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第一章
最後の力比べ7
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打倒候補達を倒してきたにしてはあまり疲れているようには見えない村長。
打倒候補たちと激しくやりあったはずなのに。
元々表情が乏しい人だから顔では体の状態がどうなのか判断がつかない。
「最近はここまでくるのが同じ顔ぶれでな、退屈していたところだ」
不敵に笑う村長は明らかに気分が高揚していて戦いが待ちきれない様子である。
「是非胸を借りるつもりでいかせてもらいますよ」
「これまで見たシューナリュードの実力に油断ならないことも分かっている。胸を借りるどころか倒してもらいたいものだ」
胸を借りるつもりでなどというがもちろんリュードだって村長を倒すつもりである。
かくいうリュードも早く村長と剣を合わせてみたいと思っている。
「始め!」
号令と同時、あるいはもしかしたら号令よりも少し早かったかもしれない。
リュードは一気に村長に駆け寄ると思いっきり剣を振り下ろした。
「ほう……」
避けずにしっかりと剣で受けてくれることはもはや当然のように分かっていて、押し切れないことも分かりきっていた。
剣と剣がぶつかって火花が散り、村長の額すんでのところまでで剣は止められてしまった。
思いの外押し込めたけれど無傷であることに変わりはない。
村長もリュードの力が想像以上に強くて驚いた。
「やるではないか。では行くぞ!」
背中がゾワっとする殺気。
村長は力任せにリュードを押し返す。
リュードの力もそれなりであるがやはり村長の力は別格。
変に堪えようとすると危ないのでバランスを崩さないように自分からも後ろに飛びのいて力を逃す。
多少距離が空いた。今一度仕切り直しだと思った瞬間だった。
その巨体からは考えられない速さで村長が目の前に現れた。
大きな村長がさらに巨大化したと錯覚させられるほどの速度で近くに村長がいると思った時には刃もすでに眼前に迫っていたのであった。
もう力の差があることは分かっている。
リュードは村長とは違って流石に真正面から受けるマネはするわけにはいかず、普段通り重たい一撃を受け流すことに集中する。
上手く村長の攻撃を受け流したのに受け流した手がビリビリと痺れる。
「ク、ウッ!」
なのに回転も早く一撃必殺の攻撃が次々と飛んでくる。
片手剣なので双剣だったウォーケックの攻撃よりは遅い。
代わりにパワーがあって嫌になる程攻撃が重たい。
村長の戦い方はウォーケックのような速さ重視なやり方ではなくしっかりと一撃一撃防いでいかないと非常に危険だ。
距離を取ろうにも隙がない。
それにウォーケックと比べると攻撃の速度が遅いというだけで全体的な速さそのものはこれまで戦ってきた中でもトップクラスである。
距離を取ったところであっという間に詰められてしまうのがオチになる。
今のところ防御に大きな問題はないがしっかりと防御する分反撃派手が遅くなってしまい、あまり威力を乗せられない。
リュードが村長の攻撃を防ぎ続けるこう着状態に陥る。
こうなるとリュードの体力が村長のパワーによってみるみると削られていく。
ウォーケックに対して拳で攻撃することはやってしまっている。
それが少しでも頭に残っていれば村長には通用しないだろう。
そもそもウォーケック相手に通じても村長なら顔面を殴ってもそのまま斬り返してきそうな感じまである。
試すのもリスクがあって躊躇われる。
動くなら体力的にはまだまだ余裕がある今しかない。
村長の方は打倒候補達を相手にして体力は削られているはずだが顔を見る限り疲労は一切見えない。
持久戦で持ち堪えるのは危ないかもしれない。
「ふぐっ!」
頭の中で作戦を練ってはいたが油断したつもりはなかった。
村長の長い足から繰り出される、それだけで人が1人殺せてしまいそうな強力な蹴りが一瞬の隙をついて飛び出してきた。
剣を差し込み蹴りを受け、自ら後ろに跳ぶことで威力をかなり軽減したけれどリュードの体が軽い物でもあるかのように宙を舞う。
まさかこんな手を使ってくるなんて!とリュードが驚く。
見た限り今まで1度たりとも村長が肉弾戦なんてやったことはない。
刹那に村長が笑って見えたのは気のせいではない。
リュードがウォーケックにしてみせた顔面パンチの肉弾戦に対して自分もやれるのだぞというイタズラ心みたいなものだった。
リュードが殴ってやろうかなんて考えたのが分かったのかもしれない。
宙を舞う短い時間の中、どうするべきか次の手を思案する。
どう着地するか、それよりも早く村長の攻撃がくるかもしれない。
不完全な体勢ではちゃんと受け流すことも出来ず、出来たところで二の手、三の手にも対応が出来ない。
戦いは微妙な均衡の上に保たれていてダメージを受ければ簡単に均衡は崩れ去る。
それどころか1発KOもあり得るのだ。
すぐさま村長が追撃に走り出しているのが見えた。
行動しなければやられる。
リュードは空中で上半身を倒して勢いをつけてグッと一回転した。
着地の衝撃を全て吸収するのではなくそのままさらに少しだけジャンプする。
「むっ!?」
リュードはあえて村長の剣を真正面から剣の腹で受け止める。
周りで見ているみんなからはリュードが村長の重たい一撃でぶっ飛んでいったと見えただろう。
間違ってはないのだけどそれがリュードの狙いだ。
村長も確実に捉えたはずなのに軽い手応えに困惑した。
不思議なほど勢いよくリュードが横に吹っ飛んでいった。
あえて村長の力を利用して飛ばされることで一度距離をとったのだ。
打倒候補たちと激しくやりあったはずなのに。
元々表情が乏しい人だから顔では体の状態がどうなのか判断がつかない。
「最近はここまでくるのが同じ顔ぶれでな、退屈していたところだ」
不敵に笑う村長は明らかに気分が高揚していて戦いが待ちきれない様子である。
「是非胸を借りるつもりでいかせてもらいますよ」
「これまで見たシューナリュードの実力に油断ならないことも分かっている。胸を借りるどころか倒してもらいたいものだ」
胸を借りるつもりでなどというがもちろんリュードだって村長を倒すつもりである。
かくいうリュードも早く村長と剣を合わせてみたいと思っている。
「始め!」
号令と同時、あるいはもしかしたら号令よりも少し早かったかもしれない。
リュードは一気に村長に駆け寄ると思いっきり剣を振り下ろした。
「ほう……」
避けずにしっかりと剣で受けてくれることはもはや当然のように分かっていて、押し切れないことも分かりきっていた。
剣と剣がぶつかって火花が散り、村長の額すんでのところまでで剣は止められてしまった。
思いの外押し込めたけれど無傷であることに変わりはない。
村長もリュードの力が想像以上に強くて驚いた。
「やるではないか。では行くぞ!」
背中がゾワっとする殺気。
村長は力任せにリュードを押し返す。
リュードの力もそれなりであるがやはり村長の力は別格。
変に堪えようとすると危ないのでバランスを崩さないように自分からも後ろに飛びのいて力を逃す。
多少距離が空いた。今一度仕切り直しだと思った瞬間だった。
その巨体からは考えられない速さで村長が目の前に現れた。
大きな村長がさらに巨大化したと錯覚させられるほどの速度で近くに村長がいると思った時には刃もすでに眼前に迫っていたのであった。
もう力の差があることは分かっている。
リュードは村長とは違って流石に真正面から受けるマネはするわけにはいかず、普段通り重たい一撃を受け流すことに集中する。
上手く村長の攻撃を受け流したのに受け流した手がビリビリと痺れる。
「ク、ウッ!」
なのに回転も早く一撃必殺の攻撃が次々と飛んでくる。
片手剣なので双剣だったウォーケックの攻撃よりは遅い。
代わりにパワーがあって嫌になる程攻撃が重たい。
村長の戦い方はウォーケックのような速さ重視なやり方ではなくしっかりと一撃一撃防いでいかないと非常に危険だ。
距離を取ろうにも隙がない。
それにウォーケックと比べると攻撃の速度が遅いというだけで全体的な速さそのものはこれまで戦ってきた中でもトップクラスである。
距離を取ったところであっという間に詰められてしまうのがオチになる。
今のところ防御に大きな問題はないがしっかりと防御する分反撃派手が遅くなってしまい、あまり威力を乗せられない。
リュードが村長の攻撃を防ぎ続けるこう着状態に陥る。
こうなるとリュードの体力が村長のパワーによってみるみると削られていく。
ウォーケックに対して拳で攻撃することはやってしまっている。
それが少しでも頭に残っていれば村長には通用しないだろう。
そもそもウォーケック相手に通じても村長なら顔面を殴ってもそのまま斬り返してきそうな感じまである。
試すのもリスクがあって躊躇われる。
動くなら体力的にはまだまだ余裕がある今しかない。
村長の方は打倒候補達を相手にして体力は削られているはずだが顔を見る限り疲労は一切見えない。
持久戦で持ち堪えるのは危ないかもしれない。
「ふぐっ!」
頭の中で作戦を練ってはいたが油断したつもりはなかった。
村長の長い足から繰り出される、それだけで人が1人殺せてしまいそうな強力な蹴りが一瞬の隙をついて飛び出してきた。
剣を差し込み蹴りを受け、自ら後ろに跳ぶことで威力をかなり軽減したけれどリュードの体が軽い物でもあるかのように宙を舞う。
まさかこんな手を使ってくるなんて!とリュードが驚く。
見た限り今まで1度たりとも村長が肉弾戦なんてやったことはない。
刹那に村長が笑って見えたのは気のせいではない。
リュードがウォーケックにしてみせた顔面パンチの肉弾戦に対して自分もやれるのだぞというイタズラ心みたいなものだった。
リュードが殴ってやろうかなんて考えたのが分かったのかもしれない。
宙を舞う短い時間の中、どうするべきか次の手を思案する。
どう着地するか、それよりも早く村長の攻撃がくるかもしれない。
不完全な体勢ではちゃんと受け流すことも出来ず、出来たところで二の手、三の手にも対応が出来ない。
戦いは微妙な均衡の上に保たれていてダメージを受ければ簡単に均衡は崩れ去る。
それどころか1発KOもあり得るのだ。
すぐさま村長が追撃に走り出しているのが見えた。
行動しなければやられる。
リュードは空中で上半身を倒して勢いをつけてグッと一回転した。
着地の衝撃を全て吸収するのではなくそのままさらに少しだけジャンプする。
「むっ!?」
リュードはあえて村長の剣を真正面から剣の腹で受け止める。
周りで見ているみんなからはリュードが村長の重たい一撃でぶっ飛んでいったと見えただろう。
間違ってはないのだけどそれがリュードの狙いだ。
村長も確実に捉えたはずなのに軽い手応えに困惑した。
不思議なほど勢いよくリュードが横に吹っ飛んでいった。
あえて村長の力を利用して飛ばされることで一度距離をとったのだ。
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