上 下
20 / 57
第一章

ドラゴンナイト1

しおりを挟む
 ゲートが発生しました。
 不要不急の外出は控えましょう。

 そんな町内放送がかかる中でトモナリはいつも通りに鍛錬していた。

「うむ、だいぶ良くなってきたではないか」

 考えてみれば回帰前のトモナリは人に習った時期が短くてほとんど我流のような戦い方だった。
 改めて人にちゃんとした動きを習ってみるといかに自分の動きに無駄が多いものだったのかということがわかる。

「外が騒がしいな。何が起きたのか聞いてくるから休憩していなさい」

「分かりました」

 強くなっているかは分からないけれど体の使い方はまともになっているという感じはある。

「よし、ステータスオープン」

 ようやく時間ができた。
 道場の端で汗を拭きながらトモナリは自分のステータス画面を呼び出した。

 覚醒という力が与えられたのだがその能力はステータスという形で見られるようになっている。
 どうしてなのかとか理由は不明だが最初の頃はできなくてゲートが現れてある程度時間が経ってから急にステータスが見られるようになったらしい。

 ステータス画面は目の前に半透明の青い板のように表示されていて他人には見えなくなっている。
 画面に表示されているのはレベル、職業、能力値、スキルスロットとスキルである。

 レベルは言うまでもなくレベルでモンスターを倒すと上がっていく。
 能力値とは力、素早さ、体力、魔力、器用さ、運の六つの能力のことを指し示している。

 スキルとはそのままスキルであり、特殊な能力を発動させたり行動にプラスの効果をもたらしたりマイナスの効果を防いだりと色々なものがある。
 スキルスロットとはスキルを所持しておける枠のようなもので、基本的には一人五枠で最初に一つと以降レベル20毎に一つずつ解放される。

 そして職業とは戦士やタンクといったその人の戦い方や成長性を決めるベースになるものである。
 戦士なら力が伸びやすかったりタンクなら体力が伸びやすかったり、スキルも職業に関わって得られることも少なくない。

 後の要因で変わることや同じ職業でもステータス伸びやスキルによって強さが変わってくるので一概にこの職業はダメと言いにくい。
 けれどレアな職業に関しては特殊スキルがあったりステータスの伸びが良かったりするのでレアな職業は良い職業だと断言しても言い過ぎではない。

「…………ドラゴンナイト?」

 回帰前のトモナリの職業は戦士だった。
 可もなく不可もなしな職業であり、力が良く伸びてスキルも戦士にふさわしい接近戦闘に特化したものを得られる可能性が高い。

 ただ職業としてはベーシックなものであり決して強いと呼べるものではなかった。
 その上トモナリのスキルは良くなかった。

 最初に得られたものはストライクという一撃の攻撃力を上げてくれるものだったけれど、効果はイマイチで能力値が低いと恩恵も得られにくいスキルだったのだ。
 そうした職業やスキルを得た過去を知っているので期待はしていなかった。

 けれどステータス画面を開いてトモナリの目に飛び込んできた職業は戦士ではなかった。
 ドラゴンナイトという見慣れない職業だった。

「初めて見るな……」

 経験のあるトモナリですら見たことも聞いたこともない職業である。

「ドラゴン……ドラゴンねぇ」

 トモナリはヒカリのことを見た。
 知ってるドラゴンといえばいったら横でおやつをパクついているヒカリしかいない。

 どうしてトモナリの職業が変わったのかは分からないけれどおそらくヒカリが原因であることは間違いない。

「能力値も高いな」

『力:18
 素早さ:15
 体力:13
 魔力:15
 器用さ:15
 運:11』

 回帰前のトモナリの能力値はやや低い方だった。
 戦士として力は一般的だがそれ以外の能力は初期値にしては低めな方だったのだ。

 それが今は全体的に高めである。
 特に魔力の値が回帰前の初期値は3だったのに今は15もある。

 聞いたこともないレア職業であるために能力値が高いのかもしれない。
 能力値の最大値はそれぞれ300で運のみ100であり、レベルが一つ上がる毎にランダムで能力値が上がる。

 中でも魔力は魔法系職業でなければ上げにくいので高いということは結構ありがたい。
 他の能力値も10あれば高い方なのに軒並み10を超えている。

「魔法が高いということは魔法系? いや、でも他の値も高いしな……」

 魔法の能力値が高いということは魔法系職業の可能性がある。
 ただ他の能力値も高くて接近戦闘系職業の可能性も十分にあった。

「それにやっぱりスキル……だよな」

 職業が違う、能力値が高いということにも驚いたのだが、スキルのところを見てまた驚いた。
 本来ならば解放されるスキルスロットは一つで、持っているはずのスキルは一つのはずだった。

 しかも得られるスキルはストライクのはずなのに解放されたスキルは二つあったのだ。
 解放されていないスキルスロットは四つある。

 つまり本来開いていないはずのスキルスロットが開いたのではなく、一つ多くスキルがあるということなのである。

「EXスキル交感力……」

 スキルの一つ目は交感力であった。
 うっすらと記憶に残っている。

 死ぬ前に解放されたスキルスロットで当たった見たこともないランクの見たこともないスキルである。
 スキルを得た直後にヒカリの声が聞こえてきて説明すら見ることもなかった。

 トモナリはステータス表示の交感力スキルを指でタップした。
 こうするとスキルの説明が見られるのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 よろしくお願いいたします。 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

クズな少年は新しい世界で元魔獣の美少女たちを従えて、聖者と呼ばれるようになる。

くろねこ教授
ファンタジー
翔馬に言わせるとこうなる。 「ぼくは引きこもりじゃないよ  だって週に一回コンビニに出かけてる  自分で決めたんだ。火曜の深夜コンビニに行くって。  スケジュールを決めて、実行するってスゴイ事だと思わない?  まさに偉業だよね」 さて彼の物語はどんな物語になるのか。 男の願望 多めでお送りします。 イラスト:イラスト:illustACより沢音千尋様の画を利用させて戴きました 『なろう』様で12万PV、『カクヨム』様で4万PV獲得した作品です。 『アルファポリス』様に向けて、多少アレンジして転載しています。 

わたくし悪役令嬢になりますわ! ですので、お兄様は皇帝になってくださいませ!

ふみきり
ファンタジー
 アリツェは、まんまと逃げおおせたと思った――。  しかし、目の前には黒いローブを着た少女が、アリツェたちを邪教徒と罵りつつ、行く手を阻むように立ち塞がっている。  少女の背後には、父配下の多数の領兵が控えていた。  ――作戦が、漏れていた!?  まさか、内通者が出るとは思わなかった。逃亡作戦は失敗だ。  アリツェは考える。この場をどう切り抜けるべきかと。  背後には泣き震える孤児院の子供たち。眼前には下卑た笑いを浮かべる少女と、剣を構えてにじり寄るあまたの領兵。  アリツェは覚悟を決めた。今、精霊術でこの場を切り抜けなければ、子供たちの命はない。  苦楽を共にしてきた家族同然の子供たちを、見捨てるなんてできやしない!  アリツェはナイフを握り締め、自らの霊素を練り始めた――。  ★ ☆ ★ ☆ ★  これは、ひょんなことから異世界の少年悠太の人格をその身に宿した、貴族の少女アリツェの一代記……。  アリツェは飄々とした悠太の態度に手を焼くも、時には協力し合い、時には喧嘩をしつつ、二重人格を受け入れていく。  悠太の記憶とともに覚醒した世界最強の精霊術は、幼く無力だったアリツェに父と戦う術を与えた。  はたしてアリツェは、命をつけ狙う父の魔の手を振り払い、無事に街から逃げのびられるのだろうか。  そして、自らの出生の秘密を、解き明かすことができるのだろうか――。    ◇★◇★◇ ●完結済みです ●表紙イラストはアメユジ様に描いていただきました。 【アメユジ様 @ameyuji22 (twitterアカウント) https://ameyuji22.tumblr.com/ (ポートフォリオサイト)】 ●スピンオフ『精練を失敗しすぎてギルドを追放になったけれど、私だけの精霊武器を作って見返してやるんだからっ!』も公開中です。 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/598460848/814210883】 【小説家になろう、カクヨム、ノベルアッププラスにも掲載中です】

最強英雄の異世界復活譚 ~寿命で一度死にましたが不死鳥の力で若い姿で蘇り、異世界で無双する~

季未
ファンタジー
魔王を討伐し、世界を救った英雄は寿命でその生涯を終えた。 しかし彼は再び目を覚ました。それも若い身体で、全盛期よりも更に強くなって。 「まぁいっか!変なしがらみもないし、この身体でやりたいようにやろう!」 並行世界の自分はただの凡人である。だが、中身は英雄として名を馳せた老勇者。 そんなちぐはぐな英雄は、旅をする内にこの世界の歪みを目の当たりにする。 かつて前の世界を侵略した魔族。彼らはこの世界では虐げられる存在であった。 迫害され、奴隷のように扱われるかつての敵……。 それを見て英雄は決意した。 ──魔族でも、虐げられる存在は守らなければならない、と。 「いいさ、俺がみんなを笑顔にしてみせるから」 傍らに魔族の少女を引き連れ、英雄は世界を巡る。 かつて魔王を討った英雄は、今度は魔族を、そして世界を救うために再び剣を取った。 これはそんな英雄が……再び異世界で織り成す物語である。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...