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第五章
あの人を追いかけて5
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「私は人攫いの方に……」
先に答えを出したのはミュリウォだった。
ミュリウォはわずかに打算的な考えから答えを出していた。
トーイは身体的な能力の高い人ではない。
奴隷として魅力的かと問われれば奴隷にするにはやや貧弱さが目立ってしまう。
となれば売れ残る可能性も考えられた。
人攫いの元にいるのは低い可能性だが、リュードよりもトーイの方がそうした売れ残っている可能性もあり得なくもないのだ。
トーイが人攫いのところにいるかもしれないのなら確かめたいとミュリウォは考えた。
「悪い人たちを放ってはおけないし、まだ捕まっている人もいるかもしれない。だから私も人攫いのところに行くべきだと思う」
ラストも人攫いの方に行くことに賛成した。
リュードならどうするか。
ルフォンとラストの基本的な行動の指針はそれだった。
リュードを助けることの他にリュードだったらどう行動するか、リュードに胸を張って何があったかを報告出来るかを考えていた。
人攫いにリュードのことを確かめるのも必要なことだし、人攫いがさらって捕らえている人がまだいるかもしれない。
助けられるべき人がいるなら助けるべき。
リュードならそうするかもしれないとラストは考えていた。
「……行こうか」
ラストの言葉を受けてルフォンが大きくうなずいた。
丸めた書類を伸ばして人攫いについて確認する。
場所としては少し戻ることになり、マヤノブッカから遠ざかる。
たまたま距離的にはそんなに遠くないので行って帰ってきてマヤノブッカに向かっても大丈夫そうではある。
情報ギルドが調べてくれた内容によると人攫いは元々山賊のような荒れた人の集まった集団だった。
リーダーはそれなりに有名な犯罪者で暴力などで指名手配されているほどの人物である。
道ゆく人に対して盗みや脅迫を繰り返していたのに最近人攫いにも手を出した。
経緯は不明だが貴族の大会のために人攫いをしているとみられると最後に書いてあった。
「……とりあえず行ってみよう」
リュードを知っている知らないは聞いてみなきゃ分からない。
ルフォンたちは人攫いの方に向かうことにした。
ーーーーー
スデアントという都市に人攫いが潜伏していると報告書には書いてあった。
今は使われていない古い劇場を拠点にしているという軽い下調べまで情報ギルドはしてくれていた。
「わ、私も行きます!」
もし仮にトーイがいた場合ミュリウォがいればすぐに分かる。
危険は伴うがミュリウォも一緒に行くことになった。
「出来るだけ後ろに下がっててね。私ちょっと感情をコントロール出来ないかもしれないから」
ルフォンが目を閉じるとリュードの姿がまぶたに浮かぶ。
人攫いによって眠らされたルフォンたちは何もすることができずにリュードを誘拐されてしまった。
そのことを思い出すとフツフツと怒りが湧き上がってくる。
悪いことするなら顔を隠すか魔人化してしまえ。
リュードはそう言った。
旅に出て分かったのだが真人族の間で竜人族や人狼族の魔人化した容姿はあまり知られていなかった。
言えば分かるのかもしれないがパッと見てあれが魔人化した人狼族だとすぐに断言できる人は少ないのだ。
トゥジュームに来るなど二度とないだろうから別にバレても構わないが動きにくくなるのは面倒だ。
ラストとミュリウォは顔を隠して、ルフォンは魔人化する。
問題になった時のリスクを少しでも減らすためではあるけれど、ルフォンは余計な交渉などするつもりはないという表れでもあった。
鍵もかかっていない劇場のドアを開けてルフォンを先頭にして中に入っていく。
「だいぶ儲かりましたね!」
「そうだな、これならしばらくは遊んで暮らせそうだ!」
劇場の古い客席でお金を数えて人攫いたちが笑い合っている。
人攫いの手元にあったのは奴隷のオークションで得られた利益だけじゃない。
人攫いをしてオークションをしてほしいなんて変な依頼があって、それで得られた金もまた大金だった。
全員で分けてもそれぞれが遊んで暮らしていけるほどに儲かった。
底辺で犯罪行為を繰り返して生きてきたがこれで足が洗えると思っていた。
「ん、なんだ?」
一人の人攫いが気づいた。
劇場の入り口が開いて黒い影のようなものが入ってきた。
人のようだけどなんだかやたらとモコモコしていて姿がよく見えない。
なんだろうと確かめようと目を凝らした次の瞬間暗い影は影は消えた。
「誰が知ってるかは分からないから出来るだけ殺さないようにするよ」
「分かった」
冷静に聞こえる二人の声がミュリウォには怖かった。
ルフォンら警告も何もなく無言で人攫いたちに飛びかかった。
ルフォンに気づいた人攫いの肩にナイフを突き刺して、引き寄せて顔面に膝を入れる。
「な、なんだ!」
「て、敵だ!」
突然現れた黒い人影。
単純に魔人化したルフォンなのだが窓を板で塞いだ薄暗い劇場の中ではルフォンの全貌を把握することはできていなかった。
人攫いたちは一斉に立ち上がったが、その時にはルフォンは次の相手を殴りつけていた。
「一人じゃないぞ!」
全員の視線がルフォンに集中しているので誰も気づいていなかったがラストも劇場の中に入っていた。
ラストの矢が肩を貫いて人攫いの1人がうめき声を上げて倒れる。
一方的でためらいもなく人を倒していく。
殺しはしていないが腕の一本ぐらいは切り落とされた人もいてミュリウォは影に隠れながら吐きそうになるのを堪えていた。
人攫いが剣を構えた時、残っていたのはあと一人だけだった。
ルフォンが正面に立ち、ラストが後ろから弓を構える。
「て、てめえ、何者だ! 何がしたくてこんなことする!」
とてもじゃないが勝てる相手ではないと人攫いは悟る。
せめて自分だけでも助かりたいと目的を探ろうとする。
先に答えを出したのはミュリウォだった。
ミュリウォはわずかに打算的な考えから答えを出していた。
トーイは身体的な能力の高い人ではない。
奴隷として魅力的かと問われれば奴隷にするにはやや貧弱さが目立ってしまう。
となれば売れ残る可能性も考えられた。
人攫いの元にいるのは低い可能性だが、リュードよりもトーイの方がそうした売れ残っている可能性もあり得なくもないのだ。
トーイが人攫いのところにいるかもしれないのなら確かめたいとミュリウォは考えた。
「悪い人たちを放ってはおけないし、まだ捕まっている人もいるかもしれない。だから私も人攫いのところに行くべきだと思う」
ラストも人攫いの方に行くことに賛成した。
リュードならどうするか。
ルフォンとラストの基本的な行動の指針はそれだった。
リュードを助けることの他にリュードだったらどう行動するか、リュードに胸を張って何があったかを報告出来るかを考えていた。
人攫いにリュードのことを確かめるのも必要なことだし、人攫いがさらって捕らえている人がまだいるかもしれない。
助けられるべき人がいるなら助けるべき。
リュードならそうするかもしれないとラストは考えていた。
「……行こうか」
ラストの言葉を受けてルフォンが大きくうなずいた。
丸めた書類を伸ばして人攫いについて確認する。
場所としては少し戻ることになり、マヤノブッカから遠ざかる。
たまたま距離的にはそんなに遠くないので行って帰ってきてマヤノブッカに向かっても大丈夫そうではある。
情報ギルドが調べてくれた内容によると人攫いは元々山賊のような荒れた人の集まった集団だった。
リーダーはそれなりに有名な犯罪者で暴力などで指名手配されているほどの人物である。
道ゆく人に対して盗みや脅迫を繰り返していたのに最近人攫いにも手を出した。
経緯は不明だが貴族の大会のために人攫いをしているとみられると最後に書いてあった。
「……とりあえず行ってみよう」
リュードを知っている知らないは聞いてみなきゃ分からない。
ルフォンたちは人攫いの方に向かうことにした。
ーーーーー
スデアントという都市に人攫いが潜伏していると報告書には書いてあった。
今は使われていない古い劇場を拠点にしているという軽い下調べまで情報ギルドはしてくれていた。
「わ、私も行きます!」
もし仮にトーイがいた場合ミュリウォがいればすぐに分かる。
危険は伴うがミュリウォも一緒に行くことになった。
「出来るだけ後ろに下がっててね。私ちょっと感情をコントロール出来ないかもしれないから」
ルフォンが目を閉じるとリュードの姿がまぶたに浮かぶ。
人攫いによって眠らされたルフォンたちは何もすることができずにリュードを誘拐されてしまった。
そのことを思い出すとフツフツと怒りが湧き上がってくる。
悪いことするなら顔を隠すか魔人化してしまえ。
リュードはそう言った。
旅に出て分かったのだが真人族の間で竜人族や人狼族の魔人化した容姿はあまり知られていなかった。
言えば分かるのかもしれないがパッと見てあれが魔人化した人狼族だとすぐに断言できる人は少ないのだ。
トゥジュームに来るなど二度とないだろうから別にバレても構わないが動きにくくなるのは面倒だ。
ラストとミュリウォは顔を隠して、ルフォンは魔人化する。
問題になった時のリスクを少しでも減らすためではあるけれど、ルフォンは余計な交渉などするつもりはないという表れでもあった。
鍵もかかっていない劇場のドアを開けてルフォンを先頭にして中に入っていく。
「だいぶ儲かりましたね!」
「そうだな、これならしばらくは遊んで暮らせそうだ!」
劇場の古い客席でお金を数えて人攫いたちが笑い合っている。
人攫いの手元にあったのは奴隷のオークションで得られた利益だけじゃない。
人攫いをしてオークションをしてほしいなんて変な依頼があって、それで得られた金もまた大金だった。
全員で分けてもそれぞれが遊んで暮らしていけるほどに儲かった。
底辺で犯罪行為を繰り返して生きてきたがこれで足が洗えると思っていた。
「ん、なんだ?」
一人の人攫いが気づいた。
劇場の入り口が開いて黒い影のようなものが入ってきた。
人のようだけどなんだかやたらとモコモコしていて姿がよく見えない。
なんだろうと確かめようと目を凝らした次の瞬間暗い影は影は消えた。
「誰が知ってるかは分からないから出来るだけ殺さないようにするよ」
「分かった」
冷静に聞こえる二人の声がミュリウォには怖かった。
ルフォンら警告も何もなく無言で人攫いたちに飛びかかった。
ルフォンに気づいた人攫いの肩にナイフを突き刺して、引き寄せて顔面に膝を入れる。
「な、なんだ!」
「て、敵だ!」
突然現れた黒い人影。
単純に魔人化したルフォンなのだが窓を板で塞いだ薄暗い劇場の中ではルフォンの全貌を把握することはできていなかった。
人攫いたちは一斉に立ち上がったが、その時にはルフォンは次の相手を殴りつけていた。
「一人じゃないぞ!」
全員の視線がルフォンに集中しているので誰も気づいていなかったがラストも劇場の中に入っていた。
ラストの矢が肩を貫いて人攫いの1人がうめき声を上げて倒れる。
一方的でためらいもなく人を倒していく。
殺しはしていないが腕の一本ぐらいは切り落とされた人もいてミュリウォは影に隠れながら吐きそうになるのを堪えていた。
人攫いが剣を構えた時、残っていたのはあと一人だけだった。
ルフォンが正面に立ち、ラストが後ろから弓を構える。
「て、てめえ、何者だ! 何がしたくてこんなことする!」
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