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第一章
もうすでに世界は救っています1
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時折聞いた言葉『地球は青かった。』
膨大な魔力をまとって、膨大な魔力に押されて世界から世界へと渡る短い時間の中で、ふと振り返って見えた地球は青かった。
世界を救ってほしい。
神様にそう言われてなにを想像するだろうか。
仲間との出会い、壮大な旅路、魔王との戦い……
小説やアニメ、マンガのような心躍り、手に汗握る展開をイメージする。
成長を遂げ、強敵との戦いを乗り越えて最後には悪を打ち果たして世界を救う。
こうした冒険が通常なら想像されるだろう。
けれど異世界を救うために必要なことはそんな冒険ではなかった。
異世界に行ってくれればそれでいい。
戦うこともなければそれどころか何もしなくてもいい。
異世界に行ってくれさえすれば異世界を救ったことになる。
神様にはそう言われた。
えっ!と思ったけど異世界に行くだけで世界を救えると言われてしまった。
これから始まる物語は世界を救った後の物語。
でもただのんびりとするだけじゃない。
こちらの神様にもより世界を救ってくれないかと言われた。
しかしながらそれも魔王を倒してくれとかそんなことを言われたのではない。
のんびりと世界を旅してほしい。
それが神様からのお願いだった。
だからこの物語は魔王を倒す勇者とかそんなものの話ではない。
世界を救った見返りに転生させてもらえることになった男がのんびりと生きていくのにのんびりとさせてもらえない物語である。
この世界に生まれ落ちて、シューナリュードというのが新しく名付けられた名前だった。
勉強家で本をよく読む父親が名付けてくれたものでかつて存在していた竜神の始祖の名前からいただいた名前である。
黒い髪に黒い瞳と端的に身体的な特徴を抜き出せば転生する前の容姿と大きくは変わらないようにも思える。
けれども前の体とは大きな違いもあった。
それは頭にツノが生えているのである。
人に生まれ変わりたい。
そんな希望を神様に出したのだけど人は人でもただの人ではなかったのである。
「ったく、神様も雑だよな……いやまあほとんど叶えてもらってはいるんだけどさ」
ふと神様との会話を思い出した。
あの時の記憶は神様のせいで正直少しばかりぼんやりとしているが人に転生したいと希望を出したことは覚えている。
なのにどうしてこんなことになったのだろうかと考える。
今は朝の日課になっているランニングをしていた。
考え事をしているうちにいつもの回数村をグルリと走って自分の家、ではなくお隣さんの家に向かう。
お隣さんの家の玄関横の壁に寄りかかって目をつぶっている男性が見えてきた。
その男性は服の上からでも分かるほど体を鍛え上げている。
目をつぶっているはずなのにその立ち振る舞いに隙が見えない。
とりあえず答えの出ない考えは忘れることにする。
「師匠!」
「きたか、リュード」
リュードとはシューナリュードの愛称である。
友達などのある程度親しい間柄の人はみなシューナリュードのことをリュードと呼んでくれる。
リュードが師匠と呼んだ男性はウォーケック・ディガン。
リュードが生まれた時からの付き合いがあり、以前は冒険者として活躍していた熟練者である。
毎朝家の前で素振りをするのがウォーケックの習慣であってそんなウォーケックにリュードは声をかけた。
今ではウォーケックの弟子として武器の扱いを日々学んでいる。
最初こそウォーケックは疎ましそうな顔をしていたがリュードの母親とウォーケックの奥さんが仲が良いこともあっていつしか教えてもらう内に弟子として認めてくれた。
これも武芸を身近で学びたいという転生の時に出した希望を反映してのことかもしれないとリュードは思う。
ランニングで多少乱れた息を整える暇もなくウォーケックがリュードに剣を投げ渡す。
剣というか柄のある金属の太い棒のようなもの。
これは木剣が振り回すのに軽すぎるために使う素振り用の剣で重たくするために金属で作られている。
リュードが構えると隣にウォーケックが並び、同じく構える。
一回一回体や剣のブレがないように気を付けながら真剣に素振りを繰り返す。
余計な考えを追いやり無心で剣を振る。
隣に立つウォーケックの方が剣の振り下ろしが早いのに寸分違わず機械のようにピタリと腕を止めて全く同じく動いている。
再びじんわりと汗をかいてきた頃ウォーケックから終了の声がかかる。
軽く汗を手の甲で拭いながら素振り用の剣を置いて今度は木剣を持つ。
リュードとウォーケックが向かい合って剣を構える。
「来い!」
「はい!」
前に出ながら数回決められた打ち込みをしてウォーケックがそれを受けて、今度はウォーケックが同じように打ち込んでくるのでそれをしっかりと受ける。
さらに次はリュードがまた同じ打ち込みをするが今度は受け流すように受け、再びウォーケックが打ち込みそれを受け流す。
「踏み込みが甘いぞ!」
「くっ!」
強めに押し返されてリュードは体を大きくふらつかせる。
少しでも油断して体の動きが悪くなるとあっという間に見抜かれてしまう。
リュードは一度大きく息を吐き出して気合いを入れ直す。
たとえ練習の打ち込みであってもウォーケックを倒すつもりでやらなきゃいけない。
切り方や動きを変えながらそうした鍛錬をこなした後最後にウォーケックと本気で打ち合う。
と言っても本気なのはリュードだけで師匠であるウォーケックはまだ余力をだいぶ残して対応している。
剣で2回、槍で1回の計3回挑み、3回ともあえなく降参させられて本日の鍛錬は終わりとなった。
全身汗びっしょりでリュードは地面にへたり込む。
これでもまだ10歳、まだまだ発展途上の子供なのである。
膨大な魔力をまとって、膨大な魔力に押されて世界から世界へと渡る短い時間の中で、ふと振り返って見えた地球は青かった。
世界を救ってほしい。
神様にそう言われてなにを想像するだろうか。
仲間との出会い、壮大な旅路、魔王との戦い……
小説やアニメ、マンガのような心躍り、手に汗握る展開をイメージする。
成長を遂げ、強敵との戦いを乗り越えて最後には悪を打ち果たして世界を救う。
こうした冒険が通常なら想像されるだろう。
けれど異世界を救うために必要なことはそんな冒険ではなかった。
異世界に行ってくれればそれでいい。
戦うこともなければそれどころか何もしなくてもいい。
異世界に行ってくれさえすれば異世界を救ったことになる。
神様にはそう言われた。
えっ!と思ったけど異世界に行くだけで世界を救えると言われてしまった。
これから始まる物語は世界を救った後の物語。
でもただのんびりとするだけじゃない。
こちらの神様にもより世界を救ってくれないかと言われた。
しかしながらそれも魔王を倒してくれとかそんなことを言われたのではない。
のんびりと世界を旅してほしい。
それが神様からのお願いだった。
だからこの物語は魔王を倒す勇者とかそんなものの話ではない。
世界を救った見返りに転生させてもらえることになった男がのんびりと生きていくのにのんびりとさせてもらえない物語である。
この世界に生まれ落ちて、シューナリュードというのが新しく名付けられた名前だった。
勉強家で本をよく読む父親が名付けてくれたものでかつて存在していた竜神の始祖の名前からいただいた名前である。
黒い髪に黒い瞳と端的に身体的な特徴を抜き出せば転生する前の容姿と大きくは変わらないようにも思える。
けれども前の体とは大きな違いもあった。
それは頭にツノが生えているのである。
人に生まれ変わりたい。
そんな希望を神様に出したのだけど人は人でもただの人ではなかったのである。
「ったく、神様も雑だよな……いやまあほとんど叶えてもらってはいるんだけどさ」
ふと神様との会話を思い出した。
あの時の記憶は神様のせいで正直少しばかりぼんやりとしているが人に転生したいと希望を出したことは覚えている。
なのにどうしてこんなことになったのだろうかと考える。
今は朝の日課になっているランニングをしていた。
考え事をしているうちにいつもの回数村をグルリと走って自分の家、ではなくお隣さんの家に向かう。
お隣さんの家の玄関横の壁に寄りかかって目をつぶっている男性が見えてきた。
その男性は服の上からでも分かるほど体を鍛え上げている。
目をつぶっているはずなのにその立ち振る舞いに隙が見えない。
とりあえず答えの出ない考えは忘れることにする。
「師匠!」
「きたか、リュード」
リュードとはシューナリュードの愛称である。
友達などのある程度親しい間柄の人はみなシューナリュードのことをリュードと呼んでくれる。
リュードが師匠と呼んだ男性はウォーケック・ディガン。
リュードが生まれた時からの付き合いがあり、以前は冒険者として活躍していた熟練者である。
毎朝家の前で素振りをするのがウォーケックの習慣であってそんなウォーケックにリュードは声をかけた。
今ではウォーケックの弟子として武器の扱いを日々学んでいる。
最初こそウォーケックは疎ましそうな顔をしていたがリュードの母親とウォーケックの奥さんが仲が良いこともあっていつしか教えてもらう内に弟子として認めてくれた。
これも武芸を身近で学びたいという転生の時に出した希望を反映してのことかもしれないとリュードは思う。
ランニングで多少乱れた息を整える暇もなくウォーケックがリュードに剣を投げ渡す。
剣というか柄のある金属の太い棒のようなもの。
これは木剣が振り回すのに軽すぎるために使う素振り用の剣で重たくするために金属で作られている。
リュードが構えると隣にウォーケックが並び、同じく構える。
一回一回体や剣のブレがないように気を付けながら真剣に素振りを繰り返す。
余計な考えを追いやり無心で剣を振る。
隣に立つウォーケックの方が剣の振り下ろしが早いのに寸分違わず機械のようにピタリと腕を止めて全く同じく動いている。
再びじんわりと汗をかいてきた頃ウォーケックから終了の声がかかる。
軽く汗を手の甲で拭いながら素振り用の剣を置いて今度は木剣を持つ。
リュードとウォーケックが向かい合って剣を構える。
「来い!」
「はい!」
前に出ながら数回決められた打ち込みをしてウォーケックがそれを受けて、今度はウォーケックが同じように打ち込んでくるのでそれをしっかりと受ける。
さらに次はリュードがまた同じ打ち込みをするが今度は受け流すように受け、再びウォーケックが打ち込みそれを受け流す。
「踏み込みが甘いぞ!」
「くっ!」
強めに押し返されてリュードは体を大きくふらつかせる。
少しでも油断して体の動きが悪くなるとあっという間に見抜かれてしまう。
リュードは一度大きく息を吐き出して気合いを入れ直す。
たとえ練習の打ち込みであってもウォーケックを倒すつもりでやらなきゃいけない。
切り方や動きを変えながらそうした鍛錬をこなした後最後にウォーケックと本気で打ち合う。
と言っても本気なのはリュードだけで師匠であるウォーケックはまだ余力をだいぶ残して対応している。
剣で2回、槍で1回の計3回挑み、3回ともあえなく降参させられて本日の鍛錬は終わりとなった。
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これでもまだ10歳、まだまだ発展途上の子供なのである。
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