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第五章

ゴブリンは研究者を見つけました6

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『受けるも受けないも任せよう。だが受けてくれれば世界最高の魔法使いにしてやる』

「だとさ、オルケ」

「え、私ですか!?」

「そりゃそうだろ。受けるのはお前なんだ」

 なんだか他人事のように話を聞いていたオルケは急に話を振られて驚いてしまった。
 だがヴァンベーゲンが目をつけているのはオルケである。

 確かにオルケならばとドゥゼアは思う。
 忘れがちではあるがオルケはかなり特殊な存在である。

 元々は人間であったオルケは事情によりスケルトンとなった。
 その後オルケをスケルトンにしたリッチのフォダエによってオルケはリザードマンとなった。

 さらに今のオルケの体はただのリザードマンではなく白いリザードマンという特殊な体でもある。
 魂を移すのにも耐えられる頑丈な体であるということで白いリザードマンの体にオルケは乗り移った。

 経緯もさることながらオルケの白いリザードマンの体はオルケの魂が乗り移るのにも耐えた体であるのだ。
 魔力と知識を移すということが魂を移すことと同じとは思わないが、オルケの体ならば耐えられるかもしれないとドゥゼアは思うのだ。

 ドゥゼアたちの中で魔法使いなのはオルケだけなのでそこもちょうどいい。
 魔力欲しさでいえばドゥゼアも欲しいのだけどゴブリンの体では耐えられるような気はしない。

 魔物としての強靭さを考えた時にも白いリザードマンであるオルケか、ギリギリユリディカぐらいではないかと思う。

「ちなみに俺は?」

『ふむ……ゴブリンか。可能性の大きい魔物であるが難しいだろうな』

 一応ダメ元で聞いてみたがドゥゼアではやはり厳しいようだ。

『魔法使い……というだけでなく肉体として耐えられるそうな可能性がありそうなのはその白いリザードマンぐらいだろうな』

 ゴブリンはほとんど不可能。
 コボルトも同じだしオオコボルトになったとしてもあまり変わらない。

 人間の冒険者もいるけれど人間では耐えられないことが分かっている。
 ワーウルフも可能性がありそうだけど無理寄りだろうとヴァンベーゲンは考える。

「ど、どうしたら……」

「話は聞いてただろう?」

「聞いてはいましたけど……」

「どうするかはお前次第だ。受けてもいいし受けなくてもいい。どんな選択でも俺はお前の味方だ」

 ただリスクはどうしてもある。
 オルケがやらないというのならドゥゼアはそれでも全く構わないのである。

「……少し考える時間をいただいてもいいですか?」

「好きにしろ。それでいいな?」

『悩むのも当然だ。あまり悩まれると困るがしっかり考えるといい。その間に準備を進めておく』

 もしかしたら死ぬかもしれない重大な決断。
 悩むのも無理はない。

「ううーん……」

 オルケは顔色悪く唸っている。
 急に命のかかった選択を強いられている。

「……よく悩め。これがお前の未来を左右するかもしれないからな」
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