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キリルの箱庭
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「パパっ!ママ!!お兄ちゃんありがとう!!」
黄色い帽子の女の子が両親の元へとかけていく。光太郎は笑って手を振った。公園を出て商店街をまわり、ようやく彼らに再開させてあげられた。あの日と違うのは、自分が警察官ではないところだけ。
赤い炎が地表を覆って人類は滅びた。事実を受け入れるまでに長くかかったが、もう光太郎に迷いはない。選択肢などありはしなかったが、もうこうするしか地球に帰る手段はないのだ。
「コウタロウ」
天上から呼び声がした。この世界の主人が呼んでいる。……襟元の帰還スイッチを押して、ずっと浸っていたかったあの日の公園から青年は意識を浮上させた。
切り替わった視界には見慣れた男が立っている。ぬめついて蠢く巨大な烏賊じみた肉体。転移したての青年を長い触手が絡めとる。
「楽しかったかい、私の自治区は」
「……今日は非番のはずですが!中途半端に呼び出されては困ります!」
首肯しそうになる自分を抑え、なるべく不愉快そうな声を出す。先程の地球はこの主人が買い上げた無人惑星をテラフォーミングしたものだ。プライベートを満喫できるように、お役目のない日はテレポート装置で遊びにいかせてもらえる。光太郎の飼い主たるキリルは嫌味なほど落ち着いた声で青年を宥めた。
「そう言うな。……新しいニンゲンの細胞を仕入れてきたんだ」
「えっ!!」
喜色満面で見上げる光太郎に異星人も目をすがめて笑う。
「す、すぐ蘇生できますか!?今日はリカちゃんとご両親を一緒にしてあげられましたが、交番周りの住人たちも肉親に会いたがっています……ので……」
口をつぐんで床へと目を逸らした。見下ろすキリルの目が熱を孕んでいる。逆光で溶け合った二人の影を四本の触手が侵し、下腹の蟲が交尾の予感に騒ぎ始めた。
「わかっています……。ちゃ、ちゃんと貴方の家族も産みますから……」
「ありがとう。コウタロウはいい子だね。自我を残しておいてよかった」
異星人の掌の上で、光太郎は必死に卵を育てる。キリルは孵化させた分だけ喪われた人々の細胞片を回収してきてくれた。環境は完全再現され物資も補充され続ける偽の地球に、現在蘇生された人間は二十六名。
「あ……っん、ン」
ぞるぞると四本の脚が身体に回る。この宇宙人との行為は身体の根っこに染み付いてしまって、既に癖になっていた。キリルの私室に転移させられた時点でこうなることはわかっていたはずだ。震える膝を押さえて顔を背ける。
「怖いのかい」
「あなたがシツコくするからです!」
「わかったわかった。ニンゲンは体力が無いからね。優しくする」
全くわかっていない男が、ヤツメウナギみたいな口で首筋を甘く噛む。麻痺毒の広がる感覚が気持ちいい。背中を支える触手に身体を預け、光太郎は甘怠い交尾の快楽に集中していった。
青年が受精するたびばたつくふくらはぎが寝床に白く浮かび上がった。執拗に雄子宮へ種汁を注ぎ込んでなおも満足できずに柔い肉洞を堪能する。覆い被さられたニンゲンが艶っぽく啼いた。
地球に帰りたがる限り光太郎は種付け交尾から逃れられない。本人もそれをわかっているのか、最近ではめっきり抵抗することは無くなった。もう少し懐いたら研究所に連れて行くのも一興かもしれない。同僚たちのニンゲンと引き合わせ、トモダチを作ってやったら喜ぶだろうか。確か隣のデイヴは金髪を飼っていた。国籍が違うのなら翻訳機の用意が必要だ。
「ご主人さまぁ……っ?」
とろんとした瞳がこちらを伺う。返事の代わりに輸精管の先で肉壁を穿ち、性感帯と化した胎を内側から揺らしてやった。胴へ抱きつかせた光太郎はすっかり肉の快楽に溺れている。ニンゲンは、確かに気持ちよさそうに涙を流す。
黄色い帽子の女の子が両親の元へとかけていく。光太郎は笑って手を振った。公園を出て商店街をまわり、ようやく彼らに再開させてあげられた。あの日と違うのは、自分が警察官ではないところだけ。
赤い炎が地表を覆って人類は滅びた。事実を受け入れるまでに長くかかったが、もう光太郎に迷いはない。選択肢などありはしなかったが、もうこうするしか地球に帰る手段はないのだ。
「コウタロウ」
天上から呼び声がした。この世界の主人が呼んでいる。……襟元の帰還スイッチを押して、ずっと浸っていたかったあの日の公園から青年は意識を浮上させた。
切り替わった視界には見慣れた男が立っている。ぬめついて蠢く巨大な烏賊じみた肉体。転移したての青年を長い触手が絡めとる。
「楽しかったかい、私の自治区は」
「……今日は非番のはずですが!中途半端に呼び出されては困ります!」
首肯しそうになる自分を抑え、なるべく不愉快そうな声を出す。先程の地球はこの主人が買い上げた無人惑星をテラフォーミングしたものだ。プライベートを満喫できるように、お役目のない日はテレポート装置で遊びにいかせてもらえる。光太郎の飼い主たるキリルは嫌味なほど落ち着いた声で青年を宥めた。
「そう言うな。……新しいニンゲンの細胞を仕入れてきたんだ」
「えっ!!」
喜色満面で見上げる光太郎に異星人も目をすがめて笑う。
「す、すぐ蘇生できますか!?今日はリカちゃんとご両親を一緒にしてあげられましたが、交番周りの住人たちも肉親に会いたがっています……ので……」
口をつぐんで床へと目を逸らした。見下ろすキリルの目が熱を孕んでいる。逆光で溶け合った二人の影を四本の触手が侵し、下腹の蟲が交尾の予感に騒ぎ始めた。
「わかっています……。ちゃ、ちゃんと貴方の家族も産みますから……」
「ありがとう。コウタロウはいい子だね。自我を残しておいてよかった」
異星人の掌の上で、光太郎は必死に卵を育てる。キリルは孵化させた分だけ喪われた人々の細胞片を回収してきてくれた。環境は完全再現され物資も補充され続ける偽の地球に、現在蘇生された人間は二十六名。
「あ……っん、ン」
ぞるぞると四本の脚が身体に回る。この宇宙人との行為は身体の根っこに染み付いてしまって、既に癖になっていた。キリルの私室に転移させられた時点でこうなることはわかっていたはずだ。震える膝を押さえて顔を背ける。
「怖いのかい」
「あなたがシツコくするからです!」
「わかったわかった。ニンゲンは体力が無いからね。優しくする」
全くわかっていない男が、ヤツメウナギみたいな口で首筋を甘く噛む。麻痺毒の広がる感覚が気持ちいい。背中を支える触手に身体を預け、光太郎は甘怠い交尾の快楽に集中していった。
青年が受精するたびばたつくふくらはぎが寝床に白く浮かび上がった。執拗に雄子宮へ種汁を注ぎ込んでなおも満足できずに柔い肉洞を堪能する。覆い被さられたニンゲンが艶っぽく啼いた。
地球に帰りたがる限り光太郎は種付け交尾から逃れられない。本人もそれをわかっているのか、最近ではめっきり抵抗することは無くなった。もう少し懐いたら研究所に連れて行くのも一興かもしれない。同僚たちのニンゲンと引き合わせ、トモダチを作ってやったら喜ぶだろうか。確か隣のデイヴは金髪を飼っていた。国籍が違うのなら翻訳機の用意が必要だ。
「ご主人さまぁ……っ?」
とろんとした瞳がこちらを伺う。返事の代わりに輸精管の先で肉壁を穿ち、性感帯と化した胎を内側から揺らしてやった。胴へ抱きつかせた光太郎はすっかり肉の快楽に溺れている。ニンゲンは、確かに気持ちよさそうに涙を流す。
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