249 / 331
第四章
決戦! 亡者の騎士デュラハン9
しおりを挟む
「チッ……ずるいな」
むやみに手を出すとやられてしまうので反撃は諦めて完全に防御に徹することにした。
受け流しを主体に回避しながら視界が晴れるまで必死に耐える。
デュラハンの姿がぼんやりとしか見えないために直前に来た剣に対応するしかない。
むしろリュードの集中力は最大限に高まって攻撃を防ぎ続けていた。
「うぐっ……!」
上手く防御できていたもののリュードの方も全くの無傷ではなかった。
デュラハンの魔力をまとった一撃はとんでもなく重たく、受け流した剣を持つ手が痺れていた。
圧倒的なパワーを完全に受け流すだけでもかなり難しいことだったのである。
魔人化しているのにも関わらずパワーで押されるのだから反省や焦りがリュードの頭の中に浮かんで剣の腕を鈍らせかける。
もっと力があれば、もっと技術があって完璧に受け流せたらと思わずにいられない。
デュラハンの剣をかわし切れなくて頬の鱗が弾け飛んで血が滲んでくる。
痛みに怯んでいる暇もない。
事前に聞いていたデュラハンよりもずっと強く、ダンジョンブレイクのためにこうなった異常な個体である可能性が頭をよぎった。
「う……」
受け流し切れなくて剣先が腕を掠めた。
効くかわからないけど雷属性の魔法を試してみようかとも考えた。
「やっと見えた!」
けれどもリュードが魔法を試す前にラストが土埃の向こうにうっすらと姿の見えたデュラハンに向かって矢を放った。
リュードに集中し、視界の悪い土埃の中でデュラハンは飛んでくる矢に気づくことが遅れた。
間に合わないので回避ではなく防御しようと剣の腹でラストの矢を叩き落とそうとした瞬間に矢は爆発した。
何か触れた瞬間に爆発してしまうので切ろうが叩き落とそうが関係ない。
「離れろ!」
またデュラハンにほんのわずかな隙ができる。
リュードは素早くデュラハンの懐に入り、デュラハンの脇腹を力いっぱい殴り飛ばした。
デュラハンが吹っ飛び、土埃の中から飛び出してきて地面を転がる。
ちょうど舞い上がった土埃も落ち着いてリュードの姿も見えるようになった。
リュードの体には防ぎきれなくて何箇所かに傷があった。
これぐらいで済んだのなら運良くて軽い方なのだけど、竜人化した姿でケガをしたことなんてルフォンでも見たことがなかった。
「リュード、大丈夫?」
「もちろんだ。むしろ……」
むしろ楽しいとすら思ってしまっている。
こんな風に実力の拮抗した相手と戦うことは滅多にない。
自分の未熟さに気づき、全力で防御させてもらえることでより改善点も見えてくる。
不謹慎だという輩もいるかもしれないけれど戦い1つ1つが自分を伸ばす糧となるのだ。
戦いの中に喜びを見出す。
転生前までの自分ならあり得ないことだけど今の竜人族のリュードはもう骨の髄まで魔人族である。
戦いに生きる一族の考えがリュードの中にも染み付いていた。
あれだけ激しく動いたけれど、動いたことで体を魔力が巡り疲労感もそんなにない。
今なら反撃まで及ばなくてもデュラハンの攻撃を受ける気はしないとすら思えるほどに気分が高揚している。
リュードは戦闘中にも関わらずまた1つ成長をしていっているのである。
「いいぜ、まだ戦おうか」
ベッコリと脇腹の鎧を凹ませたデュラハンが立ち上がる。
黒い魔力は相変わらずデュラハンを覆っていて、見ているだけで威圧感がある。
リュードとデュラハンが同時に駆け出して剣が交わる。
正直まだ反撃まで手は回らないけれど防御に徹すれば負ける気はしない。
手にかかっていた衝撃がだいぶ小さくなった。
デュラハンが弱くなったのではない。
リュードがより効率的にデュラハンの攻撃を受け流して防いでいるのである。
「チャージショット!」
射線がリュードに被らないように回り込んだラストが弓を射る。
「おっと……」
なんだ、とリュードは疑問に思った。
これまでリュードを殺す気でしっかりと狙ってきたのに今の一撃はなんというか、狙いがちょっと外れていたように感じられた。
リュードが迷いなく回避することを選ぶような位置に剣を振り下ろされて違和感を覚えた。
まさか疲れてきたなんてことあり得るはずがない。
意図があると思ったのだけど戦いの最中思考にふけるわけにはいかず気づくのが遅れた。
「なっ!」
「危ない!」
ラストが矢を放っていたことはわかっていたデュラハンも3度目の射撃となると馬鹿でもないので対策を練ってきた。
爆発する矢は防御してはならなくてかわさなくてはいけないと学習している。
リュードは力ではデュラハンに敵わないので受け流すか回避を防御行動として取っている。
かわせそうならかわした方がいいのは当然のこと。
デュラハンはリュードがかわすだろうことを予想して少しズレた軌道で剣を振り下ろした。
これまであまり体をうごしてこなかったデュラハンがサッと横に動いた。
デュラハンの後ろからはラストの矢が飛んできていた。
なんとデュラハンは巧みにリュードのことをラストの矢の前に誘導してみせたのだ。
むやみに手を出すとやられてしまうので反撃は諦めて完全に防御に徹することにした。
受け流しを主体に回避しながら視界が晴れるまで必死に耐える。
デュラハンの姿がぼんやりとしか見えないために直前に来た剣に対応するしかない。
むしろリュードの集中力は最大限に高まって攻撃を防ぎ続けていた。
「うぐっ……!」
上手く防御できていたもののリュードの方も全くの無傷ではなかった。
デュラハンの魔力をまとった一撃はとんでもなく重たく、受け流した剣を持つ手が痺れていた。
圧倒的なパワーを完全に受け流すだけでもかなり難しいことだったのである。
魔人化しているのにも関わらずパワーで押されるのだから反省や焦りがリュードの頭の中に浮かんで剣の腕を鈍らせかける。
もっと力があれば、もっと技術があって完璧に受け流せたらと思わずにいられない。
デュラハンの剣をかわし切れなくて頬の鱗が弾け飛んで血が滲んでくる。
痛みに怯んでいる暇もない。
事前に聞いていたデュラハンよりもずっと強く、ダンジョンブレイクのためにこうなった異常な個体である可能性が頭をよぎった。
「う……」
受け流し切れなくて剣先が腕を掠めた。
効くかわからないけど雷属性の魔法を試してみようかとも考えた。
「やっと見えた!」
けれどもリュードが魔法を試す前にラストが土埃の向こうにうっすらと姿の見えたデュラハンに向かって矢を放った。
リュードに集中し、視界の悪い土埃の中でデュラハンは飛んでくる矢に気づくことが遅れた。
間に合わないので回避ではなく防御しようと剣の腹でラストの矢を叩き落とそうとした瞬間に矢は爆発した。
何か触れた瞬間に爆発してしまうので切ろうが叩き落とそうが関係ない。
「離れろ!」
またデュラハンにほんのわずかな隙ができる。
リュードは素早くデュラハンの懐に入り、デュラハンの脇腹を力いっぱい殴り飛ばした。
デュラハンが吹っ飛び、土埃の中から飛び出してきて地面を転がる。
ちょうど舞い上がった土埃も落ち着いてリュードの姿も見えるようになった。
リュードの体には防ぎきれなくて何箇所かに傷があった。
これぐらいで済んだのなら運良くて軽い方なのだけど、竜人化した姿でケガをしたことなんてルフォンでも見たことがなかった。
「リュード、大丈夫?」
「もちろんだ。むしろ……」
むしろ楽しいとすら思ってしまっている。
こんな風に実力の拮抗した相手と戦うことは滅多にない。
自分の未熟さに気づき、全力で防御させてもらえることでより改善点も見えてくる。
不謹慎だという輩もいるかもしれないけれど戦い1つ1つが自分を伸ばす糧となるのだ。
戦いの中に喜びを見出す。
転生前までの自分ならあり得ないことだけど今の竜人族のリュードはもう骨の髄まで魔人族である。
戦いに生きる一族の考えがリュードの中にも染み付いていた。
あれだけ激しく動いたけれど、動いたことで体を魔力が巡り疲労感もそんなにない。
今なら反撃まで及ばなくてもデュラハンの攻撃を受ける気はしないとすら思えるほどに気分が高揚している。
リュードは戦闘中にも関わらずまた1つ成長をしていっているのである。
「いいぜ、まだ戦おうか」
ベッコリと脇腹の鎧を凹ませたデュラハンが立ち上がる。
黒い魔力は相変わらずデュラハンを覆っていて、見ているだけで威圧感がある。
リュードとデュラハンが同時に駆け出して剣が交わる。
正直まだ反撃まで手は回らないけれど防御に徹すれば負ける気はしない。
手にかかっていた衝撃がだいぶ小さくなった。
デュラハンが弱くなったのではない。
リュードがより効率的にデュラハンの攻撃を受け流して防いでいるのである。
「チャージショット!」
射線がリュードに被らないように回り込んだラストが弓を射る。
「おっと……」
なんだ、とリュードは疑問に思った。
これまでリュードを殺す気でしっかりと狙ってきたのに今の一撃はなんというか、狙いがちょっと外れていたように感じられた。
リュードが迷いなく回避することを選ぶような位置に剣を振り下ろされて違和感を覚えた。
まさか疲れてきたなんてことあり得るはずがない。
意図があると思ったのだけど戦いの最中思考にふけるわけにはいかず気づくのが遅れた。
「なっ!」
「危ない!」
ラストが矢を放っていたことはわかっていたデュラハンも3度目の射撃となると馬鹿でもないので対策を練ってきた。
爆発する矢は防御してはならなくてかわさなくてはいけないと学習している。
リュードは力ではデュラハンに敵わないので受け流すか回避を防御行動として取っている。
かわせそうならかわした方がいいのは当然のこと。
デュラハンはリュードがかわすだろうことを予想して少しズレた軌道で剣を振り下ろした。
これまであまり体をうごしてこなかったデュラハンがサッと横に動いた。
デュラハンの後ろからはラストの矢が飛んできていた。
なんとデュラハンは巧みにリュードのことをラストの矢の前に誘導してみせたのだ。
10
お気に入りに追加
406
あなたにおすすめの小説
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~
犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。
塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。
弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。
けれども違ったのだ。
この世の中、強い奴ほど才能がなかった。
これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。
見抜いて、育てる。
育てて、恩を売って、いい暮らしをする。
誰もが知らない才能を見抜け。
そしてこの世界を生き残れ。
なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。
更新不定期
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる