さるのゆめ

トマトふぁ之助

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 その日は一日やることが手につかず、何もない廊下で幡は二回も転んでしまった。尻が気になる。塞がらなくなっていないか心配だが、触ってみると縁が腫れて盛り上がりかけているだけで支障はなさそうだった。皮膚感覚がいやに過敏になっている。ものを掴むのにも力の加減が必要だ。攣れて震える指先を見兼ねてか、緋猿は青年を抱え上げて奥間へ押し込んだ。
 「ふーっ、ふぅ、ふぁ……っ!」
 抗議する間も無く畳に押し倒され、浴衣の帯を緩められる。麻の生地がはだけ、火照った薄桃色の肌が胸まで露わになった。
 「ぁ、…………見んなよぉ……っ!!」
 薄く筋肉のついた若い青年の腹にはしみ一つない。我慢汁を垂らして勃起させた息子を手で隠し、幡が涙ながらに睨みあげてくる。
 「腹に仕込みがしてあると言ってたが」
 「ほ、ほんとに儀式させる気なかったから……兄貴もそこまで準備させなかった」
 「はぁん。じゃあ、お前だ。どうやるかを教えてもらうぞ」
 「……ん……。」
 術者の体毛を括った束、唾液、血液、それらを呪符で縛って飲み下す。あとは抱かれるだけ、相手が仕上げの体液をかけて、儀式は完了となる。
 「呪符?のガラだけは覚えてる。何で書けばいいのか、……はっ……♡わかん、ねえ……っ」
 「ほう……。そこまでわかれば、まぁ良いわ」
 緋猿は珍しく布団を敷き、そこに幡を転がすと部屋から離れた。数分たたぬうち、巨漢は一枚の和紙を手に戻ってくる。
 「書いてみろ」
 「…………鉛筆とか、筆とかぁ」
 「無礼者!こういう正式な文書は血文字と相場が決まっておる。指を出せい」
 「えーっやだ、やだって、いっだ!!」
 幡の指先に数ミリできた切り傷によって、呪符は無事書き上げられた。緋猿の爪で毟られた金髪が一束、唾液と指先から滴る血液を一滴ずつ。呪符で海苔のようにまき、しかし一息に飲み干しきれずに幡はあわや窒息の危機に陥った。
 「んグッ!!……ッ…………!!」
 「ほんにグズだのう……どれ」
 白目を剥く青年の肩を掴み、緋猿の巨体が薄い体へ覆い被さる。ぞろと長大な異形の舌を小さな口蓋へ捩じ込み入れて、喉の詰まりを食道から胃の腑まで押し込んだ。
 「っく、え、おごっ……!!んーん、んーむっ♡!!っぐ♡ちゅ、ぅ、……っ♡!!んん~ッ♡♡♡!!」
 日々緋猿の唾液を擦られ続けた幡の体は全身感度がおかしくなっていた。食道から腹までたっぷり舐めしゃぶられて吐き気と気持ちよさに視界が回る。肩をがっちり掴まれているから抵抗しようがない。胸板を叩くがびくともせず、逆に拳がじんじん痒みに似た熱を帯び始める。内腿の薄い筋肉がしっとりと汗ばみ始めていた。苦しい。必死に鼻で呼吸をするが目眩がしてうまくいかない。焦って暴れるけれど二回り以上も太い腕で簡単に抑えられてしまう。本気で窒息する危険を感じ始めた時、いきなり腹の奥から喉元まで詰まっていた大蛇のような舌が引き抜かれた。
 「ン゛~~~ッ!!ングッ!うっうぅ……ッ!!ぷぁっ、ひゅッ!!げっほげっほ!!がっごヒュ、て、てめえ!!死んじまうだろ、が……」
 幡は布団に頽れて幾度か咳き込み、見上げた先の闇に気がついた。薄暗い室内。緋猿が逆光を背負ってこちらを見ている。昏い双眸に妖しい光を湛え、大きく裂けた口で薄く笑いながら。
 仰向けでまともに身動きのできない生贄を、見下ろしていた。
 「…………ぅ、」
 身体を萎縮させる半裸の青年へ、威圧するかの如く嫌にゆっくりと異形の猿が覆い被さる。魔猿の鼻先が首筋をなぞり上げ、背筋から腰へと大きな手が這い降りる。びくびく跳ねる反応のいい身体に緋猿は牙を立てた。
 「いいんだな?」
 「……いいって言ってんだろ!!さっさとやれよっ!!」
 幡は正直怯えていた。自分より遥かに大きな巨体の異形を封じるべき立場が、完全に主導権を奪われてしまっている。閨事の経験が浅い幡だからこそこのひと月かけて準備を行なってきた。受け入れるために猿に従っただけ、それなのに、下腹が飼い慣らされたように疼き始める。引き連れた虚勢の叫びが響く。閉ざされた異界、誰も助けに来ない小部屋。世界にふたり、猿が笑った。

 「おんっ♡ぅお゛ッ♡ひ、ヒッ♡♡♡ぃいいン゛ッ♡♡♡!!」
 ずず……じゅこっじゅっこじゅっこ♡バチュンッ♡ごっごっごちゅッ♡♡♡!!!
 魔猿は大いに腰を振り、その柔い肉を堪能した。稲穂色の髪を振り乱して喘ぐ子供は半狂乱でしがみ付いてくる。肩口を掴もうと引っ掻くけれど、異形の皮膚が分厚すぎて傷ひとつ付かない。胸に取り縋って泣く幡は初めて愛くるしい。蕩けた瞳が、涎をこぼす口元が欲に溺れている最中だと如実に表している。
 「ひぎぃぃッ♡♡♡!!!もうやだ、やらぁあッ!!ンあんッ♡!!あんっ♡!!アッ♡!!」
 細い腰を掴んで弱点を執拗に突いてやれば、面白いように肌が桜色へ染まる。正面から覆い被さって何度も肉の輪の縁を抉り込むと、既に熟れきった肉襞が痙攣しながら縋り付いてきた。張り出した鰓で後孔の入り口を嬲る。腫れて盛り上がった縁が巨大な亀頭を頬張って離したがらない。入り口で遊んでやった後、緋猿は温い洞へと一息に肉棒を突き入れた。
 じゅ、ずぷぷぷッ…………!!
 「……ッひ、ぃぁああアァッ♡!!お、奥っ♡!!入りすぎ……ッ!!」
 圧迫感が強いのだろう、青年は喉をのけぞらせて身体を逃そうとする。足腰の立たない幡の腕を掴み、逃げられないよう固定して腕の檻へと戻す。すぐに陥落の声が上がった。
 「ぁ、あっあっひんッ♡!!ひん♡!!あきゅ、ぇっ♡!んっ……♡♡♡!!」
 覆いかぶさり深く重く、雄膣と言っていい肉鞘をじっくり挽き潰す。肉襞を幾度も嬲り、しこりを執拗に殴打する。ピストン運動は激しくなっていき、幡の手足は空を藻がいてぱたぱたと揺れた。
 異形の岩盤に似た腰が送られる度、もはや舌の回らない生贄の声が漏れる。腕の中の青年はすっかり威勢を削がれ、肉欲の虜と堕ちていた。こりこりとした下腹のしこりを抉るように突けばそれはいい声で啼く。雄膣は陰茎骨入りの人外魔羅にすっかり懐いてしまっていた。きゅうきゅう締まる柔肉を割って、みっちりと巨根が栓をする。深くを開くほど弱々しくも嗜虐欲を擽る声があがった。
 「ここだなぁ」
 数時間たっぷり組み敷いた青年の臍の下を撫で、緋猿が唸る。
 「ここに詰まってる。腸のその奥、触れ、わかるだろう』
 「ん……っは、ひ……」
 幡はぐったりと呆けていたが、頬を赤らめながら下腹を探り、その違和感に頷いた。呪具の溜まりがそこに居座っている。
 「…………ぁ、に。早く、なあ……っ」
 腹筋の上から探るばかりで一向に腰を動かそうとしない緋猿に、焦れた幡が身を捩らせる。結腸が疼いて、無意識に腰が揺れてしまうのだ。激しい抽挿による快楽を教え込まれた今、青年の体は幡本人にも制御できる状態ではなかった。はち切れそうに盛り上がった胸筋、人間にはあり得ない体毛に覆われた身体、そのまま幡の腰など潰してしまえるほど太い腿。纏う霊気は邪なものも混じっているけど間違いなく神気のそれで、フェロモンに惑わされる昆虫のように、幡もまた緋猿の妖気に侵されつつあった。
 正常位の姿勢で繋がったまま緋猿を見上げる。異形の鉤爪を備えた指が、青年の下腹をさするように触れた。
 「……言い忘れておったことがあってな」
 「んっ……♡は、なん、だよ……っ」
 「この呪符は封印のそれではないぞ」
 色に満たされた幡の頭が言葉を理解するまでしばらくかかった。え、と声が上がる瞬間、肉洞で脈打っていた異形魔羅が動き出す。
 「ひぁッ♡♡♡!!っは、なんっ!!ぅあっ♡!そ、れじゃっ」
 「知りたいか?知りたい、よなあっ……!!ハァ、あの呪符に書かれていたのはな、婚姻の縛りだ。封印などではない、神と番うための契約符よ」
 「や、ぁめっ♡!うごくらッ♡!!ぁあ、あんっ!!は、はぁっ……頭、回んな……♡」
 「ああ、良い、良い。お前はただそのまま喘いでおれ。今娶ってやる故なぁ……!」
 「あひっ♡お゛ッ♡♡♡!!や、ぁめっ!!ぁあああああぁんッ♡♡♡!!」
 ピストン運動が再開され、緋猿の下で幡は艶やかに啼いた。こんいん。婚姻。しばり。ふういん、じゃ、ない?つがうってなんだ。じゃあやだ、話が違う、そう思って抵抗しようと思うのに、身体はとうに緋猿へと明け渡されている。疑問は抽挿の甘さにかき消され、形骸的にぱたぱた手足をばたつかせるだけの抵抗さえ簡単に封じられてしまう。深くまで鰓の張ったもので搔き解されれば抵抗する気概さえ上書きされる。最後の気力を振り絞り、幡は涙ながらに叫ぶ。頭が霞がかって、揺れる視界に光が飛んでいた。
 「だめっ♡こんいんだめッ♡♡♡!!」
 「ハハッ!!腰が揺れておるぞ!!悪くないッ!!お前は儂の妻になるのだ!!」
 「ふじゃっ……!けんなっ♡!!ぃぐっ!?ヒィイっぐッ♡♡♡!!く、くるっくるぅうッ♡♡♡!!!」
 腹の奥深く、柔くねっとりとした結腸リングを激しく弄んでいた太魔羅がぶくりと膨れ上がった。嫌な予感が背筋を駆け抜ける。幡は獣の腕から逃れようと身を捩らせるが、かえって刺激を増幅させるだけの結果になった。激化する行為のためか、緋猿の神気が部屋中に満ちている。呼吸を繰り返すだけで頭がぼうっとして、判断力を削がれていく。
 いやいやを繰り返す生贄の腰をがっちりと固定して、緋猿は抽挿を早めた。より深く、より執拗に、小僧の弱いところを責めてやる。射精が近いとわかるのか必死に手足をばたつかせて抵抗していたが、ひと突きごとにその力は弱々しくなっていく。破裂しそうな魔羅をいなしつつ、幡の抵抗が完全に止むまで嬲ってやった。
 「は、……はーっ……♡……ひゅっ♡♡♡……ひぃ、……ぅ……♡」
 半刻かけて仕込んだ贄は、串刺しにされたまま幸福そうに全身の力を抜いた。幡の体はとっくに、射精を経ずとも雄膣を抉られるだけで絶頂できるようになっていた。波のよった布団に小さな手を這わせ、関節に朱を溜めながら肉の快楽に沈み込む。ぬるま湯に浸けられて溺れているような、ゆったりした心地よさが眠気と共に押し寄せる。遠くで派手な喘ぎが聞こえた。発情した雌のこえ。揺れる視界がいよいよ光に埋め尽くされる。
 「ひぐうぅうっ♡!!ぁえッ♡!!んンッ♡……く、いくッ♡♡♡!!イくぅううッ♡♡♡!!!」
 「オ……ヴォオオオオオッ!!!」
 獣の咆哮が鼓膜を揺らして、幸せな幡の下腹に熱い迸りが感じられた。
 「……ぁえ……っ♡?……ん、あちぃ……っぁ♡、~~~は、……♡♡♡」
 じゅわじゅわと熱がお腹いっぱいに広がって、そこでようやく幡の意識は現実と合流した。呼吸が苦しい。覆い被さる緋猿の放埒は未だに続いている。これは、精液の熱さだ。自覚した途端湧き上がってきたのは嫌悪ではなく、いきすぎた幸福感だった。びゅくびゅく脈打つ異形ペニスを逃したくなくて、本当に無意識に両足が持ち上がった。
 「……ぁっ……うぁっ♡……ん、ふぁ、ァ~~~……ッ♡」
 ビュルルッ♡ビュクッビュクッ……♡ドクドクドク……っ♡♡♡
 分厚い魔猿の腰に、周りきらない脚を絡めて目を閉じる。感覚を集中させると一層、粘っこい緋猿の濁流が腹で暴れているのを感じられた。
 「んっ♡んぅ♡んっ……♡」
 天を仰ぎ、恍惚の表情で啼く青年を大きな掌が撫でる。頬を撫で、肩を伝い、痙攣にさざめく白い腹筋へと。
 「出たなァ!!オッ……♡そんなに絞らずともくれてやる。紋もまだ薄づきであるからな♡」
 臍の真下、真白の肌に緋色の呪紋が浮かび上がっている。猿面に似た意匠はどこか禍々しく腹部を埋めていた。
 「ぁ、あっ♡!!ぁうッ♡♡!なんれ、かたい♡は、もう、無理ぃっ♡♡♡!!」
 「骨入り魔羅だ。しっかり味わえよ……!!儀式は成功!!なあに、どうせ娑婆に戻らねばならぬのだ。義兄上様への挨拶は、神域でたっぷり身体を懐かせてから行うとしよう♡」
 軟らかな腿を掴み、吐精を終えた緋猿は嬉々として腰を振り始めた。
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