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第二章
いざダンジョンで実戦訓練!5
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まずは機動力を奪う。
これまでも速さに差があったのにより差が広がることになった。
しかし機動力を奪えてもダメージは小さい。
ルフォンの攻撃力で倒したいならやはり急所を狙う必要がある。
となると狙うべきは心臓や頭になるが心臓を攻撃するのは実質不可能に近い。
頭を狙うのが現実的な方法になる。
そのためにはかなり接近しなければならない。
「あれは……!」
ホワイトラインベアが立ち上がる。
リュードはそれを見てエミナの耳を両手で塞ぐ。
地面が揺れるほどの音量でホワイトラインベアが叫ぶ。
魔力を込めた咆哮。
耳を塞いでいるにも関わらず響いてくる咆哮にエミナの体が硬直する。
リュードは魔力に対する抵抗力が高いので何ともないけれどエミナはそうはいかない。
耳を塞いでいなかったら経験もなく何の準備もしていないエミナは気絶してしまっていただろう。
「危ない!」
エミナが叫んだ。
離れているのに体がこわばって動かなくなった。
間近にいたルフォンならきっと、とエミナは思った。
ホワイトラインベアが動かないルフォンの方に向き直るのをみて、どうして助けに行かないんだとリュードの方に視線を向けようとした。
けれど耳を塞いだ手に力が入り頭が動かない。
他でもないリュードの方がルフォンの心配をしている。
同時にこれぐらいでやられるわけがないと信頼もしていた。
心配する気持ちと信頼する気持ちがせめぎ合い、思わず手に力が入っていた。
素早く厄介な相手の動きがようやく止まった。
散々好き勝手に傷つけてくれたのもここで終わりだと怒りを込めた目で睨みつける。
ホワイトラインベアがルフォンを仕留めようと腕を振り上げた。
「私は……負けない!」
ルフォンの体も硬直していた。
しかし実は咆哮のせいで体が動かなくなったのは一瞬だった。
なのにルフォンが動けなかったのは魔力の咆哮ではなく、小さな頃の記憶が思い起こさせる恐怖がルフォンの体の自由を奪っていたのである。
今は小さくて何もできなかった子供ではない。
リュードが許してくれるからではなく、己の力で勝ち取って隣に立てるように努力した。
こんなところで、リュードが見ている前で情けない姿は見せられない!
過去の記憶の呪縛を振り払い、ルフォンが動き出した。
間一髪ホワイトラインベアの一撃をかわすが完全にはかわしきれずに爪が頬に当たって血が飛んだ。
エミナの悲鳴が聞こえた。
距離を取るでも回り込むでもない。
ルフォンはさらに前に出た。
突き上げるように思いっきり右手を突き出した。
次はホワイトラインベアの悲鳴が響き渡る。
ルフォンのナイフが根元までずっぷりとホワイトラインベアの左目に突き刺さった。
深く刺さりすぎてナイフが抜けない。
掴んだままでは悶えるホワイトラインベアに振り回されてしまうので右手のナイフは手放した。
ホワイトラインベアは痛みで頭を振るようにして悶えている。
ナイフを抜こうにもクマの手では上手くナイフを抜くことも叶わない。
「まだ、まだぁーーーー!」
ルフォンが飛び上がる。
両手を高く振り上げて体ごと体重をかけてホワイトラインベアの頭にナイフを突き立てる。
頭のてっぺんにナイフが突き刺さって咆哮とは違う叫び声をあげる。
振り払おうとひどく暴れるホワイトラインベアだが、ルフォンは振り回されながらもナイフを手放さない。
ホワイトラインベアの暴れる力が段々と弱くなっていき、足取りがフラフラとし始めた。
そしてゆっくりと地面に倒れていった。
「ハァッ……ハァッ、やったよ…………」
ルフォンが倒れたホワイトラインベアから投げ出されて地面に落ちる。
リュードの方を振り返って笑顔を向けた。
「……ルフォン!」
ホワイトラインベアは息をしていない。
確かに死んでいたはずだ。
エミナが声にならない悲鳴を上げた。
頭のてっぺんに深々とナイフを突き刺されて一度呼吸も止まっていた。
生きているはずもないはずなのにホワイトラインベアはのそりと再び起き上がってみせた。
ルフォンは緊張の糸が切れて地面にペタンと座り込んでしまっている。
この先に待ち受ける残虐な光景を想像してエミナは顔を逸らして目をつぶった。
そんな中で警戒を続け、竜人化を解いてもいなかったリュードは素早く動いていた。
陥没するほど強く地面を蹴ったリュードは一瞬でルフォンの元に向かった。
ホワイトラインベアの爪がルフォンを襲うよりも速く、リュードは拳を突き出してホワイトラインベアの左目に刺さったナイフの柄を殴りつけた。
「ルフォンに触んじゃねえ!」
ナイフは頭の後ろから突き出してくるほど強く突き刺さり、そのままの勢いでリュードの拳も顔面にぶち当たる。
リュードの全力の殴りにホワイトラインベアの巨体が後ろに転がる。
「ズルいよ、リューちゃん」
「危なくなったら助けに入るって言ったろ? それにだ、これはルフォンの油断とかじゃない」
リュードが殴りつけたことによってナイフが完全に頭の中まで刺さっているにも関わらずホワイトラインベアの体はまだピクピクと動いている。
ルフォンが相手の状態を見誤ったのではない。
どう見てもあのホワイトラインベアが異常なのである。
はたまた異常なのはダンジョンの影響かもしれない。
「立てるか?」
「うん、大丈夫」
これまでも速さに差があったのにより差が広がることになった。
しかし機動力を奪えてもダメージは小さい。
ルフォンの攻撃力で倒したいならやはり急所を狙う必要がある。
となると狙うべきは心臓や頭になるが心臓を攻撃するのは実質不可能に近い。
頭を狙うのが現実的な方法になる。
そのためにはかなり接近しなければならない。
「あれは……!」
ホワイトラインベアが立ち上がる。
リュードはそれを見てエミナの耳を両手で塞ぐ。
地面が揺れるほどの音量でホワイトラインベアが叫ぶ。
魔力を込めた咆哮。
耳を塞いでいるにも関わらず響いてくる咆哮にエミナの体が硬直する。
リュードは魔力に対する抵抗力が高いので何ともないけれどエミナはそうはいかない。
耳を塞いでいなかったら経験もなく何の準備もしていないエミナは気絶してしまっていただろう。
「危ない!」
エミナが叫んだ。
離れているのに体がこわばって動かなくなった。
間近にいたルフォンならきっと、とエミナは思った。
ホワイトラインベアが動かないルフォンの方に向き直るのをみて、どうして助けに行かないんだとリュードの方に視線を向けようとした。
けれど耳を塞いだ手に力が入り頭が動かない。
他でもないリュードの方がルフォンの心配をしている。
同時にこれぐらいでやられるわけがないと信頼もしていた。
心配する気持ちと信頼する気持ちがせめぎ合い、思わず手に力が入っていた。
素早く厄介な相手の動きがようやく止まった。
散々好き勝手に傷つけてくれたのもここで終わりだと怒りを込めた目で睨みつける。
ホワイトラインベアがルフォンを仕留めようと腕を振り上げた。
「私は……負けない!」
ルフォンの体も硬直していた。
しかし実は咆哮のせいで体が動かなくなったのは一瞬だった。
なのにルフォンが動けなかったのは魔力の咆哮ではなく、小さな頃の記憶が思い起こさせる恐怖がルフォンの体の自由を奪っていたのである。
今は小さくて何もできなかった子供ではない。
リュードが許してくれるからではなく、己の力で勝ち取って隣に立てるように努力した。
こんなところで、リュードが見ている前で情けない姿は見せられない!
過去の記憶の呪縛を振り払い、ルフォンが動き出した。
間一髪ホワイトラインベアの一撃をかわすが完全にはかわしきれずに爪が頬に当たって血が飛んだ。
エミナの悲鳴が聞こえた。
距離を取るでも回り込むでもない。
ルフォンはさらに前に出た。
突き上げるように思いっきり右手を突き出した。
次はホワイトラインベアの悲鳴が響き渡る。
ルフォンのナイフが根元までずっぷりとホワイトラインベアの左目に突き刺さった。
深く刺さりすぎてナイフが抜けない。
掴んだままでは悶えるホワイトラインベアに振り回されてしまうので右手のナイフは手放した。
ホワイトラインベアは痛みで頭を振るようにして悶えている。
ナイフを抜こうにもクマの手では上手くナイフを抜くことも叶わない。
「まだ、まだぁーーーー!」
ルフォンが飛び上がる。
両手を高く振り上げて体ごと体重をかけてホワイトラインベアの頭にナイフを突き立てる。
頭のてっぺんにナイフが突き刺さって咆哮とは違う叫び声をあげる。
振り払おうとひどく暴れるホワイトラインベアだが、ルフォンは振り回されながらもナイフを手放さない。
ホワイトラインベアの暴れる力が段々と弱くなっていき、足取りがフラフラとし始めた。
そしてゆっくりと地面に倒れていった。
「ハァッ……ハァッ、やったよ…………」
ルフォンが倒れたホワイトラインベアから投げ出されて地面に落ちる。
リュードの方を振り返って笑顔を向けた。
「……ルフォン!」
ホワイトラインベアは息をしていない。
確かに死んでいたはずだ。
エミナが声にならない悲鳴を上げた。
頭のてっぺんに深々とナイフを突き刺されて一度呼吸も止まっていた。
生きているはずもないはずなのにホワイトラインベアはのそりと再び起き上がってみせた。
ルフォンは緊張の糸が切れて地面にペタンと座り込んでしまっている。
この先に待ち受ける残虐な光景を想像してエミナは顔を逸らして目をつぶった。
そんな中で警戒を続け、竜人化を解いてもいなかったリュードは素早く動いていた。
陥没するほど強く地面を蹴ったリュードは一瞬でルフォンの元に向かった。
ホワイトラインベアの爪がルフォンを襲うよりも速く、リュードは拳を突き出してホワイトラインベアの左目に刺さったナイフの柄を殴りつけた。
「ルフォンに触んじゃねえ!」
ナイフは頭の後ろから突き出してくるほど強く突き刺さり、そのままの勢いでリュードの拳も顔面にぶち当たる。
リュードの全力の殴りにホワイトラインベアの巨体が後ろに転がる。
「ズルいよ、リューちゃん」
「危なくなったら助けに入るって言ったろ? それにだ、これはルフォンの油断とかじゃない」
リュードが殴りつけたことによってナイフが完全に頭の中まで刺さっているにも関わらずホワイトラインベアの体はまだピクピクと動いている。
ルフォンが相手の状態を見誤ったのではない。
どう見てもあのホワイトラインベアが異常なのである。
はたまた異常なのはダンジョンの影響かもしれない。
「立てるか?」
「うん、大丈夫」
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