上 下
37 / 57
第一章

幻想と戦って1

しおりを挟む
「以降世界中にゲートが出現して……」

 覚醒者として戦えることも必要である。
 一方でしっかりとした知識というのも必要になってくる。

 覚醒者、あるいはゲートなどの知識を学ぶ座学も受けねばならない。
 ゲートが始まったきっかけ、99個の試練ゲート、試練ゲートと通常のゲートがあることなど先生がつらつらと黒板に書いて説明していく。

 正直暇な授業である。
 ヒカリはリュックの中に戻って寝ている。

 トモナリも一度経験して知っている知識なので真面目に聞くつもりはない。
 ただ一応テストにも出るので軽く聞いて軽くノートには残しておく。

「ふぅ……先生の授業も悪いよな」

 面白みがないというと少し悪く聞こえるかもしれないが淡々と読み上げて淡々と教えられると眠気を誘発される。
 面白おかしく授業しろとまで言わないけれどもう少し授業にも濃淡のようなものが欲しい。

「次は体育か。ヒカリ、いくぞ」

「うにゅー……抱っこ」

「分かったから早く」

 寝ぼけまなこのヒカリを抱えてトモナリは次の授業の場所に向かう。
 次は体育なので体育館である。

 学校の中でヒカリを出していても堂々としていれば特に何も言われない。
 初見の人は驚いた顔を見せるのだけど噂になっているのか驚くような人も少しずつ減ってきている。

 体育館横にある更衣室でジャージに着替えて生徒たちがザワザワと待っていると先生がやってきた。
 こういう感じは普通の学校と変わりがない。

「いいか、たかが体育だと思うな。君たちにとっては非常に重要な科目である」

 初日は体力テストを行う。
 普通の学校でも体育は一般的な科目であるがアカデミーの一年生にとっては多少意味を持ってくるのだ。

「君たちは覚醒した。そのことの意味を考えたことはあるか?」

 先生の問いかけに生徒たちは肩をすくめる。
 覚醒したことの意味とはなんなのか質問が大きくて答えが分からない。

「つまり君たちは力を得たということだ。普段は力を使わないので感じないかもしれないがこれまでと君たちは確実に変わったのだ。体育では体を動かしていく。その中で自分の体に起きた変化を理解して、変化に慣れていってもらいたい」

 例えば覚醒した分力が強くなる。
 普段は特に何もないかもしれないが、いざという時に力加減を間違えて何かを壊したり誰かを傷つけてしまう可能性がある。

 体育という科目を通して体に起きている変化を理解して、それをコントロールする術を身につける。
 ただの体育ではなく、目的を持って体を動かす必要があると先生は言うのだ。

「まずは走ってもらう。俺の言っていたことが分かるだろう」

 先生に言われて体育館の中をみんなでグルグルと走り始める。
 それだけでも驚く生徒は多かった。

 実際走ってみると体が軽い。
 覚醒する前と比べて明らかに楽々走れるのだ。

 さらに走っていくとさらに驚く。
 体が軽いので覚醒前よりも速いペースで走っているのにそれでも長く体力が持っている。

 速く長く走れるようになった。
 これが先生の言う体の変化なのかとようやく納得した人も多かった。

 魔法使い系統の覚醒者だと変化は小さいけれどそれでも全体的な体力の向上は感じられるぐらいである。

「特進クラスということで今回は最新の技術を使った戦闘訓練のお試しをしてもらう」

 一通り体力テストを受けた後次の授業は特進クラスの特別プログラムだった。
 戦闘訓練授業と銘打たれていて、より実戦的な戦いについて学んでいく授業となっている。

 ただまだ戦い方も学んでいない生徒たちをモンスターと戦わせるのは危険である。
 そのために今回はモンスターという存在に慣れさせながらも実際どのように戦っていくのかを学ぶ入り口を学ぶこととなった。

「覚醒者の中には魔力を使ってリアルな幻影、いわゆるホログラムのようなものを発生させる力を持った人がいる。そんな人の能力を人工的に再現した機械がこのホログラム戦闘部屋だ」

 副担任のイリヤマが授業の説明をしてくれているけれどいまいち分かりにくいなとトモナリは思った。

「実際に体験してもらった方が簡単だろう。誰かやってみたいものはいるか?」

「ん!」

「おっ、アイゼンか」

「えっ?」

「やるぞ、トモナリ!」

 誰も手を上げない中、一人だけ手を上げている存在がいた。
 正確にいえば一人ではなく一体というべきか。

 手を上げていたのはヒカリだった。
 ヒカリとトモナリは一体として見られている。

 ヒカリが手を上げたのならそれはトモナリが手を上げたことになる。

「みんなは隣の見物室に。アイゼンはこの部屋の中に」

「……しょうがないか」

 どうせみんな経験することになる早めにやってもいいだろうとトモナリはホログラム戦闘部屋に入る。
 真っ白な壁に囲まれた部屋で一面がガラス張りになっていて他のみんながそこからトモナリのことを見ている。

 そして入口がある側に操作盤のようなものといくつかの武器が置いてあった。

「好きな武器を取れ」

「じゃあこれを」

 トモナリは壁にかけられていた木刀を手に取った。
 道場で使っていたものよりもやや軽いけれど他の武器よりは手に馴染む。

「それではいくぞ」

 イリヤマが操作盤をいじると耳鳴りにも似た甲高い音がしてトモナリの目の前にモンスターが急に現れた。
 ガラスの向こうで他のみんなも驚いている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 よろしくお願いいたします。 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

手乗りドラゴンと行く異世界ゆるり旅  落ちこぼれ公爵令息ともふもふ竜の絆の物語

さとう
ファンタジー
旧題:手乗りドラゴンと行く追放公爵令息の冒険譚 〇書籍化決定しました!! 竜使い一族であるドラグネイズ公爵家に生まれたレクス。彼は生まれながらにして前世の記憶を持ち、両親や兄、妹にも隠して生きてきた。 十六歳になったある日、妹と共に『竜誕の儀』という一族の秘伝儀式を受け、天から『ドラゴン』を授かるのだが……レクスが授かったドラゴンは、真っ白でフワフワした手乗りサイズの小さなドラゴン。 特に何かできるわけでもない。ただ小さくて可愛いだけのドラゴン。一族の恥と言われ、レクスはついに実家から追放されてしまう。 レクスは少しだけ悲しんだが……偶然出会った『婚約破棄され実家を追放された少女』と気が合い、共に世界を旅することに。 手乗りドラゴンに前世で飼っていた犬と同じ『ムサシ』と名付け、二人と一匹で広い世界を冒険する!

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星
ファンタジー
世界を救った勇者、彼はその力を危険視され、仲間に殺されてしまう。無念のうちに命を散らした男ロア、彼が目を覚ますと、なんと過去に戻っていた! もうあんなヘマはしない、そう誓ったロアは、二度目の人生を穏やかに過ごすことを決意する! とはいえ世界を救う使命からは逃れられないので、世界を救った後にひっそりと暮らすことにします。勇者としてとんでもない力を手に入れた男が、死の原因を回避するために苦心する! ロアが死に戻りしたのは、いったいなぜなのか……一度目の人生との分岐点、その先でロアは果たして、穏やかに過ごすことが出来るのだろうか? 過去へ戻った勇者の、ひっそり冒険談 小説家になろうでも連載しています!

処理中です...