さるのゆめ

トマトふぁ之助

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さる絡み

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 惨状であった。腥い酒を酌み交わす猿は左右に一匹ずつ対となり、おそらくそれが二十四列舞台の奥まで整列している。数え間違っていなければ、幡を膝に拘束して一段上に構えているこの緋猿で四十九匹目だ。数が多い上に皆下品に騒ぎ立て、獣の言葉で何をか喚いていた。
 輪をかけて最悪なことに、この酒宴は馬鹿騒ぎするだけに留まらない。
 「あっあっ!あんっ♡!!あぅっ♡!!」
 ばっちゅばちゅと激しい水音が嫌でも耳に入ってくる。……猿一匹に対して一人ずつ、人間の生贄が充てがわれているのだ。
 「やァッ♡!!はげし、すごいっ♡!!あぁっ♡アひぃッ!こ、光栄れす……っ♡!!!」
 酒の酌をさせたり按摩をさせたりと、彼らは従順に猿達に奉仕している。宴が始まって間もないが、猿の半数は勃起した肉棒で贄の尻を犯し始めていた。
 人間たちはというと、これは淫夢を介して攫われてきた者ばかりなのだろう。例外なく男で、薄手の着物一枚だけを纏っている。当然床へ押し倒されれば簡単に剥かれてしまい、皆蕩けた声で喘ぎ散らした。一切の抵抗はない。恍惚と口吸いを受け入れ、引き締まった腿を開いて異形を歓待していた。
 「は、ァア……っ♡」
 最前列の右手でまぐわっているのはいつかのカラオケで拐かされた若い男だった。日焼けあとのくっきりわかる筋肉質な身体をうつ伏せにされ、腰を高く持ち上げられた姿勢で深く貫かれている。
 「ひんッ♡!!ヒィ……ッ♡♡♡!!」
 「ギヒッ!!グルルォオッ……!!」
 「あ、うぁ……っ!!あちぃっ♡!うれ、ひ、……ぁああ~っ……♡♡♡!!」
 種付けの放埒音さえ聞こえてくるような激しい交わり方だ。猿の分厚い腰が揺すぶられる都度注がれているのが嫌でもわかる。堕とされきった悦びかただった。金髪の彼がきつく掴むので、下敷きにされた着物に皺がよる。あからさまな射精を終えてもなお、猿が勇んで獲物の尻を掴み直した。一度引き抜かれた凶器はじっとりと腸液を纏い、ことさら禍々しく勃ち上がっている。バチュンッ♡と一息に突き入れる音に、金髪の喘ぎが重なった。

 「良い良い、味わい尽くせ!絞り過ぎて殺すなよ!!」
 「…………っ!!」
 幡は唇を噛み締める。拘束は解かれていたが、未だ力が戻らない。吹き放された舞台は柱をおいて室内外を遮るものもないというのに、いつの間にやら外は薄暗く煙っている。奥へ奥へと伸びた造りの舞台など、灯りばかり多くても先までとても見通すことができない。必死に目で友人を探すが無駄であった。そこかしこであげられている喘ぎのうちに、彼の声も混じっているのだろうか。
 幡の弛緩した足を緋猿の太く毛だらけの指が撫でる。
 「いい光景だろう。今年は特に粒揃いだ、見ている方も若返るというもの」
 胡座をかいた猿の股ぐらへ頭を押し付けられ、青年は涙目で首魁の猿を睨んだ。生き物のように熱を持ち、ひどく臭い。瘴気が濃過ぎて毒に近かった。甘く濁って饐えたものが鼻腔をつく。
 「やめ、……っ!かみ……切ってやる、から、なぁ……!!」
 「おお怖い怖い。……誠にまあ、生意気な童よ」
 猿の剛腕がぐったりした体を簡単に摘み上げ、膝へと捕まえ直した。ゆるゆると暴れ、乱れた着物を襟から左右へ勢いよく暴く。
 「ひっ!!」
 「……ぁあア、これは愛らしい……。まだおぼこではないか。うん?」
 着物の下は全て剥ぎ取られていた。裸の下肢をまさぐられ、無遠慮に尻の穴を指で改められる。覆いかぶさってくる異形の体が重く、青年の全身を威圧した。
 「うるせえっ!放しやがれ淫行猿!!」
 「少し肉づきが悪いな……。耳にもつけているが臍にもか。金気は好かんのう、後で取らせよう。……肌艶は上、威勢がいいのは上々……」
 「や、ひっ!やめっ……!!』
 仰々しい敷物にうつ伏せにされ、薄い尻を高く突き出すように腿を固定される。ぞるぞると濡れた何かが後孔を濡らしたので青年が短く悲鳴を上げた。あまりの蛮行に、それが恐ろしく長い舌だと気づくまで少し時間がかかった。
 「ひぎぃいいッ!!」
 ジュルッ!!ジュクジュジュズチュッ♡!!グッチュグッチュグチュズチュ♡♡♡!!
 平たく分厚い、奇妙に節だった舌があらぬ場所をしゃぶり尽くさんと激しく動く。腿を浅くばたつかせる程度の抵抗しかできない幡は目を見開いて大きく鳴いた。割っては入り、ずるずる引いてはまた脈打ちながら深くへ進むことを繰り返す。気色の悪い濡れた感触が下腹を支配するので、青年の薄い腰は仔鹿のようにがくがく揺れた。
 「やめろぉ……っ!や、ひぐっ!ぁぎっい、痛いぃ……!!うぅうッ……!!」
 ぐふぐふ緋猿の笑う気配があった。勿論中断されるわけもなく、恥も外聞もない陵辱が続く。熱いような冷たいような、激しい刺激が粘膜を刺した。じゅこじゅこ立場を理解させるように扁平な舌が前後している。悪夢の時間が無常にも過ぎていった。……舐め啜られ、腸を内側から吸われ果てた孔からじっくり見せつけるように舌が抜き去られる頃、幡は床に頽れて虫の息であった。
 「ひぅっ……、ふぅう……ッ!!あ、ァ、……っ♡?なん、だ……」
 「んハぁあ、甘露であったぞ……!よぅく身に染みた頃だろう?」
 「畜生!!人のケツ舐め回しやがってッ!!……ウゥ、くそ、くそぉ……っ!!」
 起き上がろうと睨みをきかせるその気丈な眼が揺れた。ぐらりと傾いだその肩を片手で支え、猿は玉座に座り直した。若者らしく脂身のない手足は床に投げ出されて艶かしい。白い肌は桜色に火照り、滲む汗が緋猿の指の腹を湿していく。
 「畏れ多くも神の唾液だ。……じっくり屈従させてやる」
 「はっ、はっぁ、はっ……!?て、手ぇっはな、せぇえ……!!」
 眩む視界がさらに歪みを増した。坐した猿の膝に引き摺られ、悪さをした子供のように尻だけを掲げさせられる。片腕で背中を床へ押し付けられて、丸太ほどもある獣の腿、そこへうつ伏せに跨がる姿勢で薄く肉のついた臀部を揉みしだかれた。硬質な爪のはらとごわついた毛の感触だけで皮膚がざわつく。ぐいと背中を圧迫され、不意に視界に光が散った。激しく肉を叩かれる音に、尻を燃やすような熱さが追いついて像を結ぶ。
 「…………ーーーッ、ぁ、……~~~っ!!!」
 勢いよく獣の掌が尻を殴打する度、青年は身を捩って暴れた。鋭い痛みは勿論あったが、それを堪えるたびに先ほど弄られた腹の奥がじくじく疼きを酷くする。毛深い内腿に押し当てられている股間もしっかりと反応してしまい苦しい。それなのに、体の内側から知らない感覚が襲ってきて、青年は仔犬の様相で鳴き喚いてしまう。
 叩くたび背筋の筋肉が揺れ大袈裟に小さな体がはねる。小ぶりながらに白く形のいい尻は薄桃色に染まっていた。緋猿は嗜虐心がむくむくと肥大していくのを感じて満足げな唸りを上げる。悔しげな啼き声が、魔猿の耳を実によく愉しませてくれる。
 たっぷり半刻はそうしていただろうか。スパンキングを強いられた幡はぐったりと床に伏し、猿の膝に乗せられた尻肉を淫らに痙攣させていた。叩き続けた尻肉は真っ赤に色づいて欲を煽る。投げ出された脚もひくつくばかりで、遂に抵抗の気概は削がれたらしかった。この小僧は尻を叩かれただけで数度射精していた。無理もない、穢れの籠った体液は生き物にとって毒だ。緋猿により練り上げられ、数百年かけて熟成させた呪詛も込められている。普通の人間ならば粘膜越しに唾液をつけられただけで抵抗の意思さえ失われて従順な信者と化すところを、よくもここまで粘ったものだ。震える薄い腰をむんずと掴んで尻穴の仕上がりを確かめる。若い男の滑らかな尻たぶを揉みしだきつつ親指を根元まで挿入してやった。
 「ヒィイッ!!」
 そのまま数度、ぐちぐちと動かしてやるだけで青年は達してしまった。
 緋猿自らたっぷりねぶってやった穴だ。当然のことであった。唾液を刷り込まれた肉洞全体が熱をもっている。感度が数段上がっていることを自覚したのか、供物は困惑に口を戦慄かせていた。
 「儂らは神だ。祀られて力を蓄える。永らえているとなあ、土地の者だけの信仰では足りんのだよ。だからたまぁに、こうして贄をたてるのだ」
 「ぁ、ぁっなに……」
 「やりすぎると面倒だからな。百年ごとに土地の外から徴収している。我が同志、猿神たちに一人ずつ、ぬくく甘い肉の穴をなぁ……♡人はいい♡愛いものだ。血は甘いし精気も絞れる。抱けば簡単にこちらへ堕ちる……お前のように殴り込んできた者もみぃぃんな」
 逃れられた者はおらん。派手に音を立てて指を抜き去ると、青年が怯えた目でこちらを見た。
 背後の壁画に陵辱劇が影絵になって映し出される。
 それはそれは簡単に、幡は手篭めにされてしまった。ぬかるんだ孔は意思に反して凶悪な異形ペニスを根元まで受け入れている。最早まともに動くこともできないヒトの足首を掴み、長大な肉槍を幾度も突き入れては緋猿が猛った。咆哮に合わせて周囲の猿たちも興奮しだす。酌をさせて宴会を楽しんでいた者たちも、茵に贄を押し倒して腰を振り始める。舞台のそこかしこであけすけな喘ぎ声と水音が融解していた。
 「ぁっぐっぅぁんンッ!!やぇっ!やめろぉっ♡!!いや、やぁっだぁあッ!!」
 「おぉっ……!!これは……!!」
 「そっ、こ、ぉおッ♡!!しつけえっ♡!!やだ、やだおくっくるなぁあ♡♡♡!!」
 鰓の張った異形の槍がごりごりと激しく肉襞を抉る。正常位で腹奥を嬲られるだけで凄まじい快感が幡を襲った。生々しく肉欲の何たるかを教え込まれ、青年は半狂乱で喘ぎ狂う。
 「ひひゃひゃッ!!入れろ入れろォ!!儂のものにっ!なるがいいッ!!」
 「ひぐっ♡いぁっ!やっ……ァアアッ♡!!ぁんっ♡!あっア♡ヒィッ♡!!」
 猿は両腕の檻に幡を囲い、覆いかぶさって獲物の腹を鞣し続けた。ここまで拒絶の言葉を吐ける人間もそういまい。意外に思ったが、泣きじゃくる表情は強いられた欲情に蕩けきっている。生意気そうな吊り目は涙で緩み、憎まれ口を叩きながらも奥へ捩じ込むたびに隠しきれない快楽を謳う。後孔の具合もたまらない。突き入れれば出ていけと言わんばかりにきつく肉棒を締め付け、ぞりぞり引き抜いてやれば耐えきれず襞が追い縋ってくるのだ。身体は陥落寸前と踏んだ緋猿は、息を荒げてその唇を塞いでやった。
 「んン~~~ッ!!……ぅ、……っく、は、ンっむ……」
 拒絶する舌を舐って気道まで塞ぐ。窒息しそうになるたび自慢の長い舌を外してやり、呼吸さえ弄んで小さな口へと唾液を注ぎ込んだ。小さな顔が真っ赤に染まって苦しげだ。初めは気丈にもこちらを睨みつける仕草を見せたが、酸素不足からか首まで赤く茹だり、徐々に瞳から光が霞む。咽頭を塞ぐ時間、呼吸を許すタイミングを少しずつ調整してやればいい。口吸いはそれから数十分もの間続けられた。毛深い剛腕に爪を立てていた手はただ添えるだけのものになり、舌を蠢かせれば下腹をびくつかせて薄い精を吐く。猿の唾液が塗された口内が酷く敏感になっているのだ。
 幡はこく、こくと喉を鳴らし、伝う生ぬるい体液を飲み下した。鋭い双眸は色に濁り、皮膚に風が触れるだけでも苦しげに身を捩る。見上げた獣は非常に愉快そうで、それが無性に腹立たしかった。未だずるずると口腔内を舐め回して遊ぶ舌を噛み切ろうとするが、顎に力が入らず愛撫の真似事のようになってしまう。……腹筋を内側から押し上げるそれは、未だ硬く猛ったままだ。ピン留めされた虫けらのように動きを封じられている。
 「ぷはっ……はぁ……っ♡はっ…………、ぁ……♡」
 ようやく舌が引き抜かれたとき、生臭い息と共に感じたのは奇妙な喪失感だった。喉の奥がスカスカして寂しい。可笑しいことだとわかっていたが、幡は組み敷いてくる獣の腕に抗うことができなくなっていた。かろうじて顔を背けるけれどそれまでだ。ぼんやりと全身に熱感が宿り、じゅわじゅわと淫毒の回る感覚に溺れていく。
 「…………あっ」
 また深くを侵される。敷布に皺を作りながら、幡は腰をうねらせてか細い産声をあげた。
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