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第四章
最後の挑戦9
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「さて、残るは一体だな!」
もうこうなるとメルトロックゴーレムも敵ではない。
最後なので出し惜しみもしない。
ラストの矢がメルトロックゴーレムの肩に当たって爆発する。
腕が吹き飛んで倒れかけたメルトロックゴーレムにリュードが素早く近づいて真横に切断する。
「これが最後か……」
ラストは思わず呟く。
早く終わらせたかった大人の試練。
大人として認められたかったけど、きっと無理だろうと諦めていた大人の試練がとうとう終わりを迎えようとしている。
(なんで……?)
終わるのは嬉しいこと。
ようやく乗り越えられるはずなのに。
胸が痛い。
ギュッと何かに掴まれでもしたかのように胸が締め付けられて、終わりだと考えることを頭が拒否する。
訳が分からない。
なんでと思う。
こんなダンジョンさっさと終わらせて、自分は周りからも大人として認められるんだと少し前まで考えていたのに終わってほしくないと今は思ってしまうのだ。
「どうして……」
「ラスト!」
「キャッ!」
腕を掴んでリュードがラストを引き寄せる。
上半身と下半身どちらが動くか見ていふと最後の抵抗なのかメルトロックゴーレムが腕を振り回した。
ボンヤリとしていたラストに当たりそうだったのでリュードはラストを引っ張ったのである。
「おいっ、戦いの最中だぞ。大丈夫か? 何かケガでもしてたのか?」
意図せずラストはリュードの胸に抱かれるような体勢になっている。
心配そうな顔をしているリュードを見上げて、不思議な感情の理由が分かった。
「ラスト? 本当に大丈夫か?」
リュードの顔を見ることができなくてトンと胸に顔を預けた。
終わってほしくないんだとラストは気づいた。
まだクゼナの件が残っているとは言ってもリュード一緒にいてくれたのは大人の試練を手伝ってくれるためだ。
大人の試練が終わればリュードとはお別れとなる。
それが大人の試練を乗り越えられる喜びよりも上回って嫌なのだ。
嫌で苦しくて、寂しくて、別れを迎えたくなくて、自分は何とワガママな子なのかとモヤモヤする。
自分がとても悪い子になってしまった気がする。
この期に及んで大人の試練が終わらなければいいのにと思ってしまった。
大人の試練を終わらせるためにリュードは必死に頑張ってくれているのに、ラストはそんな時間が終わってほしくないと考えている。
頬が熱くて、少しだけ泣きそうな気分になる。
今まで生きてきてこんなにワガママなことを考えたことなんてなかった。
「怪我がないならいい……」
ラストの様子がおかしいこともリュードはわかっているけど何も言わない。
震えるラストに何かがあった。
ラストが自ら言う前に聞き出そうとするのは野暮である。
ラストが落ち着くまで待った。
その間、幸いにもメルトロックゴーレムは腕を振り回すだけで再生まで出来なかった。
「……もう大丈夫」
ラストも落ち着いたのでこれまでと同じようにメルトロックゴーレムを細かくしていく。
もはや作業と変わりない。
「おっと、出てきたな」
元は左胸付近だったところをリュードが切り裂いた。
中から赤っぽい拳ぐらいの球が転がり落ちてきた。
メルトロックゴーレムの中から出てきた球なので少し警戒して触ってみたけれど熱くはなかった。
これがメルトロックゴーレムの弱点であるコアだった。
「はい、これで終わりだ」
リュードはコアをラストに手渡す。
メルトロックゴーレムの体が少しずつコアの方に動きいてきていて気持ちが悪い。
「……大丈夫か?」
沈痛な面持ちのラストはリュードの問いかけにゆっくりとうなずく。
もう終わりは止められない。
ここまできたら終わってしまうのだ。
「……長々と…………苦労させやがってー!」
ちゃんと終わらせよう。
ここで終わらせたくなくても終わらせなきゃいけないのだから。
ラストは思い切り叫んでメルトロックゴーレムのコアを全力投球した。
壁に叩きつけられてコアが砕ける。
ガラスが割れるような音がしてコアが壊れて地面に散らばる。
動いていたメルトロックゴーレムの破片たちの動きも止まり、一瞬周りが静まり返る。
そしてメルトロックゴーレムが魔力の粒子となってダンジョンに還りはじめる。
「終わりだな……」
そこら中にバラバラになったメルトロックゴーレムの破片が落ちているので魔力の粒子に包まれて、幻想的な光景が短い間だけど繰り広げられた。
まるで攻略をダンジョンが祝福してくれているようであった。
「おめでとうございます! ……んん、どうかしましたか?」
ボス部屋の扉が開いて、興奮したツィツィナが飛び込んでくる。
道中も含めて文句のつけようのない完璧な攻略だった。
喜んでいるだろうと思ったのだけどラストはなんだか考え込んだ表情をして、ツィツィナの予想とは全く違ったリアクションをしていた。
リュードもラストが浮かない顔をしているのでなんだか喜べないで肩をすくめる。
「なんでもないさ。終わることには喜びもあるけど、寂しさだって感じる奴もいる」
ちょっと当たりだけどちょっと違うリュードのフォローが入ってツィツィナはそんなものかと納得する。
ラストの胸の内にあるのが寂しさだけでないことはリュードよ分かっていない。
だがしかし、これで終わりではない。
帰るまでがダンジョン攻略である。
これがゲームなら外までテレポートでも出来る魔法でも出現するかもしれないけど現実は甘くない。
地下十三階から地上まで戻らなきゃいけないのである。
「そうだね……無事に帰ってこそ、終わり……だね」
階段の位置は入っている間には変わらない。
それに登っていくための階段は壁際の端にあるし場所も覚えているので簡単に見つけられた。
ボスが倒されたからか魔物も出てこなくて、溶岩地帯と雪原の暑さ寒さ以外は問題もなく進むことができた。
「う……暗っ」
「あっ、帰ってきたよ!」
中が明るいというのも考えものだ。
ダンジョンから出てみると辺りは暗く、ルフォンたちは近くで野営していた。
いつの間にか外は真夜中になっていて、むしろ朝が近づいてきている時間であった。
つまりほとんど一日に近い時間が経ってしまっていたのである。
「どうりで、眠くて、腹が減っているわけだ」
「ルフォン、私やったよ!」
ダンジョンから出るまでの間にラストの様子は普通に戻っていた。
「おめでとー!」
抱き合う2人。
こうしてラストの大人の試練は幕を閉じたのであった。
もうこうなるとメルトロックゴーレムも敵ではない。
最後なので出し惜しみもしない。
ラストの矢がメルトロックゴーレムの肩に当たって爆発する。
腕が吹き飛んで倒れかけたメルトロックゴーレムにリュードが素早く近づいて真横に切断する。
「これが最後か……」
ラストは思わず呟く。
早く終わらせたかった大人の試練。
大人として認められたかったけど、きっと無理だろうと諦めていた大人の試練がとうとう終わりを迎えようとしている。
(なんで……?)
終わるのは嬉しいこと。
ようやく乗り越えられるはずなのに。
胸が痛い。
ギュッと何かに掴まれでもしたかのように胸が締め付けられて、終わりだと考えることを頭が拒否する。
訳が分からない。
なんでと思う。
こんなダンジョンさっさと終わらせて、自分は周りからも大人として認められるんだと少し前まで考えていたのに終わってほしくないと今は思ってしまうのだ。
「どうして……」
「ラスト!」
「キャッ!」
腕を掴んでリュードがラストを引き寄せる。
上半身と下半身どちらが動くか見ていふと最後の抵抗なのかメルトロックゴーレムが腕を振り回した。
ボンヤリとしていたラストに当たりそうだったのでリュードはラストを引っ張ったのである。
「おいっ、戦いの最中だぞ。大丈夫か? 何かケガでもしてたのか?」
意図せずラストはリュードの胸に抱かれるような体勢になっている。
心配そうな顔をしているリュードを見上げて、不思議な感情の理由が分かった。
「ラスト? 本当に大丈夫か?」
リュードの顔を見ることができなくてトンと胸に顔を預けた。
終わってほしくないんだとラストは気づいた。
まだクゼナの件が残っているとは言ってもリュード一緒にいてくれたのは大人の試練を手伝ってくれるためだ。
大人の試練が終わればリュードとはお別れとなる。
それが大人の試練を乗り越えられる喜びよりも上回って嫌なのだ。
嫌で苦しくて、寂しくて、別れを迎えたくなくて、自分は何とワガママな子なのかとモヤモヤする。
自分がとても悪い子になってしまった気がする。
この期に及んで大人の試練が終わらなければいいのにと思ってしまった。
大人の試練を終わらせるためにリュードは必死に頑張ってくれているのに、ラストはそんな時間が終わってほしくないと考えている。
頬が熱くて、少しだけ泣きそうな気分になる。
今まで生きてきてこんなにワガママなことを考えたことなんてなかった。
「怪我がないならいい……」
ラストの様子がおかしいこともリュードはわかっているけど何も言わない。
震えるラストに何かがあった。
ラストが自ら言う前に聞き出そうとするのは野暮である。
ラストが落ち着くまで待った。
その間、幸いにもメルトロックゴーレムは腕を振り回すだけで再生まで出来なかった。
「……もう大丈夫」
ラストも落ち着いたのでこれまでと同じようにメルトロックゴーレムを細かくしていく。
もはや作業と変わりない。
「おっと、出てきたな」
元は左胸付近だったところをリュードが切り裂いた。
中から赤っぽい拳ぐらいの球が転がり落ちてきた。
メルトロックゴーレムの中から出てきた球なので少し警戒して触ってみたけれど熱くはなかった。
これがメルトロックゴーレムの弱点であるコアだった。
「はい、これで終わりだ」
リュードはコアをラストに手渡す。
メルトロックゴーレムの体が少しずつコアの方に動きいてきていて気持ちが悪い。
「……大丈夫か?」
沈痛な面持ちのラストはリュードの問いかけにゆっくりとうなずく。
もう終わりは止められない。
ここまできたら終わってしまうのだ。
「……長々と…………苦労させやがってー!」
ちゃんと終わらせよう。
ここで終わらせたくなくても終わらせなきゃいけないのだから。
ラストは思い切り叫んでメルトロックゴーレムのコアを全力投球した。
壁に叩きつけられてコアが砕ける。
ガラスが割れるような音がしてコアが壊れて地面に散らばる。
動いていたメルトロックゴーレムの破片たちの動きも止まり、一瞬周りが静まり返る。
そしてメルトロックゴーレムが魔力の粒子となってダンジョンに還りはじめる。
「終わりだな……」
そこら中にバラバラになったメルトロックゴーレムの破片が落ちているので魔力の粒子に包まれて、幻想的な光景が短い間だけど繰り広げられた。
まるで攻略をダンジョンが祝福してくれているようであった。
「おめでとうございます! ……んん、どうかしましたか?」
ボス部屋の扉が開いて、興奮したツィツィナが飛び込んでくる。
道中も含めて文句のつけようのない完璧な攻略だった。
喜んでいるだろうと思ったのだけどラストはなんだか考え込んだ表情をして、ツィツィナの予想とは全く違ったリアクションをしていた。
リュードもラストが浮かない顔をしているのでなんだか喜べないで肩をすくめる。
「なんでもないさ。終わることには喜びもあるけど、寂しさだって感じる奴もいる」
ちょっと当たりだけどちょっと違うリュードのフォローが入ってツィツィナはそんなものかと納得する。
ラストの胸の内にあるのが寂しさだけでないことはリュードよ分かっていない。
だがしかし、これで終わりではない。
帰るまでがダンジョン攻略である。
これがゲームなら外までテレポートでも出来る魔法でも出現するかもしれないけど現実は甘くない。
地下十三階から地上まで戻らなきゃいけないのである。
「そうだね……無事に帰ってこそ、終わり……だね」
階段の位置は入っている間には変わらない。
それに登っていくための階段は壁際の端にあるし場所も覚えているので簡単に見つけられた。
ボスが倒されたからか魔物も出てこなくて、溶岩地帯と雪原の暑さ寒さ以外は問題もなく進むことができた。
「う……暗っ」
「あっ、帰ってきたよ!」
中が明るいというのも考えものだ。
ダンジョンから出てみると辺りは暗く、ルフォンたちは近くで野営していた。
いつの間にか外は真夜中になっていて、むしろ朝が近づいてきている時間であった。
つまりほとんど一日に近い時間が経ってしまっていたのである。
「どうりで、眠くて、腹が減っているわけだ」
「ルフォン、私やったよ!」
ダンジョンから出るまでの間にラストの様子は普通に戻っていた。
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