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第三章
熱き砂浜の戦い10
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そして決勝になり、コートを仕切る網越しにリュード・ルフォンペアとバーナード・エリザペアは対峙した。
「ここまで来ると運命まで感じるな……」
ピクピクと筋肉を動かしてバーナードは感慨深そうな表情を浮かべる。
明らかに他とはレベルの違う戦いにこの2人が勝ち上がってくることは分かっていた。
「スナハマラベックはこれまでやってきた全てが高い基準で要求される競技……。君たちならここまできてもなんら不思議ではない。しかし優勝するのは私たちだ。……ここで負けるわけにはいかない!」
バーナードが全身に力を込めると筋肉が盛り上がり、体が一回り大きくなった。
「こちらも負けませんよ」
「こんなに熱くなれる戦いは久々だ。決着をつけようではないか」
「ええ、そうしましょう」
リュードも剣などの戦い以外でもここまで熱くなれるとは自分でも予想外だった。
だが不思議とワクワクしている。
バーナードたちと勝負を決めたい自分がいる。
「泣いても笑ってもこれが最後の戦い! スナハマバトルの優勝者はこの直接対決によって決まります!」
司会のウェッツォの煽りの言葉も応援の歓声も4人には届いていない。
コートに立った4人の集中は高まっていて他のことはもはや見えていない。
先行のサーブは総合ポイントで劣るバーナード・エリザペア。
「行くぞ!」
バーナードが持つとラベックのラベックも小さく見える。
軽く上に投げたラベックのラベックをバーナードが打つ。
バーナードの強力なサーブ。
最後の戦いが始まった。
前世の体だったなら対応することも難しかったろう。
しかし今は竜人族の強靭な肉体がある。
スピードもパワーもあるサーブをリュードが反応して上げる。
「ルフォン!」
「ハァッ!」
「トンデモナイ娘さんだな……」
「ホントね……」
反応ができなかったとバーナードは息を吐き出した。
リュードが上げたラベックにルフォンは砂を強く蹴って飛び上がって叩きつけるように腕を振り下ろした。
上げ方は決して上手いとは言えなかったのにルフォンは恐ろしい身体能力と反射神経でもってラベックを相手コートの隅に叩き落としてみせた。
荒々しい力技にバーナードもエリザも反応することができなかった。
しかしバーナードとエリザも負けてはいない。
ルフォンの強烈なアタックに対応し始めてお返しとばかりに返してくる。
一進一退の攻防が続く。
時には力で、時には技術での攻撃にリュードとルフォンも苦しむ。
砂にまみれて負けじとラベックに食らいついてリュードが上げて、ルフォンがどんな状況からでもアタックを返す。
バーナード・エリザペアのようなスマートさはないが、リュードが持ち前の身体能力でとりあえずラベックを上げればルフォンが打ってくれる。
互いが互いに譲らない戦い。
一瞬たりとも気の抜けない状況が続いていた。
「ぬおおおっ!」
「バーナード、ルフォンの強力なアタックを受けきれないー!」
やればやるほどルフォンは研ぎ澄まされていく。
戦いの最中にルフォンは成長し続けていた。
バーナードの伸ばした腕に当たったラベックのラベックは威力を殺しきれずに大きく後ろに飛んでいってしまった。
鋭く重たくなっていくアタックはラベックをある種の凶器にまでしてあるかのようだった。
「これでシューナリュード・ルフォンペア、マッチポイントです!」
先にマッチポイントを迎えたのはリュードとルフォン。
長い戦いも終わりが見えた。
体力に自信があったのに1日中砂の上で動き続けたせいで疲労がすごく、さすがのリュードですら体が重く感じられる。
ここに来てサーブはバーナード。
バーナードのサーブはとても重たくてルフォンでは受けるのが厳しい。
まだバーナードの目には強い意志を感じ、勝負を諦めてはいない。
「うおおおお! 負けるかー!」
バーナードの渾身のサーブ。
パワーを重視したその一球はリュードの真正面に飛んできた。
「こっちだって!」
腕を引いて威力を殺そうとするけどラベックの勢いが強すぎる。
リュードの体が押されるような重たいラベックをなんとか上にあげる。
「バーナードの放ったサーブをリュードが上げたっ! 空高くラベックが上がるー!」
上手く勢いを減じきれなくて上げることが精一杯だった。
もっとルフォンが打ちやすいように上げられたらよかったのに。
でも、上げられればそれで十分だとルフォンは思った。
「任せて」
ルフォンの目にはラベックのラベックしか見えていない。
ここまでの全てを活かすように、ルフォンは大きく飛び上がった。
「やああああ!」
頂点まで行って勢いを失って落ちてきたラベックのラベックと勢いよく振り下ろされたルフォンの手が重なる。
下への強力な力をもらってラベックのラベックがバーナード・エリザペアのコートに向かう。
「はああああ!」
誰もが飛び上がったルフォンに視線を向けて顔を上げる中でエリザが一瞬早く我に帰った。
かなり高いところから打ち下ろすことになったのでラベックが到達するまでに時間があったことも幸いしてエリザはルフォンのアタックに反応できた。
コートの端ギリギリを狙ったルフォンのアタックにエリザが飛びついて腕を伸ばす。
完璧なタイミングで打ち下ろされたラベックはバーナードのパワーにも負けていない。
意地でラベックを腕を当てることは成功したものの、その行方までコントロールできはしない。
エリザの腕にぶつかったラベックは大きく跳ね上がりコートの後ろに飛んでいく。
「バーナード!」
「どりゃあー!」
バーナードも走ってコートを飛び出して、ラベックを追いかける。
エリザの努力を無駄にするわけにいかないとバーナードがラベックの下に腕を差し込もうと飛びかかる。
必死に伸ばした腕。
無情にも指先は届かず、ほんの少し先にラベックは落ちた。
転々とラベックが転がり、会場がシンと静かになる。
「…………あ、あまりの勝負に私も言葉を失ってしまいました。決着がつきました。ルフォンのアタックを返し切ることができず、ラベックはコートの外に落ちてしまいました。熾烈な戦いに勝利したのはなんと、シューナリュード・ルフォンペア!」
ドッと会場がわく。
「ここまで来ると運命まで感じるな……」
ピクピクと筋肉を動かしてバーナードは感慨深そうな表情を浮かべる。
明らかに他とはレベルの違う戦いにこの2人が勝ち上がってくることは分かっていた。
「スナハマラベックはこれまでやってきた全てが高い基準で要求される競技……。君たちならここまできてもなんら不思議ではない。しかし優勝するのは私たちだ。……ここで負けるわけにはいかない!」
バーナードが全身に力を込めると筋肉が盛り上がり、体が一回り大きくなった。
「こちらも負けませんよ」
「こんなに熱くなれる戦いは久々だ。決着をつけようではないか」
「ええ、そうしましょう」
リュードも剣などの戦い以外でもここまで熱くなれるとは自分でも予想外だった。
だが不思議とワクワクしている。
バーナードたちと勝負を決めたい自分がいる。
「泣いても笑ってもこれが最後の戦い! スナハマバトルの優勝者はこの直接対決によって決まります!」
司会のウェッツォの煽りの言葉も応援の歓声も4人には届いていない。
コートに立った4人の集中は高まっていて他のことはもはや見えていない。
先行のサーブは総合ポイントで劣るバーナード・エリザペア。
「行くぞ!」
バーナードが持つとラベックのラベックも小さく見える。
軽く上に投げたラベックのラベックをバーナードが打つ。
バーナードの強力なサーブ。
最後の戦いが始まった。
前世の体だったなら対応することも難しかったろう。
しかし今は竜人族の強靭な肉体がある。
スピードもパワーもあるサーブをリュードが反応して上げる。
「ルフォン!」
「ハァッ!」
「トンデモナイ娘さんだな……」
「ホントね……」
反応ができなかったとバーナードは息を吐き出した。
リュードが上げたラベックにルフォンは砂を強く蹴って飛び上がって叩きつけるように腕を振り下ろした。
上げ方は決して上手いとは言えなかったのにルフォンは恐ろしい身体能力と反射神経でもってラベックを相手コートの隅に叩き落としてみせた。
荒々しい力技にバーナードもエリザも反応することができなかった。
しかしバーナードとエリザも負けてはいない。
ルフォンの強烈なアタックに対応し始めてお返しとばかりに返してくる。
一進一退の攻防が続く。
時には力で、時には技術での攻撃にリュードとルフォンも苦しむ。
砂にまみれて負けじとラベックに食らいついてリュードが上げて、ルフォンがどんな状況からでもアタックを返す。
バーナード・エリザペアのようなスマートさはないが、リュードが持ち前の身体能力でとりあえずラベックを上げればルフォンが打ってくれる。
互いが互いに譲らない戦い。
一瞬たりとも気の抜けない状況が続いていた。
「ぬおおおっ!」
「バーナード、ルフォンの強力なアタックを受けきれないー!」
やればやるほどルフォンは研ぎ澄まされていく。
戦いの最中にルフォンは成長し続けていた。
バーナードの伸ばした腕に当たったラベックのラベックは威力を殺しきれずに大きく後ろに飛んでいってしまった。
鋭く重たくなっていくアタックはラベックをある種の凶器にまでしてあるかのようだった。
「これでシューナリュード・ルフォンペア、マッチポイントです!」
先にマッチポイントを迎えたのはリュードとルフォン。
長い戦いも終わりが見えた。
体力に自信があったのに1日中砂の上で動き続けたせいで疲労がすごく、さすがのリュードですら体が重く感じられる。
ここに来てサーブはバーナード。
バーナードのサーブはとても重たくてルフォンでは受けるのが厳しい。
まだバーナードの目には強い意志を感じ、勝負を諦めてはいない。
「うおおおお! 負けるかー!」
バーナードの渾身のサーブ。
パワーを重視したその一球はリュードの真正面に飛んできた。
「こっちだって!」
腕を引いて威力を殺そうとするけどラベックの勢いが強すぎる。
リュードの体が押されるような重たいラベックをなんとか上にあげる。
「バーナードの放ったサーブをリュードが上げたっ! 空高くラベックが上がるー!」
上手く勢いを減じきれなくて上げることが精一杯だった。
もっとルフォンが打ちやすいように上げられたらよかったのに。
でも、上げられればそれで十分だとルフォンは思った。
「任せて」
ルフォンの目にはラベックのラベックしか見えていない。
ここまでの全てを活かすように、ルフォンは大きく飛び上がった。
「やああああ!」
頂点まで行って勢いを失って落ちてきたラベックのラベックと勢いよく振り下ろされたルフォンの手が重なる。
下への強力な力をもらってラベックのラベックがバーナード・エリザペアのコートに向かう。
「はああああ!」
誰もが飛び上がったルフォンに視線を向けて顔を上げる中でエリザが一瞬早く我に帰った。
かなり高いところから打ち下ろすことになったのでラベックが到達するまでに時間があったことも幸いしてエリザはルフォンのアタックに反応できた。
コートの端ギリギリを狙ったルフォンのアタックにエリザが飛びついて腕を伸ばす。
完璧なタイミングで打ち下ろされたラベックはバーナードのパワーにも負けていない。
意地でラベックを腕を当てることは成功したものの、その行方までコントロールできはしない。
エリザの腕にぶつかったラベックは大きく跳ね上がりコートの後ろに飛んでいく。
「バーナード!」
「どりゃあー!」
バーナードも走ってコートを飛び出して、ラベックを追いかける。
エリザの努力を無駄にするわけにいかないとバーナードがラベックの下に腕を差し込もうと飛びかかる。
必死に伸ばした腕。
無情にも指先は届かず、ほんの少し先にラベックは落ちた。
転々とラベックが転がり、会場がシンと静かになる。
「…………あ、あまりの勝負に私も言葉を失ってしまいました。決着がつきました。ルフォンのアタックを返し切ることができず、ラベックはコートの外に落ちてしまいました。熾烈な戦いに勝利したのはなんと、シューナリュード・ルフォンペア!」
ドッと会場がわく。
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