280 / 377
第四章
灰色の汗と白い肌4
しおりを挟む
「終わったよー」
足を無理矢理持ち上げるのは危険が伴うので無理せず塗れるところだけを塗った。
クゼナは恥ずかしさも忘れ、枕に顔を押し付けて薬が石化を治していく熱さに耐える。
「ぐっ……うぅ!」
冷たい水に足を突っ込んで冷やしたい。
薬を拭い取ってしまいたい。
そんな衝動に耐えていると足の石化が薄くなっていく。
「おおっ……すごい」
「ただやっぱりこれだけじゃ厳しいか」
進行が進んだ足の方は1回では石化が普通に戻り切らない。
塗るだけで治ればよかったのだけどそう簡単にはいかない。
「クゼナ、これから針を打つから出来るだけ動かないでくれ」
「分かった……けど私の体どうなってるの?」
「薬が効いてる。もう少しだけ我慢してくれ」
「ほ、本当!? ……じゃあ頑張る!」
リュードは薬につけておいた針を取り出す。
針といっても裁縫なんかに使うものよりもはるかに細く、打ち方を間違えなければ体に痛みもない極細の針である。
流石のリュードも緊張する。
「いくぞ、動くなよ」
ゆっくりと深呼吸してクゼナの体に針を打ち込む。
習いはしたけれど針治療というのはメジャーなやり方じゃない。
さらに人に施術したことも数えるほどしかない。
針の主な役割は少量の薬を直接体内に入れながらツボを刺激して血行を促進することにある。
針につくほんの僅かな薬の量がキモとなるのだ。
多く体内に薬を入れてしまうとそれだけでクゼナは体が持たなくなる。
ルフォンとラストが固唾を飲んで見守る中リュードは1本1本針を打っていく。
「くぅ……」
クゼナが枕を掴む手に力が入る。
針そのものは多分痛みがないのだけど、針に塗られた薬のせいで針を打たれたところがひどく熱く感じられる。
打たれるたびに熱いところが増えて、打たれたところの熱が広がっていって全身が燃えるような熱さを感じている。
歯を食いしばって耐える。
無事に治ったら食べ歩きでもするんだ。
自分の足が自由に動いて、石化していない頬を晒して外を歩くんだ。
そう自分に言い聞かせてクゼナは耐える。
耐えるクゼナの体が玉のような汗をかき始める。
けれどそれは透明無色な汗ではなく、濁った灰色をした奇妙な汗だった。
「よし針は終わりだ」
全ての針を問題なく打ち終えた。
リュードは大きく息を吐いて自分の汗を拭う。
少し時間を置いて針と薬の効果が浸透するのを待ってリュードは針を回収していく。
「2人とも拭いてあげて」
回収したところから灰色の汗を拭くようにルフォンとラストにお願いする。
汗が垂れてシーツに染み込まれて灰色のシミを作る。
クゼナの息は荒く、続々と灰色の汗が出てきて止まらない。
タオルはあっという間に灰色の汗ではびしゃびしゃになり、拭くのが追いつかないぐらいだった。
リュードは二人に拭くことは任せて針の処理をする。
他の人が薬に触れたら危ないからよく針を拭き取ってしまっておく。
クゼナは体が溶けてしまいそうな熱さを耐えに耐える。
「ねえ、これって大丈夫なの?」
「大丈夫……だと思うけど」
不安そうなラストを安心させるように断言できない。
なんせリュードも初めてだからこれが正しい反応と言い切れないのだ。
「だと思うけどって何!」
クゼナが耐えているものが熱さだとリュードは分かっていない。
痛みがあるものだと思っているので大きな違いでなくても体験したことがないのでクゼナの気持ちを理解はしきれない。
ベッドがこんなことになるなんて予想していなかった。
滝のように灰色の汗をかいてしまっているせいでベッドはいつの間にか灰色に染まってきている。
こんなことになると分かっていたならもっと別の場所でやったのにと思う。
顔からも汗が吹き出しているので枕も気づいたら灰色になっている。
体は大丈夫でも寝具は総とっかえが必要だなとリュードは灰色になったベッドシーツを見て思った。
「あとはクゼナ次第だ」
どうなるのか。
それはクゼナが耐えてみないと分からないのであった。
足を無理矢理持ち上げるのは危険が伴うので無理せず塗れるところだけを塗った。
クゼナは恥ずかしさも忘れ、枕に顔を押し付けて薬が石化を治していく熱さに耐える。
「ぐっ……うぅ!」
冷たい水に足を突っ込んで冷やしたい。
薬を拭い取ってしまいたい。
そんな衝動に耐えていると足の石化が薄くなっていく。
「おおっ……すごい」
「ただやっぱりこれだけじゃ厳しいか」
進行が進んだ足の方は1回では石化が普通に戻り切らない。
塗るだけで治ればよかったのだけどそう簡単にはいかない。
「クゼナ、これから針を打つから出来るだけ動かないでくれ」
「分かった……けど私の体どうなってるの?」
「薬が効いてる。もう少しだけ我慢してくれ」
「ほ、本当!? ……じゃあ頑張る!」
リュードは薬につけておいた針を取り出す。
針といっても裁縫なんかに使うものよりもはるかに細く、打ち方を間違えなければ体に痛みもない極細の針である。
流石のリュードも緊張する。
「いくぞ、動くなよ」
ゆっくりと深呼吸してクゼナの体に針を打ち込む。
習いはしたけれど針治療というのはメジャーなやり方じゃない。
さらに人に施術したことも数えるほどしかない。
針の主な役割は少量の薬を直接体内に入れながらツボを刺激して血行を促進することにある。
針につくほんの僅かな薬の量がキモとなるのだ。
多く体内に薬を入れてしまうとそれだけでクゼナは体が持たなくなる。
ルフォンとラストが固唾を飲んで見守る中リュードは1本1本針を打っていく。
「くぅ……」
クゼナが枕を掴む手に力が入る。
針そのものは多分痛みがないのだけど、針に塗られた薬のせいで針を打たれたところがひどく熱く感じられる。
打たれるたびに熱いところが増えて、打たれたところの熱が広がっていって全身が燃えるような熱さを感じている。
歯を食いしばって耐える。
無事に治ったら食べ歩きでもするんだ。
自分の足が自由に動いて、石化していない頬を晒して外を歩くんだ。
そう自分に言い聞かせてクゼナは耐える。
耐えるクゼナの体が玉のような汗をかき始める。
けれどそれは透明無色な汗ではなく、濁った灰色をした奇妙な汗だった。
「よし針は終わりだ」
全ての針を問題なく打ち終えた。
リュードは大きく息を吐いて自分の汗を拭う。
少し時間を置いて針と薬の効果が浸透するのを待ってリュードは針を回収していく。
「2人とも拭いてあげて」
回収したところから灰色の汗を拭くようにルフォンとラストにお願いする。
汗が垂れてシーツに染み込まれて灰色のシミを作る。
クゼナの息は荒く、続々と灰色の汗が出てきて止まらない。
タオルはあっという間に灰色の汗ではびしゃびしゃになり、拭くのが追いつかないぐらいだった。
リュードは二人に拭くことは任せて針の処理をする。
他の人が薬に触れたら危ないからよく針を拭き取ってしまっておく。
クゼナは体が溶けてしまいそうな熱さを耐えに耐える。
「ねえ、これって大丈夫なの?」
「大丈夫……だと思うけど」
不安そうなラストを安心させるように断言できない。
なんせリュードも初めてだからこれが正しい反応と言い切れないのだ。
「だと思うけどって何!」
クゼナが耐えているものが熱さだとリュードは分かっていない。
痛みがあるものだと思っているので大きな違いでなくても体験したことがないのでクゼナの気持ちを理解はしきれない。
ベッドがこんなことになるなんて予想していなかった。
滝のように灰色の汗をかいてしまっているせいでベッドはいつの間にか灰色に染まってきている。
こんなことになると分かっていたならもっと別の場所でやったのにと思う。
顔からも汗が吹き出しているので枕も気づいたら灰色になっている。
体は大丈夫でも寝具は総とっかえが必要だなとリュードは灰色になったベッドシーツを見て思った。
「あとはクゼナ次第だ」
どうなるのか。
それはクゼナが耐えてみないと分からないのであった。
11
お気に入りに追加
409
あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。


いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!
果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。
次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった!
しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……?
「ちくしょう! 死んでたまるか!」
カイムは、殺されないために努力することを決める。
そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る!
これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。
本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています
他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました
おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。
※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。
※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・)
更新はめっちゃ不定期です。
※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる