上 下
81 / 331
第二章

いざダンジョンで実戦訓練!1

しおりを挟む
「授業の一環だからな。中には魔物のコントロールするために何人か人もいるし私も後ろから付いていく。
 実戦訓練は危険を伴うので危険だと思えばいつでもリタイアできる。危ないと判断したらこちらから介入して強制的に終了することもあり得るからな」

 キスズが簡単に実戦訓練の説明をする。
 エミナを加えた3人のパーティーで実戦訓練に申し込んだ。

 エミナの合格数や優秀点もおおく、予想通りリュードたちが1番に挑戦できることになった。
 リュードは当然だと思っていたがエミナは最初の挑戦と聞いて驚いていた。

「き、気持ち悪くなってきました」

 ちゃんと準備もしてきたので余裕の面持ちのリュードとルフォンに対して、エミナは自分の武器である杖を抱きしめるようにして青い顔をしている。

「だいじょーぶだいじょーぶ」

 ルフォンが笑ってエミナの背中をさすってあげる。

「そんな緊張するなって」

「うう、2人はどうしてそんな余裕何ですか?」

 そりゃあ魔物よりももっと強いの知ってるからさ、とは言わない。

「経験の差かな?」

「何ですか、それ?」

 多少気がほぐれればと冗談めかしてリュードが言うとエミナが弱々しく微笑む。
 リュードやルフォンは魔物との戦いの経験がすでにある。

 リュードやルフォンも最初は緊張したものだが今では緊張はさほどない。

「それじゃあ時間だ。準備はいいか?」

「はい」

「実戦訓練、開始だ」

「それじゃあ行こうか」

 ダンジョンの入り口は草原のど真ん中にあった。
 何もないようなただ広い草原の中にポツンとある小さな岩山があり、大きく口を開けている。

 それがダンジョンなのである。
 不自然な岩山は草原に元々あったものではない。
 
 ダンジョンの入り口として現れたもので気づいたら草原に岩山があったのだ。
 早速リュードを先頭にしてダンジョンに入っていく。
 
 最初に見つけた人の名前を付けてオイチャのダンジョンと呼ばれているこのダンジョンは、ダンジョンの中の至る所に光を放つ魔光石という鉱石があって灯りの必要がない。
 リュードを先頭にエミナ、ルフォンと続いて、そのはるか後ろからキスズがついていく。
 
 リュードが前を、ルフォンが後方の警戒を担当する。
 ダンジョン内部の道は簡易的に看板で塞がれているところもあって、ルートが決まっている。
 
 これは何回かに分けて実戦訓練をできるようにするためで別のルートは通ってはいけない。
 ダンジョンの中は洞窟型でデコボコした道が続いていて、下に潜っていく形になる。
 
 平坦な部分と緩やかに下っていく部分があって階段などがあるダンジョンとは違い明確な階層分けされてはいない。
 それでもなんとなく階層は区別されていて上に近い順に上層、中層、下層と大きく分けられていて、下にいくほど魔物も強くなる。

「可愛いですね、アレ」

「うん」

 まず初めにあったのはホーンラビット。
 簡単に言えば角の生えたウサギである。

 かなり大人しい魔物で狩りの対象になるぐらいで積極的に魔物として討伐されるものでもない。
 この世界では魔力を持たない生物はいないので魔物ではない動物はいない。

 けれどホーンラビットはほとんどただの動物と言ってよい弱い魔物である。
 危険度だけでみるとなんでことはなく怪我をする可能性もほとんどない相手になる。
 
 しかしちょっとばかり厄介な相手だとリュードは思った。
 ホーンラビットのつぶらな瞳がリュードを見る。

 可愛さのあまりに攻撃がためらわれる。
 そんなことも若干はあるかもしれないがそんなことではない。

 もちろん冒険者を目指している身で相手の見た目に惑わされて手心を加えることなんてない。

「これぐらい任せてください。えいっ! あれっ? えいっ!」

 エミナが自信満々に前に出て火の魔法でホーンラビットを攻撃する。
 しかしホーンラビットはピョンピョンと飛び跳ねて魔法をかわしていく。

「えいっ、えいっ! くぅ……すばしっこい」

 敵意がなく追い詰められた時以外に反撃してくれることもない。
 逃げの一手を取る小さい魔物がホーンラビット。

 森の中で静かに狩りをするにはよい相手でも開けた洞窟で、すでに見つかっている状態で倒さなきゃいけないなら厄介な相手と化す。
 ひたすら逃げまくるホーンラビットのすばしっこさは侮れない。
 
 エミナの魔法は軽く避けられてしまって全然かすりもしない。

「くっ、見ててください。今やっつけますので……あっ」

 もう一度魔法を放ったエミナ。
 ブスリとナイフが刺さってホーンラビットが絶命する。

 リュードの投げたナイフでエミナの魔法に合わせてホーンラビットの逃げ先を予想して投げたのである。

「もう落ち込むなって」

 攻撃を当てられなかった挙句、囮に使われたエミナは落ち込んでしまった。
 簡単だと思っていたのに魔法が当たらなかったのが1番ショックだった。

 ああいった時は追いかけて剣を振り回すよりも遠距離武器でしっかり狙って倒すのがスマートなやり方になる。
 今回は狩りをするつもりはなく弓矢なんて持ってきていないのでルフォンがナイフを投げて仕留めた。

 最初はルフォンにでも追いかけてもらおうと思っていたけど、エミナがやる気満々で魔法を放ったので利用させてもらった。
 当てて倒してくれるなら当然それが1番だったのは言うまでもないがこれは試験である。

 当たる気配がちょっと感じられず、魔力をここであまり消耗もさせられない。
 致し方なくルフォンにやってもらった。

 見られている以上評価にも関わるのだからここで何回もトライさせてあげるわけにもいかない。

「もういいです」

 拗ねたように言うエミナ。
 悔しいけれどリュードの言うことも正しいので納得するしかない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

処理中です...