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第五章
リザードマンは仲間になります
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「調子はどうだ?」
ひとまずオルケからヴァンベーゲンの影響は見られない。
オルケの体に魔力や知識を移す実験の最中だったので精神的にも肉体的にも大丈夫かどうか気になった。
「……すごく調子がいいです」
オルケは自分の手を見つめた。
悪いどころの話じゃない。
オルケはこれまでにないほど体が好調であると感じていた。
命のないスケルトンから命あるリザードマンの体になった時も変化に驚いた。
生きている温もりのようなものがあって、生身の重さやリザードマンという肉体の能力の高さはとても新鮮だった。
今は今でまた違った感じがある。
体が軽くて抑えていないと溢れてしまいそうな魔力が体の中にある。
今ならどんな魔法でも使えるぐらいの魔力がみなぎっている。
「ただ頭の中が……」
体の調子はいいのだけど頭の中がどうにも正常じゃなかった。
ヴァンベーゲンの影響やフォダエに会ったからではなく、頭の中で魔法の知識が溢れてコントロールできないのだ。
魔力はどうにか抑えることができても移された魔法の知識がごちゃごちゃと浮かんできて整理しきれず気持ち悪くなっていた。
「少し時間が必要だな」
魔力は本能である程度コントロールできても知識は難しい。
オルケ自身が頭の中に溢れる知識をどうにか吸収して自分のものとして整理していくしかない。
フォダエがオルケの中にいるという事を伝えようと思っていたけれど今オルケの頭はいっぱいになってしまっている。
ここで余計なことを伝えるとより頭を圧迫してしまう。
時間を置いてから伝えることにしようとドゥゼアは思った。
「少し休め。頭も体もゆっくりと慣らしていくといい」
ここで無理をする必要はない。
ヴァンベーゲンという脅威は無くなったし今いる研究所は安全である。
オルケの状態が落ち着いてから動き出しても時間はある。
「その前に少し飯でも……」
「ドゥゼア!」
「どうした?」
敵には厳しい態度を取るドゥゼアだが仲間に対しては思いの外優しい目を向けてくれる。
「私を……ドゥゼアの仲間にしてくれる?」
興奮でほんのりとオルケの頬が赤くなっている。
「仲間……?」
ドゥゼアはオルケが何を言いたいのか分からなくて眉を上げる。
「お前はもう仲間だろ」
「違うの……仲間だったけど……それは必要だったから仲間になっただけだったの」
ここまでオルケはドゥゼアたちの仲間としてついてきた。
しかしどこかで心からの仲間ではなかった。
一人で生きていけないから、魔塔に復讐するという目標があるから、フォダエに言われたから、色々な理由で仕方なくドゥゼアたちの仲間となった。
でも今は違う。
ドゥゼアたちの仲間になりたいと思った。
仕方ないから仲間になるのではなく、心の底からちゃんと仲間になりたいとドゥゼアの目を見つめる。
すごく恥ずかしいとオルケは顔が熱くなる。
この場にいるのはドゥゼアだけじゃない。
レビスもユリディカいるしなんならカワーヌたちもいる。
でもいい。
みんながいるのはちょうどいい。
「レビスとユリディカは友達だし……私はみんなの力になりたい。これは私のケジメ。ドゥゼア、私のことを仲間にしてくれる?」
「……これから俺が歩もうとしてる道は困難なものだ。それでもいいのか?」
オルケが冗談を言っている雰囲気ではないと察したドゥゼアは真剣な顔をしてオルケに向き直る。
オルケのことを仲間ではないと思った事はないがどこかに壁があると感じたことはあった。
元々人間のオルケが急に魔物の仲間になると決心する事は簡単なことじゃないだろう。
特に親しかったフォダエが亡くなって、魔物になって何もかも失った直後ならばさらに難しい事は想像に難くない。
オルケが少しずつ心を開いている事は理解していた。
何も言わなくてもオルケがいたいと望むならいてくれていいし、その中で本当に仲間になることがあるだろうと思っていた。
だがオルケは心からドゥゼアたちの仲間になりたいという思いを抱き、ケジメのために言葉に出して仲間になろうとしている。
ならばドゥゼアもちゃんと受け止めよう。
「キツイこともあるかもしれない。人を殺すこともあるかもしれない。あるいは……死ぬこともあるかもしれない」
「それでもいい。どんなことがあっても一緒に乗り越えていくのが仲間でしょ? 私にも目標があるから手伝って……私もドゥゼアを手伝うから。私を……みんなの仲間にして」
「……もちろんだ」
「…………ありがとう!」
ドゥゼアが微笑んで頷くとオルケの目からブワッと涙が溢れ出す。
「……仲間っていいですね」
「そうだな。全く違う種族がああして仲間になれるのだな」
オルケが泣くのをみてカワーヌも涙ぐんでいる。
「ドゥゼアァァァァー!」
感極まったオルケがドゥゼアに抱きつく。
リザードマンであるオルケの方が大きいのでドゥゼアは抱き上げられるようなかたちになる。
「うわっ!? むっ……ふぅ……オルケ、お前は俺たちの仲間だ。改めてよろしくな」
ドゥゼアはフッと笑うとわしゃわしゃとオルケの頭を撫でてやった。
ひとまずオルケからヴァンベーゲンの影響は見られない。
オルケの体に魔力や知識を移す実験の最中だったので精神的にも肉体的にも大丈夫かどうか気になった。
「……すごく調子がいいです」
オルケは自分の手を見つめた。
悪いどころの話じゃない。
オルケはこれまでにないほど体が好調であると感じていた。
命のないスケルトンから命あるリザードマンの体になった時も変化に驚いた。
生きている温もりのようなものがあって、生身の重さやリザードマンという肉体の能力の高さはとても新鮮だった。
今は今でまた違った感じがある。
体が軽くて抑えていないと溢れてしまいそうな魔力が体の中にある。
今ならどんな魔法でも使えるぐらいの魔力がみなぎっている。
「ただ頭の中が……」
体の調子はいいのだけど頭の中がどうにも正常じゃなかった。
ヴァンベーゲンの影響やフォダエに会ったからではなく、頭の中で魔法の知識が溢れてコントロールできないのだ。
魔力はどうにか抑えることができても移された魔法の知識がごちゃごちゃと浮かんできて整理しきれず気持ち悪くなっていた。
「少し時間が必要だな」
魔力は本能である程度コントロールできても知識は難しい。
オルケ自身が頭の中に溢れる知識をどうにか吸収して自分のものとして整理していくしかない。
フォダエがオルケの中にいるという事を伝えようと思っていたけれど今オルケの頭はいっぱいになってしまっている。
ここで余計なことを伝えるとより頭を圧迫してしまう。
時間を置いてから伝えることにしようとドゥゼアは思った。
「少し休め。頭も体もゆっくりと慣らしていくといい」
ここで無理をする必要はない。
ヴァンベーゲンという脅威は無くなったし今いる研究所は安全である。
オルケの状態が落ち着いてから動き出しても時間はある。
「その前に少し飯でも……」
「ドゥゼア!」
「どうした?」
敵には厳しい態度を取るドゥゼアだが仲間に対しては思いの外優しい目を向けてくれる。
「私を……ドゥゼアの仲間にしてくれる?」
興奮でほんのりとオルケの頬が赤くなっている。
「仲間……?」
ドゥゼアはオルケが何を言いたいのか分からなくて眉を上げる。
「お前はもう仲間だろ」
「違うの……仲間だったけど……それは必要だったから仲間になっただけだったの」
ここまでオルケはドゥゼアたちの仲間としてついてきた。
しかしどこかで心からの仲間ではなかった。
一人で生きていけないから、魔塔に復讐するという目標があるから、フォダエに言われたから、色々な理由で仕方なくドゥゼアたちの仲間となった。
でも今は違う。
ドゥゼアたちの仲間になりたいと思った。
仕方ないから仲間になるのではなく、心の底からちゃんと仲間になりたいとドゥゼアの目を見つめる。
すごく恥ずかしいとオルケは顔が熱くなる。
この場にいるのはドゥゼアだけじゃない。
レビスもユリディカいるしなんならカワーヌたちもいる。
でもいい。
みんながいるのはちょうどいい。
「レビスとユリディカは友達だし……私はみんなの力になりたい。これは私のケジメ。ドゥゼア、私のことを仲間にしてくれる?」
「……これから俺が歩もうとしてる道は困難なものだ。それでもいいのか?」
オルケが冗談を言っている雰囲気ではないと察したドゥゼアは真剣な顔をしてオルケに向き直る。
オルケのことを仲間ではないと思った事はないがどこかに壁があると感じたことはあった。
元々人間のオルケが急に魔物の仲間になると決心する事は簡単なことじゃないだろう。
特に親しかったフォダエが亡くなって、魔物になって何もかも失った直後ならばさらに難しい事は想像に難くない。
オルケが少しずつ心を開いている事は理解していた。
何も言わなくてもオルケがいたいと望むならいてくれていいし、その中で本当に仲間になることがあるだろうと思っていた。
だがオルケは心からドゥゼアたちの仲間になりたいという思いを抱き、ケジメのために言葉に出して仲間になろうとしている。
ならばドゥゼアもちゃんと受け止めよう。
「キツイこともあるかもしれない。人を殺すこともあるかもしれない。あるいは……死ぬこともあるかもしれない」
「それでもいい。どんなことがあっても一緒に乗り越えていくのが仲間でしょ? 私にも目標があるから手伝って……私もドゥゼアを手伝うから。私を……みんなの仲間にして」
「……もちろんだ」
「…………ありがとう!」
ドゥゼアが微笑んで頷くとオルケの目からブワッと涙が溢れ出す。
「……仲間っていいですね」
「そうだな。全く違う種族がああして仲間になれるのだな」
オルケが泣くのをみてカワーヌも涙ぐんでいる。
「ドゥゼアァァァァー!」
感極まったオルケがドゥゼアに抱きつく。
リザードマンであるオルケの方が大きいのでドゥゼアは抱き上げられるようなかたちになる。
「うわっ!? むっ……ふぅ……オルケ、お前は俺たちの仲間だ。改めてよろしくな」
ドゥゼアはフッと笑うとわしゃわしゃとオルケの頭を撫でてやった。
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