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第五章
諦めぬ意思を持つ仲間3
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「そのまま、続けて」
「は、はい……」
ナイフよりももっと鋭いルフォンの眼差しに女性はウッとたじろぐ。
話を聞く気にはなったが、なぜそのことを知っていてなぜそれについての話がしたくて接近してきたのか。
少しでも怪しい動きをしたら腕の一本ぐらい切り落として無理矢理話を聞き出すぐらいのつもりでいた。
「私も……私も人攫いを探しているんです。私の婚約者も誘拐されてしまったんです!」
「……続けて」
ルフォンの殺気が若干弱くなる。
「けれど人攫いが出るという噂しかなく、誰に聞いてもそのことを話してくれなくて……そんな時にギルドで人攫いについて聞いているところをたまたま目撃しまして……私と同じ境遇なら何か助け合えることはないかと、思いまして。
尾行してしまったことは申し訳ありません……どうお声がけしたらいいのか分からなくて」
もしかしてあなたも人攫いに大事な人を攫われましたかなどと声をかけることなんてできない。
良いタイミングと良い声の掛け方を探っているうちにルフォンたちが移動を始めてしまい、結果的に尾行する形で声をかけるタイミングがないかを見ていたのだ。
素人の尾行なんてルフォンには通じない。
ラストはルフォンをキラキラした目で見ていたから気づいていなかったけれど、ルフォンは尾行されていることに気づいていた。
てっきり人攫いに関わった何か危ないものだと思った。
だけど人攫いに関わってはいるけれど危ないものではなかった。
「な、何かお話でも聞くことができたらと思ったんですがすいませんでした……」
「なるほどね。話は分かった。尾行のことは許すよ。あなたのこととかその人攫いのこととか聞かせて」
「分かりました……」
立ち話もなんなのでルフォンたちが泊まる宿でお話をすることにした。
女性の名前はミュリウォ。
そしてミュリウォの婚約者の名前はトーイと言った。
二人は仕事の関係でたまたま知り合い、ミュリウォがトーイの優しいところに惹かれて付き合い始めて、今では結婚を約束する間柄にまでなった。
この国は悪い国ではないけれど男性の立場がやや低いと言わざるを得ない。
そこでミュリウォが元々他国の出身でもあったことから結婚を機に別の国で新しくやり直すことを決めた。
ミュリウォの故郷の国に行ってささやかな結婚式をして二人で協力して暮らしていくつもりだった。
仕事も辞め、家を引き払って国を出ていこうと移動していた時にトーイが人攫いに連れ去れてしまった。
「その時はなぜなのか妙に眠くなって頭がぼんやりとしていました……。気づいたらトーイはいなくなっていて…………」
その時は寄り合いの馬車に乗って移動していた。
男性はトーイともう一人いたのだがそのどちらもいなくなっていた。
ミュリウォはギルドや国の警備兵にも相談した。
けれど別の男を見つければいいなんて慰めにもならない言葉をかけられてミュリウォの話に取り合ってもくれなかった。
「どうしたらいいのか……」
ポトリとミュリウォの膝に涙が落ちた。
ミュリウォの状況はルフォンたちと同じ状況であった。
同じ犯人であることは推測できるし、どのような気持ちでいたのかは想像に難くない。
「でも……私は諦めたくないんです」
しかし一人でもミュリウォは諦めなかった。
人攫いのことを聞いて回り、調べた。
そんなミュリウォを憐れんだギルド員がこっそりと貴族が関わっているので手を退くことを忠告してくれた。
そこからミュリウォは探すのをやめるのではなく、貴族が関わっているなら関わる理由があるはずだと貴族の方に探りを入れ出した。
何か少しでも糸口が見付かればと思った。
本来一般的な市民であるミュリウォに貴族を調べる術なんてないのであるが、ミュリウォはたまたま前職のツテがあった。
たまたま攫われた所の近くの町に知り合いがいて、泣きそうな顔をして頭を下げるミュリウォのために一肌脱いでくれた。
「どうやら、貴族の方々には危ない趣味があるようです」
「危ない趣味?」
「はい。トゥジュームの女性貴族たちは自分達が抱える男性たちを競わせてどの男性が1番であるのかを決める催しというか大会というのかを開催しているらしいんです」
貴族の危ない趣味と聞いて、裸でムチで叩かれるリュードの姿を想像したラストは変な想像を1人でしてしまったことに顔を赤くする。
ムチの練習をしていたラストに昔メイドさんがそのような危ない趣味を持つ人もいるなんて教えてくれたのだ。
なぜなのか今そんなことを思い出してしまったのだ。
「それでその危ない趣味の大会が近々行われるらしいのです。それも今回は主催者がとんでもない景品を用意しているとかで貴族たちは目の色を変えて優勝出来そうな男を探しているとか……」
その男探しに使っているのが人攫いなのではないかとミュリウォは睨んでいる。
その大会はウラの遊びなので表立ってそんなことをするので集まれと男を募集はできない。
なのでリスクは伴うが男を集めるために人攫いのようなものの組織なりを支援して派手にやらせているのではないかと推測していた。
「ここまで調べたのですが、ここからは私の力では……」
友人もよくやってくれた方である。
ただ秘密の催しそのものを調べるには危険が伴いすぎる。
これ以上は巻き込むこともできなかった。
そうしてまた行き詰まってしまったのだ。
「は、はい……」
ナイフよりももっと鋭いルフォンの眼差しに女性はウッとたじろぐ。
話を聞く気にはなったが、なぜそのことを知っていてなぜそれについての話がしたくて接近してきたのか。
少しでも怪しい動きをしたら腕の一本ぐらい切り落として無理矢理話を聞き出すぐらいのつもりでいた。
「私も……私も人攫いを探しているんです。私の婚約者も誘拐されてしまったんです!」
「……続けて」
ルフォンの殺気が若干弱くなる。
「けれど人攫いが出るという噂しかなく、誰に聞いてもそのことを話してくれなくて……そんな時にギルドで人攫いについて聞いているところをたまたま目撃しまして……私と同じ境遇なら何か助け合えることはないかと、思いまして。
尾行してしまったことは申し訳ありません……どうお声がけしたらいいのか分からなくて」
もしかしてあなたも人攫いに大事な人を攫われましたかなどと声をかけることなんてできない。
良いタイミングと良い声の掛け方を探っているうちにルフォンたちが移動を始めてしまい、結果的に尾行する形で声をかけるタイミングがないかを見ていたのだ。
素人の尾行なんてルフォンには通じない。
ラストはルフォンをキラキラした目で見ていたから気づいていなかったけれど、ルフォンは尾行されていることに気づいていた。
てっきり人攫いに関わった何か危ないものだと思った。
だけど人攫いに関わってはいるけれど危ないものではなかった。
「な、何かお話でも聞くことができたらと思ったんですがすいませんでした……」
「なるほどね。話は分かった。尾行のことは許すよ。あなたのこととかその人攫いのこととか聞かせて」
「分かりました……」
立ち話もなんなのでルフォンたちが泊まる宿でお話をすることにした。
女性の名前はミュリウォ。
そしてミュリウォの婚約者の名前はトーイと言った。
二人は仕事の関係でたまたま知り合い、ミュリウォがトーイの優しいところに惹かれて付き合い始めて、今では結婚を約束する間柄にまでなった。
この国は悪い国ではないけれど男性の立場がやや低いと言わざるを得ない。
そこでミュリウォが元々他国の出身でもあったことから結婚を機に別の国で新しくやり直すことを決めた。
ミュリウォの故郷の国に行ってささやかな結婚式をして二人で協力して暮らしていくつもりだった。
仕事も辞め、家を引き払って国を出ていこうと移動していた時にトーイが人攫いに連れ去れてしまった。
「その時はなぜなのか妙に眠くなって頭がぼんやりとしていました……。気づいたらトーイはいなくなっていて…………」
その時は寄り合いの馬車に乗って移動していた。
男性はトーイともう一人いたのだがそのどちらもいなくなっていた。
ミュリウォはギルドや国の警備兵にも相談した。
けれど別の男を見つければいいなんて慰めにもならない言葉をかけられてミュリウォの話に取り合ってもくれなかった。
「どうしたらいいのか……」
ポトリとミュリウォの膝に涙が落ちた。
ミュリウォの状況はルフォンたちと同じ状況であった。
同じ犯人であることは推測できるし、どのような気持ちでいたのかは想像に難くない。
「でも……私は諦めたくないんです」
しかし一人でもミュリウォは諦めなかった。
人攫いのことを聞いて回り、調べた。
そんなミュリウォを憐れんだギルド員がこっそりと貴族が関わっているので手を退くことを忠告してくれた。
そこからミュリウォは探すのをやめるのではなく、貴族が関わっているなら関わる理由があるはずだと貴族の方に探りを入れ出した。
何か少しでも糸口が見付かればと思った。
本来一般的な市民であるミュリウォに貴族を調べる術なんてないのであるが、ミュリウォはたまたま前職のツテがあった。
たまたま攫われた所の近くの町に知り合いがいて、泣きそうな顔をして頭を下げるミュリウォのために一肌脱いでくれた。
「どうやら、貴族の方々には危ない趣味があるようです」
「危ない趣味?」
「はい。トゥジュームの女性貴族たちは自分達が抱える男性たちを競わせてどの男性が1番であるのかを決める催しというか大会というのかを開催しているらしいんです」
貴族の危ない趣味と聞いて、裸でムチで叩かれるリュードの姿を想像したラストは変な想像を1人でしてしまったことに顔を赤くする。
ムチの練習をしていたラストに昔メイドさんがそのような危ない趣味を持つ人もいるなんて教えてくれたのだ。
なぜなのか今そんなことを思い出してしまったのだ。
「それでその危ない趣味の大会が近々行われるらしいのです。それも今回は主催者がとんでもない景品を用意しているとかで貴族たちは目の色を変えて優勝出来そうな男を探しているとか……」
その男探しに使っているのが人攫いなのではないかとミュリウォは睨んでいる。
その大会はウラの遊びなので表立ってそんなことをするので集まれと男を募集はできない。
なのでリスクは伴うが男を集めるために人攫いのようなものの組織なりを支援して派手にやらせているのではないかと推測していた。
「ここまで調べたのですが、ここからは私の力では……」
友人もよくやってくれた方である。
ただ秘密の催しそのものを調べるには危険が伴いすぎる。
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そうしてまた行き詰まってしまったのだ。
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