イケニエヒーロー青井くん

トマトふぁ之助

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イエロー編

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 「あがっ……———ッがああアあ゛!!」
 凄まじい激痛に黄ノ下は白目を剝いて絶叫する。
 スプリングの効いたベッドに四肢をバンドで固定され、理不尽な尿道への刺激に耐えた。必然上がったやかましい叫びに目の前の男が硬直している。
 「えっ。変だな……」
 グリグリ。尿道の内側をもう半回転。
 「っぎぁあ~~~ッ!!だ、やだやだ!!ぞごっ!!あ゛ぎぃい!!!」
 自在に変形可能なリッヒェの金属腕は、液状化して黄ノ下の隘路を責め続ける。獲物の両足を拘束し、さらに指先を伸ばした銀の触手は黄ノ下の鈴口に侵入。担当ヒーローの体を好き勝手弄んでいた。
 しかし本当に便利な体だな、イエローは泣きじゃくりながら硬直したリッヒェを睨みつける。
 「抜け!イテエ!」
 「そ、んなはずは無い。人間はここを」
 「抜けッ!!!」
 「……ウン」
 じゅるるん。耳に残る粘着音を残して触手は通常形態の金属脚へと戻っていく。
 直ぐさま後方へとびすさり、黄ノ下は獣よろしく唸りをあげる。相対するリッヒェはどこか狼狽えたまま触手を出しては引っ込める動きを繰り返していた。黄ノ下は憤怒の色を隠さず吠えた。
 「そのうねうねをしまえ糞野郎!!」
 「ん、そのだな……仕切り直してもう一回……というのは」
 「アア゛!?」
 「…………」
 黄ノ下へゆるりと伸びた金属肢が力無く降ろされる。金属面で表情は伺えないが、どうやら想定外の事態に戸惑っているらしい。その隙にイエローは散らされた服を拾い集め、急いでパンツを履いた。薬物で弛緩させられていた身体は既に解毒を終えている。
 「どういう頭してたら野郎のチンポに触手突っ込もうなんて気になれるんだ!?」
 やたら自信満々にイエローをレイプしようとした白衣の怪人に抗議を浴びせる。

 高級住宅地のモデルハウスをそのまま移設したかのようなリッヒェの研究所には、形ばかり完璧なベッドルームが存在する。休息の何たるかを知らぬリッヒェが手がけた「寝室」は、だだっ広い白塗りの部屋に、大きめの病人用ベッドが配置されているだけの味気ないものだった。非難がましい目を向ける少年に人工声帯の螺子が空回る。

 「誤解だ、その、ハナから私の考えでというわけでははない……。これは実体験に基づいた試みなのだ」

 リッヒェは手負いの野生動物を落ち着かせるような仕草で両手を広げる。
 続く弁明の言葉に黄ノ下は機嫌を更に急降下させた。

 「君と同じく魔王軍管理下にある捕虜、個体名アオイセイイチ———ブルーの記憶媒体から有効活用できそうな資料を拝借した。ニョウドウゼメはマウンティングとして効果的だ。本当なのだ」

 リッヒェは青井の記憶野に干渉し、保管されていたをデータを抽出……ようは盗み見てきたわけであるが、主に拝借したのはヒーロー業務の傍らで行われた管理売春についての記録である。
 顧客の要望に応じ、あらゆる性行為に順応しなければならなかった青井清一は優秀な生体資料だ。幹部のバルドに醜態を晒すことを危惧して情報の提供に非協力的だったが、あのオーガであれば家畜の調査は徹底して行っているはずだろうに。下等生物は全く難儀な習性をしている。

 リッヒェの弁明を聞く少年の眉間が深い縦皺で埋まっていく。
 ———すると何か。自分はあの男の実体験をもとにチンポ弄くり回されたってのか。黄ノ下の金髪がざわりと逆立った。心の底からの嫌悪と共に、咆吼が吐き出された。
 「このゴミカス!!俺をあのホモと一緒にすんじゃねえッ!!」
 黄ノ下はヒーロー部隊のメンバーに対して何の情も持ちあわせない冷血漢だったが、同僚である青井をことのほか嫌い、軽蔑していた。ブルーの座を枕営業でもぎ取ったと噂される彼は、イエローに就任する以前からこの上なく不愉快な存在だったからだ。
 水晶から十分に加護を受けられず肉体再生を繰り返すしか能の無いブルー。
 あいつが終戦間際まで比較的安全な界境防衛ラインに配置されていたおかげで、苛烈な国土奪還作戦に自分が回される羽目になったのだ。

 「ってか、あいつまだくたばってねえのかよ!オーガの餌にでもなっちまえば良かったのによぉ……」

 戦いの最中、幾度も最前線で痛い目に遭わされた記憶が瞼の裏を過ぎる。
 手柄を挙げられれば臨時報酬が狙えたものを、大方の小物はリーダーであるレッドが片付けてしまうから黄ノ下に見せ場は回ってこない。その上レッドが不在のときに限ってリッヒェが現れ、執拗に自分を追い回すので———イエローは何度も殺され、生き返っては上司に担当区域の変更を申し立てた。返ってくる答えはいつも同じだ。
 ———『そのポジションはブルーで埋まっている』。
 畜生め。界境防衛ラインに出現するエネミーは少ない。オーガの首領が部下を率いて現れる程度だ。メンバーの能力を鑑みても、戦闘能力最弱のブルーを割り当てるのは妥当な采配だったと言えよう。……しかしそれで納得する黄ノ下ではない。たかだかオーガ一頭の相手をするだけでもいっぱいいっぱいなら、ヒーローなんざ辞めちまえと何度毒づいたかわからない。陰気な面で宿舎内をよたつく姿を思い出しただけで血管が破裂しそうな怒りが胸中に湧く。生まれた時から良いガタイして———俺より頭二つもタッパあるくせしやがって。

 黄ノ下はシンプルなベッドに腰掛けて煙草を咥える。顎でしゃくって指示を出せば、リッヒェが熱線で火を灯した。一息つくと渋面のイエローが話し出す。

 「あの枕営業ホモ、オーガのヒヒジジイが奴隷にしたはずだろうが。あんでくたばってねんだよ」
  ゼンマイの回る音と共にリッヒェが小首をかしげた。
 「バルドのことか。そうだな。彼らは存外仲良くしているようだ。下等種族らしく繁殖に励んでいるよ」
 「……繁殖?なんでジジイの嫁の話が出てくんだよ。ブルーの野郎のことを聞いてんだぞ」
 きるきるとゼンマイの音が間を埋める。
 「バルドに番いはいない。強いて言えば、あの奴隷となる。奴が孕ませた相手はブルーだからな」
 今度こそ沈黙が訪れた。イエローは危うく貴重な紙巻を取り落としかける。
 「……あいつ女だったの?」
 「いいや。アオイセイイチは生物学上雄だが」
 「ハア!?な、はァ?孕ませ、って何か!?オーガと子作りしてるっていうのか!?」
 「違いない。魔界の植物には寄生先の肉体を作り替える類いが存在する。ヒトの雄は魔族の借り腹に成りうる存在だ」

 世にもおぞましい話を聞いたと言わんばかり、黄ノ下は顔を歪ませる。なんだか頭痛がするのは気のせいだろうか。魔界ではとことん性に合わない出来事ばかり起きる。リッヒェはなおも物言いを続けた。
 「バルドの成功例を真似てみたがどうもしっくりこない。雄同士の擬似交尾はいいコミュニケーションになると分析してきたんだが。……カエデ。君はどうしたら私に屈服してくれる?」
 少年が燻らせる白煙の先で、怪人が詮無いことを言い出した。直立した白衣の怪人からは相変わらず表情は読み取れないが、不穏な台詞とは裏腹にままならない不安が滲んでいる。

 イエローは足を組み直してリッヒェを指さした。
 「———まずその言葉遣いを改めろ。てめえ俺を何だと思ってる?都合のいい実験材料か?それとも死なねえペットか」
 「君が望むなら両方検討するが」
 「ちっげえよ!いい考えみたいに言うんじゃねえ!……結局そういうこったろ。どっちにしろてめえは俺のことを虫けらとしか見てねえんだよ。あほくせ、俺は寝る」
 「ま、待ちたまえ。わからない……わからないんだカエデ。どう返事すれば正解なんだ?」

 煙草の火を指先ですり潰し寝に入ろうとする黄ノ下に、鈍色の腕が縋り付く。少年は面倒くさそうに視線を寄越した。力でねじ伏せること、同族を人質に取ること、そのどちらも黄ノ下を制御するには不足だと知れてから、この鉄仮面は様子が可笑しい。銀の指がイエローの頬を擦ってくる。

 「教えてくれ。殺しても脅しても、金を与えても駄目だった、肉体を調整して依存状態にすらできないのなら、私は一体君をどうすればいいんだ?」
 「マジでキメえんだけど。そんなこと考えてたのか。無理だよ童貞くんには」
 「安心してくれ、君で体得してみせよう」
 「やめろっつってんだろレイプ魔!!ブチころがされてえのか!!」

 ひっついて離れなくなったリッヒェの頭を半裸のイエローが思い切り手のひらで遠ざける。当然ながら魔族と人間では力の差が激しく、完全に引き剥がすのは難しい。ベッド脇に座っていた筈が、気づけば上半身裸のまま寝台に引き倒されていく。

 「ついてもねえ、経験もねえ癖によくそんな大口叩けたな!?」
 「バルドの肉奴隷から情報は得ている。まずは腸内洗浄だ。器具も揃えてある」
 「いきなりハードなんだよ!いろいろすっ飛ばし過ぎだ!」

 のしかかってくる圧力を逆手に取って、逆に黄ノ下はリッヒェをベッドに転倒させた。上に跨がって体ごと抑え込む。合金体はスプリングのきいたマットレスに沈み、マウントをとったイエローの腰を銀肢がゆるやかに撫あげる。
 「……では何から始めれば?ブルーが男娼仕事をしていた際のデータはインストール済みだ。あらゆる想定に対応可能だぞ」
 もう溜め息も出てこないイエローだったが、抑え込んだ怪人の体が意外に華奢なことに気がついた。
 「…………」
 「カエデ?」

 荒く白衣を暴かれた合金体は、ライトに照らされて普段見えない場所まで露わになっている。ヒトを模した銀の肢体。体節の切れ目からは水銀が潤滑油代わりに絶えず流動しているのが窺えた。
 白い寝台に仰向けにされたリッヒェを見て、ふとかつて世話になっていた———女医もののアダルトビデオを想起してしまったイエローは、むっつりと押し黙った。そういや、最後に抜いたのいつだったっけか。
 長考を経て、黄ノ下は勿体ぶった口調で返事をした。

 「……いいぜ、そんなにヤりてえってんならつきあってやっても。ただし条件がある」
 「なんなりと言いたまえ」
 「お前が下になれ。」
 ———15歳のまま成長をピン止めされた童顔が、欲望を透かして醜悪に歪む。犬歯の覗く笑みがリッヒェの鉄仮面に映り込んでいた。
 「お前の合金、変形自在なンだろ?オナホの代わりくらいにゃしてやるよ」

 わかりやすく下劣であけすけな台詞、しかし怪人が怒り出す様子は無かった。むしろ内心でリッヒェは昂揚していた。イエローの脳内に埋め込んだチップから伝ってくる信号から、平時よりも快楽物質量が多く分泌されていることが理解できた。揺さぶられるようリッヒェの駆動音も高鳴っていく。魔界原産希少鉱物から組み上げられた体内で、興奮を伴った水銀がその流動を激化させる。———黄ノ下楓は自分で快楽を得ようとしているのだ。
 誰あろう、泣く子も黙る魔王軍参謀長官の自分を欲の捌け口として見ている!

 「ふ、ふはは———!君は……本当に面白い。カエデ、だから君を攫ってきたんだ!」
 「萎えるから黙っててくんねえ?……ゲ、ちっげえよ。これケツの穴じゃねえか!」
 「女性器の形状データは採取していないからな」
 「ちっくしょー……まあヌけりゃなんでもいいわ。次はマンコにしろよな」

 黄ノ下のジーンズがごそごそと降ろされ、リッヒェの体が乱暴に裏返される。最低の下をいく会話の応酬が続く中、下半身同士が性急に結合された。

 腰を振り出したイエローの快楽をかみ殺した呼吸と、シーツの衣擦れる音が重ね合わされる。欲望を初めてぶつけられるリッヒェは、それでも少年が安定して動けるようにその小さな背にアームをまわした。
 「ふ、……っ濡らせねえの。それかローションくれよ」
 「———そういう用意がなくとも」
 「ぐぁっ♡!!すげっ……!」
 「お気に召したようでうれしいよ……!」
 流動する液体金属でイエローの性器を包んでやれば、少年は腰を震わせて頬を紅潮させる。金属の冷たさと舐めとられるかのような感触に腰が止められない。彼の脳波は相変わらず色惚けたスタッカートのリズムを刻んでおり、感覚を後追いするリッヒェはというと、いまだかつてないドーパミンの味を堪能していた。

 「あ~、久々すぎる……もうクソ穴でも何でもいいわ、たまんねえ……」

 非常に協力的な動きをする液体金属に気をよくしたのか、イエローの顔が下りてきてリッヒェの首筋にキスをする。戯れの動作に呼応して、怪人の手がのしかかる腰を抑え、より深い快感を味わえるよう穴の深度を調節した。
 ———なんだ、こいつも案外チョウドイイ奴だったんじゃねえか。
 イエローはいい気分で、大人しく抱かれている魔族の鉄仮面に唇を落とした。
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