261 / 336
第四章
王様の前に一人の父親1
しおりを挟む
「本当に?」
「本当に」
「……本当に王城に行くのか」
美しく着飾った2人にようやく目が向けられるようになってきたと思ったらリュードは店の前に停められていた馬車に乗せられた。
向かう先は王城だと言われてリュードは驚いた。
なんとビックリ、ドレスを買うだけでなくそのまま王城に向かうことになってしまったのである。
ちゃんとメイクまでしてリュードまで着替えさせられておかしいと思ったのだけど、こんなつもりだったとはリュードは思いもしなかった。
ラストが店に行くことを伝えていたので、店の人が王城に伝えて王城から馬車が派遣されたのだ。
店を出て馬車が停まっていて、誰か来たのかと思っていたらエスコートしろとラストに言われてこれが自分達の乗る馬車だととても驚いた。
ラストとルフォンはリュードに対面するように座った。
馬車の中の密室で3人きりになる。
照れるリュードに気を良くした2人はちゃんとした感想が欲しいとリュードに求め始めた。
ちょっとだけだけど照れにも慣れてきたリュードは改めて2人のことをよく見る。
こんな機会がこの先あるのかも分からないので目にも焼き付けておこうと思った。
こんな時に写真が無いことがすごく悔やまれる。
まずはラストの方に目を向ける。
ラストは白いドレスを身にまとっている。
ややクリーム色にも近い白でよりラストの真っ白な髪の色が際立つ。
そしてさらに2種類の白に挟まれた真っ赤な瞳が目立って美しく見えた。
落ち着いたデザインのドレスと相まってラストは色白清楚なお嬢様になっていた。
意識しているのかいつものようにニカっと笑うのをやめて上品に笑ってみせるラストにはリュードもドキドキとする。
幼さを残しながらもより可愛さを引き立てていて周りの目を引く美少女がラストであった。
目を逸らすようにして続いてルフォンを見る。
ラストと対照的にルフォンは黒いドレスを着ている。
瞳や髪色と同じ黒いドレスはルフォンの雰囲気を1つにまとめ上げていた。
その中で黒いドレスには金の糸で刺繍がしてあって動くたびに黒の中でもきらりと光るものがある。
普段は動きやすい服装のルフォンが体のラインが分かるようなドレスを着ている。
ルフォンは体の均整も取れていてドレスを着ていても全く着られている感じがない。
可愛いタイプの顔をしているルフォンだけれど、プロによる化粧を施した結果今のルフォンは大人びていて綺麗さが際立っている。
吸い込まれるような闇を切り取ったような艶やかな魅力がリュードの目を惹きつけた。
見た人が目を離せなくなるような妖艶さがルフォンに備わっていた。
思ったままを口にして2人を褒めた。
もうどうとでもなれとリュードは持てる限りの言葉を使って2人のことを褒めちぎった。
「二人とも……可愛いし、綺麗だよ」
最後にもう1度綺麗だと2人を見て言えていれば完璧だったのに。
どうしても照れ臭くて、リュードは窓の外に視線を向けてしまった。
服が違うだけだろうなんて思っていた自分を殴りたいほど2人は変わっていた。
「……ラストはすごく可愛らしくて、ルフォンはなんだかとても大人っぽくて綺麗だ」
「う、うん、ありがとう……」
「こう真正面に言われると照れるなぁ……」
やっぱりちゃんと目を見て言わなきゃならない。
最後に男気を振り絞ったリュードの思い切った褒めに2人も照れる。
褒めろというけれどいざ褒められると照れくさいのはしょうがない。
3人が3人とも顔を赤くして、無言になってしまう。
それぞれ視線をよそに向けて馬車に揺られる。
「失礼いたします。王城に着きました」
馬車が停まって御者に声をかけられる。
ハッとして正気に戻るともうお城が目の前に迫っていた。
なんでいきなり王城に向かうことになったのかラストに聞くつもりだったのに聞くのも忘れてしまった。
ラストに言われ、リュードが先に降りて手を差し出す。
ラストがリュードの手に自分の手を添えて優雅に馬車を降りてくる。
忘れがちだけどラストも王族の一員でこうしたマナーも学んできた御令嬢なのだ。
ルフォンもラストに習ってリュードの手をとって降りようとするけどラストのような優雅さは流石に演出できない。
動作がぎこちなくラストには敵わない。
ドレスでの動きにもなれていなくてちょっと動きがカクカクしていた。
「お待ちしておりました、サキュルラスト様」
「お久しぶりです、ウグドーさん」
ラストがドレスをつまみ上げて軽く頭を下げる。
「お名前を覚えていただいておりまして光栄でございます」
「お父様の右腕であるウグドーさんを忘れることなんてありませんよ」
ヴィッツよりもさらに年上そうな老年の血人族が城の前で待っていた。
相当なお年に見えるのに杖すらもなくピンと背筋伸ばして立っている。
後ろには物々しい護衛たちが立ち、部下らしき人も側にいる。
ウグドーはラストの父親である王様の秘書官長を長年勤めている人物であった。
昔からラストを可愛がってくれた人の1人でラストが勉強でわからないことがあるとウグドーに聞きに行った。
どんなことでも丁寧に教えてくれて知識もある人であった。
「お初にお目にかかります、ウグドーと申します」
「これはどうも丁寧に。私はシューナリュードです」
「ルフォンと申します」
ルフォンはラストがやったようにドレスの裾を摘んで礼をする。
ぎこちなさもまた可愛らしい。
「本当に」
「……本当に王城に行くのか」
美しく着飾った2人にようやく目が向けられるようになってきたと思ったらリュードは店の前に停められていた馬車に乗せられた。
向かう先は王城だと言われてリュードは驚いた。
なんとビックリ、ドレスを買うだけでなくそのまま王城に向かうことになってしまったのである。
ちゃんとメイクまでしてリュードまで着替えさせられておかしいと思ったのだけど、こんなつもりだったとはリュードは思いもしなかった。
ラストが店に行くことを伝えていたので、店の人が王城に伝えて王城から馬車が派遣されたのだ。
店を出て馬車が停まっていて、誰か来たのかと思っていたらエスコートしろとラストに言われてこれが自分達の乗る馬車だととても驚いた。
ラストとルフォンはリュードに対面するように座った。
馬車の中の密室で3人きりになる。
照れるリュードに気を良くした2人はちゃんとした感想が欲しいとリュードに求め始めた。
ちょっとだけだけど照れにも慣れてきたリュードは改めて2人のことをよく見る。
こんな機会がこの先あるのかも分からないので目にも焼き付けておこうと思った。
こんな時に写真が無いことがすごく悔やまれる。
まずはラストの方に目を向ける。
ラストは白いドレスを身にまとっている。
ややクリーム色にも近い白でよりラストの真っ白な髪の色が際立つ。
そしてさらに2種類の白に挟まれた真っ赤な瞳が目立って美しく見えた。
落ち着いたデザインのドレスと相まってラストは色白清楚なお嬢様になっていた。
意識しているのかいつものようにニカっと笑うのをやめて上品に笑ってみせるラストにはリュードもドキドキとする。
幼さを残しながらもより可愛さを引き立てていて周りの目を引く美少女がラストであった。
目を逸らすようにして続いてルフォンを見る。
ラストと対照的にルフォンは黒いドレスを着ている。
瞳や髪色と同じ黒いドレスはルフォンの雰囲気を1つにまとめ上げていた。
その中で黒いドレスには金の糸で刺繍がしてあって動くたびに黒の中でもきらりと光るものがある。
普段は動きやすい服装のルフォンが体のラインが分かるようなドレスを着ている。
ルフォンは体の均整も取れていてドレスを着ていても全く着られている感じがない。
可愛いタイプの顔をしているルフォンだけれど、プロによる化粧を施した結果今のルフォンは大人びていて綺麗さが際立っている。
吸い込まれるような闇を切り取ったような艶やかな魅力がリュードの目を惹きつけた。
見た人が目を離せなくなるような妖艶さがルフォンに備わっていた。
思ったままを口にして2人を褒めた。
もうどうとでもなれとリュードは持てる限りの言葉を使って2人のことを褒めちぎった。
「二人とも……可愛いし、綺麗だよ」
最後にもう1度綺麗だと2人を見て言えていれば完璧だったのに。
どうしても照れ臭くて、リュードは窓の外に視線を向けてしまった。
服が違うだけだろうなんて思っていた自分を殴りたいほど2人は変わっていた。
「……ラストはすごく可愛らしくて、ルフォンはなんだかとても大人っぽくて綺麗だ」
「う、うん、ありがとう……」
「こう真正面に言われると照れるなぁ……」
やっぱりちゃんと目を見て言わなきゃならない。
最後に男気を振り絞ったリュードの思い切った褒めに2人も照れる。
褒めろというけれどいざ褒められると照れくさいのはしょうがない。
3人が3人とも顔を赤くして、無言になってしまう。
それぞれ視線をよそに向けて馬車に揺られる。
「失礼いたします。王城に着きました」
馬車が停まって御者に声をかけられる。
ハッとして正気に戻るともうお城が目の前に迫っていた。
なんでいきなり王城に向かうことになったのかラストに聞くつもりだったのに聞くのも忘れてしまった。
ラストに言われ、リュードが先に降りて手を差し出す。
ラストがリュードの手に自分の手を添えて優雅に馬車を降りてくる。
忘れがちだけどラストも王族の一員でこうしたマナーも学んできた御令嬢なのだ。
ルフォンもラストに習ってリュードの手をとって降りようとするけどラストのような優雅さは流石に演出できない。
動作がぎこちなくラストには敵わない。
ドレスでの動きにもなれていなくてちょっと動きがカクカクしていた。
「お待ちしておりました、サキュルラスト様」
「お久しぶりです、ウグドーさん」
ラストがドレスをつまみ上げて軽く頭を下げる。
「お名前を覚えていただいておりまして光栄でございます」
「お父様の右腕であるウグドーさんを忘れることなんてありませんよ」
ヴィッツよりもさらに年上そうな老年の血人族が城の前で待っていた。
相当なお年に見えるのに杖すらもなくピンと背筋伸ばして立っている。
後ろには物々しい護衛たちが立ち、部下らしき人も側にいる。
ウグドーはラストの父親である王様の秘書官長を長年勤めている人物であった。
昔からラストを可愛がってくれた人の1人でラストが勉強でわからないことがあるとウグドーに聞きに行った。
どんなことでも丁寧に教えてくれて知識もある人であった。
「お初にお目にかかります、ウグドーと申します」
「これはどうも丁寧に。私はシューナリュードです」
「ルフォンと申します」
ルフォンはラストがやったようにドレスの裾を摘んで礼をする。
ぎこちなさもまた可愛らしい。
10
お気に入りに追加
407
あなたにおすすめの小説
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
最弱ユニークギフト所持者の僕が最強のダンジョン探索者になるまでのお話
亘善
ファンタジー
【点滴穿石】という四字熟語ユニークギフト持ちの龍泉麟瞳は、Aランクダンジョンの攻略を失敗した後にパーティを追放されてしまう。地元の岡山に戻った麟瞳は新たに【幸運】のスキルを得て、家族や周りの人達に支えられながら少しずつ成長していく。夢はSランク探索者になること。これは、夢を叶えるために日々努力を続ける龍泉麟瞳のお話である。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる