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第四章
大人になるために4
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「おはよ~」
リュードは寝返りを打った。
「おはよう」
体勢を横に向けるのを諦めて仰向けになって天井を見つめる。
気持ちの良いまどろみが薄れていき、意識がハッキリとしてくる。
約束が違うではないかとリュードは思った。
「あなただけよ~? こんな美人姉妹に挟まれてそんな顔するの」
「むう、私も顔は自信あるのだがな」
やはり高級宿というのは用意している寝具も良い。
そして良い寝具というものは色々と気持ちが良い。
精神的な疲れもあったから久々にグッスリと眠ってしまった。
わずかながらに目が覚めて心地よいまどろみを楽しもうと思って寝返りを打ったリュードだったのだが、そこにはレストの顔があった。
キュッと眉をよせて、きっと気のせいだと思うことにして逆側に寝返りを打つと今度はサキュルラストの顔があった。
目が覚めてみるとリュードは自称美人姉妹に挟まれて寝ているのであった。
自ら美人姉妹だと顔に自信があるだの言っているが言えるだけの顔は2人ともしている。
男しては夢のある状況と言っていい。
ただ今はもうちょっとウトウトとした気分を味わっていたかった。
もしくは何の変哲もない爽やかな目覚めが良かった。
起きていきなりなぜこのような状況になったのかなんて考えたくない。
もう一度まどろみに身を委ねようにもすっかり目が冴えてしまっでもう無理だ。
こんなの相手が男だったら問答無用で殴り倒しているところである。
「何でここにいるんだ?」
天井を見つめたまま言葉を投げる。
人をやると言っていたのにまさか昨日の今日でご本人登場とは夢にも思わない。
別れた時点では宿も決まっていなかったのでどこに泊まるのかすら伝えていなかったはずなのに。
「……尾行したのか?」
でなければどこに泊まったのか分かるはずもない。
「私じゃないよ。お姉ちゃんかな?」
「人をやるって言ったじゃない? 早めに人をやっただけよ~」
おっとりとした声で悪びれもなく言ってみせるレストはおっとりとした見た目で意外と強かさを持ち合わせている。
それにしても警戒してなかったとはいえ、尾行されていたことに気づかなかった。
ちょっとだけ悔しさがある。
「まあ人につけさせたのはいい……よくないけどとりあえずいいとして、なぜ2人が部屋の、それもベッドにいる?」
高級宿なので部屋にはちゃんと鍵までついている。
夜はちゃんと鍵をかけて寝たしどうやって侵入してきたのか知りたいものだ。
「私はこの領地の大領主だからね。私が少し用事があると言えばマスターキーの1つぐらい出てくるってものよ」
誇らしげにサキュルラストがのたまうが誇ることじゃないぞとリュードは頭が痛い思いがしていた。
立場を利用して不正行為を行ったと堂々と報告されても不正行為は不正行為である。
実は知り合いじゃなかったことが判明して後々リュードは宿の人に深く頭を下げられるのだが、権力者に逆らえないのはどこでも同じ。
暴君みたいにいきなり来て鍵を出せと脅されたら仕方のないことである。
「ぷえっ! ……なんで?」
リュードのデコピンがサキュルラストのオデコにパチンと当たる。
昨日の2人ほど全力デコピンは流石にしないのでちょっと痛い程度。
それでも予想外の痛みに涙目になってオデコをさするサキュルラストはデコピンされた理由をわかっていない。
鍵欲しさでもそんなことのために権力を振りかざしてはいけないのだ。
「侵入できた理由はわかった。なぜ俺のベッドで寝ている?」
百歩譲って不当な行為を行って部屋に入ったとしてもそれは許そう。
目的は盗みに入ったのではないし悪いことをしようとしに来たつもりじゃないから。
不当に入ってきた時点で悪いことをしているのだけど、ひとまずそれは置いておく。
「それはお姉ちゃんが今がチャンスよ~って言ったから……」
「ラ、ラストちゃん! それじゃあお姉ちゃんが悪いみたいに……いたいっ!」
サキュルラストの時より強めのデコピンがラストのおでこに炸裂した。
ビシッと音がしたので結構痛いはずである。
「ちょっとした出来心だったんです。入ってきたのもちょっと前だし、なかなか起きないからいいかなーって?」
そうは言っているが実は2人して長い時間リュードのことを眺めていた。
寝相でも悪ければ気がついたかもしれないがリュードは寝ている時にあまり動かなかった。
眠りも深くて見られていることに気が付かなかったのだ。
「そういえばルフォンは……」
これだけ騒がしく会話しているのにルフォンの反応がない。
それどころか部屋に侵入してきている人がいたらルフォンの方が気づいていてもおかしくないのに。
リュードが上半身を起こして隣のベッドを見るとルフォンは気持ちよさそうにスヤスヤと寝ていた。
「寝てる……」
当然といえば当然なのだけどおかしい。
ルフォンは敏感な方だし、こんな普通に会話していて起きないわけがない。
それなのに布団に抱きつくようにして幸せそうな顔をして熟睡している。
違和感は感じるのだけれどサキュルラストとレストに挟まれて寝ていたことを見られなくてよかったとは思う。
「ルフォン……ルフォン?」
幸せそうだしこのまま寝かせておいてあげたい気もするけれど状況が状況だけに放っておけない。
レストを乗り越えてベッドを降りるとルフォンに声をかける。
ルフォンはリュードの呼びかけにも起きない。
リュードは寝返りを打った。
「おはよう」
体勢を横に向けるのを諦めて仰向けになって天井を見つめる。
気持ちの良いまどろみが薄れていき、意識がハッキリとしてくる。
約束が違うではないかとリュードは思った。
「あなただけよ~? こんな美人姉妹に挟まれてそんな顔するの」
「むう、私も顔は自信あるのだがな」
やはり高級宿というのは用意している寝具も良い。
そして良い寝具というものは色々と気持ちが良い。
精神的な疲れもあったから久々にグッスリと眠ってしまった。
わずかながらに目が覚めて心地よいまどろみを楽しもうと思って寝返りを打ったリュードだったのだが、そこにはレストの顔があった。
キュッと眉をよせて、きっと気のせいだと思うことにして逆側に寝返りを打つと今度はサキュルラストの顔があった。
目が覚めてみるとリュードは自称美人姉妹に挟まれて寝ているのであった。
自ら美人姉妹だと顔に自信があるだの言っているが言えるだけの顔は2人ともしている。
男しては夢のある状況と言っていい。
ただ今はもうちょっとウトウトとした気分を味わっていたかった。
もしくは何の変哲もない爽やかな目覚めが良かった。
起きていきなりなぜこのような状況になったのかなんて考えたくない。
もう一度まどろみに身を委ねようにもすっかり目が冴えてしまっでもう無理だ。
こんなの相手が男だったら問答無用で殴り倒しているところである。
「何でここにいるんだ?」
天井を見つめたまま言葉を投げる。
人をやると言っていたのにまさか昨日の今日でご本人登場とは夢にも思わない。
別れた時点では宿も決まっていなかったのでどこに泊まるのかすら伝えていなかったはずなのに。
「……尾行したのか?」
でなければどこに泊まったのか分かるはずもない。
「私じゃないよ。お姉ちゃんかな?」
「人をやるって言ったじゃない? 早めに人をやっただけよ~」
おっとりとした声で悪びれもなく言ってみせるレストはおっとりとした見た目で意外と強かさを持ち合わせている。
それにしても警戒してなかったとはいえ、尾行されていたことに気づかなかった。
ちょっとだけ悔しさがある。
「まあ人につけさせたのはいい……よくないけどとりあえずいいとして、なぜ2人が部屋の、それもベッドにいる?」
高級宿なので部屋にはちゃんと鍵までついている。
夜はちゃんと鍵をかけて寝たしどうやって侵入してきたのか知りたいものだ。
「私はこの領地の大領主だからね。私が少し用事があると言えばマスターキーの1つぐらい出てくるってものよ」
誇らしげにサキュルラストがのたまうが誇ることじゃないぞとリュードは頭が痛い思いがしていた。
立場を利用して不正行為を行ったと堂々と報告されても不正行為は不正行為である。
実は知り合いじゃなかったことが判明して後々リュードは宿の人に深く頭を下げられるのだが、権力者に逆らえないのはどこでも同じ。
暴君みたいにいきなり来て鍵を出せと脅されたら仕方のないことである。
「ぷえっ! ……なんで?」
リュードのデコピンがサキュルラストのオデコにパチンと当たる。
昨日の2人ほど全力デコピンは流石にしないのでちょっと痛い程度。
それでも予想外の痛みに涙目になってオデコをさするサキュルラストはデコピンされた理由をわかっていない。
鍵欲しさでもそんなことのために権力を振りかざしてはいけないのだ。
「侵入できた理由はわかった。なぜ俺のベッドで寝ている?」
百歩譲って不当な行為を行って部屋に入ったとしてもそれは許そう。
目的は盗みに入ったのではないし悪いことをしようとしに来たつもりじゃないから。
不当に入ってきた時点で悪いことをしているのだけど、ひとまずそれは置いておく。
「それはお姉ちゃんが今がチャンスよ~って言ったから……」
「ラ、ラストちゃん! それじゃあお姉ちゃんが悪いみたいに……いたいっ!」
サキュルラストの時より強めのデコピンがラストのおでこに炸裂した。
ビシッと音がしたので結構痛いはずである。
「ちょっとした出来心だったんです。入ってきたのもちょっと前だし、なかなか起きないからいいかなーって?」
そうは言っているが実は2人して長い時間リュードのことを眺めていた。
寝相でも悪ければ気がついたかもしれないがリュードは寝ている時にあまり動かなかった。
眠りも深くて見られていることに気が付かなかったのだ。
「そういえばルフォンは……」
これだけ騒がしく会話しているのにルフォンの反応がない。
それどころか部屋に侵入してきている人がいたらルフォンの方が気づいていてもおかしくないのに。
リュードが上半身を起こして隣のベッドを見るとルフォンは気持ちよさそうにスヤスヤと寝ていた。
「寝てる……」
当然といえば当然なのだけどおかしい。
ルフォンは敏感な方だし、こんな普通に会話していて起きないわけがない。
それなのに布団に抱きつくようにして幸せそうな顔をして熟睡している。
違和感は感じるのだけれどサキュルラストとレストに挟まれて寝ていたことを見られなくてよかったとは思う。
「ルフォン……ルフォン?」
幸せそうだしこのまま寝かせておいてあげたい気もするけれど状況が状況だけに放っておけない。
レストを乗り越えてベッドを降りるとルフォンに声をかける。
ルフォンはリュードの呼びかけにも起きない。
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