204 / 336
第四章
愚かなる目論み7
しおりを挟む
なんだか刺客が持つにしてはおかしい物だと確認しようとしたところだった。
嫌な予感がしてリュードの背中にゾワリとした冷たいものが走った。
ペラフィランの言葉から中に何が入っているのか分かってしまったのである。
魔人化を解いたリュードが刺客の死体に近づく。
剣で袋の紐を切って刺客から外す。
袋に手を伸ばすとずっしりとした重みがある。
袋の口を開けて中身を優しく外に出す。
「あぁ……」
泣きそうな声がペラフィランから漏れる。
分かっていてもそうであってほしくなかった。
ペラフィランをかなり小さくしたような魔物の死体が中から出てきてリュードは思わず目を逸らした。
黒いために分かりにくいが、血にまみれていて全身がひどく切り付けられている。
魔物相手でもこれはひどいとリュードは吐き気がする思いがしている。
見ていられなくて顔を背けたのはペラフィランだけでなくラストもだった。
魔物に同情をしないルフォンやヴィッツでさえもむごたらしく思える姿だった。
「どうしてこんなことを……」
「雷の加護を受けしものよ」
「……リュードでいいですよ」
「リュード、どうしてあなたたちがここにいるのか聞いてもいいですか」
「ああ、もちろん」
リュードはペラフィランにここに来ることになった経緯を話した。
ペラフィランはこの状況、子が殺されてさらわれて、リュードたちがその場にいたことが偶然ではないと思った。
リュードも話しながらこんなことになった原因が、直接的でないにしろ、自分たちにもいくらか関係があることに気づいて正直に話した。
ペラフィランは先ほどまでの態度がウソのように穏やかにリュードの話を聞いていた。
加護をかける必要もない。
リュードが嘘偽りなく話し、わざわざ原因の一端は自分たちにもあると言い切った。
「いいえ、これはあなたたちのせいではありません。長いこと人が来ることもなく警戒を怠りました。あの子たちにもっと警戒するように教えませんでした。
よく確認もせずにあなたたちを襲ってしまったのは私の早とちりでした」
怒りに我を忘れなきゃペラフィランはちゃんと会話が通じた。
「そのプジャンとかいう者としっかりと話す必要がありそうですね」
「ま、待ってください!」
殺気立つペラフィランの体からバチバチと電撃がほとばしる。
話すだけじゃどうにも留まらなそうな気配がしているペラフィランに待ったをかけたのはラストだった。
「何ですか? 私はリュード以外に会話を許した覚えはありませんよ」
ペラフィランの鋭い殺気が向けられてラストがたじろぐ。
けれどラストもグッと勇気を出して一歩前に出る。
「プジャン兄さんを殺さないでください!」
「何故ですか? 兄というからには兄妹愛ですか? 理解しなくもないですがそんなもので私は止められませんよ。邪魔をするならあなたも許しません……」
プジャンという兄のこと、ラストも良く思っていなかったのに一体どうしたのかとリュードは眉をひそめた。
「待ってください、ペラフィラン。せめて話だけでも聞いてください」
何かしらの事情がある。
それを察したリュードは双方の間に入る。
「……分かりました。リュードの頼みなら話だけは聞きましょう。それに私はペラフィランではありません。それは私の祖母の名前で、私はモノランです」
「あっ、はい」
ペラフィランじゃなかったのかと驚く。
ずいぶんと長命な魔物だと思っていたのだが誰も知らないうちに代替わりしていた。
祖母ということはモノランにはペラフィランという祖母がいて、モノランの母がいて、モノランがいる。
さらに子がいてもう4代目まできていることになる。
何百年も生きているような伝説級の魔物ではなかったのだ。
「聞いてやるから早く言いなさい」
「プジャン兄さんは殺してもいいというか、殺してほしいぐらいなんです。でもプジャン兄さんが死んでしまうとクゼナが死んでしまうんです!」
「クゼナ?」
「私の大切な友達で腹違いの姉です」
「だから?」
「えっ?」
「だからそのクゼナが私に何の関係があるというのですか?」
知らん友達を出されてもそれで説得するのは無理だろうとリュードも思う。
子を殺された恨みを止めるだけの理由が必要になる。
事情は分からないけれど自分の姉が死んでしまうから殺さないでくれというのは本人にとっては大事でもモノランにとっては他人事でしかない。
関係のない話でプジャンを殺すのをやめてくれと言われてもモノランには受け入れられない話であった。
「そ、それにクゼナが死んでしまうと今後ここで生活することは出来なくなってしまうと思いますよ!」
「ほう? 今度は言うに事欠いて私を脅すというのか?」
「あっ、いえ……そんなつもりじゃ……」
リュードの耳にも手を出せばただじゃおかないぞっていう脅し文句にも聞こえた。
だがラストは必死に説得を試みようとしていて結果的に脅しのようになっているだけなのだ。
「クゼナを助けてくれたら今後は静かに暮らせますよ……?」
言い方を変えただけじゃないかとため息が出そうになる。
「ま、待て待て待て! どうしてそのクゼナを殺してしまったらモノランが困ることになる。それにどうしてプジャンを殺すとそのクゼナって子まで殺すことになってしまうんだ?」
モノランが面倒だからコイツもやってしまおうかみたいな目でラストをみているので慌ててリュードが助け舟を出す。
このままでは説明も何も足りていない。
ラストがクゼナという子のためにモノランを止めようとしていることはとりあえず伝わったのでもう少し細かな説明をするように促す。
「えっと、それは、プジャン兄さんを倒すと……」
ラストが必死に説明する。
嫌な予感がしてリュードの背中にゾワリとした冷たいものが走った。
ペラフィランの言葉から中に何が入っているのか分かってしまったのである。
魔人化を解いたリュードが刺客の死体に近づく。
剣で袋の紐を切って刺客から外す。
袋に手を伸ばすとずっしりとした重みがある。
袋の口を開けて中身を優しく外に出す。
「あぁ……」
泣きそうな声がペラフィランから漏れる。
分かっていてもそうであってほしくなかった。
ペラフィランをかなり小さくしたような魔物の死体が中から出てきてリュードは思わず目を逸らした。
黒いために分かりにくいが、血にまみれていて全身がひどく切り付けられている。
魔物相手でもこれはひどいとリュードは吐き気がする思いがしている。
見ていられなくて顔を背けたのはペラフィランだけでなくラストもだった。
魔物に同情をしないルフォンやヴィッツでさえもむごたらしく思える姿だった。
「どうしてこんなことを……」
「雷の加護を受けしものよ」
「……リュードでいいですよ」
「リュード、どうしてあなたたちがここにいるのか聞いてもいいですか」
「ああ、もちろん」
リュードはペラフィランにここに来ることになった経緯を話した。
ペラフィランはこの状況、子が殺されてさらわれて、リュードたちがその場にいたことが偶然ではないと思った。
リュードも話しながらこんなことになった原因が、直接的でないにしろ、自分たちにもいくらか関係があることに気づいて正直に話した。
ペラフィランは先ほどまでの態度がウソのように穏やかにリュードの話を聞いていた。
加護をかける必要もない。
リュードが嘘偽りなく話し、わざわざ原因の一端は自分たちにもあると言い切った。
「いいえ、これはあなたたちのせいではありません。長いこと人が来ることもなく警戒を怠りました。あの子たちにもっと警戒するように教えませんでした。
よく確認もせずにあなたたちを襲ってしまったのは私の早とちりでした」
怒りに我を忘れなきゃペラフィランはちゃんと会話が通じた。
「そのプジャンとかいう者としっかりと話す必要がありそうですね」
「ま、待ってください!」
殺気立つペラフィランの体からバチバチと電撃がほとばしる。
話すだけじゃどうにも留まらなそうな気配がしているペラフィランに待ったをかけたのはラストだった。
「何ですか? 私はリュード以外に会話を許した覚えはありませんよ」
ペラフィランの鋭い殺気が向けられてラストがたじろぐ。
けれどラストもグッと勇気を出して一歩前に出る。
「プジャン兄さんを殺さないでください!」
「何故ですか? 兄というからには兄妹愛ですか? 理解しなくもないですがそんなもので私は止められませんよ。邪魔をするならあなたも許しません……」
プジャンという兄のこと、ラストも良く思っていなかったのに一体どうしたのかとリュードは眉をひそめた。
「待ってください、ペラフィラン。せめて話だけでも聞いてください」
何かしらの事情がある。
それを察したリュードは双方の間に入る。
「……分かりました。リュードの頼みなら話だけは聞きましょう。それに私はペラフィランではありません。それは私の祖母の名前で、私はモノランです」
「あっ、はい」
ペラフィランじゃなかったのかと驚く。
ずいぶんと長命な魔物だと思っていたのだが誰も知らないうちに代替わりしていた。
祖母ということはモノランにはペラフィランという祖母がいて、モノランの母がいて、モノランがいる。
さらに子がいてもう4代目まできていることになる。
何百年も生きているような伝説級の魔物ではなかったのだ。
「聞いてやるから早く言いなさい」
「プジャン兄さんは殺してもいいというか、殺してほしいぐらいなんです。でもプジャン兄さんが死んでしまうとクゼナが死んでしまうんです!」
「クゼナ?」
「私の大切な友達で腹違いの姉です」
「だから?」
「えっ?」
「だからそのクゼナが私に何の関係があるというのですか?」
知らん友達を出されてもそれで説得するのは無理だろうとリュードも思う。
子を殺された恨みを止めるだけの理由が必要になる。
事情は分からないけれど自分の姉が死んでしまうから殺さないでくれというのは本人にとっては大事でもモノランにとっては他人事でしかない。
関係のない話でプジャンを殺すのをやめてくれと言われてもモノランには受け入れられない話であった。
「そ、それにクゼナが死んでしまうと今後ここで生活することは出来なくなってしまうと思いますよ!」
「ほう? 今度は言うに事欠いて私を脅すというのか?」
「あっ、いえ……そんなつもりじゃ……」
リュードの耳にも手を出せばただじゃおかないぞっていう脅し文句にも聞こえた。
だがラストは必死に説得を試みようとしていて結果的に脅しのようになっているだけなのだ。
「クゼナを助けてくれたら今後は静かに暮らせますよ……?」
言い方を変えただけじゃないかとため息が出そうになる。
「ま、待て待て待て! どうしてそのクゼナを殺してしまったらモノランが困ることになる。それにどうしてプジャンを殺すとそのクゼナって子まで殺すことになってしまうんだ?」
モノランが面倒だからコイツもやってしまおうかみたいな目でラストをみているので慌ててリュードが助け舟を出す。
このままでは説明も何も足りていない。
ラストがクゼナという子のためにモノランを止めようとしていることはとりあえず伝わったのでもう少し細かな説明をするように促す。
「えっと、それは、プジャン兄さんを倒すと……」
ラストが必死に説明する。
41
お気に入りに追加
407
あなたにおすすめの小説
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました
おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。
※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。
※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・)
更新はめっちゃ不定期です。
※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~
りーさん
ファンタジー
ある日、異世界に転生したルイ。
前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。
そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。
「家族といたいからほっといてよ!」
※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる