人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

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第四章

灰色の汗と白い肌4

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「終わったよー」

 足を無理矢理持ち上げるのは危険が伴うので無理せず塗れるところだけを塗った。
 クゼナは恥ずかしさも忘れ、枕に顔を押し付けて薬が石化を治していく熱さに耐える。

「ぐっ……うぅ!」

 冷たい水に足を突っ込んで冷やしたい。
 薬を拭い取ってしまいたい。

 そんな衝動に耐えていると足の石化が薄くなっていく。

「おおっ……すごい」

「ただやっぱりこれだけじゃ厳しいか」
 
 進行が進んだ足の方は1回では石化が普通に戻り切らない。
 塗るだけで治ればよかったのだけどそう簡単にはいかない。

「クゼナ、これから針を打つから出来るだけ動かないでくれ」

「分かった……けど私の体どうなってるの?」

「薬が効いてる。もう少しだけ我慢してくれ」

「ほ、本当!? ……じゃあ頑張る!」

 リュードは薬につけておいた針を取り出す。
 針といっても裁縫なんかに使うものよりもはるかに細く、打ち方を間違えなければ体に痛みもない極細の針である。

 流石のリュードも緊張する。

「いくぞ、動くなよ」
 
 ゆっくりと深呼吸してクゼナの体に針を打ち込む。
 習いはしたけれど針治療というのはメジャーなやり方じゃない。
 
 さらに人に施術したことも数えるほどしかない。
 針の主な役割は少量の薬を直接体内に入れながらツボを刺激して血行を促進することにある。
 
 針につくほんの僅かな薬の量がキモとなるのだ。
 多く体内に薬を入れてしまうとそれだけでクゼナは体が持たなくなる。

 ルフォンとラストが固唾を飲んで見守る中リュードは1本1本針を打っていく。

「くぅ……」

 クゼナが枕を掴む手に力が入る。
 針そのものは多分痛みがないのだけど、針に塗られた薬のせいで針を打たれたところがひどく熱く感じられる。

 打たれるたびに熱いところが増えて、打たれたところの熱が広がっていって全身が燃えるような熱さを感じている。
 歯を食いしばって耐える。

 無事に治ったら食べ歩きでもするんだ。
 自分の足が自由に動いて、石化していない頬を晒して外を歩くんだ。

 そう自分に言い聞かせてクゼナは耐える。
 耐えるクゼナの体が玉のような汗をかき始める。
 
 けれどそれは透明無色な汗ではなく、濁った灰色をした奇妙な汗だった。

「よし針は終わりだ」

 全ての針を問題なく打ち終えた。
 リュードは大きく息を吐いて自分の汗を拭う。

 少し時間を置いて針と薬の効果が浸透するのを待ってリュードは針を回収していく。

「2人とも拭いてあげて」

 回収したところから灰色の汗を拭くようにルフォンとラストにお願いする。
 汗が垂れてシーツに染み込まれて灰色のシミを作る。

 クゼナの息は荒く、続々と灰色の汗が出てきて止まらない。
 タオルはあっという間に灰色の汗ではびしゃびしゃになり、拭くのが追いつかないぐらいだった。

 リュードは二人に拭くことは任せて針の処理をする。
 他の人が薬に触れたら危ないからよく針を拭き取ってしまっておく。

 クゼナは体が溶けてしまいそうな熱さを耐えに耐える。

「ねえ、これって大丈夫なの?」

「大丈夫……だと思うけど」

 不安そうなラストを安心させるように断言できない。
 なんせリュードも初めてだからこれが正しい反応と言い切れないのだ。

「だと思うけどって何!」

 クゼナが耐えているものが熱さだとリュードは分かっていない。
 痛みがあるものだと思っているので大きな違いでなくても体験したことがないのでクゼナの気持ちを理解はしきれない。

 ベッドがこんなことになるなんて予想していなかった。
 滝のように灰色の汗をかいてしまっているせいでベッドはいつの間にか灰色に染まってきている。

 こんなことになると分かっていたならもっと別の場所でやったのにと思う。
 顔からも汗が吹き出しているので枕も気づいたら灰色になっている。

 体は大丈夫でも寝具は総とっかえが必要だなとリュードは灰色になったベッドシーツを見て思った。
 
「あとはクゼナ次第だ」

 どうなるのか。
 それはクゼナが耐えてみないと分からないのであった。
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