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第一章
最後の力比べ3
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あっさりと勝負がついてしまう時もたまにはあるけど今回の戦いはやや長めの展開となった。
ルーミオラは大きな斧を振り回して近づかせまいとしながら攻め立てる。
メーリエッヒは無理をしないで回避を中心に隙をうかがう。
ルーミオラが時折踏み込んで攻撃するがそれも隙にならないような攻撃でメーリエッヒも反撃ができない。
手に汗握る戦いにリュードも食べるのを忘れて戦いに見入る。
無尽蔵にも思えるルーミオラの体力に任せて斧を振り回し続けていたが流石に大きな斧を振り回しては多少の消耗もしていた。
それでも攻め立てるルーミオラだがよく状況が見えていたのはメーリエッヒの方であった。
相変わらず攻撃に隙はなかったけれどほんのわずかな動きの変化から地面への注意が散漫となっていたことをメーリエッヒは見抜いた。
「なっ!」
ルーミオラの踏み出した足が地面の窪みに取られて大きくバランスを崩した。
それは前の戦いで参加者が外した攻撃によって出来た窪みであった。
それは巧みな計算に基づく行動だった。
斧をかわしながらも様子見するように剣を出したりしびれを切らしたように攻めてみたりとルーミオラを誘導して窪みに足を取らせたのだ。
その隙をメーリエッヒが見逃すはずもなく、一瞬で距離を詰める。
近づかせまいと斧を振るけれど体勢が悪くて力の入らない斧を巧みにさばいてメーリエッヒはピタリと喉元に剣を突きつけた。
メーリエッヒ側の赤い旗が4本上がる。
これでメーリエッヒが決勝に上がることが決定した。
一方でルフォンのいる山もリュードの予想通り、他の奴にとってはダークホース的にルフォンが決勝まで勝ち上がった。
流石に準決勝まで来るとルフォンも苦戦していたけれどルフォンは勝利をもぎ取った。
決勝はメーリエッヒvsルフォンの構図となった。
毎年のように優勝していくメーリエッヒよりも絶世の美少女かつ大方の予想を覆して子供部門からのダークホース的勝ち上がりを見せたルフォンに応援が集中する。
あたかもメーリエッヒがこの試合におけるヒール役であるかのようになった。
幼馴染と自分の母親、しかもヒールっぽく母親が扱われる戦い見るのはリュードにとって複雑な気分である。
ほんの少しの休憩を挟んで決勝が行われることになった。
みんなの応援に応えることなくルフォンはジッとメーリエッヒを見据え、メーリエッヒもまたそれをひょうひょうとした表情でうけている。
「うーん、まさかここまで来るとはね」
メーリエッヒは真剣な眼差しで見つめてくるルフォンに対して面白そうに目を細めた。
「あなたの目的は知ってるけど……ここで負けてあげるわけにもいかないのよ」
「……分かってる。でも私もやらなきゃいけないの。本気のメーリエッヒさんを倒すから……だから……見てて」
見ててほしい。
その言葉の相手はメーリエッヒに向けられたものではない。
「もちろん本気で行くわよ? まだ若い子には負けないもの」
「始め!」
これまでと同じ、いや少しフライング気味に飛び出したルフォンは一気に距離を詰めようとする。
メーリエッヒもまっすぐ突っ込んでくるルフォンに剣を合わせて突き出し簡単には距離を詰めさせないようにする。
しかしルフォンは止まらない。
一瞬剣が刺さったのではないかと思った。
ルフォンは当たればタダじゃ済まなそうな一撃をギリギリ頬がかすめるようにかわしてさらに懐に飛び込む。
一撃で決めるつもりでナイフを持った伸ばした右手を突き出すがメーリエッヒが冷静にルフォンの右手を掴んで止める。
リュードがいるような遠くからだからよく見えているが近くなら相当な速さのはずなのにメーリエッヒはよく見ている。
逆に掴んだ手を引き寄せてメーリエッヒはルフォンの腹に膝を入れる。
「うっ!」
ルフォンの顔が痛みに歪むがメーリエッヒの攻撃はまだ終わらない。
パッと手を離したメーリエッヒは蹴りを繰り出す。
痛みで反応が遅れたルフォンはメーリエッヒの膝に続く蹴りに対応出来しきれずガードしか出来なかった。
威力を殺しきれなくて強い衝撃を受けたルフォンは地面を転がるように弾き飛ばされる。
「容赦ねえな……」
メーリエッヒの攻撃に悲鳴のような声もいくらか上がっている。
リュードもメーリエッヒの容赦のない攻撃に険しい顔をした。
すぐさま追いかけて振り下ろされる剣をルフォンはわざとさらに転がることで回避する。
普段メーリエッヒはルフォンを実の娘のように可愛がっているから手加減でもあるのかと甘く考えていたがそんな手ごころなどない。
しかも少し戦い方の意地も悪い。
本当にあれでは悪である。
それ以上の追撃はなく土だらけで起き上がったルフォンとメーリエッヒが再び睨み合う形になる。
これまでの相手に通じてきた速さがメーリエッヒには通じない。
それでもルフォンには他のやり方はない。
覚悟を決めたように地面を蹴ったルフォンだが遠くから見ているリュードにはわかった。
1発腹に手加減なしの蹴りを入れられて、ルフォンのスピードは明らかに落ちている。
今度は掴まれたりしないように一撃で狙うのではなく細かく攻撃を繰り出し、メーリエッヒは回避に徹しているのだけれど時が経つほど回避が最小限に洗練されていく。
声は聞こえないがメーリエッヒの口元がわずかに動いたのがリュードに見えた。
何を言ったのかルフォンの速さが少しだけ上がるもメーリエッヒを捉えるには至らない。
ルーミオラは大きな斧を振り回して近づかせまいとしながら攻め立てる。
メーリエッヒは無理をしないで回避を中心に隙をうかがう。
ルーミオラが時折踏み込んで攻撃するがそれも隙にならないような攻撃でメーリエッヒも反撃ができない。
手に汗握る戦いにリュードも食べるのを忘れて戦いに見入る。
無尽蔵にも思えるルーミオラの体力に任せて斧を振り回し続けていたが流石に大きな斧を振り回しては多少の消耗もしていた。
それでも攻め立てるルーミオラだがよく状況が見えていたのはメーリエッヒの方であった。
相変わらず攻撃に隙はなかったけれどほんのわずかな動きの変化から地面への注意が散漫となっていたことをメーリエッヒは見抜いた。
「なっ!」
ルーミオラの踏み出した足が地面の窪みに取られて大きくバランスを崩した。
それは前の戦いで参加者が外した攻撃によって出来た窪みであった。
それは巧みな計算に基づく行動だった。
斧をかわしながらも様子見するように剣を出したりしびれを切らしたように攻めてみたりとルーミオラを誘導して窪みに足を取らせたのだ。
その隙をメーリエッヒが見逃すはずもなく、一瞬で距離を詰める。
近づかせまいと斧を振るけれど体勢が悪くて力の入らない斧を巧みにさばいてメーリエッヒはピタリと喉元に剣を突きつけた。
メーリエッヒ側の赤い旗が4本上がる。
これでメーリエッヒが決勝に上がることが決定した。
一方でルフォンのいる山もリュードの予想通り、他の奴にとってはダークホース的にルフォンが決勝まで勝ち上がった。
流石に準決勝まで来るとルフォンも苦戦していたけれどルフォンは勝利をもぎ取った。
決勝はメーリエッヒvsルフォンの構図となった。
毎年のように優勝していくメーリエッヒよりも絶世の美少女かつ大方の予想を覆して子供部門からのダークホース的勝ち上がりを見せたルフォンに応援が集中する。
あたかもメーリエッヒがこの試合におけるヒール役であるかのようになった。
幼馴染と自分の母親、しかもヒールっぽく母親が扱われる戦い見るのはリュードにとって複雑な気分である。
ほんの少しの休憩を挟んで決勝が行われることになった。
みんなの応援に応えることなくルフォンはジッとメーリエッヒを見据え、メーリエッヒもまたそれをひょうひょうとした表情でうけている。
「うーん、まさかここまで来るとはね」
メーリエッヒは真剣な眼差しで見つめてくるルフォンに対して面白そうに目を細めた。
「あなたの目的は知ってるけど……ここで負けてあげるわけにもいかないのよ」
「……分かってる。でも私もやらなきゃいけないの。本気のメーリエッヒさんを倒すから……だから……見てて」
見ててほしい。
その言葉の相手はメーリエッヒに向けられたものではない。
「もちろん本気で行くわよ? まだ若い子には負けないもの」
「始め!」
これまでと同じ、いや少しフライング気味に飛び出したルフォンは一気に距離を詰めようとする。
メーリエッヒもまっすぐ突っ込んでくるルフォンに剣を合わせて突き出し簡単には距離を詰めさせないようにする。
しかしルフォンは止まらない。
一瞬剣が刺さったのではないかと思った。
ルフォンは当たればタダじゃ済まなそうな一撃をギリギリ頬がかすめるようにかわしてさらに懐に飛び込む。
一撃で決めるつもりでナイフを持った伸ばした右手を突き出すがメーリエッヒが冷静にルフォンの右手を掴んで止める。
リュードがいるような遠くからだからよく見えているが近くなら相当な速さのはずなのにメーリエッヒはよく見ている。
逆に掴んだ手を引き寄せてメーリエッヒはルフォンの腹に膝を入れる。
「うっ!」
ルフォンの顔が痛みに歪むがメーリエッヒの攻撃はまだ終わらない。
パッと手を離したメーリエッヒは蹴りを繰り出す。
痛みで反応が遅れたルフォンはメーリエッヒの膝に続く蹴りに対応出来しきれずガードしか出来なかった。
威力を殺しきれなくて強い衝撃を受けたルフォンは地面を転がるように弾き飛ばされる。
「容赦ねえな……」
メーリエッヒの攻撃に悲鳴のような声もいくらか上がっている。
リュードもメーリエッヒの容赦のない攻撃に険しい顔をした。
すぐさま追いかけて振り下ろされる剣をルフォンはわざとさらに転がることで回避する。
普段メーリエッヒはルフォンを実の娘のように可愛がっているから手加減でもあるのかと甘く考えていたがそんな手ごころなどない。
しかも少し戦い方の意地も悪い。
本当にあれでは悪である。
それ以上の追撃はなく土だらけで起き上がったルフォンとメーリエッヒが再び睨み合う形になる。
これまでの相手に通じてきた速さがメーリエッヒには通じない。
それでもルフォンには他のやり方はない。
覚悟を決めたように地面を蹴ったルフォンだが遠くから見ているリュードにはわかった。
1発腹に手加減なしの蹴りを入れられて、ルフォンのスピードは明らかに落ちている。
今度は掴まれたりしないように一撃で狙うのではなく細かく攻撃を繰り出し、メーリエッヒは回避に徹しているのだけれど時が経つほど回避が最小限に洗練されていく。
声は聞こえないがメーリエッヒの口元がわずかに動いたのがリュードに見えた。
何を言ったのかルフォンの速さが少しだけ上がるもメーリエッヒを捉えるには至らない。
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