さるのゆめ

トマトふぁ之助

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祠いり

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 泥濘を突く音と共に熱に浮かされた喘ぎが上がる。騎乗位で深く繋がったまま、秋斗は倒れないよう必死になって主の腹筋に手をついた。
 「あっあっあっ♡いぃっ♡!すご、ぁ、おッ♡!!」
 がちゅんと腰を掴まれての一突き。視界に火花が散った。肘から手先が痺れてかくかくと揺れる。
 「ぁああああンッ♡♡♡!!」
 「ゥヴッ♡!!ォオオッ……!!」
 猿の巨根が青年の薄い腹を内から膨らませている。奥深くまでしっかりとねじ込み、その最奥の肉へと穂先を押し付ければ、感覚を麻痺させる刺激的な放埒が始まった。びゅくびゅく脈打つ竿の血管さえ焼鏝のように押し付けられ、秋斗は上体をくねらせて悲鳴を上げた。
 「あ、熱いぃ……っ♡はぁ、はぁあッ……♡それ、だめって…………、ぁ、あっん……」
 こうして注がれるのは何度目だろうか。肉欲に湿気った頭でぼんやりと考えるが当然思い出すことはできない。ここへ連れてこられてから昼夜を問わずずっと繋がっていられて、頭のてっぺんから爪先まで得体の知れない幸福感に浸されていた。
 「ぁーっ……!!……ンぁん!きたぁ……ッ♡きちゃ、ふぁあ……ッ♡♡♡」
 じわじわと腹部に溜まる熱へ感覚を研ぎ澄ます。まるで麻薬だ。精液を注がれると、体が酒に酔ったように火照っていく。数分かけて注ぎ込む癖に、この猿はわざわざそれを鰓で掻き出して行為を続けた。肉をかき分ける度精が染み入っていくようで秋斗は怖かった。全身の皮膚感覚ばかり鋭敏になって、気がおかしくなってしまう。
 「……ぁっ、あっ……また……♡」
 この方の肉棒は中折れしない。人には到底敵わない持続力で秋斗を苛み続ける。芯に骨が通っているのだと、連れてこられた日の朝、奉仕をする際に気がついた。戸惑いとは逆に、肉洞はすっかり熱を持って異形ペニスに吸い付いてみせる。とっくに腰の限界がきていた。毛むくじゃらの大きな手に支えられ、秋斗は仰向けに寝転がる。
 「ん、ぅむっ♡ちゅ、んふ、ちゅ……」
 毛量の多い筋肉質な腕。分厚い皮膚の感触に青年はうっとりと目を細める。体格差のせいでキスしながら繋がると半分ほど抜けてしまうが、楽な姿勢で浅い場所を擦られつつ舌を慰撫されるのはたまらない。
 気持ちいい。信じて委ねて、捧げ奉る。
 短い黒髪の生え際を撫でさすられながら、秋斗は肉の悦びに溺れていった。

 『おそらく件の祟り神はかつての村から移動している』
 某県××町、幡は山裾のとある町を訪れていた。夜陰に乗じて住民の誰とも顔を合わせることなく潜入することができたため、計画通りに山道へ歩みを進める。
 『伝承の通りお申様と呼ぼうか。今までに類を見ない力を持った敵だ。土地を干上がらせ、それでいて米を枯らさず住まう者を豊かにした過去から考えるに、お申様は天候を操れる。土地に力を送って作物を実らせることもできるのだろう』
 兄の静は淡々と告げる。
 『そんなんアリかよ……』
 『収穫した米から酒を造らせ、土地の人間に飲ませて支配している可能性も高い。秋斗君の持っていた地図を見ろ。印から南下してすぐの位置に大きな町がある。ここ一帯をどう思う』
 『……異様に酒蔵が多いな』
 『調べてもらったところ、酒造関係の家は皆一様に豪邸だ。そして猿の像を神棚へ掲げていることがわかった。十中八九猿の信者だ』
 長い指が地図の表面を滑る。酒造店や酒蔵、酒に関する施設を示すのだろう赤いばってんがひしめくように集中していた。
 『田舎の割には治安が悪い町だそうだ。近所付き合いでの揉め事、肉親同士の暴力沙汰がしょっちゅう起こっている』
 どこから調べてきたのか新聞の切り抜きを数枚手渡される。なるほど血生臭い事件がいくつも起きていた。どれもこれも判然としない動機の事件である。
 『……百年周期で。この町の周辺から多くの行方不明者が出ている……。町の中からではない。この土地を中心として近隣の土地から四十人弱だ。おそらく日の目にあたっていない事件も合わせると被害者の数は』
 四十八人。
 静は袈裟を軽く叩いて立ち上がった。
 『幡よ。お前にやってもらうことがある』

 闇が深い。夏の暑さも鬱陶しいが、日も照っていない癖に大地から湿った熱気が昇ってきて、幡は鼻を啜り上げた。
 「くそっ!!匂いがわかりづれえ」
 鼻が効かなくて苛々した。他人の夢を介して狼藉された時は感じ取れなかったけれど、この町に来てみれば生臭いような甘いような、独特の匂いが鼻をついた。匂いのもとにお申様がいる、と幡は直感的に理解した。善悪に関わらず、霊力の高いものを青年の五感は拾ってしまう。
 例えば、鬱蒼と茂る草木の合間から、薄く溢れる灯りのように。
 「…………なんだあれ」
 少し視線を持ち上げた先に、祠造りの建物を見つけた。青白く煙りがかって消えそうに光っている。
 「……ぁ……、……っ……」
 「誰かいるのか?」
 ゆっくりと近寄り、しっかりとした御影石の土台に手をかけた時だ。遠くからでは聞き取れなかった屋内の喘ぎを耳がはっきりと捉えた。
 「あんっ♡ぁっ♡いくっいくいくゥッ♡♡♡!!」
 「……!?」
 石段をつけられた祠はせいぜいが十畳程度の木造である。爪先立ちをしてようやく中を覗ける高さに採光用の窓から、青年は幼馴染の喘ぎ散らす様を目撃した。……久しぶりに見る秋斗は顔を真っ赤にして猿に跨り腰を振りたくっている。騎乗位で悠々と秋斗を掘り込んでいるのは夢で見た大柄な猿だ。上背二メートルは越える長躯に鋼のような筋肉で覆われた上半身、焦茶の剛毛は鎖帷子のようだった。
 「……っひぃいッ♡!!あついぃっ♡!!もうむり、中に出さないでぇッ♡♡♡!!」
 秋斗は狂乱していた。体を離そうとする仕草は見せないが、熱に浮かされた顔で必死に叫んでいる。友の叫びに幡が動こうとした瞬間、巨猿ががっしりと秋斗の薄い尻を捕まえ、倍ほどの厚みもある腰を身震いさせた。
 「……ッ……は、……ぁンっ……」
 「……~~~っ!!」
 歯軋りする幡の気持ちなど知りもせず、祠の中で猿は気持ちよさそうに精を放った。跨ったまま前傾する秋斗の腕をホールドして何度も執拗に腰をびくつかせている。秋斗自身も瞳を蕩して、びゅるびゅると注がれているだろう精液に酔っていた。やがて精を注ぎ終えた猿が獲物から杭を引き抜いた。腹を突き破りそうな巨根に幡は慄く。
 ……床へ横たえられた秋斗がゆっくり身を起こして禍々しい異形ペニスに口付けたときなど、喉が詰まったような感覚を覚えた。
 「んく、ちゅう、はん……っ♡じゅ、じゅるるっ」
 「オオォッ……♡!!」
 大猿はといえば、胡座を描いた姿勢で秋斗の奉仕に感じ入っている。口には到底収まり切らないそれを恭しく舐める頭を犬のように撫で、悦に浸っているらしかった。陶酔しきった秋斗のフェラチオと雄猿の喘ぎ。どれだけ溜め込んでいるのか、猿は一際大きく吠えると秋斗の顔目掛けて勢いよく顔射した。
 「……もう。お昼からずっとしてるのに……すっげえ……♡」
 黄色みがかった粘液を舐めとる秋斗の顔は疲弊していたが、そこに一切の嫌悪はなかった。ただ恋する小娘のように笑って猿へとしなだれかかる。猿の方も低く唸り、仰々しく床へ放られた着流しを彼の体にかけた。まるで行為の後添い寝する恋人のようだ。
 秋斗、と声をかけようとしたその時だ。
 祠を覗き見る幡の頭に衝撃が走った。呻いて振り向こうとしたが視界が閉ざされる。布袋を被せられたことだけがわかった。
 「……なんだぁこいつは」
 「とりあえず締めとくべ。さるさまに委ねよう」
 とどめを刺すように二度目の殴打が降ってきた。視界がぐるりと白に沈む。
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