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第一章
初めての力比べ5
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疲れからか動きが鈍ってきていたのをうまく考慮できなかったのである。
痛みに相手の顔が歪み大きくふらついて白札が2つ上がる。
もうそろそろ終わりの時が近い。
それなりに鬱憤も晴らしたしこれだけ実力を見せつければ今度舐めた真似もしないはず。
「くそっ、くそっ! ツノありのくせに!」
しかし相手もまだ精神的に幼いところがある。
不利な状況であることを認められず苛立ちばかりを感じている。
相変わらずの減らず口を叩き、白札が上がったことに焦ったのかこの試合で1番の大振りで剣を振り下ろす。
それじゃダメだといい加減学んで欲しいものだが、これはチャンスだとリュードも決めにかかる。
さらにもう1つ力の差ってやつを見せてやることにした。
しっかりと地面に足をつけ体ごとねじるように剣を振り上げる。
あえて相手の剣にぶつけると金属同士が衝突する甲高い音がして相手は再び剣を振り上げるような格好になった。
まさしく力の差。
先祖返りしたリュードの体は普通の竜人族よりも強い。
それに他の子供が遊んでいる間リュードは体を鍛えてきた。
疲れていて軸もぶれている、勢いに任せて力の乗り切らない剣がリュードの相手になるわけもない。
しっかりと踏ん張り、ここまで力を温存してきた。
これが試合を始めた最初なら勝てないだろうけどこの状態ならばリュードの方が強い。
完全に力負けした相手は下から腕を跳ね上げられて無防備な姿をさらけ出す。
「終わりだ!」
下から振り上げた剣を引き戻しがてら一回転しながら思いっきり胴を薙ぐ。
丈夫な竜人族でも骨ぐらいはいったかもしれない鈍い音をさせて相手は地面を転がるようにぶっ飛んだ。
白目をむいて気絶する姿を見るまでもなく白札が4つ上がって主審がリュードの勝利を宣告する。
起きていたら間違いなく痛みに悶えたはずだから気絶できて幸運だったかもしれない。
これでリュードはともかくルフォンに絡むのはやめてほしいものだと思う。
「リューちゃんすごい!」
「おっと」
次の出場者と入れ替わりに柵の外に出るとルフォンが満面の笑みで抱きついてくる。
何となく予想はしていたので受け止めてやる。
柵の出入り口周辺は関係者しか立ち入れないのだけれどルフォンも一応出場者なので関係者といえるし、みな顔見知りのようなものでセキュリティなんてものもない。
要するに入り放題。それにルフォンにうるんだ瞳で見られて止められるやつも少ない。
なのでルフォンはリュードを出迎えるために待っていてくれた。
冷たい視線やら生暖かい視線が向けられて気恥ずかしい気持ちになるけど嬉しい気持ちの方が大きい。
普段からいじめてくる相手だったからルフォンも心配だったのかもしれない。
「……ッ!」
ルフォンを撫で回して試合の疲れを癒していると殺気を感じた。
顔を上げると次に戦う予定の15歳の人狼族の青年がリュードのことを刺すような鋭い視線で睨みつけている。
力比べに出るみんなの控え場のピリピリした雰囲気の中でイチャイチャするようなことをしていれば不愉快にも思って当然。
しかも次の対戦相手がそうしてるとあれば殺気立ちもするかと少し反省する。
こうした雰囲気にあまり水を差してはいけないとリュードはルフォンに観客席の方に戻るように言って試合に備える。
逆の山ではそうしている間にも15歳の竜人族が決勝進出を決め、準決勝戦にリュードと15歳の人狼族が呼ばれた。
今度はリュードが赤側で相手の人狼族の青年が白側となる。
両手に1本ずつナイフを持つ人狼族の青年の目つきは相変わらず厳しい。
「おい、お前……シューナリュードとかいったか」
「そうだけど」
「お前、るる、ルフォン……ちゃ、さんと付き合っているというのは本当なのか」
「ルフォン? 付き合ってはないけど……」
ルフォンとは正確には付き合ってない。
友達以上恋人未満みたいな感じといえばいいのかな。
かなり親しく家族のような関係性ですらある。
なるほど理解した、とリュードは思った。
あの刺すような視線の理由はイチャイチャしていることが原因ではなかった。
イチャイチャが原因なんだけどイチャイチャしていたことというよりもルフォンとそう見えることをしていたことが大きいのだ。
相変わらずルフォンは男子人気が高い。強者主義な村において家庭的な側面を持ち他の女子に比べて気が強すぎないルフォンはまた違った魅力を持っている。
見た目も当然に可愛いし狙っている男子も少なくないのだ。
「付き合ってないのにルフォンちゃんの頭を撫でていたのか、この不埒者め!」
リュードの答えを聞いて一瞬安心したような表情を見せたがすぐに顔が険しくなる。
頭を撫でるぐらい子供の頃からやっているしルフォンだって嫌がっていないのだから素知らぬ他人に不埒と非難されるいわれもない。
「家が近いからといってルフォンちゃんに手を出すお前を俺は許さない!」
ちなみにルフォン本人に自覚はないけど人狼族のみならず竜人族にも人気がある。
幼馴染として仲良くしているリュードをよく思っていない奴がいるのは何となくわかっていたけど真正面切ってこんな風に言われたのはこれが初めてである。
「始め!」
痛みに相手の顔が歪み大きくふらついて白札が2つ上がる。
もうそろそろ終わりの時が近い。
それなりに鬱憤も晴らしたしこれだけ実力を見せつければ今度舐めた真似もしないはず。
「くそっ、くそっ! ツノありのくせに!」
しかし相手もまだ精神的に幼いところがある。
不利な状況であることを認められず苛立ちばかりを感じている。
相変わらずの減らず口を叩き、白札が上がったことに焦ったのかこの試合で1番の大振りで剣を振り下ろす。
それじゃダメだといい加減学んで欲しいものだが、これはチャンスだとリュードも決めにかかる。
さらにもう1つ力の差ってやつを見せてやることにした。
しっかりと地面に足をつけ体ごとねじるように剣を振り上げる。
あえて相手の剣にぶつけると金属同士が衝突する甲高い音がして相手は再び剣を振り上げるような格好になった。
まさしく力の差。
先祖返りしたリュードの体は普通の竜人族よりも強い。
それに他の子供が遊んでいる間リュードは体を鍛えてきた。
疲れていて軸もぶれている、勢いに任せて力の乗り切らない剣がリュードの相手になるわけもない。
しっかりと踏ん張り、ここまで力を温存してきた。
これが試合を始めた最初なら勝てないだろうけどこの状態ならばリュードの方が強い。
完全に力負けした相手は下から腕を跳ね上げられて無防備な姿をさらけ出す。
「終わりだ!」
下から振り上げた剣を引き戻しがてら一回転しながら思いっきり胴を薙ぐ。
丈夫な竜人族でも骨ぐらいはいったかもしれない鈍い音をさせて相手は地面を転がるようにぶっ飛んだ。
白目をむいて気絶する姿を見るまでもなく白札が4つ上がって主審がリュードの勝利を宣告する。
起きていたら間違いなく痛みに悶えたはずだから気絶できて幸運だったかもしれない。
これでリュードはともかくルフォンに絡むのはやめてほしいものだと思う。
「リューちゃんすごい!」
「おっと」
次の出場者と入れ替わりに柵の外に出るとルフォンが満面の笑みで抱きついてくる。
何となく予想はしていたので受け止めてやる。
柵の出入り口周辺は関係者しか立ち入れないのだけれどルフォンも一応出場者なので関係者といえるし、みな顔見知りのようなものでセキュリティなんてものもない。
要するに入り放題。それにルフォンにうるんだ瞳で見られて止められるやつも少ない。
なのでルフォンはリュードを出迎えるために待っていてくれた。
冷たい視線やら生暖かい視線が向けられて気恥ずかしい気持ちになるけど嬉しい気持ちの方が大きい。
普段からいじめてくる相手だったからルフォンも心配だったのかもしれない。
「……ッ!」
ルフォンを撫で回して試合の疲れを癒していると殺気を感じた。
顔を上げると次に戦う予定の15歳の人狼族の青年がリュードのことを刺すような鋭い視線で睨みつけている。
力比べに出るみんなの控え場のピリピリした雰囲気の中でイチャイチャするようなことをしていれば不愉快にも思って当然。
しかも次の対戦相手がそうしてるとあれば殺気立ちもするかと少し反省する。
こうした雰囲気にあまり水を差してはいけないとリュードはルフォンに観客席の方に戻るように言って試合に備える。
逆の山ではそうしている間にも15歳の竜人族が決勝進出を決め、準決勝戦にリュードと15歳の人狼族が呼ばれた。
今度はリュードが赤側で相手の人狼族の青年が白側となる。
両手に1本ずつナイフを持つ人狼族の青年の目つきは相変わらず厳しい。
「おい、お前……シューナリュードとかいったか」
「そうだけど」
「お前、るる、ルフォン……ちゃ、さんと付き合っているというのは本当なのか」
「ルフォン? 付き合ってはないけど……」
ルフォンとは正確には付き合ってない。
友達以上恋人未満みたいな感じといえばいいのかな。
かなり親しく家族のような関係性ですらある。
なるほど理解した、とリュードは思った。
あの刺すような視線の理由はイチャイチャしていることが原因ではなかった。
イチャイチャが原因なんだけどイチャイチャしていたことというよりもルフォンとそう見えることをしていたことが大きいのだ。
相変わらずルフォンは男子人気が高い。強者主義な村において家庭的な側面を持ち他の女子に比べて気が強すぎないルフォンはまた違った魅力を持っている。
見た目も当然に可愛いし狙っている男子も少なくないのだ。
「付き合ってないのにルフォンちゃんの頭を撫でていたのか、この不埒者め!」
リュードの答えを聞いて一瞬安心したような表情を見せたがすぐに顔が険しくなる。
頭を撫でるぐらい子供の頃からやっているしルフォンだって嫌がっていないのだから素知らぬ他人に不埒と非難されるいわれもない。
「家が近いからといってルフォンちゃんに手を出すお前を俺は許さない!」
ちなみにルフォン本人に自覚はないけど人狼族のみならず竜人族にも人気がある。
幼馴染として仲良くしているリュードをよく思っていない奴がいるのは何となくわかっていたけど真正面切ってこんな風に言われたのはこれが初めてである。
「始め!」
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