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第四章

毒草を探せ!1

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 イェミェンを取りに行くけどそれをプジャンに悟られてはいけない。
 目的を隠しながらそこに行く正当な理由が必要である。

 けれど今回運はラストに味方をしていた。
 イェミェンの群生地があるところはラストの大人の試練であるダンジョンから近いのである。

 クゼナを早急に治してやらねばならないために速度を上げてダンジョンに向かったが、道中の妨害もなく順調そのものでダンジョンまで来ることができた。
 事前の調査ではダンジョンのレベルも高くはない。

 もしかしたらバラフィランの作戦が成功すると思っていて何も対策を講じていなかったのかもしれない。

「遅かったですね」

 コルトンはすでにダンジョン前で待ち構えていた。
 横にテントなどが設置してあるところを見るとかなり早めにきて待っていたのだろう。

 下手すると数日待っていたこともありうる。
 モノランやクゼナのことで時間を使ったので真っ直ぐダンジョンに向かうよりも少し遅れてしまったことは否めない。

「お兄様にご挨拶申し上げる必要もありましたんで」

「ああ……まあ、そのようなこともありますね」

 これに関してはコルトンが悪いところもある。
 時間も差し迫っているのでダンジョンにまっすぐ来ると勝手に思っていた。

 ラストにも立場というものがあって、ただの大人の試練とは少し違うことを失念していた。

「それでは大人の試練に挑みますか?」

「はい、やります」

「……わかりました」

 コルトンとしてもこんなところさっさとおさらばしてベッドで寝たい。
 いつ大人の試練に挑むのかの判断はコルトンに裁量はない。

 ついてすぐ挑むというのには少し驚いたけれどラストが挑むというならコルトンは大人しくついていくしかない。
 ラストとリュードがダンジョンの中に入っていき、コルトンは自分の剣とチェック表を持って後を追いかけた。

「それでは参りましょうか」

 ルフォンとヴィッツは一緒にいけないのでダンジョンの外で待つ。
 3人が戻ってくる気配はなくて問題なく攻略を開始したようだった。

 ルフォンたちも動き出す。
 向かうのはダンジョンの裏にある山。
 
 イェミェンを探しに行くのである。

「イェミェンの特徴、覚えておりますか?」

「もちろん!」
 
 イェミェンは鮮やかな赤紫をした葉っぱの植物で見た目だけなら分かりやすい。
 ただどこに生えているかの情報はなく、手探り状態で歩き回って探さなければいけない。

「……やはりこちらにもきておりますな」

「そうだね」

 プジャンの屋敷に立ち寄った後ぐらいからだろうか。
 どことなく視線を感じるようになった。

 人がいる町中では分かりにくかったけれど、こうして町を出て外を歩いているとよく分かる。

「妨害こそありませんでしたが抜け目ありませんね」
 
 監視がついている。
 それもおそらく1人2人ではなく、複数人いて交代交代で昼も夜もなく監視を続けている。

 誰が監視をつけてきたのか考えるまでもない。
 プジャンの領地で、プジャンの屋敷に行った後からついてきている。

 犯人はプジャンだ。
 監視するならラストの方だろうと思っていたけれどルフォンたちにもしっかりと監視の人員を割いてきた。
 
 監視がなかったらイェミェンをさっさと探すのだけどそうもいかない。

「片付けますか」

「そうだね、そうしよっか」

「物騒な提案をしましたのにサラリと受け入れてしまわれますね」

「私だって旅をしてるんだよ? 世界が綺麗なだけじゃないってちゃんと学んでいるんだ」

「結構なことですがどのような旅をなされてきたのか興味が出てきますね」

 きっとラストに同様に監視を片付けようなんて言ったら複雑そうな顔をしてどうにか他の方法はないかなんて尋ねてくることだろう。
 戦うことやなんかへの抵抗や心配があるからだ。

 それなのに同年代のルフォンはヴィッツの言葉にニッコリと笑ってみせた。
 これなら監視している方もなんの会話をしているのか分からない。

 ヴィッツは思わず感心してしまった。
 リュードがしっかりとしていてルフォンは少しだけ世間知らずな感じがあるように思っていたが、ちゃんとルフォンも旅を通じて成長している。

「ではどうしましょうか……」

 どうやって監視を倒すかが問題である。
 町中ならもっと簡単に建物の角とか利用できるものもあるけれど、木が少なめの山の中では中々奇襲するのも難しい。

 どうにか相手の目を逸らしたいヴィッツは思った。

「あちらに見える木ではいかがでしょうか?」

「あれぐらいならいけるかな」

 監視にバレないように周りを観察して細い木が多い中でも太い木をヴィッツが見つけた。
 二人の体型よりも太くて隠れられそうな感じがある。

「行きますよ」

「うん!」
 
 ルフォンとヴィッツは急に走り出して木の後ろに回り込んで出てこなかった。

「……おい、まさか!」

 それほど太さがある木でもなく、走れば通り過ぎるのも一瞬のはずなのに二人が木の後ろから出てこない。
 まかれたのではないかと思って男たちは木の後ろを確認しに行ってしまった。

「くそっ、どこに行った! 探せ、まだそう遠くには……」

「誰をお探しかな?」

「な、どこに……」

 声が聞こえて、振り返る間も無く男の胸から剣が飛び出してくる。
 ヴィッツが後ろから心臓を一突きにした。

「バレていたのか!」

 ルフォンとヴィッツに割り当てられた監視役は二人。
 もうすでに一人がやられてしまった。

 剣を手にかけた男は目の前のヴィッツのことしか頭になく、腰の剣に手を伸ばした。
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