人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

文字の大きさ
上 下
60 / 377
第一章

閑話・隣に立つと決めた日2

しおりを挟む
 違うかもしれない、怒られるかもしれない。
 そんな思いがあって言い出せずにいた。
 
 それでも憔悴しきったウォーケックの様子を見ては黙っていられない。

「きっとあそこです」

 リュードが言うあそことは子供たちの間で話題の場所となっているディグラ草の群生地のことだった。
 ウォーケックたちがが昨日探しに行った場所とはまた違うところである。

 村近くにある川に沿って進んでいくとある洞窟。
 洞窟を抜けると山の上の出るのだがそこにディグラ草が生えているのである。
 
 地獄の鍛錬を終えて狩りを解禁された若者が見つけたもので、洞窟そのものは昔からあるのだけど何かのタイミング崩れたところでもあるのか山の上に抜ける道が新しく出来ていた。
 その若者が見つけ時はすでにかなり暖かくなってきていたけれど枯れ初めではなく綺麗にディグラ草が生えていたらしい。

 完全に暖かくなって暑いぐらいになると枯れてしまうので時期的には完全に遅かったのに満開だった。
 おそらく山の上は下よりも涼しく、少し時期がずれているようであった。

 今では狩りに行けるようになった若者の間でデートスポットになったりもしていた。
 もちろんただのデートスポットなだけでなくこっそりと冒険したい子供たちの秘密の場所でもあった。
 
 大人たちには秘密なのでリュードも他の悪ガキと一緒に行ったこともあった。
 子供の間では有名なのだ、ルフォンもディグラ草が生えている場所や季節がずれていることも知っているはずである。
 
 ルフォンはディグラ草のつぼみが必要なことを聞いていた。
 あの場所ならと可能性もある。
 
 これらを合わせると導き出せる結論は一つ。
 リュードの話を聞いてヴェルデガーとウォーケックが顔を見合わせる。

 ありえない話ではない。
 すぐさま連絡を飛ばして捜索隊が組まれた。
 
 その中でリュードも子供ながら案内役として付いていくことになった。
 危険だとヴェルデガーは反対したけれどほかに洞窟を知っていそうかつ戦える者はもう村の外の捜索に出ているのでリュード以外にはいなかった。
 
 後の行ったことある子供はみんな怒られるのが嫌で口をつぐんでいた。
 決して前に出ないようにとヴェルデガーに念を押されて子供用だがちゃんと切れる武器を渡された。
 
 一緒に行きたがるウォーケックはルフォンとすれ違いになってはいけないということでお留守番。
 そしてリュードを含めた捜索隊が出発した。

 川沿いに進んでいけばいいので洞窟には簡単に到着した。

「こんなんあったか?」

「いや、俺の時はなかったな」

「いつの間にかできたんだな」

 大人たちの会話。
 やはり大人が知らないこの洞窟は比較的最近できたようである。

「思っていたよりも狭いな」

 通れる幅は広くても2人、狭いところでは1人がギリギリだった。
 すぐ横を流れる川の水は冷たく、浸かろうものならあっという間に体温が奪われてしまうので川を通ることはできない。

「えっと、こっち」

 子供たちが次来る子のためにとひっそりとマーキングしてあるところもあり道には迷いにくい。
 しかしルートは比較的体格の小さい人向けの道でしっかりと装備している大人には少々厳しい。

 大人たちが1人ずつ頭をかがめたり横になったりしていく様を見て最初に見つけたやつはどうやってこの道を見つけたんだと感心すらする。

「――――!」

「これは……こっちだ!」

 大きな咆哮が洞窟に響き渡って洞窟全体が揺れる。
 魔力のこもった雄たけびに大人たちの顔つきが一気に変わる。

 恐れていた事態が起きたのだと大人たちが察する。
 武器を抜いて大人たちが声の方に走り出す。

 走っていくと開けた空間があり、そこに一頭のクマがいた。
 大人たちよりもはるかに大きいクマからリュードは肌がビリつくような強い魔力を感じた
 
 ツキベアグリーというこの巨大な魔物はリュードたちが住む森の中層階の王である。
 リュードたちのいる村は森の浅いところ、下層と呼んでいるところにある。
 
 明確に区切られているわけではないけれど上層と呼ばれるところに近いところほど魔物も強くなる。

 基本的に村の人は下層付近から出ることはない。
 魔人化して本気で戦えば中層階でも戦えないことはないけれど魔物を刺激して良いことなんてないので深入りはしないのだ。

 ツキベアグリーはそうした中層階の魔物の中でも村の大人たちも基本は戦いを避ける相手。
 戦うにしてもしっかりと準備をして挑む相手になる。

 興奮したツキベアグリーは捜索隊を見つけるなり襲い掛かってきた。
 大人たちは素早く散開してツキベアグリーの突撃をかわす。

 ヴェルデガーはリュードを抱きかかえて反対側まで大きく回りこむ。

「ここでおとなしくしているんだ」

 ヴェルデガーはリュードを岩陰に置いて戦いに加わる。
 ひどい興奮状態のツキベアグリーは視野が狭くなっているので下手に動かなければ見つかることはない。

 なぜまだ浅い層にツキベアグリーがいるのか、なぜツキベアグリーが興奮しているのか、なぜ大人たちがこの状況を恐れていたのか。
 いまがツキベアグリーの繁殖期であるからである。

 繁殖期になったツキベアグリーは繁殖のために薬草を求めて下層まで下りてくることもあるのであった。
 ディグラ草はそのよい例で強い滋養強壮効果と魔力回復効果を持つのでツキベアグリーも求めに来ることがある。

 ついでに薬草求めに来るのはオスもメスもどちらもいるので出会いの場にもなっている。
 他の魔物でもそうした習性を持つものもいるがその中でも最も強いのがツキベアグリーであるので大人たちはツキベアグリーがいることを警戒していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!

果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。 次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった! しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……? 「ちくしょう! 死んでたまるか!」 カイムは、殺されないために努力することを決める。 そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る! これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。    本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています 他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

処理中です...