人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

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第二章

いざダンジョンで実戦訓練!3

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「あんまりダラダラしてもいられないな」

 キスズの口ぶりからして追いつかれることを心配するほど差が詰まってはいなさそうではある。
 それでも油断大敵なのでさっさと先に進む。

 現在地は大体中層に入ったところだった。
 戦いに余裕はまだまだあってエミナは魔法使いなので後衛固定だが、リュードとルフォンは役割をさまざま変えて戦ってみていた。

 チームワークも出てきたので敵のレベルが多少上がってもむしろ攻略の速度は上がっており、中層は難なくクリアして下層に入ってきた。

「ふむ、なんだか今日は魔物の死体が消えるのが遅いしドロップ品が1つも無いな」

 キスズは疑問を持ったが運が悪ければドロップ品が少ないこともたまにはあるだろうとスルーした。
 しかしキスズは見逃すべきではなかったのである。

 この小さな違和感を。

「うわぁ……気持ち悪ぅ」

 身長の高いリュードでさえ見上げる高さのカマキリの魔物。
 特に虫が苦手でなくても細部までハッキリと分かるサイズの巨大な昆虫が目の前にいると良い気分はしない。

「でも多少は戦えそうな相手がやっときたかな?」

 リュードが剣を構えた時だった。

「な、なに!?」

「わわっ、地面が揺れてます!」

「これは……地面に伏せて体を小さくするんだ!」

 魔物が起こした攻撃の1つかと思ったがカマキリの魔物も揺れる地面に動揺している。
 それどころかみんなどうしてよいか分からずふらふらとバランスを保とうとしていた。

 そんな中でリュードは1人冷静に体勢を低くして揺れに逆らわない。
 前世の記憶があるリュードだけは地震の最中でも冷静で周りを見ていた。
 
 リュードの言葉に反応してルフォンとエミナも地面に伏せる。

「な、なんだ!?」

 突如巨大カマキリが岩に潰された。
 天井が崩落したのではない。

 まるで切りとられたかのように綺麗な断面で天井の一部が四角く迫り出してきた。
 ちょうどその真下にいたカマキリはなすすべもなく床と挟まれて潰されてしまった。

「ダンジョンの再構築……!」

 よく構造が変わるダンジョンを除けばダンジョンの内部構造は変化しない。
 しかしごく稀にダンジョンの内部構造が大きく変動するという現象が起きる。

 原因もタイミングも分からない不思議な現象であるダンジョンの再構築が偶然にも今起こってしまったのかもしれないとリュードは察した。
 どう変化するのか、どれぐらい変化するのか誰にも予想はできない。

 過去に再構築に巻き込まれた人にはそのまま見つからない人もいると本で見たことがある。
 カマキリのように潰されてしまったのか通路ない部屋にでも閉じ込められてしまったのか、死体がないので永遠の謎である。

「ルフォン、エミナ、大丈夫か?」

「な、なんとか」

「は、はいぃぃぃ……」

 揺れが大きく歩くこともできない。
 地面を這ってリュードが2人のところに向かう。

 リュードの村では地震が起きたことはなかった。
 なのでルフォンは地震初体験で目に恐怖の色が見えている。

 エミナも同じだった。

「ちょっと窮屈かもしれないけど我慢しろよ」

 リュードは2人をギュッと抱き寄せ、覆いかぶさるようにして守ることにした。

「は、はええ!?」

 ほんのわずかでも生存率が上がるならなんでもする。
 全身に魔力をみなぎらせて竜人化する。

 ビリビリと服が破けて2人を覆う面積が広くなる。

「リューちゃん……」

「なななな……」

 こんな状況だというのにルフォンは自分を守ろうとしてくれているリュードに頬を赤く染め、エミナはリュードに何が起きたのか分からずパニックに陥っている。
 パニックになっているエミナには申し訳ないけれど説明している暇はない。

「マジックシールド!」

 魔法で周りにシールドも張って揺れが収まるのを待つ。

「うっ!」

 浮遊感。
 地面が急速に落ちていき、ふわりとした感覚に襲われる。
 
 ギュッと目をつぶって衝撃に備える。
 下に降りて、横に移動するような感覚があった。

 そして移動が止まった。
 揺れが収まって何かが動くような地響きも聞こえなくなる。
 
 幸いなことにカマキリの二の舞にはならなかったようである。
 しかし第二波を警戒してまだ動かない。

 完全に揺れもなく、地響きのような音もおさまった。
 ひとまずもう再構築は終わったようである。

 リュードは魔法を解いて覆いかぶさるのをやめて立ち上がる。
 周りを確認すると広い部屋であった。

 リュードたちがいる側から逆側に大きな扉が見える他に部屋には何もない。

「こ、こわーい」

 ルフォンがリュードに抱きつく。
 なんだか言い方が白々しい。

『危機的状況はチャンスよ! こわーいって言って抱きつけば相手も落ちるわ!』

 もはやアドバイスなんかではなく呪縛である。
 何が良いのか悪いのか、女の子の友達が多くないルフォンはメーリエッヒのアドバイスに振り回されていた。

「ルフォン、大丈夫か?」

「あ、うん、だいじょぶ……」

 やってみたはいいものの自分でも分かるほどの白々しさとちゃんと心配してくれるリュードに恥ずかしくなってルフォン顔が真っ赤になる。

 やってしまった以上取り返しはつかない。
 赤くなった顔を見られたくなくてルフォンはリュードのウロコに顔を埋めて顔を隠した。
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