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第四章
甘いケーキと苦い薬2
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「よろしくね、2人とも。それじゃあ今度こそいくぞー!」
ラストは意気揚々と歩き出す。
ちょっと離れたところに待機する話なのに周りを囲まないだけでそのまま少し後ろを付いてくる兵士たちとの再びの衝突はあった。
けれど兵士たちがもうちょっと距離を空けてわかりにくくついてくることでどうにか妥協したのであった。
「どこに行くの?」
「ふっふー、実は目をつけてたところあるんだよねぇ」
ニタリと笑ったラストがみんなを連れてきたのは町でも有名なケーキのお店であった。
前々からチェックしていた。
王都から離れたラストのところにまで評判は聞こえてきていたのでいつか行ってみたいと思っていたのだ。
「いざ入店!」
ドアベルが鳴ってラストたち5人が中に入る。
可愛らしさもありつつ落ち着いた店内はきらびやかで雰囲気がいい。
ガラスで作られたケースの中には様々なケーキが並んでいて、ディスプレイされたケーキは色とりどりでどれも美味しそうであった。
「どれにする?」
「えっ、食べるの?」
「もー、ここまできて何言ってんのさ!」
とりあえず付いてきていたルフォンは自分も食べるだなんて思ってなかった。
お金は持ってきているけどラストが来たかったお店だし高そうだしで眺めるだけになりそうだと思っていた。
村社会で生きてきて買い食いとかこうした経験のないルフォンはどうしたらいいのか分かっていなかった。
「ふふっだいじょーぶ。ここは私の奢りだしリュードが結構お金持ちぃなことは知ってるのだよ。仮にルフォンが払ったとしてもこんなところでお金使ったって怒りゃしないって」
「そうかな……」
実はルフォンもケーキ食べたい。
ジーッとケーキを見つめたままルフォンがした葛藤は一瞬だった。
「そうだね!」
「よしよし、どれにする?」
「これだけたくさんあると迷っちゃうよ~」
念願のお店、しかも友達と。
ラストは食べる前から楽しくて、嬉しくてしょうがなかった。
ルフォンも美しいとも思えるケーキの前にフリフリと尻尾を振っている。
美味しそうだし、ルフォンから見ると作り方も気になるぐらいである。
許されるなら全部食べてみたい。
けれどそんなにたくさんのケーキも食べられない。
目を輝かせてケーキを眺める2人は年相応の女の子だとヴィッツは目を細めていた。
「どれにする……ハッ!」
これからの予定もある。
ここでケーキだけでお腹いっぱいにも出来ない。
多くあるケーキの中から選ばなきゃいけない悩ましさの中でラストは閃いた。
「……2人は甘いもの、好き?」
ラストやルフォン、あるいは外の警戒ではなくてケースの中のケーキを凝視してしまっているユーディカにラストが気づいた。
このケーキ屋は女性兵士の間でも超有名店である。
憧れで、お金を貯めて剣を買うかケーキを買うかで女性兵士で論争になるほどのお店なのである。
買わないのに店内に入れるはずもなくてケーキすら見ることも滅多に出来ない。
ユーディカは思わず自分ならどれを選ぶかとケーキに目がいってしまっていた。
「私たちは護衛ですので……」
「甘いものは私もツィツィナも大好きです!」
「ユーディカ!」
「甘いものが好きかどうか聞かれただけじゃにゃーい。答えない方が失礼ってもんよ」
「ツィツィナさんも甘いもの好きなの?」
「私は……はい、私も好きです」
ただ聞いただけではない。
そう思いながらも質問の意図を勝手に曲解して答えないのも確かに失礼だとツィツィナも答える。
ニマァとラストが笑う。
「いろんな種類食べてみたいんだけど私たち2人じゃそんなに食べられないと思わない?」
「それはそうかもしれませんね」
ツィツィナは何が言いたいのか薄々勘づき始めていた。
「ねぇ、2人も食べない?」
ラストの閃きとは、2人じゃ食べられる数も多くないならもっと人数を増やせばいい。
ちょうどここにはもう2人女子がいるじゃないかと二人に笑顔を向ける。
「……私たちは護衛ですので」
ツィツィナは一瞬の迷いはあったもののラストの提案を突っぱねた。
ユーディカは隣で目を見開き、とんでもないものを見る目でツィツィナを見ている。
この2人ではツィツィナの方がユーディカよりも先輩である。
基本的にはユーディカはツィツィナの判断に従うしかなく、ツィツィナが断ればユーディカにはどうしようもなくなってしまう。
明らかにユーディカがしょぼんとした顔をする。
ただツィツィナも苦渋の決断だったことは見てとれる。
「いいじゃない。どうせ私のお父様の支払いよ」
ちなみにだけどドレスの代金も王様支払いだった。
いいのかそれでと思うけど王族には品格維持費なる名目の費用があってそこからお金が出ている。
ラストは自分に割り当てられた費用を使うことがないので有り余っていた。
ケーキ代金を品格維持費で賄っていいのか突かれるのは痛いがそんなことをついてくる人はいない。
奢りだということを強調してラストが食い下がる。
「いえ、仕事ですので」
(……すごい顔してる)
キッパリ断るツィツィナの後ろでユーディカがすごい顔をしていることがルフォンには気になっていた。
ユーディカとしてはオッケーを出してほしいのだろう。
ラストは意気揚々と歩き出す。
ちょっと離れたところに待機する話なのに周りを囲まないだけでそのまま少し後ろを付いてくる兵士たちとの再びの衝突はあった。
けれど兵士たちがもうちょっと距離を空けてわかりにくくついてくることでどうにか妥協したのであった。
「どこに行くの?」
「ふっふー、実は目をつけてたところあるんだよねぇ」
ニタリと笑ったラストがみんなを連れてきたのは町でも有名なケーキのお店であった。
前々からチェックしていた。
王都から離れたラストのところにまで評判は聞こえてきていたのでいつか行ってみたいと思っていたのだ。
「いざ入店!」
ドアベルが鳴ってラストたち5人が中に入る。
可愛らしさもありつつ落ち着いた店内はきらびやかで雰囲気がいい。
ガラスで作られたケースの中には様々なケーキが並んでいて、ディスプレイされたケーキは色とりどりでどれも美味しそうであった。
「どれにする?」
「えっ、食べるの?」
「もー、ここまできて何言ってんのさ!」
とりあえず付いてきていたルフォンは自分も食べるだなんて思ってなかった。
お金は持ってきているけどラストが来たかったお店だし高そうだしで眺めるだけになりそうだと思っていた。
村社会で生きてきて買い食いとかこうした経験のないルフォンはどうしたらいいのか分かっていなかった。
「ふふっだいじょーぶ。ここは私の奢りだしリュードが結構お金持ちぃなことは知ってるのだよ。仮にルフォンが払ったとしてもこんなところでお金使ったって怒りゃしないって」
「そうかな……」
実はルフォンもケーキ食べたい。
ジーッとケーキを見つめたままルフォンがした葛藤は一瞬だった。
「そうだね!」
「よしよし、どれにする?」
「これだけたくさんあると迷っちゃうよ~」
念願のお店、しかも友達と。
ラストは食べる前から楽しくて、嬉しくてしょうがなかった。
ルフォンも美しいとも思えるケーキの前にフリフリと尻尾を振っている。
美味しそうだし、ルフォンから見ると作り方も気になるぐらいである。
許されるなら全部食べてみたい。
けれどそんなにたくさんのケーキも食べられない。
目を輝かせてケーキを眺める2人は年相応の女の子だとヴィッツは目を細めていた。
「どれにする……ハッ!」
これからの予定もある。
ここでケーキだけでお腹いっぱいにも出来ない。
多くあるケーキの中から選ばなきゃいけない悩ましさの中でラストは閃いた。
「……2人は甘いもの、好き?」
ラストやルフォン、あるいは外の警戒ではなくてケースの中のケーキを凝視してしまっているユーディカにラストが気づいた。
このケーキ屋は女性兵士の間でも超有名店である。
憧れで、お金を貯めて剣を買うかケーキを買うかで女性兵士で論争になるほどのお店なのである。
買わないのに店内に入れるはずもなくてケーキすら見ることも滅多に出来ない。
ユーディカは思わず自分ならどれを選ぶかとケーキに目がいってしまっていた。
「私たちは護衛ですので……」
「甘いものは私もツィツィナも大好きです!」
「ユーディカ!」
「甘いものが好きかどうか聞かれただけじゃにゃーい。答えない方が失礼ってもんよ」
「ツィツィナさんも甘いもの好きなの?」
「私は……はい、私も好きです」
ただ聞いただけではない。
そう思いながらも質問の意図を勝手に曲解して答えないのも確かに失礼だとツィツィナも答える。
ニマァとラストが笑う。
「いろんな種類食べてみたいんだけど私たち2人じゃそんなに食べられないと思わない?」
「それはそうかもしれませんね」
ツィツィナは何が言いたいのか薄々勘づき始めていた。
「ねぇ、2人も食べない?」
ラストの閃きとは、2人じゃ食べられる数も多くないならもっと人数を増やせばいい。
ちょうどここにはもう2人女子がいるじゃないかと二人に笑顔を向ける。
「……私たちは護衛ですので」
ツィツィナは一瞬の迷いはあったもののラストの提案を突っぱねた。
ユーディカは隣で目を見開き、とんでもないものを見る目でツィツィナを見ている。
この2人ではツィツィナの方がユーディカよりも先輩である。
基本的にはユーディカはツィツィナの判断に従うしかなく、ツィツィナが断ればユーディカにはどうしようもなくなってしまう。
明らかにユーディカがしょぼんとした顔をする。
ただツィツィナも苦渋の決断だったことは見てとれる。
「いいじゃない。どうせ私のお父様の支払いよ」
ちなみにだけどドレスの代金も王様支払いだった。
いいのかそれでと思うけど王族には品格維持費なる名目の費用があってそこからお金が出ている。
ラストは自分に割り当てられた費用を使うことがないので有り余っていた。
ケーキ代金を品格維持費で賄っていいのか突かれるのは痛いがそんなことをついてくる人はいない。
奢りだということを強調してラストが食い下がる。
「いえ、仕事ですので」
(……すごい顔してる)
キッパリ断るツィツィナの後ろでユーディカがすごい顔をしていることがルフォンには気になっていた。
ユーディカとしてはオッケーを出してほしいのだろう。
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