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狐に嫁入り~種付け陵辱♡山神の里~
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昔々、或る日のことだった。
日も暮れかけた山の中を、息せき切って若い男が駆けていた。
若者の名は平助、年は十七を迎えたばかり。成長期を迎えた体は縦にばかり伸びて、本来つくべき肉がこそげ落ちている。それもその筈で、平助は五つの頃より奉公人としてこき使われる毎日を送っていた。名主の家へ二束三文で売られてから、その薄い腹が満たされた例しはない。日がな一日家事労働や育児に目まぐるしく働き、それでも生きていけるだけましだと十二年間辛抱してきた。しかしもう後がない。平助は今日、初めて大旦那様に手をあげてしまったのだ。
平助は「御雌臥」だ。「おめが」は子を孕みやすい性質をもつ者を指す。男女ともに存在するが数は少なく、発見され次第殿様や名主様の下で働くことがしきたりとされている。腹に子袋を持つ男として産まれた平助もまた、百姓の家から庄屋様へと引き渡された一人であった。
十七になり発情期を迎えた平助は、いざ種を仕込まんとのし掛かる大旦那様の横っ面を蹴りつけると着の身着のまま逃げ出したのである。
(くそっくそっ!!急に優しくなったのぁ手籠めにするためか!!)
妾にされたおめがの行く末はむごたらしい。散々奥の座敷牢で種を受けては子を産み、空いた胎へと絶え間なく子種が仕込まれ続けると聞く。奉公人の中にはおめがの世話を任される者もいて、そういった身の上話はいやでも耳に入ってきた。まさか上背もあり男として育ちきった自分にその役目が回ってくるなどと、誰が予想したであろうか。
屋敷を転がり出ると裏通りをひた走り、山の麓へ向かってまた駆けた。
その内日も暮れ辺りは真っ暗闇だ。追っ手に捕まらないまま山へと逃げ込めたはいいが、うっかり野営でもしようものなら直ぐに山狩りに遭ってしまうだろう。
「ひぃっ、は、ひ……っ!!」
ざくざく木の葉を散らして駆ける。風を切る音がびょうびょうと耳を突いた。木の幹にぶつかりそうになりながらも斜面を駆け上っていくと、小さな灯りが目に飛び込んできた。
(ひ、人里だ……っ!)
平助は後ろを振り向いて辺りの様子を探る。提灯の灯りひとつ見えぬ暗闇だけが口を開けていた。追っ手は無さそうだ。小さな集落を目指して平助はふらと足を踏み出した。
:::
「それはそれは、遠いところをよくいらっしゃいました」
集落に辿り着くともう明け方に近かった。小さいながらに穏やかな人里では、既に鶏の世話をしている男がいる。夜盗に身ぐるみ剥がされたとでまかせを言えば、怪しむことも無く平助に飯と寝床を世話してくれた。
(いつ追っ手がここまでくるかわからねえ以上、気を抜くことはできねえな)
年若く栄養状態が悪いため、何処か野良犬のような外見の平助に対して集落の男は丁寧に対応してくれた。仕立てのよい着物を着ており、集落の生活が豊かであることが見て取れる。
「山二つ超えてこちらへ?そりゃあ大変な旅だ」
「……ああ、盗人に路銀も着物も全部剥ぎ取られちまった。ぬかったよ」
「しかし命があってよかったですね。暫くここでゆっくりしていけばよろしい」
「いいのかい?こりゃあ嬉しいね」
飯をかき込みながら思ってもない返事をする。奉公先から歩いて一日かからぬ場所だ。この飯を食ったらすぐに発つくらいで丁度良い。
……しかし平助も肉体の限界が来ていた。この里で休まぬことには先へ進めないだろう。鼻緒が切れて皮ごと擦りむけた足を隠し、家の主人へと顔を向ける。
「そういえばご主人。あんた以外の……」
「ああ、この家に住んでいるのは私だけですよ。ここは離れみたいなものでして、本邸は奥にあるのです」
「へえ?随分そりゃ……豪勢だな」
平屋建てのやたらめったら大きな家だった。中庭には小さな池に小魚が遊んでいるし、とても平民の住む住居には思えない。というかこの里にはこの家と同様に大きな屋敷がいくつも軒を連ねており、山奥にしてはあまりに不可解だった。
「それから」
男の顔が揺れる。不自然に霞む視界に、平助は目をしばたかせた。
「君が見つかって愉しくなりそうです……ありがとう」
どういう意味だろう。ぐらぐらと頭が傾いで、平助は指先が痺れていくのに気がついた。甘い匂いが鼻をつく。身構えるが、しかしもう遅い。
「あ゛、ひ」
「おやおや。随分とはやい」
全身が熱い。何か毒を盛られたのか、そう考える暇もなく平助の体はくたくたと崩れおちた。朱に染まる関節、荒い吐息、痙攣する下腹部。呆気なく意識を失う若者を、物腰柔らかな男はにこにこ眺めているだけだ。どぶに落ちるように視界は黒く塗り込められた。
湿気った土の匂いがする。
「ンぁんっ!!!や゛ぁああ!!!ああっ!ァアンッ!!」
「ふっ……!!ふぅう゛……っ!!!」
「ぅあぁっぁっぁあっはぅ、ぁんっ!!!!」
ごちゅごちゅずっちゅ、ずっちゅっ!
濡れた水音が耳を犯す。五月蠅いなあ、誰の声だろうか。平助は未だ起きることができない。ただわかるのは土の匂い、淫らな水音、下腹部から伝う幸福感。どうしてだか、ずっとこうしていたいような気分だった。覚醒しきらぬ頭に快楽信号が送られてくる。
指が地面を掻く。突然うっとりする熱さが腹を焦がした。心地良い。ずっとこうされていたい……。でもおれは。なにをされていたいんだ……?
何もわからないまま、青年は意識を温かな闇に浸していく。
平助が目を覚ますと庄屋様の座敷牢……、ではなく、変わらず集落の珍妙な屋敷にいた。どうやら遅れてきた発情期の反動で失神してしまったらしい。……やけに喉が渇いている。
介抱してくれた男に礼を言うと、「実のところ」と切り出された。
「君が寝ている間に、城下町から数人の使者が参りましてね」
「……ッ!!」
「落ち着いて。大丈夫、追い返しましたよ。……ここは御雌臥の隠れ里。君を差し出すような真似は誰もしない」
男が言うことには、この集落はおめがの駆け込み寺らしい。国の各地から不遇な身の上のおめが達が身を寄せ合って暮らしているという。
「じゃああんたも……?」
「ええ、その通りです。私もおめがだ。……他にも数名おりますが、全員家を建てて平穏に暮らしております。平助くん、私たちとここで共に暮らしませんか?」
かくして平助に家が与えられた。与作は優しく平助を介抱し、生活の何もかもを手ほどきしてくれる。不可解だが、雇い主に手荒く扱われて傷心の平助はついついその世話に甘えてしまう。
どういう訳か知らないが、丁度都に移り住んだ者の屋敷が空いていたという。管理はどうなっているのやら、不思議なことに家には豊かな畑や肥えた鶏、美しい中庭までついている。
「おはよう平助くん。ここの暮らしには慣れたかい?」
「……っああ。与作さん、その……俺はまだ……」
「いいんだよ、ここに定住するかはゆっくり決めなさい。
しかしね……これからすぐに雪が降る。山を越えて逃げるのならば、どちらにしろ春を待たなくてはね」
与作は相変わらずのんびりとした口調で鍬を担いで去って行く。平助はほっと一息つくと、雲一つ無い晴れ間を見上げた。
……ここはどういったところなのだろうか。少人数で成り立つ集落だという割には、生活への必死さを全く感じない。
年貢の取り立てが厳しいこの時勢では、近隣の者同士で水利権が争われ、また土地の所有権を巡る刃傷沙汰が絶えない。それがこの集落では、争いごとが無いどころか与作以外の村人が見あたらないのだ。高貴な身分の人間が持つ別邸だと考えても、あまりに人がいないのでその考えは成り立たなさそうだ。
(妙だが……春まで、ここで暮らすしかねえよな……。)
平助は内心不気味がりながらも、穏やかな暮らしに身を落ち着け始めた。
昼は畑で作物の手入れを行い、せめて家の掃除を行った。仕事を探せども、冬の蓄えは既に用意してあるらしく、体を休めろとまで言われてしまう。
「同じおめがなんだ。助け合っていかないとね」
与作は甲斐甲斐しく米や野菜を持ってきては、平助にあてがわれた家で煮炊きを教えてくれる。立派な厨は使われた跡が無く、いっそう謎は深まるばかりであったものの、当面の食料はそうしてまかなえることに安堵した。平助は屋敷で暮らす内に与作に懐き、兄のような存在に癒やしを見出し始めた。ここを出て行くときは、何か礼をしなければなるまい。
そのうち一人で生活できると見なしたのか、与作が平助の家へはやってくることは少なくなった。雪の季節が始まり、いっそう与作の足は遠のく。別の屋敷に籠もっているのか、姿を見つけることは難しい。ふらりと屋敷の中庭に現れては果物を差し入れていつの間にか居なくなっていることがあるくらいだ。
膝丈まで雪が積もった頃に、とうとう与作は現れなくなった。
「…………、……」
火鉢に身を寄せて、平助は息を詰める。
奉公人をしていた頃、自分に許された場所は大部屋の中でひしめき合うせんべい布団、その小さな四方の中だけだった。それがいきなり大名が住まうような邸宅に放り込まれて一人暮らしだなんて、心も体も追いついていかない。
毎日やることがない。あくせく働いて、それでも折檻を受けていた騒々しい日常がどうしてか懐かしい。本当のところ、自分は大旦那様を殴った罪で死んでいて、ここは仏の住まう天国なのではないかとさえ思えてくる。しかしそれにしては……、随分寂しい天国だ。
「……与作さん、たしか煮物を好きだと言ってたな」
恥ずかしい話どうしようもなく人恋しくて、教わった料理をだしに与作の屋敷へと赴いた。雪が深い。半纏を着込んで歩を進める。与作の家へ着く手前に、会ったことも無い村民の屋敷が目に入った。いつものように、誰も見当たらない。てっきり平助は、与作が己をからかって村人が多く居るなどと嘘をつくのだ、そうでなければどこか町のほうへ出稼ぎに行っているに違いないと思っていた。
そうした誰も住まぬはずの屋敷の前を通りがかったときだ。
「……ッ……!……、」
にわかに耳に届いたのは誰かの擦れた声だった。平助は呆気にとられて屋敷のほうに顔を向ける。……確かに聞こえた。
近寄って戸口に耳を押し当てれば、よりはっきりと男の呻き声が聞こえる。
(本当に住人がいたのか……!でもこの感じ……呻いてるっていうより……?)
出稼ぎから戻った者が体調でも崩して、助けを求めているのかもしれない。平助は急いで屋敷に上がりこみ、声のするほうへと向かっていった。
:::
「お゛ぅっ♡ぁお゛っ♡♡♡!!!!」
板張りの廊下を進んでいた足が凍り付いた。どこか耳慣れた水音と、発情しきっただみ声が屋敷に響いては消えていく。
それは見知らぬ翁の声だった。
「お許しくださいっ♡もう、もう儂も歳です、こんっ……!ォ、きゃっ♡♡!!ぉっ……♡ほ、ぉ……♡!!」
老人の哀願がふすま越しに聞こえてくる。ずりっ……♡ずちゅっ……♡というもったいぶったような音が交尾によるものだとわかったのは、行灯の明かりに照らされて老人と『それ』の影が障子へ映し出されたためだ。
ひゅっと息が詰まるのをどうにか誤魔化して、平助は気配を殺すしかなかった。
横たわる老人の影に重なるように、ずるりと巻き付いていたのは双頭の大蛇であった。
老人では無い声が文句を言う。
「歳は関係無い、おまえは夫を残して寝所から出た。ひどい妻だ」
「ぉ……っ♡……、……♡♡ゆる、ひ……♡」
「許さぬ。戻ろうぞ、寒くて叶わん……♡おまえの洞で温めておくれ♡」
「やぁ……♡お゛っ……♡!!ァア~っ……♡!!」
許しを乞う老人の裸体を巻き取るよう、大蛇は移動を開始する。時折なにか柔らかな肉が突き上げられる音と共にびく♡びくっ♡と老体が痙攣を繰り返した。平助は向かってくる異形から身を隠すため、廊下の曲がり角まで引き返して様子を伺った。
再び盗み見ると、蛇の太い腹が畳の大部屋から廊下を経て中庭へと続いている。立派な髭を蓄えた翁は喘ぎを漏らしながら、かりかりと中庭の地面を掻き……抵抗虚しく指先まで祠のなかへと引きずり込まれてしまった。やがて蛇の尾までずるずると全てが祠に入りきったとき、中から獣の発情したような吠え声が漏れ始めた。
『お゛っ♡お゛っ♡お゛ほォっ♡♡♡!!お許し下さい♡お慈悲を♡』
『よいではないか♡心地よかろう』
『っぐ、ひ、酷い♡あんまりに……っございます♡今年はともに、余暇を過ごされると……っ』
『それも叶える♡泣くな泣くな、ああ甘露だ……♡』
『あ゛♡ぅっ♡ァアッ♡』
もう孕めませぬ、もう達せませぬと泣く翁の喘ぎが聞こえてくる。よほど激しく交わっているのか、異形の魔羅が柔らかな肉をわり裂いて進む音さえ聞こえた。腰を抜かしてしまった平助が呼吸を引き攣らせながらも廊下を這いずって立ち去ろうとした時だ。
廊下に置いておいた煮物の器が、段差に引っかかって落下してしまう。
がしゃ、と陶器の割れる音が響いた時には既に遅く、交わりの音がびたりと止んだ。
「ぁ……っ、ひ……」
数秒の沈黙の後、祠の扉が再び開いた。雪あかりを受けて白銀色にぬらぬら光る大蛇が、ずるりと出でてこちらを睨んでいる。言葉はない。怒気が空気を震わして平助を揺さぶった。徐々に這い出て間合いを詰めてくる大蛇に声も出せず、ただ恐怖で涙が流れる。
はくはくと口を開閉させて震える青年に、低い低い神の怒りが向けられた。
「見たな」
「……ぁ、あ……!」
「覗き見た、覗き見たな。夫婦の契りを……。許さぬ。許しはせぬぞ」
「あぐ、……っく、ぅ……!」
平助はとうとう頭を両手で庇って泣き出してしまった。身の丈をゆうに超える大蛇に凄まれては、頭を垂れて許しを乞うしかない。空気を震わせるあまりの威圧感に押し潰されそうだ。ひっく、うぐと童のように泣く平助は、ふとさらけ出された項を何か温かなもので覆われた。
震えながら顔を上げれば、これまた大きな狐が広げた尾で平助を庇っている。
「……すまないなあ錦の。この子はただ隣人に料理を差し入れようとしただけなのだ」
「それで済むと思うているのか?神の家へずかずかと上がり込み、あまつさえ……」
「そう苛めないでくれ。知らなかったのだ。仕方無かろう?」
「貴殿が止めれば済んだ話であろうが!いつまでも妻を娶らず放蕩三昧、ようやく人間を連れてきたと思えばヒトに化けてまで何を遊んでいる!?」
大蛇と妖狐が頭上でやり合うのを鼻水垂らして眺めていた平助は、ふつと緊張の糸が切れてしまった。これは夢だ。悪い夢なんだ……。呼吸は浅くなり、青年の視界は墨を流したように暗転していく。掴んだ毛束の感触がふかふかとして、また涙が零れた。
:::
体の根がぐずついて安定しない。
この集落に来てからみるいつもの夢であることが、平助にはすぐ理解できた。
「ン……っ♡ふぁ、ぁう……っ♡♡♡」
下腹を甘い快楽が走る。じゅわりと広がる幸福感が腰骨から下を蕩かしていく。ぴくん♡ぴくん♡と下肢を震わせて、平助はようやくぼんやりした意識を浮上させた。
(……?)
熱く湿った布団の上で、腰だけ高く上げた姿勢のまま俯せに枕へ縋り付いている。尻には絶えず何かがぶつけられており、その都度甘い感覚が腰からつむじへと駆け抜けた。
「ァ……っ♡はぇ……っ?」
くちゅ♡くちゅ♡といつもより鮮明な音が耳を犯したとき、青年はことの異常さに気がついた。しかしもう、気づいたところで逆らいようがないほど若者の肢体は調教されきっている。間髪入れず、泥濘んだ菊座に極太の魔羅が叩き込まれた。
ばちゅんっ♡ぬろぉお……♡ずっちゅうっ♡!
「ぁおっ♡!!?ひぅう……っ♡♡ァ、ァアッ♡!!!!」
「ぁあ、ようやく起きた。」
健気に締まる若者の後孔を丁寧に躾ながら、優しい声音で男は話しかける。混乱して暴れようとする平助の腕を手綱のように後ろへ引けば、尻肉が抉れるほど深く杭打たれてしまう。……そのたった一突きで、平助の体は男の言いなりにされてしまった。
「ァアッ……、~~~~~ッッッ♡♡♡!!!?」
ばちゅんっ♡と奥深く、全ての泣き所を容赦無く刮ぎながら、肉棒は胎内を貪り尽くしていく。はっ♡はぁ…っ♡と感じ入った吐息を漏らす青年を犯しているのは、夢で大蛇から庇ってくれた妖狐であった。大の男を軽々組み伏せる巨大な狐は、複数ある尾を揺らしながら機嫌良く平助を陵辱している。平助の意思と反して、うねる雄膣は狐の魔羅へ吸い付いて恭順を示した。
鋭利な鉤爪が頭のすぐ横をざりざり引き裂いて爪痕を残す。畳が豆腐のように裂けるのを見て、若者は恐怖に震え上がった。あの爪でちょいとでも突かれたらどうなるかなんて、考えたくも無い。必死に手足をばたつかせるが、抱え直されて徒労に終わる。
「ものわかりがいいのは腹だけか?逃がすわけないだろう」
「ぁあああ゛~~~~っ!!!やぁ、だぇっ♡♡♡!!!やべでぇ!!!!」
「初めてのお産が冬じゃあつらいかと思ったが……っ!すっかり魔羅に懐いている。こうも種を乞われては、こちらも興が乗ってしまうよ」
「ぁ♡たね♡いらにゃっ♡♡♡ぐぞ、やめろ゛ァォオっ♡!!!!」
ビキビキと血管の脈さえ敏感な粘膜を伝ってくる。大ぶりの肉鎌が薄い腹を押し上げて、おめがの弱点を押し上げた。直腸の奥に疼く子宮口が、凶悪な亀頭で何度も繰り返し殴打を受けている。
ぐっちゅ、ずぢゅっ♡!!ゴツッ♡ゴリゴリッ♡♡♡!!!
「ひぎゅゥう~~~ッッッ!!!?あ゛♡!!ァアッ゛♡、♡……っ♡!!!」
鍛えようのない腹奥を、妖狐の魔羅が傍若無人に捏ねあげる。平助はせめて敷物をかき抱いて快楽の波に絶えようと試みたが、背中から覆い被さる獣に体重をかけてのしかかられ、深すぎる突きに息も出来ない。気を散らすことは許さないと言わんばかり、化け物はずっしりその巨躯を密着させて腰を振りだした。毛深く覆われた獣の筋肉が背筋を灼く。
「そらそら、これからが本番だぞ!!」
「ぁ♡ア゛っ♡ひぃ、は、はやっ……♡!!っ♡ァ~ッ!!……、ひん♡!ヒィ゛イ゛っ♡!!」
こりこりとしこった前立腺も、ほじられると弱い子宮口の肉輪も、全て挽き潰して地均しをされる。犬の交尾を彷彿とさせるふてぶてしい高速ピストンが、か弱く蕩ついた肉孔を襲った。畳にのたうって藻掻いていた平助も、腰をがっしりと掴まれて荒々しく掘り込まれてはたまらない。柔らかく雄を迎え入れるしかない肉壁はうねり、従順に吸い付いて侵入者の竿に奉仕してしまう。何度絶頂しても雄突きが止むことは無かった。びくびくと跳ねる背中さえ獣の巨躯で抑え込まれ、抵抗の意思ごと丁寧に潰される。
長い時間が経った。数刻、それとも半日ほど経ったのかもわからない。平助にとって無間に思えた快楽地獄は、いつの間にやら終わりを迎えていたらしい。ずる、と男のものが抜かれる甘痒い感覚に意識を呼び戻される。おめがとして未発達であった男のほとを執拗に耕され、長い舌で耳孔まで犯されぬいた平助。その表情は汗や涎にまみれ、蕩けた淫欲に曇っていた。呼吸は浅く、魔羅の味を教え込まれた全身は桜色に火照ったままだ。腰から爪先まで痙攣が止まないことにすら本人は気づくことができない。
「……っ……へ、ぁ♡……?……ふぇ……っっ♡……ア、ぅ……っ♡」
「いいこだ。床の準備を整えられたね……♡」
ほこほこ湯気を立てるほど熟れた雄膣の入り口を、鰓の張った亀頭が幾度も掠める。未だ精を放たぬ妖狐の巨根は、我慢ならぬと言わんばかりにくぱくぱ開閉を繰り返す蜜孔へと押し入ろうとしていた。
「……、息を吸って。そう、いいこだ……吐いて……呼吸をしなさい。お前は可愛いなあ平助。与作、与作と簡単に懐いて……ここがどういうところか、とっくり教えてやらねば」
「……ァ、ぁー……っ♡♡♡」
妖狐の声が聞き慣れた与作の声と被る。たすけて与作さん、たすけてくれ、……そう言いたくても舌の根が痺れて動かない。甘ったるい喘ぎだけが絶え絶えに零れ出た。
「ひぅ……っ♡」
長時間の責めに絶えられず崩れ落ちる平助の裸体。骨張った青年の腰を妖狐が捕まえて、尻を高く上げた姿勢に直す。後孔は待ちきれないと言わんばかりに開閉を繰り返し、ぬちぬちと勿体つけて突きつけられる槍の穂先に吸い付いていた。
「よさくさ……、やぁだ、ぁンっ♡たすけっ……」
「うん、うん。今助けてやるからなあ」
「ぁあっ……♡ぁああ゛……!!」
ぬ゛ぷっ♡ずっ……ぷ♡♡♡
我が物顔で平助の蜜孔を犯した狐魔羅は、そのままじっくりと焦らすように腰を進めた。亀頭、鰓、竿ときて一旦止まり、ちゅうちゅうと吸い付く心地の良い奉仕を堪能する。既に声も出せぬほど肉棒に懐いている平助の背に覆い被さり、人間の華奢な肩をしっかりと捕らえた。
ゆす、ゆすと優しく体ごと揺すぶってやれば、子宮口の盛り上がりにぶち当たる。柔らかな急所を軽めに捏ねる度、じゅわりと愛液が分泌されるのがわかって、妖狐の口角が上がった。震えて畳に這う若者の肩をしっかり縫い止めて、そのまま狐はさざめく雄膣を揺すぶり続ける。四半刻もその動作を続けてやれば、獲物が仕上がって痙攣し始めた。
「あ~~~♡!ぁアっ♡!!…………ぃやぁ、こわい、こ、んなっ!!ァ~~~ッ……♡♡♡!!」
今や平助は全身汗みずくで絶頂の波から逃れられなくなっていた。視界は真白く濁り、星がちかちか光っては全て快楽に灼かれてしまう。尻肉は勿論、酷く痙攣するのは泥濘んだほとである。気持ちいいのに満たされない。もっと欲しいと叫び出したいが、その先なんて平助はわからない。
ふと畳をかいていた右手をとられた。毛深い獣の前足に導かれるように後ろへと回せば、その指先は何か熱い肉の球に当たる。童の拳ほどの大きさの球が、蒸れた汗を溜まった欲ごと放熱させていた。それが怒張の延長線にあるものだと知ると、身を捩って仔犬のように鼻が啼く。怖いのも気持ちいいのももどかしいのも、全て狂って溶けてしまった。……限界を超えて淫気をあてられ、何も考えることができない。
反射的に項を庇った手を丁寧に、しかし有無を言わさず除けられてしまう。
……耳元に狐の濡れた鼻先が近づいて、低く囁いた。
「今から腹に入るものだ」
「……ぅっ♡……ひぁっ……♡」
「舌を噛まないように。さあ、着物を噛んで……」
導かれるまま脱ぎ散らされていた布地を噛みしめた。いいこだと与作の優しい声が降ってきて、知らず涙が出る。分厚く水分を含んだ舌が、じゅっぱじゅっぱ音を立てて耳を犯した。耳朶を真っ赤に染めて感じ入る平助の肩が、一層力強く畳に押しつけられる。
次の瞬間、熱の塊がひくつく後孔を押し通り……、平助は背筋を撓ませ、獣の咆吼をあげた。
ずっっちゅぅうううう♡♡♡!!!!!
「ヒぎぃいいッッッ♡♡♡!!!?」
「……ッ……ゥウッ……!!グルルルルッ……!!」
呼吸ができない。衝撃は二度、同時に襲いかかってきた。後孔を亀頭球まで犯されるのと同時、さらけ出された無防備な項へ牙が深々と食い込まされたのだ。奥歯ががちがち音を立て、皮膚が剥がされるような痛みの後に途方も無い悦楽がやってくる。
平助はここに来て、化け物の番いにされてしまったことを無意識に悟った。強ばった筋肉が徐々に緩み、ぶるぶる震えて弛緩する。
怯える平助に対して、妖狐は満足そうに平助の項を舐め上げ、角度を変えて項を甘噛みし続けていた。その度びくつく肢体をふわふわとした尾で擦り、つらそうな体勢を宥めすかす。組み敷いた青年の体を持ち上げ、杭打ったまま向かい合う姿勢に直してやると、それだけで平助は魔羅から精を吐いた。
くつくつ笑いを堪え、再び仰向けに横たえた番いへ覆い被さる。肉杭の馴染むのを辛抱強く待ち続ければ、幼い妻は痩せた体を震わせて喘ぎだした。薄い腹には銜え込んだ巨根が形を浮き上がらせ、脈打つ血管すらも窺えそうである。視点は定まらず、舌は開いた口からはみ出している。喉元へかじりついてやれば、うっとりと蕩けた表情で啼いた。狐の愉悦もいよいよ深くなる。
「いいこ、いいこだなあ……♡お前は壊れないでくれよ平助♡神の庭で迎えるせっかくの繁殖節だ。沢山種をうえてやる……嬉しいなあ、可愛いじゃないか……♡」
「……っ……」
長い両脚を抱え上げられた若者の口元が動いた。よさくさん、たすけて、そう言っているのだとわかった時の昂揚をどう言い表せばいいだろう。獣は口角を吊り上げて現実を突きつけた。興奮に合わせて九つの尾がぶわりとひらく。
「与作なんかいやしない……!あれは私だ!」
「……ッ~~~、ひがう、違うぅっ!!!ゃあッ♡!!!やだはなせ、ン♡ひっ♡動かひちゃっ……♡!!!あんたじゃない!!与作さ、与作さァんッ♡!!!」
「極上の贄だ……っ!!気持ちいいだろう?寝入ったところを毎晩仕込んできたかいがある♡」
「はゥ♡♡♡ぎゅ、えひっ♡♡♡!!?……っ負けちゃ、やだ、負けちまうっ♡負けちまうよぉっ♡♡♡!!ゆるひて、助けてぇえッ……♡♡♡!!」
半狂乱になって暴れる平助だったが、もう何もかもが手遅れであった。全身どこを触られても痛いほどに気持ちが良く、子宮口をぶち抜いて肉の輪を弄ぶ鰓はどうあっても止められない。加えて巨大過ぎる亀頭球が魔羅をがっちりと固定しており、むしろ抵抗すればするほど肉棒の感触が子細に伝わってしまう。長い足を抱え上げられ、上からのし掛かられてしまえば後孔は素直にほどけ、主人たる狐魔羅にむしゃぶりついた。雄膣に甘やかされて恐ろしいほど肥大した魔羅が暴れ回る。いい加減精をぶち撒けたいのだろう、隆起した血管の筋がちくちくと媚肉を穿ってきた。
「え、えぎゅ、ィイッ♡!!?」
ぐぼっ♡じゅぽんッ♡♡♡
雄子宮の入り口である敏感な肉の輪をかり首が悪戯に往復する。それを繰り返すうちに、すわりの良い位置へと妖狐の亀頭がはまり込んだ。子宮頸部を鰓でしっかりと押さえ込み、血管の脈拍を刻み込む。
ふいに雄の動きが苛烈さを増した。平助の媚肉を仕留めるかのような激しさで、執拗に抉りこんでくる。時折ふてぶてしい幹が脈動し、放埒の前兆を見せた。
猛烈に嫌な予感がして、平助は最後の抵抗を始める。
「や、やだ……っ冗談じゃにぇ……っ!!ひ、出すなッ!!やめろぉおッ!!!」
「ぐ、ゥウっ……♡ガゥルル……ッ!!」
「ひぁ、ぁーっ……♡!!だめ、らぇっ!!ぁ、……ぁがっ……!!」
ぎちぎちに雄膣を押し広げていた魔羅がついに決壊した。おめがを確実に孕ませる粘性を保った子種の奔流が、どびゅう、どびゅぅ♡と子宮奥を穿つ。妖
狐は獲物の様子を愉しむように、二度、三度と種汁をか弱い子宮へ送り込む。耳まで裂けた獣の口が、にやにや弧を描いた。心地良い。甘ったれて懐く膣襞も、蕩けながらも睨みをきかせる生意気な表情も。
しかし弱々しい抵抗は長くは続かなかった。
種を受ける生け贄の顔が、突然びくりと震えて虚空を仰ぐ。
か弱い抵抗を示していた平助の腕が、だらんと地に垂れてしまう。精を受けたことを、本能的に悟ったためだった。
「……ッ、ぁ。ア……っ♡♡♡♡」
射精と同時に突き込みは収まっていた。ぐりぐり上から固定されての種付け交尾。子宮内部にまで押し入られて、どこにも逃げ場が無い卵子が精子に取り囲まれる。子種の奔流に輪姦された卵は呆気なく男の印を刻み込まれて、尚も噴き出す精に犯され続けていた。
受精の衝撃に青年が瞳を揺れ、濁る。平助にとって初めての交尾であり、有無を言わさぬ妊娠の瞬間だ。頭は糖蜜を絡めたように気持ちいいことしか感知しない。溜め込んだ妖魔の精を乱暴にぶちまけられる快楽に芯から酔い、絶頂の波が重ねて薄い肉体を襲っていた。
どくどくっ♡!!!どびゅうっ♡!!!びるびる……っ♡じゅう♡どくっ……♡
「…………っ♡…………、ぁ……♡♡♡……は、……♡……♡♡♡!!!」
ねっとりと濃厚な狐の精子は、あっという間に子宮内を蹂躙し尽くして雄膣へと氾濫する。あふれ出た温かな精液をぐちぐちと擦り込み、ゆっくりと妖狐は膣内射精を楽しんだ。
平助は意識が朦朧としながらも、肉杭を締め付ける動きを止められなかった。幸福な毒が全身を浸している。白痴じみた表情で遠くを見ようとしたが、視界いっぱいに入ってくるのは邪悪に笑んだ獣の顔だ。恐ろしいのに、侵入してくる長い舌を迎え入れて深い口吸いに応えてしまう。完遂された種付けを以て、おめがの肉体は夫を定めてしまったらしい。
「……ろうひぇ…、♡ろうひて……♡?ぁ……んちゅ……っ♡♡♡」
「これが子孕みの儀だ……。神の種は人より早く育つ。冬中延々仕込んでやるからね……♡……種の受け方を、しっかりと覚えておくことだ」
巨大な狐はそう言うと、腰を震わせて熱く滾る精を注ぐことに集中しだした。優しく揺れる深い交接に、前後不覚の平助が小さく喘ぐ。
若者の足首に括り付けられた標縄が畳を擦る。あえやかな嬌声。食い込んでは吸い上げる淫らな水音。神々の別荘で睦み合う子孕みの儀は、深い雪に囲われ、下界との入り口を静かに閉じていった。
『その土地は子孕みの里と呼ばれる。
冬になると山神たちが集い、それぞれの伴侶を連れて別荘に籠もる。迷い込んだ人間は立ち並ぶ立派な屋敷に驚くものの、その中で睦み合う夫婦を認めることはできない。
希に、番いのいない神に見初められた者だけが……』
数ヶ月して、平助を探す山狩りは打ち切られた。山は荒ぶって捜索に出た男達を飲み込み、一度入れば二度と抜けられない難所と恐れられた。
その後気の優しい青年を見つける者は、誰も居なかったという。
日も暮れかけた山の中を、息せき切って若い男が駆けていた。
若者の名は平助、年は十七を迎えたばかり。成長期を迎えた体は縦にばかり伸びて、本来つくべき肉がこそげ落ちている。それもその筈で、平助は五つの頃より奉公人としてこき使われる毎日を送っていた。名主の家へ二束三文で売られてから、その薄い腹が満たされた例しはない。日がな一日家事労働や育児に目まぐるしく働き、それでも生きていけるだけましだと十二年間辛抱してきた。しかしもう後がない。平助は今日、初めて大旦那様に手をあげてしまったのだ。
平助は「御雌臥」だ。「おめが」は子を孕みやすい性質をもつ者を指す。男女ともに存在するが数は少なく、発見され次第殿様や名主様の下で働くことがしきたりとされている。腹に子袋を持つ男として産まれた平助もまた、百姓の家から庄屋様へと引き渡された一人であった。
十七になり発情期を迎えた平助は、いざ種を仕込まんとのし掛かる大旦那様の横っ面を蹴りつけると着の身着のまま逃げ出したのである。
(くそっくそっ!!急に優しくなったのぁ手籠めにするためか!!)
妾にされたおめがの行く末はむごたらしい。散々奥の座敷牢で種を受けては子を産み、空いた胎へと絶え間なく子種が仕込まれ続けると聞く。奉公人の中にはおめがの世話を任される者もいて、そういった身の上話はいやでも耳に入ってきた。まさか上背もあり男として育ちきった自分にその役目が回ってくるなどと、誰が予想したであろうか。
屋敷を転がり出ると裏通りをひた走り、山の麓へ向かってまた駆けた。
その内日も暮れ辺りは真っ暗闇だ。追っ手に捕まらないまま山へと逃げ込めたはいいが、うっかり野営でもしようものなら直ぐに山狩りに遭ってしまうだろう。
「ひぃっ、は、ひ……っ!!」
ざくざく木の葉を散らして駆ける。風を切る音がびょうびょうと耳を突いた。木の幹にぶつかりそうになりながらも斜面を駆け上っていくと、小さな灯りが目に飛び込んできた。
(ひ、人里だ……っ!)
平助は後ろを振り向いて辺りの様子を探る。提灯の灯りひとつ見えぬ暗闇だけが口を開けていた。追っ手は無さそうだ。小さな集落を目指して平助はふらと足を踏み出した。
:::
「それはそれは、遠いところをよくいらっしゃいました」
集落に辿り着くともう明け方に近かった。小さいながらに穏やかな人里では、既に鶏の世話をしている男がいる。夜盗に身ぐるみ剥がされたとでまかせを言えば、怪しむことも無く平助に飯と寝床を世話してくれた。
(いつ追っ手がここまでくるかわからねえ以上、気を抜くことはできねえな)
年若く栄養状態が悪いため、何処か野良犬のような外見の平助に対して集落の男は丁寧に対応してくれた。仕立てのよい着物を着ており、集落の生活が豊かであることが見て取れる。
「山二つ超えてこちらへ?そりゃあ大変な旅だ」
「……ああ、盗人に路銀も着物も全部剥ぎ取られちまった。ぬかったよ」
「しかし命があってよかったですね。暫くここでゆっくりしていけばよろしい」
「いいのかい?こりゃあ嬉しいね」
飯をかき込みながら思ってもない返事をする。奉公先から歩いて一日かからぬ場所だ。この飯を食ったらすぐに発つくらいで丁度良い。
……しかし平助も肉体の限界が来ていた。この里で休まぬことには先へ進めないだろう。鼻緒が切れて皮ごと擦りむけた足を隠し、家の主人へと顔を向ける。
「そういえばご主人。あんた以外の……」
「ああ、この家に住んでいるのは私だけですよ。ここは離れみたいなものでして、本邸は奥にあるのです」
「へえ?随分そりゃ……豪勢だな」
平屋建てのやたらめったら大きな家だった。中庭には小さな池に小魚が遊んでいるし、とても平民の住む住居には思えない。というかこの里にはこの家と同様に大きな屋敷がいくつも軒を連ねており、山奥にしてはあまりに不可解だった。
「それから」
男の顔が揺れる。不自然に霞む視界に、平助は目をしばたかせた。
「君が見つかって愉しくなりそうです……ありがとう」
どういう意味だろう。ぐらぐらと頭が傾いで、平助は指先が痺れていくのに気がついた。甘い匂いが鼻をつく。身構えるが、しかしもう遅い。
「あ゛、ひ」
「おやおや。随分とはやい」
全身が熱い。何か毒を盛られたのか、そう考える暇もなく平助の体はくたくたと崩れおちた。朱に染まる関節、荒い吐息、痙攣する下腹部。呆気なく意識を失う若者を、物腰柔らかな男はにこにこ眺めているだけだ。どぶに落ちるように視界は黒く塗り込められた。
湿気った土の匂いがする。
「ンぁんっ!!!や゛ぁああ!!!ああっ!ァアンッ!!」
「ふっ……!!ふぅう゛……っ!!!」
「ぅあぁっぁっぁあっはぅ、ぁんっ!!!!」
ごちゅごちゅずっちゅ、ずっちゅっ!
濡れた水音が耳を犯す。五月蠅いなあ、誰の声だろうか。平助は未だ起きることができない。ただわかるのは土の匂い、淫らな水音、下腹部から伝う幸福感。どうしてだか、ずっとこうしていたいような気分だった。覚醒しきらぬ頭に快楽信号が送られてくる。
指が地面を掻く。突然うっとりする熱さが腹を焦がした。心地良い。ずっとこうされていたい……。でもおれは。なにをされていたいんだ……?
何もわからないまま、青年は意識を温かな闇に浸していく。
平助が目を覚ますと庄屋様の座敷牢……、ではなく、変わらず集落の珍妙な屋敷にいた。どうやら遅れてきた発情期の反動で失神してしまったらしい。……やけに喉が渇いている。
介抱してくれた男に礼を言うと、「実のところ」と切り出された。
「君が寝ている間に、城下町から数人の使者が参りましてね」
「……ッ!!」
「落ち着いて。大丈夫、追い返しましたよ。……ここは御雌臥の隠れ里。君を差し出すような真似は誰もしない」
男が言うことには、この集落はおめがの駆け込み寺らしい。国の各地から不遇な身の上のおめが達が身を寄せ合って暮らしているという。
「じゃああんたも……?」
「ええ、その通りです。私もおめがだ。……他にも数名おりますが、全員家を建てて平穏に暮らしております。平助くん、私たちとここで共に暮らしませんか?」
かくして平助に家が与えられた。与作は優しく平助を介抱し、生活の何もかもを手ほどきしてくれる。不可解だが、雇い主に手荒く扱われて傷心の平助はついついその世話に甘えてしまう。
どういう訳か知らないが、丁度都に移り住んだ者の屋敷が空いていたという。管理はどうなっているのやら、不思議なことに家には豊かな畑や肥えた鶏、美しい中庭までついている。
「おはよう平助くん。ここの暮らしには慣れたかい?」
「……っああ。与作さん、その……俺はまだ……」
「いいんだよ、ここに定住するかはゆっくり決めなさい。
しかしね……これからすぐに雪が降る。山を越えて逃げるのならば、どちらにしろ春を待たなくてはね」
与作は相変わらずのんびりとした口調で鍬を担いで去って行く。平助はほっと一息つくと、雲一つ無い晴れ間を見上げた。
……ここはどういったところなのだろうか。少人数で成り立つ集落だという割には、生活への必死さを全く感じない。
年貢の取り立てが厳しいこの時勢では、近隣の者同士で水利権が争われ、また土地の所有権を巡る刃傷沙汰が絶えない。それがこの集落では、争いごとが無いどころか与作以外の村人が見あたらないのだ。高貴な身分の人間が持つ別邸だと考えても、あまりに人がいないのでその考えは成り立たなさそうだ。
(妙だが……春まで、ここで暮らすしかねえよな……。)
平助は内心不気味がりながらも、穏やかな暮らしに身を落ち着け始めた。
昼は畑で作物の手入れを行い、せめて家の掃除を行った。仕事を探せども、冬の蓄えは既に用意してあるらしく、体を休めろとまで言われてしまう。
「同じおめがなんだ。助け合っていかないとね」
与作は甲斐甲斐しく米や野菜を持ってきては、平助にあてがわれた家で煮炊きを教えてくれる。立派な厨は使われた跡が無く、いっそう謎は深まるばかりであったものの、当面の食料はそうしてまかなえることに安堵した。平助は屋敷で暮らす内に与作に懐き、兄のような存在に癒やしを見出し始めた。ここを出て行くときは、何か礼をしなければなるまい。
そのうち一人で生活できると見なしたのか、与作が平助の家へはやってくることは少なくなった。雪の季節が始まり、いっそう与作の足は遠のく。別の屋敷に籠もっているのか、姿を見つけることは難しい。ふらりと屋敷の中庭に現れては果物を差し入れていつの間にか居なくなっていることがあるくらいだ。
膝丈まで雪が積もった頃に、とうとう与作は現れなくなった。
「…………、……」
火鉢に身を寄せて、平助は息を詰める。
奉公人をしていた頃、自分に許された場所は大部屋の中でひしめき合うせんべい布団、その小さな四方の中だけだった。それがいきなり大名が住まうような邸宅に放り込まれて一人暮らしだなんて、心も体も追いついていかない。
毎日やることがない。あくせく働いて、それでも折檻を受けていた騒々しい日常がどうしてか懐かしい。本当のところ、自分は大旦那様を殴った罪で死んでいて、ここは仏の住まう天国なのではないかとさえ思えてくる。しかしそれにしては……、随分寂しい天国だ。
「……与作さん、たしか煮物を好きだと言ってたな」
恥ずかしい話どうしようもなく人恋しくて、教わった料理をだしに与作の屋敷へと赴いた。雪が深い。半纏を着込んで歩を進める。与作の家へ着く手前に、会ったことも無い村民の屋敷が目に入った。いつものように、誰も見当たらない。てっきり平助は、与作が己をからかって村人が多く居るなどと嘘をつくのだ、そうでなければどこか町のほうへ出稼ぎに行っているに違いないと思っていた。
そうした誰も住まぬはずの屋敷の前を通りがかったときだ。
「……ッ……!……、」
にわかに耳に届いたのは誰かの擦れた声だった。平助は呆気にとられて屋敷のほうに顔を向ける。……確かに聞こえた。
近寄って戸口に耳を押し当てれば、よりはっきりと男の呻き声が聞こえる。
(本当に住人がいたのか……!でもこの感じ……呻いてるっていうより……?)
出稼ぎから戻った者が体調でも崩して、助けを求めているのかもしれない。平助は急いで屋敷に上がりこみ、声のするほうへと向かっていった。
:::
「お゛ぅっ♡ぁお゛っ♡♡♡!!!!」
板張りの廊下を進んでいた足が凍り付いた。どこか耳慣れた水音と、発情しきっただみ声が屋敷に響いては消えていく。
それは見知らぬ翁の声だった。
「お許しくださいっ♡もう、もう儂も歳です、こんっ……!ォ、きゃっ♡♡!!ぉっ……♡ほ、ぉ……♡!!」
老人の哀願がふすま越しに聞こえてくる。ずりっ……♡ずちゅっ……♡というもったいぶったような音が交尾によるものだとわかったのは、行灯の明かりに照らされて老人と『それ』の影が障子へ映し出されたためだ。
ひゅっと息が詰まるのをどうにか誤魔化して、平助は気配を殺すしかなかった。
横たわる老人の影に重なるように、ずるりと巻き付いていたのは双頭の大蛇であった。
老人では無い声が文句を言う。
「歳は関係無い、おまえは夫を残して寝所から出た。ひどい妻だ」
「ぉ……っ♡……、……♡♡ゆる、ひ……♡」
「許さぬ。戻ろうぞ、寒くて叶わん……♡おまえの洞で温めておくれ♡」
「やぁ……♡お゛っ……♡!!ァア~っ……♡!!」
許しを乞う老人の裸体を巻き取るよう、大蛇は移動を開始する。時折なにか柔らかな肉が突き上げられる音と共にびく♡びくっ♡と老体が痙攣を繰り返した。平助は向かってくる異形から身を隠すため、廊下の曲がり角まで引き返して様子を伺った。
再び盗み見ると、蛇の太い腹が畳の大部屋から廊下を経て中庭へと続いている。立派な髭を蓄えた翁は喘ぎを漏らしながら、かりかりと中庭の地面を掻き……抵抗虚しく指先まで祠のなかへと引きずり込まれてしまった。やがて蛇の尾までずるずると全てが祠に入りきったとき、中から獣の発情したような吠え声が漏れ始めた。
『お゛っ♡お゛っ♡お゛ほォっ♡♡♡!!お許し下さい♡お慈悲を♡』
『よいではないか♡心地よかろう』
『っぐ、ひ、酷い♡あんまりに……っございます♡今年はともに、余暇を過ごされると……っ』
『それも叶える♡泣くな泣くな、ああ甘露だ……♡』
『あ゛♡ぅっ♡ァアッ♡』
もう孕めませぬ、もう達せませぬと泣く翁の喘ぎが聞こえてくる。よほど激しく交わっているのか、異形の魔羅が柔らかな肉をわり裂いて進む音さえ聞こえた。腰を抜かしてしまった平助が呼吸を引き攣らせながらも廊下を這いずって立ち去ろうとした時だ。
廊下に置いておいた煮物の器が、段差に引っかかって落下してしまう。
がしゃ、と陶器の割れる音が響いた時には既に遅く、交わりの音がびたりと止んだ。
「ぁ……っ、ひ……」
数秒の沈黙の後、祠の扉が再び開いた。雪あかりを受けて白銀色にぬらぬら光る大蛇が、ずるりと出でてこちらを睨んでいる。言葉はない。怒気が空気を震わして平助を揺さぶった。徐々に這い出て間合いを詰めてくる大蛇に声も出せず、ただ恐怖で涙が流れる。
はくはくと口を開閉させて震える青年に、低い低い神の怒りが向けられた。
「見たな」
「……ぁ、あ……!」
「覗き見た、覗き見たな。夫婦の契りを……。許さぬ。許しはせぬぞ」
「あぐ、……っく、ぅ……!」
平助はとうとう頭を両手で庇って泣き出してしまった。身の丈をゆうに超える大蛇に凄まれては、頭を垂れて許しを乞うしかない。空気を震わせるあまりの威圧感に押し潰されそうだ。ひっく、うぐと童のように泣く平助は、ふとさらけ出された項を何か温かなもので覆われた。
震えながら顔を上げれば、これまた大きな狐が広げた尾で平助を庇っている。
「……すまないなあ錦の。この子はただ隣人に料理を差し入れようとしただけなのだ」
「それで済むと思うているのか?神の家へずかずかと上がり込み、あまつさえ……」
「そう苛めないでくれ。知らなかったのだ。仕方無かろう?」
「貴殿が止めれば済んだ話であろうが!いつまでも妻を娶らず放蕩三昧、ようやく人間を連れてきたと思えばヒトに化けてまで何を遊んでいる!?」
大蛇と妖狐が頭上でやり合うのを鼻水垂らして眺めていた平助は、ふつと緊張の糸が切れてしまった。これは夢だ。悪い夢なんだ……。呼吸は浅くなり、青年の視界は墨を流したように暗転していく。掴んだ毛束の感触がふかふかとして、また涙が零れた。
:::
体の根がぐずついて安定しない。
この集落に来てからみるいつもの夢であることが、平助にはすぐ理解できた。
「ン……っ♡ふぁ、ぁう……っ♡♡♡」
下腹を甘い快楽が走る。じゅわりと広がる幸福感が腰骨から下を蕩かしていく。ぴくん♡ぴくん♡と下肢を震わせて、平助はようやくぼんやりした意識を浮上させた。
(……?)
熱く湿った布団の上で、腰だけ高く上げた姿勢のまま俯せに枕へ縋り付いている。尻には絶えず何かがぶつけられており、その都度甘い感覚が腰からつむじへと駆け抜けた。
「ァ……っ♡はぇ……っ?」
くちゅ♡くちゅ♡といつもより鮮明な音が耳を犯したとき、青年はことの異常さに気がついた。しかしもう、気づいたところで逆らいようがないほど若者の肢体は調教されきっている。間髪入れず、泥濘んだ菊座に極太の魔羅が叩き込まれた。
ばちゅんっ♡ぬろぉお……♡ずっちゅうっ♡!
「ぁおっ♡!!?ひぅう……っ♡♡ァ、ァアッ♡!!!!」
「ぁあ、ようやく起きた。」
健気に締まる若者の後孔を丁寧に躾ながら、優しい声音で男は話しかける。混乱して暴れようとする平助の腕を手綱のように後ろへ引けば、尻肉が抉れるほど深く杭打たれてしまう。……そのたった一突きで、平助の体は男の言いなりにされてしまった。
「ァアッ……、~~~~~ッッッ♡♡♡!!!?」
ばちゅんっ♡と奥深く、全ての泣き所を容赦無く刮ぎながら、肉棒は胎内を貪り尽くしていく。はっ♡はぁ…っ♡と感じ入った吐息を漏らす青年を犯しているのは、夢で大蛇から庇ってくれた妖狐であった。大の男を軽々組み伏せる巨大な狐は、複数ある尾を揺らしながら機嫌良く平助を陵辱している。平助の意思と反して、うねる雄膣は狐の魔羅へ吸い付いて恭順を示した。
鋭利な鉤爪が頭のすぐ横をざりざり引き裂いて爪痕を残す。畳が豆腐のように裂けるのを見て、若者は恐怖に震え上がった。あの爪でちょいとでも突かれたらどうなるかなんて、考えたくも無い。必死に手足をばたつかせるが、抱え直されて徒労に終わる。
「ものわかりがいいのは腹だけか?逃がすわけないだろう」
「ぁあああ゛~~~~っ!!!やぁ、だぇっ♡♡♡!!!やべでぇ!!!!」
「初めてのお産が冬じゃあつらいかと思ったが……っ!すっかり魔羅に懐いている。こうも種を乞われては、こちらも興が乗ってしまうよ」
「ぁ♡たね♡いらにゃっ♡♡♡ぐぞ、やめろ゛ァォオっ♡!!!!」
ビキビキと血管の脈さえ敏感な粘膜を伝ってくる。大ぶりの肉鎌が薄い腹を押し上げて、おめがの弱点を押し上げた。直腸の奥に疼く子宮口が、凶悪な亀頭で何度も繰り返し殴打を受けている。
ぐっちゅ、ずぢゅっ♡!!ゴツッ♡ゴリゴリッ♡♡♡!!!
「ひぎゅゥう~~~ッッッ!!!?あ゛♡!!ァアッ゛♡、♡……っ♡!!!」
鍛えようのない腹奥を、妖狐の魔羅が傍若無人に捏ねあげる。平助はせめて敷物をかき抱いて快楽の波に絶えようと試みたが、背中から覆い被さる獣に体重をかけてのしかかられ、深すぎる突きに息も出来ない。気を散らすことは許さないと言わんばかり、化け物はずっしりその巨躯を密着させて腰を振りだした。毛深く覆われた獣の筋肉が背筋を灼く。
「そらそら、これからが本番だぞ!!」
「ぁ♡ア゛っ♡ひぃ、は、はやっ……♡!!っ♡ァ~ッ!!……、ひん♡!ヒィ゛イ゛っ♡!!」
こりこりとしこった前立腺も、ほじられると弱い子宮口の肉輪も、全て挽き潰して地均しをされる。犬の交尾を彷彿とさせるふてぶてしい高速ピストンが、か弱く蕩ついた肉孔を襲った。畳にのたうって藻掻いていた平助も、腰をがっしりと掴まれて荒々しく掘り込まれてはたまらない。柔らかく雄を迎え入れるしかない肉壁はうねり、従順に吸い付いて侵入者の竿に奉仕してしまう。何度絶頂しても雄突きが止むことは無かった。びくびくと跳ねる背中さえ獣の巨躯で抑え込まれ、抵抗の意思ごと丁寧に潰される。
長い時間が経った。数刻、それとも半日ほど経ったのかもわからない。平助にとって無間に思えた快楽地獄は、いつの間にやら終わりを迎えていたらしい。ずる、と男のものが抜かれる甘痒い感覚に意識を呼び戻される。おめがとして未発達であった男のほとを執拗に耕され、長い舌で耳孔まで犯されぬいた平助。その表情は汗や涎にまみれ、蕩けた淫欲に曇っていた。呼吸は浅く、魔羅の味を教え込まれた全身は桜色に火照ったままだ。腰から爪先まで痙攣が止まないことにすら本人は気づくことができない。
「……っ……へ、ぁ♡……?……ふぇ……っっ♡……ア、ぅ……っ♡」
「いいこだ。床の準備を整えられたね……♡」
ほこほこ湯気を立てるほど熟れた雄膣の入り口を、鰓の張った亀頭が幾度も掠める。未だ精を放たぬ妖狐の巨根は、我慢ならぬと言わんばかりにくぱくぱ開閉を繰り返す蜜孔へと押し入ろうとしていた。
「……、息を吸って。そう、いいこだ……吐いて……呼吸をしなさい。お前は可愛いなあ平助。与作、与作と簡単に懐いて……ここがどういうところか、とっくり教えてやらねば」
「……ァ、ぁー……っ♡♡♡」
妖狐の声が聞き慣れた与作の声と被る。たすけて与作さん、たすけてくれ、……そう言いたくても舌の根が痺れて動かない。甘ったるい喘ぎだけが絶え絶えに零れ出た。
「ひぅ……っ♡」
長時間の責めに絶えられず崩れ落ちる平助の裸体。骨張った青年の腰を妖狐が捕まえて、尻を高く上げた姿勢に直す。後孔は待ちきれないと言わんばかりに開閉を繰り返し、ぬちぬちと勿体つけて突きつけられる槍の穂先に吸い付いていた。
「よさくさ……、やぁだ、ぁンっ♡たすけっ……」
「うん、うん。今助けてやるからなあ」
「ぁあっ……♡ぁああ゛……!!」
ぬ゛ぷっ♡ずっ……ぷ♡♡♡
我が物顔で平助の蜜孔を犯した狐魔羅は、そのままじっくりと焦らすように腰を進めた。亀頭、鰓、竿ときて一旦止まり、ちゅうちゅうと吸い付く心地の良い奉仕を堪能する。既に声も出せぬほど肉棒に懐いている平助の背に覆い被さり、人間の華奢な肩をしっかりと捕らえた。
ゆす、ゆすと優しく体ごと揺すぶってやれば、子宮口の盛り上がりにぶち当たる。柔らかな急所を軽めに捏ねる度、じゅわりと愛液が分泌されるのがわかって、妖狐の口角が上がった。震えて畳に這う若者の肩をしっかり縫い止めて、そのまま狐はさざめく雄膣を揺すぶり続ける。四半刻もその動作を続けてやれば、獲物が仕上がって痙攣し始めた。
「あ~~~♡!ぁアっ♡!!…………ぃやぁ、こわい、こ、んなっ!!ァ~~~ッ……♡♡♡!!」
今や平助は全身汗みずくで絶頂の波から逃れられなくなっていた。視界は真白く濁り、星がちかちか光っては全て快楽に灼かれてしまう。尻肉は勿論、酷く痙攣するのは泥濘んだほとである。気持ちいいのに満たされない。もっと欲しいと叫び出したいが、その先なんて平助はわからない。
ふと畳をかいていた右手をとられた。毛深い獣の前足に導かれるように後ろへと回せば、その指先は何か熱い肉の球に当たる。童の拳ほどの大きさの球が、蒸れた汗を溜まった欲ごと放熱させていた。それが怒張の延長線にあるものだと知ると、身を捩って仔犬のように鼻が啼く。怖いのも気持ちいいのももどかしいのも、全て狂って溶けてしまった。……限界を超えて淫気をあてられ、何も考えることができない。
反射的に項を庇った手を丁寧に、しかし有無を言わさず除けられてしまう。
……耳元に狐の濡れた鼻先が近づいて、低く囁いた。
「今から腹に入るものだ」
「……ぅっ♡……ひぁっ……♡」
「舌を噛まないように。さあ、着物を噛んで……」
導かれるまま脱ぎ散らされていた布地を噛みしめた。いいこだと与作の優しい声が降ってきて、知らず涙が出る。分厚く水分を含んだ舌が、じゅっぱじゅっぱ音を立てて耳を犯した。耳朶を真っ赤に染めて感じ入る平助の肩が、一層力強く畳に押しつけられる。
次の瞬間、熱の塊がひくつく後孔を押し通り……、平助は背筋を撓ませ、獣の咆吼をあげた。
ずっっちゅぅうううう♡♡♡!!!!!
「ヒぎぃいいッッッ♡♡♡!!!?」
「……ッ……ゥウッ……!!グルルルルッ……!!」
呼吸ができない。衝撃は二度、同時に襲いかかってきた。後孔を亀頭球まで犯されるのと同時、さらけ出された無防備な項へ牙が深々と食い込まされたのだ。奥歯ががちがち音を立て、皮膚が剥がされるような痛みの後に途方も無い悦楽がやってくる。
平助はここに来て、化け物の番いにされてしまったことを無意識に悟った。強ばった筋肉が徐々に緩み、ぶるぶる震えて弛緩する。
怯える平助に対して、妖狐は満足そうに平助の項を舐め上げ、角度を変えて項を甘噛みし続けていた。その度びくつく肢体をふわふわとした尾で擦り、つらそうな体勢を宥めすかす。組み敷いた青年の体を持ち上げ、杭打ったまま向かい合う姿勢に直してやると、それだけで平助は魔羅から精を吐いた。
くつくつ笑いを堪え、再び仰向けに横たえた番いへ覆い被さる。肉杭の馴染むのを辛抱強く待ち続ければ、幼い妻は痩せた体を震わせて喘ぎだした。薄い腹には銜え込んだ巨根が形を浮き上がらせ、脈打つ血管すらも窺えそうである。視点は定まらず、舌は開いた口からはみ出している。喉元へかじりついてやれば、うっとりと蕩けた表情で啼いた。狐の愉悦もいよいよ深くなる。
「いいこ、いいこだなあ……♡お前は壊れないでくれよ平助♡神の庭で迎えるせっかくの繁殖節だ。沢山種をうえてやる……嬉しいなあ、可愛いじゃないか……♡」
「……っ……」
長い両脚を抱え上げられた若者の口元が動いた。よさくさん、たすけて、そう言っているのだとわかった時の昂揚をどう言い表せばいいだろう。獣は口角を吊り上げて現実を突きつけた。興奮に合わせて九つの尾がぶわりとひらく。
「与作なんかいやしない……!あれは私だ!」
「……ッ~~~、ひがう、違うぅっ!!!ゃあッ♡!!!やだはなせ、ン♡ひっ♡動かひちゃっ……♡!!!あんたじゃない!!与作さ、与作さァんッ♡!!!」
「極上の贄だ……っ!!気持ちいいだろう?寝入ったところを毎晩仕込んできたかいがある♡」
「はゥ♡♡♡ぎゅ、えひっ♡♡♡!!?……っ負けちゃ、やだ、負けちまうっ♡負けちまうよぉっ♡♡♡!!ゆるひて、助けてぇえッ……♡♡♡!!」
半狂乱になって暴れる平助だったが、もう何もかもが手遅れであった。全身どこを触られても痛いほどに気持ちが良く、子宮口をぶち抜いて肉の輪を弄ぶ鰓はどうあっても止められない。加えて巨大過ぎる亀頭球が魔羅をがっちりと固定しており、むしろ抵抗すればするほど肉棒の感触が子細に伝わってしまう。長い足を抱え上げられ、上からのし掛かられてしまえば後孔は素直にほどけ、主人たる狐魔羅にむしゃぶりついた。雄膣に甘やかされて恐ろしいほど肥大した魔羅が暴れ回る。いい加減精をぶち撒けたいのだろう、隆起した血管の筋がちくちくと媚肉を穿ってきた。
「え、えぎゅ、ィイッ♡!!?」
ぐぼっ♡じゅぽんッ♡♡♡
雄子宮の入り口である敏感な肉の輪をかり首が悪戯に往復する。それを繰り返すうちに、すわりの良い位置へと妖狐の亀頭がはまり込んだ。子宮頸部を鰓でしっかりと押さえ込み、血管の脈拍を刻み込む。
ふいに雄の動きが苛烈さを増した。平助の媚肉を仕留めるかのような激しさで、執拗に抉りこんでくる。時折ふてぶてしい幹が脈動し、放埒の前兆を見せた。
猛烈に嫌な予感がして、平助は最後の抵抗を始める。
「や、やだ……っ冗談じゃにぇ……っ!!ひ、出すなッ!!やめろぉおッ!!!」
「ぐ、ゥウっ……♡ガゥルル……ッ!!」
「ひぁ、ぁーっ……♡!!だめ、らぇっ!!ぁ、……ぁがっ……!!」
ぎちぎちに雄膣を押し広げていた魔羅がついに決壊した。おめがを確実に孕ませる粘性を保った子種の奔流が、どびゅう、どびゅぅ♡と子宮奥を穿つ。妖
狐は獲物の様子を愉しむように、二度、三度と種汁をか弱い子宮へ送り込む。耳まで裂けた獣の口が、にやにや弧を描いた。心地良い。甘ったれて懐く膣襞も、蕩けながらも睨みをきかせる生意気な表情も。
しかし弱々しい抵抗は長くは続かなかった。
種を受ける生け贄の顔が、突然びくりと震えて虚空を仰ぐ。
か弱い抵抗を示していた平助の腕が、だらんと地に垂れてしまう。精を受けたことを、本能的に悟ったためだった。
「……ッ、ぁ。ア……っ♡♡♡♡」
射精と同時に突き込みは収まっていた。ぐりぐり上から固定されての種付け交尾。子宮内部にまで押し入られて、どこにも逃げ場が無い卵子が精子に取り囲まれる。子種の奔流に輪姦された卵は呆気なく男の印を刻み込まれて、尚も噴き出す精に犯され続けていた。
受精の衝撃に青年が瞳を揺れ、濁る。平助にとって初めての交尾であり、有無を言わさぬ妊娠の瞬間だ。頭は糖蜜を絡めたように気持ちいいことしか感知しない。溜め込んだ妖魔の精を乱暴にぶちまけられる快楽に芯から酔い、絶頂の波が重ねて薄い肉体を襲っていた。
どくどくっ♡!!!どびゅうっ♡!!!びるびる……っ♡じゅう♡どくっ……♡
「…………っ♡…………、ぁ……♡♡♡……は、……♡……♡♡♡!!!」
ねっとりと濃厚な狐の精子は、あっという間に子宮内を蹂躙し尽くして雄膣へと氾濫する。あふれ出た温かな精液をぐちぐちと擦り込み、ゆっくりと妖狐は膣内射精を楽しんだ。
平助は意識が朦朧としながらも、肉杭を締め付ける動きを止められなかった。幸福な毒が全身を浸している。白痴じみた表情で遠くを見ようとしたが、視界いっぱいに入ってくるのは邪悪に笑んだ獣の顔だ。恐ろしいのに、侵入してくる長い舌を迎え入れて深い口吸いに応えてしまう。完遂された種付けを以て、おめがの肉体は夫を定めてしまったらしい。
「……ろうひぇ…、♡ろうひて……♡?ぁ……んちゅ……っ♡♡♡」
「これが子孕みの儀だ……。神の種は人より早く育つ。冬中延々仕込んでやるからね……♡……種の受け方を、しっかりと覚えておくことだ」
巨大な狐はそう言うと、腰を震わせて熱く滾る精を注ぐことに集中しだした。優しく揺れる深い交接に、前後不覚の平助が小さく喘ぐ。
若者の足首に括り付けられた標縄が畳を擦る。あえやかな嬌声。食い込んでは吸い上げる淫らな水音。神々の別荘で睦み合う子孕みの儀は、深い雪に囲われ、下界との入り口を静かに閉じていった。
『その土地は子孕みの里と呼ばれる。
冬になると山神たちが集い、それぞれの伴侶を連れて別荘に籠もる。迷い込んだ人間は立ち並ぶ立派な屋敷に驚くものの、その中で睦み合う夫婦を認めることはできない。
希に、番いのいない神に見初められた者だけが……』
数ヶ月して、平助を探す山狩りは打ち切られた。山は荒ぶって捜索に出た男達を飲み込み、一度入れば二度と抜けられない難所と恐れられた。
その後気の優しい青年を見つける者は、誰も居なかったという。
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