人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

文字の大きさ
上 下
1 / 377
第一章

もうすでに世界は救っています1

しおりを挟む
 時折聞いた言葉『地球は青かった。』
 膨大な魔力をまとって、膨大な魔力に押されて世界から世界へと渡る短い時間の中で、ふと振り返って見えた地球は青かった。

 世界を救ってほしい。
 神様にそう言われてなにを想像するだろうか。

 仲間との出会い、壮大な旅路、魔王との戦い……
 小説やアニメ、マンガのような心躍り、手に汗握る展開をイメージする。

 成長を遂げ、強敵との戦いを乗り越えて最後には悪を打ち果たして世界を救う。
 こうした冒険が通常なら想像されるだろう。

 けれど異世界を救うために必要なことはそんな冒険ではなかった。
 異世界に行ってくれればそれでいい。
 
 戦うこともなければそれどころか何もしなくてもいい。
 異世界に行ってくれさえすれば異世界を救ったことになる。

 神様にはそう言われた。
 えっ!と思ったけど異世界に行くだけで世界を救えると言われてしまった。
 
 これから始まる物語は世界を救った後の物語。
 でもただのんびりとするだけじゃない。

 こちらの神様にもより世界を救ってくれないかと言われた。
 しかしながらそれも魔王を倒してくれとかそんなことを言われたのではない。

 のんびりと世界を旅してほしい。
 それが神様からのお願いだった。
 
 だからこの物語は魔王を倒す勇者とかそんなものの話ではない。
 世界を救った見返りに転生させてもらえることになった男がのんびりと生きていくのにのんびりとさせてもらえない物語である。
 
 この世界に生まれ落ちて、シューナリュードというのが新しく名付けられた名前だった。

 勉強家で本をよく読む父親が名付けてくれたものでかつて存在していた竜神の始祖の名前からいただいた名前である。
 黒い髪に黒い瞳と端的に身体的な特徴を抜き出せば転生する前の容姿と大きくは変わらないようにも思える。

 けれども前の体とは大きな違いもあった。
 それは頭にツノが生えているのである。

 人に生まれ変わりたい。
 そんな希望を神様に出したのだけど人は人でもただの人ではなかったのである。

「ったく、神様も雑だよな……いやまあほとんど叶えてもらってはいるんだけどさ」

 ふと神様との会話を思い出した。
 あの時の記憶は神様のせいで正直少しばかりぼんやりとしているが人に転生したいと希望を出したことは覚えている。

 なのにどうしてこんなことになったのだろうかと考える。
 今は朝の日課になっているランニングをしていた。
 
 考え事をしているうちにいつもの回数村をグルリと走って自分の家、ではなくお隣さんの家に向かう。
 お隣さんの家の玄関横の壁に寄りかかって目をつぶっている男性が見えてきた。

 その男性は服の上からでも分かるほど体を鍛え上げている。
 目をつぶっているはずなのにその立ち振る舞いに隙が見えない。

 とりあえず答えの出ない考えは忘れることにする。

「師匠!」

「きたか、リュード」

 リュードとはシューナリュードの愛称である。
 友達などのある程度親しい間柄の人はみなシューナリュードのことをリュードと呼んでくれる。

 リュードが師匠と呼んだ男性はウォーケック・ディガン。
 リュードが生まれた時からの付き合いがあり、以前は冒険者として活躍していた熟練者である。

 毎朝家の前で素振りをするのがウォーケックの習慣であってそんなウォーケックにリュードは声をかけた。
 今ではウォーケックの弟子として武器の扱いを日々学んでいる。

 最初こそウォーケックは疎ましそうな顔をしていたがリュードの母親とウォーケックの奥さんが仲が良いこともあっていつしか教えてもらう内に弟子として認めてくれた。
 これも武芸を身近で学びたいという転生の時に出した希望を反映してのことかもしれないとリュードは思う。

 ランニングで多少乱れた息を整える暇もなくウォーケックがリュードに剣を投げ渡す。
 剣というか柄のある金属の太い棒のようなもの。
 
 これは木剣が振り回すのに軽すぎるために使う素振り用の剣で重たくするために金属で作られている。
 リュードが構えると隣にウォーケックが並び、同じく構える。

 一回一回体や剣のブレがないように気を付けながら真剣に素振りを繰り返す。
 余計な考えを追いやり無心で剣を振る。

 隣に立つウォーケックの方が剣の振り下ろしが早いのに寸分違わず機械のようにピタリと腕を止めて全く同じく動いている。
 再びじんわりと汗をかいてきた頃ウォーケックから終了の声がかかる。

 軽く汗を手の甲で拭いながら素振り用の剣を置いて今度は木剣を持つ。
 リュードとウォーケックが向かい合って剣を構える。

「来い!」

「はい!」
 
 前に出ながら数回決められた打ち込みをしてウォーケックがそれを受けて、今度はウォーケックが同じように打ち込んでくるのでそれをしっかりと受ける。
 さらに次はリュードがまた同じ打ち込みをするが今度は受け流すように受け、再びウォーケックが打ち込みそれを受け流す。

「踏み込みが甘いぞ!」

「くっ!」

 強めに押し返されてリュードは体を大きくふらつかせる。
 少しでも油断して体の動きが悪くなるとあっという間に見抜かれてしまう。

 リュードは一度大きく息を吐き出して気合いを入れ直す。
 たとえ練習の打ち込みであってもウォーケックを倒すつもりでやらなきゃいけない。

 切り方や動きを変えながらそうした鍛錬をこなした後最後にウォーケックと本気で打ち合う。
 と言っても本気なのはリュードだけで師匠であるウォーケックはまだ余力をだいぶ残して対応している。

 剣で2回、槍で1回の計3回挑み、3回ともあえなく降参させられて本日の鍛錬は終わりとなった。
 全身汗びっしょりでリュードは地面にへたり込む。

 これでもまだ10歳、まだまだ発展途上の子供なのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!

果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。 次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった! しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……? 「ちくしょう! 死んでたまるか!」 カイムは、殺されないために努力することを決める。 そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る! これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。    本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています 他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

処理中です...