178 / 364
第四章
大人になるために3
しおりを挟む
「あなたが変なことするからよ~」
同じく額の真ん中を赤くしているレスト。
人に変なことをしていると言う資格がレストにはない。
まだ少女とも言えるサキュルラストの方がこの大領地の領主であることにリュードは驚いた。
ティアローザは4つの大きな領地と王の直轄領に分かれていて、それぞれの領地を大領地と呼んでいる。
大領地もさらに分かれていて、それぞれ貴族が治める領地となっている。
今リュードたちがいるところも大領地の1つであり、その中でも大領地の領主が治めている中心地であった。
さらにその大領地の中心地の町の中心にある城にいる。
どこかしらに大領地の領主がいると思っていたがまさかこのような少女だったとは思いもしなかった。
「お姉ちゃんのバーカ!」
このティアローザでも大きな権力を持つ大領地の領主の1人。
これが? と思わざるを得ない。
「お騒がせいたしまして誠に申し訳ございません」
「それらいいんですが、次からはこっそりと後ろに立つのはやめてください」
「申し訳ございません。ちょっとした戯れにございます」
「次はビックリして切りつけちゃうかもしれません」
「心に刻んでおきます」
2人の説明をしてくれたのはリュードの後ろに立っている老年の執事だった。
リュードでもほんの僅かにしか気配が感じられないぐらいにそっとリュードの後ろに立っていたのであった。
ニコリと笑う執事には反省の色は見られない。
出会った人たちのキャラが濃すぎて胃もたれを起こしそうだ。
「はぁ……ルフォン、行こうか」
この国における4大権力者と他国の王子は関わっていて良いことなどなさそうなメンツだとリュードは思った。
ため息をついてリュードが部屋を出て行こうとする。
「まっ、待って!」
「…………なんだ?」
サキュルラストがリュードの服に手を伸ばして引き留める。
レヴィアンといい、サキュルラストといいよく呼び止められる日だとため息が漏れそうになる。
振り返ってやる義務もない。
だが大領主な女の子の手を振り払うわけにもいかなくてリュードは怪訝そうな表情でサキュルラストを見る。
止められたから止まったけれど気分は良くない。
帰れるならさっさと帰りたいのだ。
いきなり自分の夫になれなんて言い放った相手にこやかに接しろという方が無理である。
「頼みがある!」
「嫌だ」
「まだ内容も聞いてないではないかー!」
見知らぬ男を呼び止めてする頼みなんて絶対に面倒事でしかない。
旅に出てからというもの、結構な厄介事に首を突っ込んできている。
今の状況だって厄介なのにさらに厄介事舞い込まさせてたまるかってんだと思う。
ようやく2人でのんびりと旅することにも慣れてきたのにまた問題を抱えるのはめんどくさい。
「頼み事ならそこの赤獅子の王子にでもするんだな」
「えっ、俺?」
「こんな短絡的で単細胞なヤツではダメなのだ!」
「え、たん……」
「扱いやすくていいだろ」
「そうかもしれんがそれだけじゃダメなの!」
関係のないところでレヴィアンが傷ついてゆく。
まるでこの場にいないかのような忌憚なきまっすぐな意見がレヴィアンの胸を刺す。
「もうヤメテ……」
王族が故にあまり悪く言われることの少なく育ってきたレヴィアンは自分の悪い意見に慣れていない。
リュードとサキュルラストの会話によってレヴィアンはダウン寸前になっていた。
「俺たちも旅してきて疲れているんだ。そろそろ帰してくれないか?」
実際は泊まる宿すら見つけていない。
それを言うと面倒そうなので言わない。
けれどとりあえず早く解放してほしい。
「むう……分かった。使いをやるのでまた私のところに来て話を聞いてほしい」
「時間があったらな」
行かない時の常套句。
行くとも言わないし行かないとも明言しない。
「休息は英雄にも必要なものだ。疲れているとイラついたりして正常に話を聞けなくなるし次は優しい態度で頼むぞ」
確かにレヴィアンのせいでイラついてはいた。
それが態度に出ていないとは言い切れない。
次がないことを祈っているけれど次があるならば多少優しくはしてやろうと思った。
出会い方と最初の言い方がまずかっただけで夫にしてもよいと思ってくれるほど何かを認めてくれたのだから。
「それじゃあ、また今度会おう」
決闘騒ぎがなぜかよく分からない終わりを迎えてリュードたちは城を後にした。
お腹も空いたけど時間を相当食われてしまったのでまず宿探しをすることにした。
いつも泊まるような価格帯の宿は時間が遅くなってしまったせいなのか部屋が埋まってしまっていて取ることができなかった。
それにすこーしだけイラついたし、精神的にも疲れていた。
早く休みたかったし宿を決めて食事も取りたかった。
同じ価格帯の宿を探したりするのは時間がかかるし、値段を下げた安宿に泊まるのは今日ばかりは嫌だった。
思い切って少し高めの宿を探してみると空いている部屋があったのでそこに泊まることにした。
食事も宿の人に勧められるままに近くのちょっとお高めのところで食べて、その日は柔らかなベッドの上でゆっくりと休んだ。
ーーーーー
同じく額の真ん中を赤くしているレスト。
人に変なことをしていると言う資格がレストにはない。
まだ少女とも言えるサキュルラストの方がこの大領地の領主であることにリュードは驚いた。
ティアローザは4つの大きな領地と王の直轄領に分かれていて、それぞれの領地を大領地と呼んでいる。
大領地もさらに分かれていて、それぞれ貴族が治める領地となっている。
今リュードたちがいるところも大領地の1つであり、その中でも大領地の領主が治めている中心地であった。
さらにその大領地の中心地の町の中心にある城にいる。
どこかしらに大領地の領主がいると思っていたがまさかこのような少女だったとは思いもしなかった。
「お姉ちゃんのバーカ!」
このティアローザでも大きな権力を持つ大領地の領主の1人。
これが? と思わざるを得ない。
「お騒がせいたしまして誠に申し訳ございません」
「それらいいんですが、次からはこっそりと後ろに立つのはやめてください」
「申し訳ございません。ちょっとした戯れにございます」
「次はビックリして切りつけちゃうかもしれません」
「心に刻んでおきます」
2人の説明をしてくれたのはリュードの後ろに立っている老年の執事だった。
リュードでもほんの僅かにしか気配が感じられないぐらいにそっとリュードの後ろに立っていたのであった。
ニコリと笑う執事には反省の色は見られない。
出会った人たちのキャラが濃すぎて胃もたれを起こしそうだ。
「はぁ……ルフォン、行こうか」
この国における4大権力者と他国の王子は関わっていて良いことなどなさそうなメンツだとリュードは思った。
ため息をついてリュードが部屋を出て行こうとする。
「まっ、待って!」
「…………なんだ?」
サキュルラストがリュードの服に手を伸ばして引き留める。
レヴィアンといい、サキュルラストといいよく呼び止められる日だとため息が漏れそうになる。
振り返ってやる義務もない。
だが大領主な女の子の手を振り払うわけにもいかなくてリュードは怪訝そうな表情でサキュルラストを見る。
止められたから止まったけれど気分は良くない。
帰れるならさっさと帰りたいのだ。
いきなり自分の夫になれなんて言い放った相手にこやかに接しろという方が無理である。
「頼みがある!」
「嫌だ」
「まだ内容も聞いてないではないかー!」
見知らぬ男を呼び止めてする頼みなんて絶対に面倒事でしかない。
旅に出てからというもの、結構な厄介事に首を突っ込んできている。
今の状況だって厄介なのにさらに厄介事舞い込まさせてたまるかってんだと思う。
ようやく2人でのんびりと旅することにも慣れてきたのにまた問題を抱えるのはめんどくさい。
「頼み事ならそこの赤獅子の王子にでもするんだな」
「えっ、俺?」
「こんな短絡的で単細胞なヤツではダメなのだ!」
「え、たん……」
「扱いやすくていいだろ」
「そうかもしれんがそれだけじゃダメなの!」
関係のないところでレヴィアンが傷ついてゆく。
まるでこの場にいないかのような忌憚なきまっすぐな意見がレヴィアンの胸を刺す。
「もうヤメテ……」
王族が故にあまり悪く言われることの少なく育ってきたレヴィアンは自分の悪い意見に慣れていない。
リュードとサキュルラストの会話によってレヴィアンはダウン寸前になっていた。
「俺たちも旅してきて疲れているんだ。そろそろ帰してくれないか?」
実際は泊まる宿すら見つけていない。
それを言うと面倒そうなので言わない。
けれどとりあえず早く解放してほしい。
「むう……分かった。使いをやるのでまた私のところに来て話を聞いてほしい」
「時間があったらな」
行かない時の常套句。
行くとも言わないし行かないとも明言しない。
「休息は英雄にも必要なものだ。疲れているとイラついたりして正常に話を聞けなくなるし次は優しい態度で頼むぞ」
確かにレヴィアンのせいでイラついてはいた。
それが態度に出ていないとは言い切れない。
次がないことを祈っているけれど次があるならば多少優しくはしてやろうと思った。
出会い方と最初の言い方がまずかっただけで夫にしてもよいと思ってくれるほど何かを認めてくれたのだから。
「それじゃあ、また今度会おう」
決闘騒ぎがなぜかよく分からない終わりを迎えてリュードたちは城を後にした。
お腹も空いたけど時間を相当食われてしまったのでまず宿探しをすることにした。
いつも泊まるような価格帯の宿は時間が遅くなってしまったせいなのか部屋が埋まってしまっていて取ることができなかった。
それにすこーしだけイラついたし、精神的にも疲れていた。
早く休みたかったし宿を決めて食事も取りたかった。
同じ価格帯の宿を探したりするのは時間がかかるし、値段を下げた安宿に泊まるのは今日ばかりは嫌だった。
思い切って少し高めの宿を探してみると空いている部屋があったのでそこに泊まることにした。
食事も宿の人に勧められるままに近くのちょっとお高めのところで食べて、その日は柔らかなベッドの上でゆっくりと休んだ。
ーーーーー
50
お気に入りに追加
408
あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました
おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。
※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。
※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・)
更新はめっちゃ不定期です。
※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~
犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。
塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。
弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。
けれども違ったのだ。
この世の中、強い奴ほど才能がなかった。
これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。
見抜いて、育てる。
育てて、恩を売って、いい暮らしをする。
誰もが知らない才能を見抜け。
そしてこの世界を生き残れ。
なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。
更新不定期
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる