12 / 364
第一章
初めての力比べ6
しおりを挟む
男のプライドをかけた戦いが始まった。
「覚悟ぉ!」
人狼族の青年は勢いよく地面を蹴って一瞬で距離を詰める。
2本のナイフを巧みに使い絶え間なく繰り出される攻撃は一撃一撃は軽い反面、手数が多く捌くのにいっぱいいっぱいになって防戦一方になる。
前から横から、一瞬でも油断すると後ろから、そして上下左右からと軽いとはいえ防ぐのも簡単ではない。
息もつかせない鬼気迫る勢いだが激しければ激しいほど長続きもしないものだ。
隙は必ずできる。息をつけないのは攻撃側も同じなのだ。
隙ができる瞬間を待ってひたすらリュードは防御に徹する。
時々ナイフが肌をかすめて痛みが走るがこれぐらいなら一本は取られない。
「チマチマと鬱陶しいんだよ!」
リュードに攻撃が通らない焦りが人狼族の青年に現れる。
前の試合も見ていたので多少はやりそうだと思っていたけどそれでも勝てると思っていた。
なのにリュードは必死に食らいついて防ぎ、回避して人狼族の青年の呼吸が乱れた。
それによって攻撃にほんのわずかな隙が生じる。
大きな隙とは言い難いけれど思い切って攻撃に移る。
まだ未熟なリュードにはウォーケックのような攻防一体の動きはまだ難しい。
だけどリュードだってちょっとはできる。
人狼族の青年の短剣の軌道をそらすようにしながら無理矢理前に出て突きを繰り出す。
逸らしきれなかった短剣が脇腹をかすめて痛みが走るが覚悟していたため動きに影響はない。
逆に人狼族の青年は想像してなかった反撃に反応が一瞬遅れる。
体をねじってかわそうとしたけれど突きがしっかりと右肩に当たって人狼の青年は後ろにぶっ飛ぶ。
地面に左手をついて一回転してその衝撃を殺すも顔は明らかに痛みに歪んでいる。
上がった赤札は2つ。
本当の戦闘ならかなり致命的な一撃であるがこれは本当の試合ではなく一応模擬的な試合である。
人狼族の青年が戦闘継続の意思を見せたところも評価されてリュードは一撃で勝ちきれなかった。
現実の戦闘でも大ダメージだろうがナイフを二刀流で運用している人狼族の少年は左手が無事ならまだ戦える。
それも一本にならなかった要因である。
これで決まってくれていれば楽だったがそう甘くもない。
けれども状況が一気にリュードに傾いたことには変わりがない。
なんて事はない。そうアピールするために構えようとしても右手はどう見ても左手ほど上がっていない。
この好機を逃すはずもなく今度はリュードから攻め込んでいく。
慌てて大振りにならないように鋭く細かく攻撃するも、さすがというべきか左手のナイフを使って上手くリュードの攻撃に対処していく。
右手がまた使えるようになる前に勝負を決めたい。
速さと手数が武器だった相手から手数が無くなった。
速さも最初の体力の消耗と肩の痛みで損なわれている。
リュードはやや相手の右側に回るようにしながら攻撃を繰り返す。
「ぐっ……」
人狼族の青年は必死にリュードの攻撃を防ぐがいくら年下の攻撃とはいえナイフ1本では両手持ちの剣を防御するのは難しい。
速さを活かして防御ではなく回避していくスタイルで持ち堪える。
このままでは勝負もつかない。
鋭く素早い攻撃で気を繰り返して人狼族の青年の体力を徐々に削っているものの決め手に欠ける。
動かせるとは思えないが時間をかければ再び右手が動かせるようになるかもしれない。
そこで思い切って人狼族の青年の懐に飛び込んでみる。
疲労が蓄積されてきたのかとっさの動きに反応が鈍くなっている相手のさらに内側に踏み込む。
どちらかといえばナイフの距離にリュードが飛び込んできた。
回避行動をとるか攻撃するか、迷いが獣人族の青年に生じた。
リュードの行動は相手がどう動こうが決まっていた。
左から右に横薙ぎに剣を振る。
人狼族の青年から見ると動かせない右手側から攻撃が来る。
すでに速さに乗り始めた攻撃は近すぎてあまり力は乗らないけど大きく体を回転させて威力を出す。
もうこうなれば回避も難しい。
なんとか上げた右手に持ったナイフと剣が当たり金属同士がぶつかる高い音が鳴り響く。
力の入らない右手、しかも体勢もほとんど直立で踏ん張りも利いていないためにほとんど力を相殺することもできなかった。
かっ飛ばすようなリュードの攻撃を受けきれなくてナイフと人狼族の青年の体が地面を2転3転と転がる。
「勝者シューナリュード!」
まだ起き上がるならトドメを、と思った時には審判はすでに4本の赤い札を上げていた。
人狼族の青年は立ち上がることはなく気絶していた。
担架に乗せられて医療班の元に運ばれていき、息の乱れたリュードも声援を背中に受けながら控え場所に戻った。
ドッと疲労が襲ってきて椅子に座ると勝った喜びが湧き上がり、小さくガッツポーズをしてしまった。
次は決勝となるのだが、すぐに連戦というわけではない。
ここで大人女性部門のトーナメントのくじ引きが行われ、上手に休憩の時間を確保してくれる。
大人女性部門にはメーリエッヒやルーミオラも出る。
そして子供部門チャンピオンであるテユノも大人部門への特別参加が認められる。
「覚悟ぉ!」
人狼族の青年は勢いよく地面を蹴って一瞬で距離を詰める。
2本のナイフを巧みに使い絶え間なく繰り出される攻撃は一撃一撃は軽い反面、手数が多く捌くのにいっぱいいっぱいになって防戦一方になる。
前から横から、一瞬でも油断すると後ろから、そして上下左右からと軽いとはいえ防ぐのも簡単ではない。
息もつかせない鬼気迫る勢いだが激しければ激しいほど長続きもしないものだ。
隙は必ずできる。息をつけないのは攻撃側も同じなのだ。
隙ができる瞬間を待ってひたすらリュードは防御に徹する。
時々ナイフが肌をかすめて痛みが走るがこれぐらいなら一本は取られない。
「チマチマと鬱陶しいんだよ!」
リュードに攻撃が通らない焦りが人狼族の青年に現れる。
前の試合も見ていたので多少はやりそうだと思っていたけどそれでも勝てると思っていた。
なのにリュードは必死に食らいついて防ぎ、回避して人狼族の青年の呼吸が乱れた。
それによって攻撃にほんのわずかな隙が生じる。
大きな隙とは言い難いけれど思い切って攻撃に移る。
まだ未熟なリュードにはウォーケックのような攻防一体の動きはまだ難しい。
だけどリュードだってちょっとはできる。
人狼族の青年の短剣の軌道をそらすようにしながら無理矢理前に出て突きを繰り出す。
逸らしきれなかった短剣が脇腹をかすめて痛みが走るが覚悟していたため動きに影響はない。
逆に人狼族の青年は想像してなかった反撃に反応が一瞬遅れる。
体をねじってかわそうとしたけれど突きがしっかりと右肩に当たって人狼の青年は後ろにぶっ飛ぶ。
地面に左手をついて一回転してその衝撃を殺すも顔は明らかに痛みに歪んでいる。
上がった赤札は2つ。
本当の戦闘ならかなり致命的な一撃であるがこれは本当の試合ではなく一応模擬的な試合である。
人狼族の青年が戦闘継続の意思を見せたところも評価されてリュードは一撃で勝ちきれなかった。
現実の戦闘でも大ダメージだろうがナイフを二刀流で運用している人狼族の少年は左手が無事ならまだ戦える。
それも一本にならなかった要因である。
これで決まってくれていれば楽だったがそう甘くもない。
けれども状況が一気にリュードに傾いたことには変わりがない。
なんて事はない。そうアピールするために構えようとしても右手はどう見ても左手ほど上がっていない。
この好機を逃すはずもなく今度はリュードから攻め込んでいく。
慌てて大振りにならないように鋭く細かく攻撃するも、さすがというべきか左手のナイフを使って上手くリュードの攻撃に対処していく。
右手がまた使えるようになる前に勝負を決めたい。
速さと手数が武器だった相手から手数が無くなった。
速さも最初の体力の消耗と肩の痛みで損なわれている。
リュードはやや相手の右側に回るようにしながら攻撃を繰り返す。
「ぐっ……」
人狼族の青年は必死にリュードの攻撃を防ぐがいくら年下の攻撃とはいえナイフ1本では両手持ちの剣を防御するのは難しい。
速さを活かして防御ではなく回避していくスタイルで持ち堪える。
このままでは勝負もつかない。
鋭く素早い攻撃で気を繰り返して人狼族の青年の体力を徐々に削っているものの決め手に欠ける。
動かせるとは思えないが時間をかければ再び右手が動かせるようになるかもしれない。
そこで思い切って人狼族の青年の懐に飛び込んでみる。
疲労が蓄積されてきたのかとっさの動きに反応が鈍くなっている相手のさらに内側に踏み込む。
どちらかといえばナイフの距離にリュードが飛び込んできた。
回避行動をとるか攻撃するか、迷いが獣人族の青年に生じた。
リュードの行動は相手がどう動こうが決まっていた。
左から右に横薙ぎに剣を振る。
人狼族の青年から見ると動かせない右手側から攻撃が来る。
すでに速さに乗り始めた攻撃は近すぎてあまり力は乗らないけど大きく体を回転させて威力を出す。
もうこうなれば回避も難しい。
なんとか上げた右手に持ったナイフと剣が当たり金属同士がぶつかる高い音が鳴り響く。
力の入らない右手、しかも体勢もほとんど直立で踏ん張りも利いていないためにほとんど力を相殺することもできなかった。
かっ飛ばすようなリュードの攻撃を受けきれなくてナイフと人狼族の青年の体が地面を2転3転と転がる。
「勝者シューナリュード!」
まだ起き上がるならトドメを、と思った時には審判はすでに4本の赤い札を上げていた。
人狼族の青年は立ち上がることはなく気絶していた。
担架に乗せられて医療班の元に運ばれていき、息の乱れたリュードも声援を背中に受けながら控え場所に戻った。
ドッと疲労が襲ってきて椅子に座ると勝った喜びが湧き上がり、小さくガッツポーズをしてしまった。
次は決勝となるのだが、すぐに連戦というわけではない。
ここで大人女性部門のトーナメントのくじ引きが行われ、上手に休憩の時間を確保してくれる。
大人女性部門にはメーリエッヒやルーミオラも出る。
そして子供部門チャンピオンであるテユノも大人部門への特別参加が認められる。
22
お気に入りに追加
408
あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました
おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。
※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。
※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・)
更新はめっちゃ不定期です。
※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~
犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。
塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。
弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。
けれども違ったのだ。
この世の中、強い奴ほど才能がなかった。
これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。
見抜いて、育てる。
育てて、恩を売って、いい暮らしをする。
誰もが知らない才能を見抜け。
そしてこの世界を生き残れ。
なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。
更新不定期
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる