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第一章
閑話・隣に立つと決めた日2
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違うかもしれない、怒られるかもしれない。
そんな思いがあって言い出せずにいた。
それでも憔悴しきったウォーケックの様子を見ては黙っていられない。
「きっとあそこです」
リュードが言うあそことは子供たちの間で話題の場所となっているディグラ草の群生地のことだった。
ウォーケックたちがが昨日探しに行った場所とはまた違うところである。
村近くにある川に沿って進んでいくとある洞窟。
洞窟を抜けると山の上の出るのだがそこにディグラ草が生えているのである。
地獄の鍛錬を終えて狩りを解禁された若者が見つけたもので、洞窟そのものは昔からあるのだけど何かのタイミング崩れたところでもあるのか山の上に抜ける道が新しく出来ていた。
その若者が見つけ時はすでにかなり暖かくなってきていたけれど枯れ初めではなく綺麗にディグラ草が生えていたらしい。
完全に暖かくなって暑いぐらいになると枯れてしまうので時期的には完全に遅かったのに満開だった。
おそらく山の上は下よりも涼しく、少し時期がずれているようであった。
今では狩りに行けるようになった若者の間でデートスポットになったりもしていた。
もちろんただのデートスポットなだけでなくこっそりと冒険したい子供たちの秘密の場所でもあった。
大人たちには秘密なのでリュードも他の悪ガキと一緒に行ったこともあった。
子供の間では有名なのだ、ルフォンもディグラ草が生えている場所や季節がずれていることも知っているはずである。
ルフォンはディグラ草のつぼみが必要なことを聞いていた。
あの場所ならと可能性もある。
これらを合わせると導き出せる結論は一つ。
リュードの話を聞いてヴェルデガーとウォーケックが顔を見合わせる。
ありえない話ではない。
すぐさま連絡を飛ばして捜索隊が組まれた。
その中でリュードも子供ながら案内役として付いていくことになった。
危険だとヴェルデガーは反対したけれどほかに洞窟を知っていそうかつ戦える者はもう村の外の捜索に出ているのでリュード以外にはいなかった。
後の行ったことある子供はみんな怒られるのが嫌で口をつぐんでいた。
決して前に出ないようにとヴェルデガーに念を押されて子供用だがちゃんと切れる武器を渡された。
一緒に行きたがるウォーケックはルフォンとすれ違いになってはいけないということでお留守番。
そしてリュードを含めた捜索隊が出発した。
川沿いに進んでいけばいいので洞窟には簡単に到着した。
「こんなんあったか?」
「いや、俺の時はなかったな」
「いつの間にかできたんだな」
大人たちの会話。
やはり大人が知らないこの洞窟は比較的最近できたようである。
「思っていたよりも狭いな」
通れる幅は広くても2人、狭いところでは1人がギリギリだった。
すぐ横を流れる川の水は冷たく、浸かろうものならあっという間に体温が奪われてしまうので川を通ることはできない。
「えっと、こっち」
子供たちが次来る子のためにとひっそりとマーキングしてあるところもあり道には迷いにくい。
しかしルートは比較的体格の小さい人向けの道でしっかりと装備している大人には少々厳しい。
大人たちが1人ずつ頭をかがめたり横になったりしていく様を見て最初に見つけたやつはどうやってこの道を見つけたんだと感心すらする。
「――――!」
「これは……こっちだ!」
大きな咆哮が洞窟に響き渡って洞窟全体が揺れる。
魔力のこもった雄たけびに大人たちの顔つきが一気に変わる。
恐れていた事態が起きたのだと大人たちが察する。
武器を抜いて大人たちが声の方に走り出す。
走っていくと開けた空間があり、そこに一頭のクマがいた。
大人たちよりもはるかに大きいクマからリュードは肌がビリつくような強い魔力を感じた
ツキベアグリーというこの巨大な魔物はリュードたちが住む森の中層階の王である。
リュードたちのいる村は森の浅いところ、下層と呼んでいるところにある。
明確に区切られているわけではないけれど上層と呼ばれるところに近いところほど魔物も強くなる。
基本的に村の人は下層付近から出ることはない。
魔人化して本気で戦えば中層階でも戦えないことはないけれど魔物を刺激して良いことなんてないので深入りはしないのだ。
ツキベアグリーはそうした中層階の魔物の中でも村の大人たちも基本は戦いを避ける相手。
戦うにしてもしっかりと準備をして挑む相手になる。
興奮したツキベアグリーは捜索隊を見つけるなり襲い掛かってきた。
大人たちは素早く散開してツキベアグリーの突撃をかわす。
ヴェルデガーはリュードを抱きかかえて反対側まで大きく回りこむ。
「ここでおとなしくしているんだ」
ヴェルデガーはリュードを岩陰に置いて戦いに加わる。
ひどい興奮状態のツキベアグリーは視野が狭くなっているので下手に動かなければ見つかることはない。
なぜまだ浅い層にツキベアグリーがいるのか、なぜツキベアグリーが興奮しているのか、なぜ大人たちがこの状況を恐れていたのか。
いまがツキベアグリーの繁殖期であるからである。
繁殖期になったツキベアグリーは繁殖のために薬草を求めて下層まで下りてくることもあるのであった。
ディグラ草はそのよい例で強い滋養強壮効果と魔力回復効果を持つのでツキベアグリーも求めに来ることがある。
ついでに薬草求めに来るのはオスもメスもどちらもいるので出会いの場にもなっている。
他の魔物でもそうした習性を持つものもいるがその中でも最も強いのがツキベアグリーであるので大人たちはツキベアグリーがいることを警戒していた。
そんな思いがあって言い出せずにいた。
それでも憔悴しきったウォーケックの様子を見ては黙っていられない。
「きっとあそこです」
リュードが言うあそことは子供たちの間で話題の場所となっているディグラ草の群生地のことだった。
ウォーケックたちがが昨日探しに行った場所とはまた違うところである。
村近くにある川に沿って進んでいくとある洞窟。
洞窟を抜けると山の上の出るのだがそこにディグラ草が生えているのである。
地獄の鍛錬を終えて狩りを解禁された若者が見つけたもので、洞窟そのものは昔からあるのだけど何かのタイミング崩れたところでもあるのか山の上に抜ける道が新しく出来ていた。
その若者が見つけ時はすでにかなり暖かくなってきていたけれど枯れ初めではなく綺麗にディグラ草が生えていたらしい。
完全に暖かくなって暑いぐらいになると枯れてしまうので時期的には完全に遅かったのに満開だった。
おそらく山の上は下よりも涼しく、少し時期がずれているようであった。
今では狩りに行けるようになった若者の間でデートスポットになったりもしていた。
もちろんただのデートスポットなだけでなくこっそりと冒険したい子供たちの秘密の場所でもあった。
大人たちには秘密なのでリュードも他の悪ガキと一緒に行ったこともあった。
子供の間では有名なのだ、ルフォンもディグラ草が生えている場所や季節がずれていることも知っているはずである。
ルフォンはディグラ草のつぼみが必要なことを聞いていた。
あの場所ならと可能性もある。
これらを合わせると導き出せる結論は一つ。
リュードの話を聞いてヴェルデガーとウォーケックが顔を見合わせる。
ありえない話ではない。
すぐさま連絡を飛ばして捜索隊が組まれた。
その中でリュードも子供ながら案内役として付いていくことになった。
危険だとヴェルデガーは反対したけれどほかに洞窟を知っていそうかつ戦える者はもう村の外の捜索に出ているのでリュード以外にはいなかった。
後の行ったことある子供はみんな怒られるのが嫌で口をつぐんでいた。
決して前に出ないようにとヴェルデガーに念を押されて子供用だがちゃんと切れる武器を渡された。
一緒に行きたがるウォーケックはルフォンとすれ違いになってはいけないということでお留守番。
そしてリュードを含めた捜索隊が出発した。
川沿いに進んでいけばいいので洞窟には簡単に到着した。
「こんなんあったか?」
「いや、俺の時はなかったな」
「いつの間にかできたんだな」
大人たちの会話。
やはり大人が知らないこの洞窟は比較的最近できたようである。
「思っていたよりも狭いな」
通れる幅は広くても2人、狭いところでは1人がギリギリだった。
すぐ横を流れる川の水は冷たく、浸かろうものならあっという間に体温が奪われてしまうので川を通ることはできない。
「えっと、こっち」
子供たちが次来る子のためにとひっそりとマーキングしてあるところもあり道には迷いにくい。
しかしルートは比較的体格の小さい人向けの道でしっかりと装備している大人には少々厳しい。
大人たちが1人ずつ頭をかがめたり横になったりしていく様を見て最初に見つけたやつはどうやってこの道を見つけたんだと感心すらする。
「――――!」
「これは……こっちだ!」
大きな咆哮が洞窟に響き渡って洞窟全体が揺れる。
魔力のこもった雄たけびに大人たちの顔つきが一気に変わる。
恐れていた事態が起きたのだと大人たちが察する。
武器を抜いて大人たちが声の方に走り出す。
走っていくと開けた空間があり、そこに一頭のクマがいた。
大人たちよりもはるかに大きいクマからリュードは肌がビリつくような強い魔力を感じた
ツキベアグリーというこの巨大な魔物はリュードたちが住む森の中層階の王である。
リュードたちのいる村は森の浅いところ、下層と呼んでいるところにある。
明確に区切られているわけではないけれど上層と呼ばれるところに近いところほど魔物も強くなる。
基本的に村の人は下層付近から出ることはない。
魔人化して本気で戦えば中層階でも戦えないことはないけれど魔物を刺激して良いことなんてないので深入りはしないのだ。
ツキベアグリーはそうした中層階の魔物の中でも村の大人たちも基本は戦いを避ける相手。
戦うにしてもしっかりと準備をして挑む相手になる。
興奮したツキベアグリーは捜索隊を見つけるなり襲い掛かってきた。
大人たちは素早く散開してツキベアグリーの突撃をかわす。
ヴェルデガーはリュードを抱きかかえて反対側まで大きく回りこむ。
「ここでおとなしくしているんだ」
ヴェルデガーはリュードを岩陰に置いて戦いに加わる。
ひどい興奮状態のツキベアグリーは視野が狭くなっているので下手に動かなければ見つかることはない。
なぜまだ浅い層にツキベアグリーがいるのか、なぜツキベアグリーが興奮しているのか、なぜ大人たちがこの状況を恐れていたのか。
いまがツキベアグリーの繁殖期であるからである。
繁殖期になったツキベアグリーは繁殖のために薬草を求めて下層まで下りてくることもあるのであった。
ディグラ草はそのよい例で強い滋養強壮効果と魔力回復効果を持つのでツキベアグリーも求めに来ることがある。
ついでに薬草求めに来るのはオスもメスもどちらもいるので出会いの場にもなっている。
他の魔物でもそうした習性を持つものもいるがその中でも最も強いのがツキベアグリーであるので大人たちはツキベアグリーがいることを警戒していた。
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