからぁっ……!!だいへ……♡だいてくれよぉっ……♡」
 後孔が漏らしたように腸液を滴らせ、縦割れをひくつかせている。番いになってからバルドに時間をかけて耕されたアナルは恥も外聞も無く夫のそれを収めたがった。……大鬼が据わった瞳で服を脱ぎ始める。
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