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第四章
試練に出発3
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先祖返りのサキュルラストがいなければまだ分からない王座争いを出来たのに、明確に先頭を走るサキュルラストが出てきてしまった。
王座を目指す兄姉たちの心中は穏やかではいられない。
「なので先祖返りのために領主様には監視の目が付けられました。そのために信頼できるのは実の姉であるレスト様ぐらいなのです。
領主様も昔はもっと穏やかで大人しい子でした。やんちゃで少し抜けたような今の領主様は出来ない自分を周りにアピールするために演じているのです。無理して明るく振る舞い、分かりやすく何も考えていないように行動しているのです」
「そうなのか……分かった、全力を尽くさせてもらうよ。頼まれて引き受けた以上は手を抜くつもりはなかったけれど、せめて大人の試練は無事にクリアできるように頑張るよ」
もう乗りかかった船どころか乗ってしまった船だ。
監視がついているならリュードがサキュルラストに協力することもとっくにバレて伝わっているはず。
ここでさようならと言っても一度サキュルラスト側についたという事実は変わらない。
どうせなら最後まで手を貸してやる方がリュードの気分的にもいいだろう。
「ありがとうございます。……ですがご自分のお命を優先してくださいませ」
「……それはもちろんさ」
命まで投げ打つつもりはない。
だからって危機的状況でサキュルラストを見捨てられるかと問われるとできないかもしれない。
死ぬ気で頑張るんじゃなくて殺す気で頑張る。
どんな障害が待ち受けていようとも全て蹴散らしていくぐらいのつもりで頑張るのだ。
「本当に返しても返しきれない御恩でございます」
「まだ何も始まってないだろ。全部終わってからでいいさ。何かお礼がしたいってならルフォンに料理について教えてやってくれ。そうすれば俺にも間接的に返ってくるから」
ルフォンの料理が美味しくなれば恩恵を受けるのはリュードだ。
ヴィッツの知識は多いので道中ルフォンに教えてもらえればリュードとしてもありがたい話なのだ。
「分かりました。それにしてもリュード様はルフォン様のことを大切に思ってらっしゃるのですね」
「そりゃあ……な」
「どうですか、うちの……サキュルラスト様は? 贔屓目抜きにしてもこれからもっと美人になりますし、魔力やなんかも強い。
……このようなところにいるよりもリュード様のようなお人のところにいるのが幸せになれると思うのです。第二夫人でも第三夫人でもいいのですがいかがでしょうか?」
また変な冗談を、と言おうヴィッツのことを見てリュードは言葉を飲み込んだ。
ヴィッツの目は本気だった。
こんな権力争いで死んでしまうぐらいならどこか全てを捨てて旅を出てしまっても良い。
国に帰ることはできなくなるかもしれないけどむしろその方がいいかもとすらヴィッツはどこかで思っていた。
「……美人で魔力があっても、それを決めるのは本人であるサキュルラストと俺とルフォンですよ」
仮の話として考えてみる。
第二夫人でなくてもサキュルラストが全てを捨てるから国を連れ出して一緒に旅に同行させてほしいと言ったら断りきれないかもしれない。
何かを断るのにも勇気がいる。
けれど引き受けてしまうとその時は楽なのだけど後々大変だったりする。
リュードはヴィッツの真面目な視線にダメだとは断る言葉を放てずに言葉を濁すにとどまった。
断った後にどうなるか。
もやりとした気持ちが残りそうな想像ばかりをしてしまう。
断ることに罪悪感を覚えてしまい、なかなかスッパリと断ることができない。
まだまだ精神的にも未熟だなとリュードは自分自身に思ったのであった。
王座を目指す兄姉たちの心中は穏やかではいられない。
「なので先祖返りのために領主様には監視の目が付けられました。そのために信頼できるのは実の姉であるレスト様ぐらいなのです。
領主様も昔はもっと穏やかで大人しい子でした。やんちゃで少し抜けたような今の領主様は出来ない自分を周りにアピールするために演じているのです。無理して明るく振る舞い、分かりやすく何も考えていないように行動しているのです」
「そうなのか……分かった、全力を尽くさせてもらうよ。頼まれて引き受けた以上は手を抜くつもりはなかったけれど、せめて大人の試練は無事にクリアできるように頑張るよ」
もう乗りかかった船どころか乗ってしまった船だ。
監視がついているならリュードがサキュルラストに協力することもとっくにバレて伝わっているはず。
ここでさようならと言っても一度サキュルラスト側についたという事実は変わらない。
どうせなら最後まで手を貸してやる方がリュードの気分的にもいいだろう。
「ありがとうございます。……ですがご自分のお命を優先してくださいませ」
「……それはもちろんさ」
命まで投げ打つつもりはない。
だからって危機的状況でサキュルラストを見捨てられるかと問われるとできないかもしれない。
死ぬ気で頑張るんじゃなくて殺す気で頑張る。
どんな障害が待ち受けていようとも全て蹴散らしていくぐらいのつもりで頑張るのだ。
「本当に返しても返しきれない御恩でございます」
「まだ何も始まってないだろ。全部終わってからでいいさ。何かお礼がしたいってならルフォンに料理について教えてやってくれ。そうすれば俺にも間接的に返ってくるから」
ルフォンの料理が美味しくなれば恩恵を受けるのはリュードだ。
ヴィッツの知識は多いので道中ルフォンに教えてもらえればリュードとしてもありがたい話なのだ。
「分かりました。それにしてもリュード様はルフォン様のことを大切に思ってらっしゃるのですね」
「そりゃあ……な」
「どうですか、うちの……サキュルラスト様は? 贔屓目抜きにしてもこれからもっと美人になりますし、魔力やなんかも強い。
……このようなところにいるよりもリュード様のようなお人のところにいるのが幸せになれると思うのです。第二夫人でも第三夫人でもいいのですがいかがでしょうか?」
また変な冗談を、と言おうヴィッツのことを見てリュードは言葉を飲み込んだ。
ヴィッツの目は本気だった。
こんな権力争いで死んでしまうぐらいならどこか全てを捨てて旅を出てしまっても良い。
国に帰ることはできなくなるかもしれないけどむしろその方がいいかもとすらヴィッツはどこかで思っていた。
「……美人で魔力があっても、それを決めるのは本人であるサキュルラストと俺とルフォンですよ」
仮の話として考えてみる。
第二夫人でなくてもサキュルラストが全てを捨てるから国を連れ出して一緒に旅に同行させてほしいと言ったら断りきれないかもしれない。
何かを断るのにも勇気がいる。
けれど引き受けてしまうとその時は楽なのだけど後々大変だったりする。
リュードはヴィッツの真面目な視線にダメだとは断る言葉を放てずに言葉を濁すにとどまった。
断った後にどうなるか。
もやりとした気持ちが残りそうな想像ばかりをしてしまう。
断ることに罪悪感を覚えてしまい、なかなかスッパリと断ることができない。
まだまだ精神的にも未熟だなとリュードは自分自身に思ったのであった。
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