人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

文字の大きさ
上 下
263 / 377
第四章

王様の前に一人の父親3

しおりを挟む
「ベギーオの右腕として活躍していた側近の者……イ、イソフだかなんだかは捕らえて話を聞いているが、思っていたよりも話は深刻そうであるのだ」

 その上ダンジョンブレイクはただのダンジョンブレイクではなかった。
 単に管理を怠ったり放置したからダンジョンブレイクが発生したのではない可能性があったというのが見立てである。

 加えて調査を進める中で看過できないベギーオの暗い部分が出てきてしまった。
 こうなることも察知してベギーオは逃げたのだろうとヴァンはため息をついた。

「ペラフィラン……今はモノランだったか。そちらについては初耳だ。ダンジョンブレイクについて終わらせたことは聞いていてその中に神獣がいたのも知っている。それがまさかこの国を悩ませる凶獣だったとはな」

 モノランの話もまたヴァンにとっては衝撃的な話だった。

「ベギーオに続いてプジャンまでもか……話を聞くとまた国を挙げて戦わなければいけないところではないか」

 リュードがいなければモノランは今ごろラストたちを倒して怒りに任せて国中を暴れ回っていたかもしれない。
 そうなるとヴァンもモノランを討伐せざるを得ない。

 血で血を洗う戦いになって被害は大きなものになっていたはずだ。
 ダンジョンブレイクの時の暴れ方が罪もない人に向いていた考えると背筋が凍る思いだ。

 それにモノランがいなかったらダンジョンブレイクは解決することができず、国とスケルトンの戦争になっていた。
 町を陥落させるほどのスケルトンの群れと戦うのはそれこそ骨が折れる話である。

 ダンジョンブレイクは実際に起きてしまったことでモノランについては起きなかったことなので比較するのは難しい。
 けれどプジャンがやってしまった行いは国を危険に晒す行いだった言わざるを得ない。

 その上知らなかったとはいえ神獣の子を殺してしまったことは神に対する重大な冒涜行為である。
 雷の神を祀る神殿が今のところないので騒ぎになっていないが、大きな勢力を持つ神の神獣を殺したとなると神敵となり一生その神様の信徒に追われる事になる。

「ただプジャンを追及できるできるものもないのがな……」

 しかしその話についてはラストたちだけしか知らない話で証拠もない。
 プジャンがやったとは推測ができるけれどプジャンがやったとは証明することができない。

 不自然な渓谷の崩落事故なんかについては調べれば分かる事なので状況証拠からプジャンが犯人だとは言えるかもしれない。
 ただしそれで国王が息子を差し出せるかと聞かれると中々難しい判断になる。

 プジャンを差し出さなければモノランによって被害が出てしまうがそれではプジャンを生贄に捧げることと大きな変わりがない。
 それなりの規模でもある宗教なら多少の声も封殺出来るが雷の神様ではちょっと名声不足なところがある。

 モノランは確たる証拠がなくてもプジャンを断ずることができるが国としては確たる物がなくてはプジャンを罪には問えない。

「とりあえずプジャンについてもこちらからも調査させよう。モノラン様にはもう少し待っていただけるように伝えてほしい」

「ダンジョンブレイクでも暴れたししばらくは大人しくしていると思います」

 恨みを忘れることはないだろう。
 でもダンジョンブレイクで魔力を使い果たすほど戦ってくれたので今しばらくは回復に努めるはずである。

 ただしモノランがいつまで堪えてくれるのかはリュードにも分からないし、コントロールもできない。
 今すぐ限界を迎えることはないだろうとしか言えない。

「ふぅ……どうしてこう問題ばかり」

「お疲れですか、お父様?」

 目を揉むヴァンに苛立ちが見えてラストは心配そうな顔をした。

「ダンジョンブレイクによる影響は大きいからな」
 
 ダンジョンブレイクのせいで国中のダンジョンの再点検をする事にもなった。
 ベギーオがいなくなってしまったのでヴァンがチッパの復興を指示し、自分の息子を探すようにも人を出している。
 
 仕事が山積しているのだ。

「ちょっとやることが多くてな。だがお前の顔が見れてかなり良くなったよ。今日はここに泊まっていきなさい。お連れの2人も一緒に」

「うん、そうするよ」

 なんだかこれもこれで激動の1日だったとリュードは思う。
 大量の紅茶を飲んで時間を過ごし、気づいたら王城にいて、気づいたら王城に泊まることになっていた。

 なかなか精神的に大変な日であった。
 使用人にリュードたちが連れられて部屋を出ていく。

「くぅ……なかなか力も強かったではないか……」

 リュードたちが部屋を出た後ヴァンは椅子に深く腰掛けて赤くなった手を見つめた。
 リュードの実力は高いとコルトンの報告書にも書いてあった。
 
 ただ力は自分の方が上で、握った手に情けなく悶えるリュードの姿を見せつけてやろうと思ったのにリュードは負けなかった。
 ヴァンが今一番頭を悩ませているのはラストについた悪い虫についてである。

 王様の前に父親だ。
 娘がどんな男と付き合うのか気になってしまうのはしょうがないのである。

「マルア……君の娘はもう私の手を離れていってしまったのかな…………」

 娘の成長は早いものだとヴァンはこの日大きなため息をついた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!

果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。 次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった! しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……? 「ちくしょう! 死んでたまるか!」 カイムは、殺されないために努力することを決める。 そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る! これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。    本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています 他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜

猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。 ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。 そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。 それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。 ただし、スキルは選べず運のみが頼り。 しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。 それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・ そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。

処理中です...