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第二章

不倶戴天1

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 ヴェルデガーは大雑把な性格が多い竜人族に珍しく何事も細かいところまで作り込む性格である。
 メーリエッヒは実にこだわりが強く、こうと決めるととことんまで追求する。

 その2人の子リュードはというとそんな2人の性格を割と受け継いでいてしまっていた。
 元々の性格もそうしたところはあったのだけど今の両親の性格は少なからずリュードの性格に影響を及ぼしていた。

 浴室作りの魔法もそうであった。
 リュードもそこそこに凝り性で細かいところまで作り込みたい気質を発揮していたのである。

 手先は器用でヴェルデガーの影響で小さい頃から色々作ることを手伝ってきたりもした。
 今は旅する目標があるので細かなものを作ることはないけれど、どこかに留まることを決めたならリュードもヴェルデガーのように色々作りたいと思っている。

 浴槽ごと持ってきたことからもそうした片鱗があることが分かる。
 ただヴェルデガーが知的好奇心から様々な物を作るのに対してリュードは少しでも楽になればいいなと思って物を作ったりしているので違いはある。

 旅に出るにあたってリュードは必要な物を考えて準備をしてきた。
 浴槽を入れてきた袋は新しい発明品ではないが、それを作るための魔法はリュードがヴェルデガーから習って自らが作ったものである。
 
 必要なものだと考えたから習得して、浴槽ごと持ってきていた。
 マジックボックスの魔法は習得が難しく何回も失敗を繰り返したがその価値はあったと思っている。

 本来マジックボックスのかかった道具はヴェルデガーが作っていた。
 もっと欲しいと思ってもヴェルデガー他にもやることがあったり、魔力的な問題もあって量産は難しかった。

 このマジックボックスの魔法は性質的に付与魔法に近い感じでヴェルデガーが付与魔法を苦手としていることもそうした要因の1つであった。
 だからリュードは自ら作れるようにしたのである。

 リュードは付与魔法が苦手ではない。
 ルフォンのプレゼントのためにやっていた時も意外と楽しかったぐらいである。

 魔力量は言うまでもない。
 マジックボックスの魔法はリュードにとって苦にならない魔法であったのだ。

 バンバン作れると言うものでもないけれど準備期間の間に旅で楽できるほどには作れるようになった。
 国宝クラスの内部容量がなくてもそれなりのサイズのマジックボックスのかかった袋を量産できる。

 こんなことをゼムトが知ったらショックでただのスケルトンになってしまうかもしれないぐらいのことである。
 だからリュードは実はマジックボックスの袋をゼムトが卒倒するぐらい持っていた。

 旅に出る上での問題や懸念はマジックボックスの袋で持っていくなんて力技で解決してきた。
 その中でも解決が難しく、旅について回る懸念が1つあった。

 食料問題である。
 リュードは問題解決の方法を考えた。

 マジックボックスは要するにただたくさん入るだけなので物の保存機能はない。
 袋の中でも外と同様に時間は経過する。

 傷みやすい生鮮食品を長時間持ち運ぶことは出来ないのである。
 そこでリュードが思いついたのはクーラーボックス。さらに発想を飛ばして冷蔵庫である。

 村には冷蔵庫はなかった。
 風呂があるぐらいなら思いついてもいいのにと思うが、とにかくそう言ったものはなかった。

 子供の頃からそうしたものがない生活に慣れてしまうとリュード自身もなくても平気だし、冷蔵庫のことを思い出さなくなっていた。
 しかし旅に出るのに必要だと思ってどうにか再現できないかと考えた。

 けれどリュードには魔法の経験が浅くて難しい。
 ここでまたヴェルデガーの出番なのである。

 まずはお風呂の時のように魔石に冷気を放つ魔法を刻んでもらった。
 トライアンドエラーを繰り返してようやく上手くいったのだが、そこからも大変だった。

 適当に箱に入れても冷気が漏れてしまって中の物がうまく冷えない。
 完全に密閉してしまうと今度は魔石周りの物がガチガチに凍り、あっという間に中が氷だらけになってしまった。

 冷気の強さや箱の作りを変えながら試行錯誤を重ねていった。
 結果隙間の空いた仕切りを作り、そこから冷気をだして魔石で直接冷やさないようにする構造にした。

 そしてさらに問題が発生した。
 マジックボックス内に魔法が発生した魔石を入れると魔法同士が反発してしまうことがわかったのである。

 どうなるのかというと、マジックボックスの魔法が解けて中のものが出てきて袋が破けてしまうのである。
 そこからさらに実験が始まった。

 いく枚もの袋が犠牲になった。
 紆余曲折を経て完成した持ち運び式冷蔵庫が出来上がった。

 密閉性を高めて魔力を漏れないようにし、魔石は冷気だけでなく微弱な風も出るようにした。
 ヴェルデガーの努力によって冷やし具合を調節し、強冷と弱冷の冷凍ボックスが出来上がった。

 細かい試行錯誤をやったのはリュードだが魔石の用意など大きな作業はヴェルデガーがやった。
 完成に寄与した割合はヴェルデガーの方が大きいと言っても過言ではなかった。

 リュードのアイデアにそそのかされた、もとい興味を持ったから手伝ったのだし後悔はなかった。
 今現在村ではお風呂作りに続いてリュード発案の設置できる本物の冷蔵庫作りにヴェルデガーが追われているとかいないとか。
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