人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが？〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

第四章

目覚める乙女心1

「やあっ！」

　サキュルラストかと思ったら違った。
　もっとサキュルラストを大人っぽくしたような女性がリュードを上から覗き込んでいた。

　笑顔でふりふりと手を振る謎の女性は笑顔を浮かべている
　顔が近くて分かりにくいけど寝転がった体勢のリュードから見える景色は空やテントではなく石造りの天井だった。

　この女性が誰であるのか、リュードは答えを持たないけれど正体や状況には察しがついた。
　体が軽い。まるで体でもないように。
　
　体がないのだ。
　いや、体はあるのだけれど物理的な体というものは今はない。

　ここはおそらく神様の世界で精神や魂といったものの世界で物理的な体はきっと眠っているだろうとピンときた。
　これはまた寝覚めが悪くなるぞと内心でため息をつく。

「で、あなたは誰ですか？」

　ゆっくりと起き上がりながらリュードは周りを確認する。
　天井を見てたから分かっていたけれど周りは石でできた建物だった。

　見た感じでは王様に接見する時の部屋のような場所だと思った。
　玉座っぽいのも一段高くなったところに置いてあるし、そんなイメージの場所である。

「私はサキュルディオーネ。もう察しはついてるかな？　血人族の神様だよ」

「だろうな……」

　寝転がって見上げている時は逆さに見えていたのでサキュルラストに似ているなぐらいな感想だった。
　起き上がってよくよく見るとサキュルディオーネはとても美人だった。

　サキュルラストの正統進化版とでも言おうか。
　サキュルラストがそのまま美人に成長していったらこのような人になるだろう。

「なぜ神様が、しかも血人族の神様が俺を呼んだんだ？」

　というかどうやって呼んだ？　とリュードは疑問に思った。
　リュードは旅の途中で眠っていた。

　教会にいもしないし祈りも捧げていない。
　雷の神様のように信託を下すだけならともかく神様の世界に呼び出されるような行為は一切していない。

「それはねぇ、私の可愛い可愛い子孫であるサキュルラストが一心に祈りを捧げているからさ！」

　ニカッと笑ってサキュルディオーネは胸を張った。

「血人族は夜の魔人族。血人族は基本的に教会や神殿を持たず、月に祈りを捧げるのさ。もちろん神殿はおっきな都市にあるけど、神殿でなくても月さえあれば私に祈りは届くのさ。
　と、いうことはだよ。月があればどこでも祭壇。どこでも祈りを捧げる場になるのさ」

「……仮にどこでも教会状態でも俺は祈りも捧げていないぞ？」

「だから言ったでしょう、それはサキュルラストが祈りを捧げてくれたからね」

「どうしてサキュルラストが祈りを捧げると俺が神様に呼ばれることになるんだよ」

　今野宿している場所でさえも月があれば教会や神殿と同等の場所になりうることは理解した。
　けれど直接祈りを捧げたのはサキュルラストでリュードじゃない。

　リュードが呼ばれる筋などないはずだ。

「それは君が神様との繋がりが太いためだよ」

「繋がり？　太い？」

　まあ神様とは細い関係ではないとはリュードも思う。

「君は色々な神様と繋がりを持っている。だから……なんていうのかな？　うーん、表現が難しいけど君にだけはふっとい釣り糸を使って釣り上げられる、みたいな？　いや、違うかな……」

「人を魚か何かみたいに……」

「要するに君は特別なのさ。サキュルラストも特別だからそんなサキュルラストが祈りを捧げる側に君がいたからここに来れたのさ」

　神様の力なんてリュードには理解が及ばない。
　とりあえずサキュルラストは月が出ているので血人族の神様であるサキュルディオーネに祈りを捧げていた。

　そのために近くにいて、神様との繋がりが深いリュードをサキュルディオーネは神様の世界に引っ張ってこれたと。
　そんなざっくりとした理解でいいだろう。

「……とりあえずなんでここに来たかはいいや。何か伝えたいことでもあって呼んだのか？」

　何が言いたいなら神託でもよかろう。
　わざわざ呼び出す必要はない。

「色々な神様が注目する君の顔を直接見てみたかったことも1つ理由ではあるんだけどそんなことのために呼び出すことは私でもしないさ。神託は短いメッセージしか送れないからね。ちゃんと伝えたかったのさ」

　顔が見たいだけ。
　そんな理由だったらどうしようと思っていたリュードはホッとする。

「感謝と警告を伝えるために君を呼んだんだ」

「感謝と警告……」

　感謝の方は別になんでもいい。
　警告の方は何を警告するのか予想もつかない。

　私の子孫に近づきすぎるなよ、みたいな娘を溺愛する父親みたいなことでもいうつもりだろうか。

「まずは感謝を。私の子孫を助けようとしてくれてありがとう。君が来なかったり、あるいは頼みを聞いてくれなかったら毎晩君に神託を出していたかもしれない。仮に私の神格が下がろうともね」

　毎晩神託を下されるなんてただの睡眠障害に他ならない。
　ありがたいはずの神託なのにほとんど脅しと変わらないじゃないかと渋い顔をする。

　とりあえずサキュルラストに協力することにはしたので神託攻撃は回避できたようだ。

「私は血人族の神様で神格も高くないし、してあげられることなんてほとんどないけど自分の子孫や血人族たちは大事に思っている。サキュルラストは先祖返りでもあるし私が特に注目している子なんだ」

　リュードの顔を見て冗談だよと一言言ったサキュルディオーネは言葉を続ける。