114 / 377
第二章
異議のある者6
しおりを挟む
「急いで準備しよう」
話によると結婚式は明日。
想像以上に時間がなく、こうなれば穏便に済ませるわけにはいかなくなった。
よく周りに耳を傾けてみると結婚話は至る所で噂になっていた。
つまりこの結婚話はどこからか漏れ出たのではなく意図的に広められているのだとリュードは思った。
もっと情報が欲しいと思い話を聞いてみるけれど、どこもこれから結婚式が行われるという話だけで経緯とか細かな詳細は誰も知らないでいる。
ただ式場となる教会の場所や結婚式が始まる時間なんかはなんとなく分かった。
宿に戻ってルフォンと作戦会議をする。
リュードもそうだったが、ルフォンは相当お怒りで今にもキンミッコを殺しに行きそうな顔をしていた。
この世界でも結婚や結婚式というのは大切なものなので勝手にそんなことをしようとしてるのは許せないのである。
時間がないので複雑な昨年を練られはしない。
この際この国に一生入ることができなくてもいいとリュードもルフォンも考えて作戦を練った。
なりふり構っていられない。
もう隠密にことを済ませられないから逆に人前で襲ってしまって混乱に乗じてしまおうと思った。
暴れてやるつもりだ。
ーーーーー
次の日、リュードは結婚式の会場となる教会の周辺を散策していた。
教会の周辺は噂を聞きつけた物見客とそんな物見客を規制するための兵士とでごった返している。
教会の中に入ることができるのはキンミッコ派閥の偉い人のみ。
今日は一般の人は一切入ることが許されていない。
教会は思いの外大きく、ぐるりと周りを塀で囲まれている。
塀は侵入者防止のためなのか魔法がかけられていて、それなりに強い魔力を感じる。
出入り口は正面の正門と裏にある小さいドアだけ。
どちらも兵士で固められていて簡単に入れそうにはない。
特に正門前は物々しい雰囲気の兵士が待ち構えている。
正面突破はめんどくさそうだなとリュードは見物客に紛れながら観察していた。
分かっていたことだが、こっそりエミナだけ連れ出してくるのは不可能と言わざるを得ない。
派手にやるつもりではあるけれどエミナを見つける前に派手にやり過ぎてエミナを隠されてはたまらない。
時間がないのに正面突破以外の侵入方法が見つからないと少し焦る。
最悪それでもいいけれど見物客も多いのでケガ人なんかが出てしまうかもしれないことは危惧していた。
「人がいっぱいいるねー」
「そだねー」
入るなら裏口からだろうか、そんなことを考えていると頭の上から声が聞こえてきた。
見上げてみると数人の子供たちが窓から教会前の様子を見ていた。
「ねえ、君たち!」
リュードは子供たちに声をかけてみた。
教会前には大きな建物があって、これがなんなのか気になっていた。
「なーにー、お兄さん?」
「ここはなんの建物なんだ?」
「ここー? ここは学校だよー!」
「学校?」
「そうだよー!」
なるほどと思った。
教会の正面にある大きな建物は教会が運営管理する学校であった。
子供たちがいる場所を見て、リュードの頭にある考えが浮かぶ。
「なあ、教会をよく見てみたいんだけど俺もそっちに行っていいか?」
「えー!」
リュードのお願いに子供たちが窓から顔を引っ込めてどうするか話し始めた。
「いいんじゃない?」
「ダメだよ! 勝手に知らない人を入れたら怒られるんだよ!」
「せんせーもいないんだしバレないって」
こそこそとしているつもりなのかもしれないけれど意外と声が大きくて会話が聞こえてくる。
意見が対立しているようで時間がかかり、リュードもずっと見上げていて首が疲れてきていた。
「いいよー!」
子供たちの間で議論はあったみたいだけど最終的には中に入れてもらえることになった。
子どもの1人が降りてきてくれてこっそりとドアを開けて中に招き入れてくれた。
そのまま子供に付いていくと先ほどまで見上げていた教室に着いた。
「あれがね、生命の女神様のケラフィール様のステンドグラスだよ」
教室はちょうど教会の正面に位置していた。
窓からは教会の入り口の上にある女神を象ったステンドグラスが見える。
高さは教室の窓よりも少し下ぐらい。
「静かにしろ!」
下に見える兵士たちが教会前の喧騒を鎮めようとしている。
兵士が動き出したということは、どうやら結婚式が始まるようである。
もう時間もないなとリュードは覚悟を決めた。
学校から教会までは門前の道を挟み、塀があり、そして門の内側に間があって教会。
リュードはこの学校の窓から教会に向かって飛び込んでやろうと思っていた。
どれほど跳べる変わらないけれど最低でも塀までは跳び越えられるぐらいはできる自信はあった。
正門前の兵士さえ越えられれば教会にそのまま突入することはできる。
「……君たちにお願いがあるんだ」
「なーに?」
子供たちが顔を見合わせる。
「俺はこれから大切な友達を助けなきゃいけないんだ。だからこれからやること、秘密にしてほしいんだ」
「友達?」
「誰か困ってるの?」
「そう。すごく困っている友達がいてそれを助けるためにちょっと悪いことしなきゃいけないんだ」
子供たちがざわつく。
少し難しい話だったかもしれない。
「悪いことはダメだよ」
「でも友達を助けるためなんでしょ? じゃあしょうがないじゃない?」
子供たちの間で議論が始まり、意見が2つに割れる。
状況を見ると男の子が友達を助けるためなら派で、女の子が何であれ悪いことはダメ派である。
平行線の議論が続いていたのだが男の子の代表が女の子の代表にとんでもない一言を言い放った。
「でも僕はリノシンが困ってたら悪いことをしてでも助けるよ!」
「な、何変なこと言ってんのよ!」
まんざらでもなさそうなリノシン。
議論は止まり、少し気まずいような、甘いような空気が流れる。
あんなことを言われてはダメだなんて言い返せなくなった。
「そ、その! 大切な友達って女の人ですか?」
返す言葉を失ったリノシンがモジモジとしてリュードに尋ねる。
「ああ、女の子の友達だ」
「……じゃ、じゃあ今回だけ、今回だけは今日のこと、見なかったことにしたげる! 別にアコウィに言われたからとかそんなじゃないから! み、みんなも分かった?」
みんながうんうんとうなずく。
純粋で、良い子たちだなとリュードは微笑む
約束は取り付けた。
あとは怖がらなきゃいいけどと思う。
話によると結婚式は明日。
想像以上に時間がなく、こうなれば穏便に済ませるわけにはいかなくなった。
よく周りに耳を傾けてみると結婚話は至る所で噂になっていた。
つまりこの結婚話はどこからか漏れ出たのではなく意図的に広められているのだとリュードは思った。
もっと情報が欲しいと思い話を聞いてみるけれど、どこもこれから結婚式が行われるという話だけで経緯とか細かな詳細は誰も知らないでいる。
ただ式場となる教会の場所や結婚式が始まる時間なんかはなんとなく分かった。
宿に戻ってルフォンと作戦会議をする。
リュードもそうだったが、ルフォンは相当お怒りで今にもキンミッコを殺しに行きそうな顔をしていた。
この世界でも結婚や結婚式というのは大切なものなので勝手にそんなことをしようとしてるのは許せないのである。
時間がないので複雑な昨年を練られはしない。
この際この国に一生入ることができなくてもいいとリュードもルフォンも考えて作戦を練った。
なりふり構っていられない。
もう隠密にことを済ませられないから逆に人前で襲ってしまって混乱に乗じてしまおうと思った。
暴れてやるつもりだ。
ーーーーー
次の日、リュードは結婚式の会場となる教会の周辺を散策していた。
教会の周辺は噂を聞きつけた物見客とそんな物見客を規制するための兵士とでごった返している。
教会の中に入ることができるのはキンミッコ派閥の偉い人のみ。
今日は一般の人は一切入ることが許されていない。
教会は思いの外大きく、ぐるりと周りを塀で囲まれている。
塀は侵入者防止のためなのか魔法がかけられていて、それなりに強い魔力を感じる。
出入り口は正面の正門と裏にある小さいドアだけ。
どちらも兵士で固められていて簡単に入れそうにはない。
特に正門前は物々しい雰囲気の兵士が待ち構えている。
正面突破はめんどくさそうだなとリュードは見物客に紛れながら観察していた。
分かっていたことだが、こっそりエミナだけ連れ出してくるのは不可能と言わざるを得ない。
派手にやるつもりではあるけれどエミナを見つける前に派手にやり過ぎてエミナを隠されてはたまらない。
時間がないのに正面突破以外の侵入方法が見つからないと少し焦る。
最悪それでもいいけれど見物客も多いのでケガ人なんかが出てしまうかもしれないことは危惧していた。
「人がいっぱいいるねー」
「そだねー」
入るなら裏口からだろうか、そんなことを考えていると頭の上から声が聞こえてきた。
見上げてみると数人の子供たちが窓から教会前の様子を見ていた。
「ねえ、君たち!」
リュードは子供たちに声をかけてみた。
教会前には大きな建物があって、これがなんなのか気になっていた。
「なーにー、お兄さん?」
「ここはなんの建物なんだ?」
「ここー? ここは学校だよー!」
「学校?」
「そうだよー!」
なるほどと思った。
教会の正面にある大きな建物は教会が運営管理する学校であった。
子供たちがいる場所を見て、リュードの頭にある考えが浮かぶ。
「なあ、教会をよく見てみたいんだけど俺もそっちに行っていいか?」
「えー!」
リュードのお願いに子供たちが窓から顔を引っ込めてどうするか話し始めた。
「いいんじゃない?」
「ダメだよ! 勝手に知らない人を入れたら怒られるんだよ!」
「せんせーもいないんだしバレないって」
こそこそとしているつもりなのかもしれないけれど意外と声が大きくて会話が聞こえてくる。
意見が対立しているようで時間がかかり、リュードもずっと見上げていて首が疲れてきていた。
「いいよー!」
子供たちの間で議論はあったみたいだけど最終的には中に入れてもらえることになった。
子どもの1人が降りてきてくれてこっそりとドアを開けて中に招き入れてくれた。
そのまま子供に付いていくと先ほどまで見上げていた教室に着いた。
「あれがね、生命の女神様のケラフィール様のステンドグラスだよ」
教室はちょうど教会の正面に位置していた。
窓からは教会の入り口の上にある女神を象ったステンドグラスが見える。
高さは教室の窓よりも少し下ぐらい。
「静かにしろ!」
下に見える兵士たちが教会前の喧騒を鎮めようとしている。
兵士が動き出したということは、どうやら結婚式が始まるようである。
もう時間もないなとリュードは覚悟を決めた。
学校から教会までは門前の道を挟み、塀があり、そして門の内側に間があって教会。
リュードはこの学校の窓から教会に向かって飛び込んでやろうと思っていた。
どれほど跳べる変わらないけれど最低でも塀までは跳び越えられるぐらいはできる自信はあった。
正門前の兵士さえ越えられれば教会にそのまま突入することはできる。
「……君たちにお願いがあるんだ」
「なーに?」
子供たちが顔を見合わせる。
「俺はこれから大切な友達を助けなきゃいけないんだ。だからこれからやること、秘密にしてほしいんだ」
「友達?」
「誰か困ってるの?」
「そう。すごく困っている友達がいてそれを助けるためにちょっと悪いことしなきゃいけないんだ」
子供たちがざわつく。
少し難しい話だったかもしれない。
「悪いことはダメだよ」
「でも友達を助けるためなんでしょ? じゃあしょうがないじゃない?」
子供たちの間で議論が始まり、意見が2つに割れる。
状況を見ると男の子が友達を助けるためなら派で、女の子が何であれ悪いことはダメ派である。
平行線の議論が続いていたのだが男の子の代表が女の子の代表にとんでもない一言を言い放った。
「でも僕はリノシンが困ってたら悪いことをしてでも助けるよ!」
「な、何変なこと言ってんのよ!」
まんざらでもなさそうなリノシン。
議論は止まり、少し気まずいような、甘いような空気が流れる。
あんなことを言われてはダメだなんて言い返せなくなった。
「そ、その! 大切な友達って女の人ですか?」
返す言葉を失ったリノシンがモジモジとしてリュードに尋ねる。
「ああ、女の子の友達だ」
「……じゃ、じゃあ今回だけ、今回だけは今日のこと、見なかったことにしたげる! 別にアコウィに言われたからとかそんなじゃないから! み、みんなも分かった?」
みんながうんうんとうなずく。
純粋で、良い子たちだなとリュードは微笑む
約束は取り付けた。
あとは怖がらなきゃいいけどと思う。
33
お気に入りに追加
409
あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。


いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!
果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。
次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった!
しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……?
「ちくしょう! 死んでたまるか!」
カイムは、殺されないために努力することを決める。
そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る!
これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。
本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています
他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました
おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。
※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。
※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・)
更新はめっちゃ不定期です。
※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜
猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。
ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。
そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。
それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。
ただし、スキルは選べず運のみが頼り。
しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。
それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・
そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる