人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

文字の大きさ
上 下
34 / 377
第一章

最後の力比べ3

しおりを挟む
 あっさりと勝負がついてしまう時もたまにはあるけど今回の戦いはやや長めの展開となった。
 ルーミオラは大きな斧を振り回して近づかせまいとしながら攻め立てる。

 メーリエッヒは無理をしないで回避を中心に隙をうかがう。
 ルーミオラが時折踏み込んで攻撃するがそれも隙にならないような攻撃でメーリエッヒも反撃ができない。

 手に汗握る戦いにリュードも食べるのを忘れて戦いに見入る。
 無尽蔵にも思えるルーミオラの体力に任せて斧を振り回し続けていたが流石に大きな斧を振り回しては多少の消耗もしていた。
 
 それでも攻め立てるルーミオラだがよく状況が見えていたのはメーリエッヒの方であった。
 相変わらず攻撃に隙はなかったけれどほんのわずかな動きの変化から地面への注意が散漫となっていたことをメーリエッヒは見抜いた。

「なっ!」
 
 ルーミオラの踏み出した足が地面の窪みに取られて大きくバランスを崩した。
 それは前の戦いで参加者が外した攻撃によって出来た窪みであった。

 それは巧みな計算に基づく行動だった。
 斧をかわしながらも様子見するように剣を出したりしびれを切らしたように攻めてみたりとルーミオラを誘導して窪みに足を取らせたのだ。

 その隙をメーリエッヒが見逃すはずもなく、一瞬で距離を詰める。
 近づかせまいと斧を振るけれど体勢が悪くて力の入らない斧を巧みにさばいてメーリエッヒはピタリと喉元に剣を突きつけた。

 メーリエッヒ側の赤い旗が4本上がる。
 これでメーリエッヒが決勝に上がることが決定した。

 一方でルフォンのいる山もリュードの予想通り、他の奴にとってはダークホース的にルフォンが決勝まで勝ち上がった。
 流石に準決勝まで来るとルフォンも苦戦していたけれどルフォンは勝利をもぎ取った。

 決勝はメーリエッヒvsルフォンの構図となった。
 毎年のように優勝していくメーリエッヒよりも絶世の美少女かつ大方の予想を覆して子供部門からのダークホース的勝ち上がりを見せたルフォンに応援が集中する。

 あたかもメーリエッヒがこの試合におけるヒール役であるかのようになった。
 幼馴染と自分の母親、しかもヒールっぽく母親が扱われる戦い見るのはリュードにとって複雑な気分である。

 ほんの少しの休憩を挟んで決勝が行われることになった。
 みんなの応援に応えることなくルフォンはジッとメーリエッヒを見据え、メーリエッヒもまたそれをひょうひょうとした表情でうけている。

「うーん、まさかここまで来るとはね」

 メーリエッヒは真剣な眼差しで見つめてくるルフォンに対して面白そうに目を細めた。

「あなたの目的は知ってるけど……ここで負けてあげるわけにもいかないのよ」

「……分かってる。でも私もやらなきゃいけないの。本気のメーリエッヒさんを倒すから……だから……見てて」

 見ててほしい。
 その言葉の相手はメーリエッヒに向けられたものではない。

「もちろん本気で行くわよ? まだ若い子には負けないもの」

「始め!」

 これまでと同じ、いや少しフライング気味に飛び出したルフォンは一気に距離を詰めようとする。
 メーリエッヒもまっすぐ突っ込んでくるルフォンに剣を合わせて突き出し簡単には距離を詰めさせないようにする。

 しかしルフォンは止まらない。
 一瞬剣が刺さったのではないかと思った。
 
 ルフォンは当たればタダじゃ済まなそうな一撃をギリギリ頬がかすめるようにかわしてさらに懐に飛び込む。
 一撃で決めるつもりでナイフを持った伸ばした右手を突き出すがメーリエッヒが冷静にルフォンの右手を掴んで止める。

 リュードがいるような遠くからだからよく見えているが近くなら相当な速さのはずなのにメーリエッヒはよく見ている。
 逆に掴んだ手を引き寄せてメーリエッヒはルフォンの腹に膝を入れる。

「うっ!」

 ルフォンの顔が痛みに歪むがメーリエッヒの攻撃はまだ終わらない。
 パッと手を離したメーリエッヒは蹴りを繰り出す。
 
 痛みで反応が遅れたルフォンはメーリエッヒの膝に続く蹴りに対応出来しきれずガードしか出来なかった。
 威力を殺しきれなくて強い衝撃を受けたルフォンは地面を転がるように弾き飛ばされる。

「容赦ねえな……」

 メーリエッヒの攻撃に悲鳴のような声もいくらか上がっている。
 リュードもメーリエッヒの容赦のない攻撃に険しい顔をした。

 すぐさま追いかけて振り下ろされる剣をルフォンはわざとさらに転がることで回避する。
 普段メーリエッヒはルフォンを実の娘のように可愛がっているから手加減でもあるのかと甘く考えていたがそんな手ごころなどない。

 しかも少し戦い方の意地も悪い。
 本当にあれでは悪である。

 それ以上の追撃はなく土だらけで起き上がったルフォンとメーリエッヒが再び睨み合う形になる。

 これまでの相手に通じてきた速さがメーリエッヒには通じない。
 それでもルフォンには他のやり方はない。

 覚悟を決めたように地面を蹴ったルフォンだが遠くから見ているリュードにはわかった。
 1発腹に手加減なしの蹴りを入れられて、ルフォンのスピードは明らかに落ちている。

 今度は掴まれたりしないように一撃で狙うのではなく細かく攻撃を繰り出し、メーリエッヒは回避に徹しているのだけれど時が経つほど回避が最小限に洗練されていく。

 声は聞こえないがメーリエッヒの口元がわずかに動いたのがリュードに見えた。
 何を言ったのかルフォンの速さが少しだけ上がるもメーリエッヒを捉えるには至らない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!

果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。 次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった! しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……? 「ちくしょう! 死んでたまるか!」 カイムは、殺されないために努力することを決める。 そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る! これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。    本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています 他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜

猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。 ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。 そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。 それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。 ただし、スキルは選べず運のみが頼り。 しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。 それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・ そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。

処理中です...