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第一章
協力関係2
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「お願い、そして注意喚起のためだ」
「お願いと注意喚起……」
「まずは注意からしようか」
何を注意されるのかとトモナリは身構える。
「先ほども言ったけれどアカデミーの中には終末教の関係者がいる。本来ならば一掃するのが理想だが証拠もなく疑わしいというだけで人を排斥することはできない」
トモナリの何かについて注意するわけじゃなさそうだった。
「奴らは将来有望な若者をスカウトすることがある。君のような特殊な職業、高い能力を持つ生徒ならどうしても周りから目をつけられるだろう」
「つまり注意というのは終末教に注意しろということですね?」
「その通りだ」
察しがいいなと感心しながらマサヨシは頷いた。
終末教は自分たちの勢力を広めるために有力な覚醒者に接触することもある。
どうしてそんなものに乗ってしまうのかトモナリには理解できないが、スカウトされて終末教に寝返ったりした覚醒者がいたことは確かだった。
現段階でトモナリの能力は優れている。
アカデミーに終末教がいるならトモナリをスカウトに来る可能性も大いにあり得る話なのだ。
「アカデミーで手を出してくるとは考えにくいが終末教の誘いを断れば強硬な手段に出てくることもある」
「殺されるということですか?」
「…………そうした可能性も否めない。他にも君にはその子……」
「ヒカリといいます」
「ヒカリ君もいる。その子も特殊な存在だ。君が誘いに応じないのならヒカリ君を狙ってくることもあり得るだろう」
「……どうしたらいいですか?」
能力が高いといっても所詮はレベル1にしてはということである。
多少上のレベルの人と戦っても負けることはない自信はあるけれど、スキルも戦闘系ではないしヒカリを守りながら戦うとなるとどこまで戦えるのか分からない。
ヒカリを狙われたら守りきれないかもしれない。
「そこでお願いがある……こうした順番で話すと脅しているようになってしまうが」
「構いません」
「ありがとう。俺はアカデミーでより実戦的な覚醒者教育をしようと思っている」
「……どういうことですか?」
「アカデミーではレベル20の第一スキルスロット解放を目標に覚醒者としての教育を受けてもらうことになっている。だが俺はもっと戦闘経験を積み、アカデミー卒業時点でレベル40の第二スキルスロット解放まで目指したいと考えている」
鬼頭アカデミーに入ったからといって覚醒者として活躍しなければならないということではない。
中には能力があまり伸びない、スキルが良くないなどの理由から覚醒者として戦うのに向いていない人もいる。
他にも戦闘系スキルではなく、補助系スキルで戦う以外の道を選ぶなど人の数だけ選択がある。
全てを覚醒者としての教育に捧げるのではなく初期スキル以外の最初のスキルを解放してみて今後の道を決めるというのが鬼頭アカデミーの方針なのだ。
鬼頭アカデミーは高校なので大学に進むという選択をする人も意外と多い。
そうした中でマサヨシは才能がありそうな覚醒者を集めてアカデミーの段階から覚醒者としての英才教育を施そうとしていた。
卒業後も覚醒者として活動することを前提としていて、当然危険も伴う。
「試練ゲートをクリアし、終末教にも対抗できる覚醒者を育てる。俺はそのためにアカデミーを創ったのだ」
だからアカデミー出身者で活躍する人も多かったのかとトモナリは心の中で思っていた。
「特進クラスというものがアカデミーにはある。そこでの授業プログラムはより実戦的なものとなっていて、責任者は俺だ」
きた。
そう思った。
「ヒカリ君のことも特進クラスならば私が管轄として守ろう。教師も信頼できる人を集めてある。特進クラスに入らないか?」
「入らせてください」
「……答えが早いな」
トモナリはほとんど考えることもなく特進クラス入りを決めた。
なぜなら最初から特進クラスに入ることがトモナリの目的であったからだ。
全部計画通りだった。
早期に覚醒を急いだことも覚醒者だと言ってテストを受けたことも全て。
強くなるためにはアカデミーの特進クラスに入ることがトモナリが知る中でも良いルートであることを分かっていたのでそのために頑張ってきた。
ヒカリのこともあった。
トモナリの力ではヒカリを守れない。
だからしっかりとトモナリとヒカリを保護してくれるところに行きたかった。
そのためにも特進クラスはそれしかないぐらいの選択肢だった。
仮に特進クラス入りできなかったら保護を求めて大型の覚醒者ギルドに連絡することも考えていた。
「その代わり終末教とも戦ってもらうことになるかもしれない」
「守ってもらうばかりじゃいけませんもんね」
アカデミーの中に終末教がいる。
相手が何かのアクションを起こしてくるのなら対抗して動くことも必要になってくる。
もしかしたら生徒の中にいる終末教と戦う必要もあるかもしれない。
もちろんトモナリはそのことも覚悟の上である。
「ただ守られるだけじゃありません。強くなります。終末教にもゲートにも負けないぐらい」
「期待している」
「僕もやるよ! トモナリと一緒にいる。トモナリと強くなる」
「……頼もしいペアだな」
全ての話を聞いていたヒカリもやる気を見せている。
話を理解しているかどうかは少し怪しいけれどヒカリも守られているだけの存在ではない。
「いわばこの関係は協力関係です。学長は今を保証してください。俺は未来を保証します」
「……はっはっはっ、いい大口だ! 未来を保証するか……愛染寅成……今の君は俺が全力で守ろう」
「お願いと注意喚起……」
「まずは注意からしようか」
何を注意されるのかとトモナリは身構える。
「先ほども言ったけれどアカデミーの中には終末教の関係者がいる。本来ならば一掃するのが理想だが証拠もなく疑わしいというだけで人を排斥することはできない」
トモナリの何かについて注意するわけじゃなさそうだった。
「奴らは将来有望な若者をスカウトすることがある。君のような特殊な職業、高い能力を持つ生徒ならどうしても周りから目をつけられるだろう」
「つまり注意というのは終末教に注意しろということですね?」
「その通りだ」
察しがいいなと感心しながらマサヨシは頷いた。
終末教は自分たちの勢力を広めるために有力な覚醒者に接触することもある。
どうしてそんなものに乗ってしまうのかトモナリには理解できないが、スカウトされて終末教に寝返ったりした覚醒者がいたことは確かだった。
現段階でトモナリの能力は優れている。
アカデミーに終末教がいるならトモナリをスカウトに来る可能性も大いにあり得る話なのだ。
「アカデミーで手を出してくるとは考えにくいが終末教の誘いを断れば強硬な手段に出てくることもある」
「殺されるということですか?」
「…………そうした可能性も否めない。他にも君にはその子……」
「ヒカリといいます」
「ヒカリ君もいる。その子も特殊な存在だ。君が誘いに応じないのならヒカリ君を狙ってくることもあり得るだろう」
「……どうしたらいいですか?」
能力が高いといっても所詮はレベル1にしてはということである。
多少上のレベルの人と戦っても負けることはない自信はあるけれど、スキルも戦闘系ではないしヒカリを守りながら戦うとなるとどこまで戦えるのか分からない。
ヒカリを狙われたら守りきれないかもしれない。
「そこでお願いがある……こうした順番で話すと脅しているようになってしまうが」
「構いません」
「ありがとう。俺はアカデミーでより実戦的な覚醒者教育をしようと思っている」
「……どういうことですか?」
「アカデミーではレベル20の第一スキルスロット解放を目標に覚醒者としての教育を受けてもらうことになっている。だが俺はもっと戦闘経験を積み、アカデミー卒業時点でレベル40の第二スキルスロット解放まで目指したいと考えている」
鬼頭アカデミーに入ったからといって覚醒者として活躍しなければならないということではない。
中には能力があまり伸びない、スキルが良くないなどの理由から覚醒者として戦うのに向いていない人もいる。
他にも戦闘系スキルではなく、補助系スキルで戦う以外の道を選ぶなど人の数だけ選択がある。
全てを覚醒者としての教育に捧げるのではなく初期スキル以外の最初のスキルを解放してみて今後の道を決めるというのが鬼頭アカデミーの方針なのだ。
鬼頭アカデミーは高校なので大学に進むという選択をする人も意外と多い。
そうした中でマサヨシは才能がありそうな覚醒者を集めてアカデミーの段階から覚醒者としての英才教育を施そうとしていた。
卒業後も覚醒者として活動することを前提としていて、当然危険も伴う。
「試練ゲートをクリアし、終末教にも対抗できる覚醒者を育てる。俺はそのためにアカデミーを創ったのだ」
だからアカデミー出身者で活躍する人も多かったのかとトモナリは心の中で思っていた。
「特進クラスというものがアカデミーにはある。そこでの授業プログラムはより実戦的なものとなっていて、責任者は俺だ」
きた。
そう思った。
「ヒカリ君のことも特進クラスならば私が管轄として守ろう。教師も信頼できる人を集めてある。特進クラスに入らないか?」
「入らせてください」
「……答えが早いな」
トモナリはほとんど考えることもなく特進クラス入りを決めた。
なぜなら最初から特進クラスに入ることがトモナリの目的であったからだ。
全部計画通りだった。
早期に覚醒を急いだことも覚醒者だと言ってテストを受けたことも全て。
強くなるためにはアカデミーの特進クラスに入ることがトモナリが知る中でも良いルートであることを分かっていたのでそのために頑張ってきた。
ヒカリのこともあった。
トモナリの力ではヒカリを守れない。
だからしっかりとトモナリとヒカリを保護してくれるところに行きたかった。
そのためにも特進クラスはそれしかないぐらいの選択肢だった。
仮に特進クラス入りできなかったら保護を求めて大型の覚醒者ギルドに連絡することも考えていた。
「その代わり終末教とも戦ってもらうことになるかもしれない」
「守ってもらうばかりじゃいけませんもんね」
アカデミーの中に終末教がいる。
相手が何かのアクションを起こしてくるのなら対抗して動くことも必要になってくる。
もしかしたら生徒の中にいる終末教と戦う必要もあるかもしれない。
もちろんトモナリはそのことも覚悟の上である。
「ただ守られるだけじゃありません。強くなります。終末教にもゲートにも負けないぐらい」
「期待している」
「僕もやるよ! トモナリと一緒にいる。トモナリと強くなる」
「……頼もしいペアだな」
全ての話を聞いていたヒカリもやる気を見せている。
話を理解しているかどうかは少し怪しいけれどヒカリも守られているだけの存在ではない。
「いわばこの関係は協力関係です。学長は今を保証してください。俺は未来を保証します」
「……はっはっはっ、いい大口だ! 未来を保証するか……愛染寅成……今の君は俺が全力で守ろう」
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