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第五章

ゴブリンは研究者を見つけました2

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 一つ戻ってドゥゼアは死体から装備を剥ぎ取る。
 損傷が激しいものもあるけれど使おうと思えば使える装備もいくらかあった。

 そうしたものを集めてドッゴに着けさせる。
 ホブコボルトのドッゴは人にも体格が近くて人用の装備品も装着することができた。

 そうして全身をガチガチの装備で固めた。
 さらには両手に盾を持たせてこれ以上ないくらいに防御を高める。

 極めつけにはドッゴの腰にロープをくくりつけた。
 カジオは消えてしまうから勝手に回収されるけれどドッゴはそうはいかない。

 何かの異変が起きたらすぐさまドッゴを引き戻すことができるようにロープの逆の端はみんなで持ってすぐに引っ張れるようにしておいた。

「よし、ひとまずこれなら何かあっても一撃ぐらい耐えられるだろう」
 
 鎧の塊みたいになったドッゴはガッシャンガッシャンとけたたましく音を立てながらゆっくりと歩いている。
 万全の準備を整えてドッゴに進んでもらうことにした。

「それでは行ってくる」

「ドッゴさん、気をつけてくださいね」

「危ないと思ったらすぐに声を出すんだぞ! 俺たちが引っ張るから」

「分かった」

 鎧が重いので少しずつしか移動できない。
 ただためらうこともなくドッゴは進んでいく。

 あと一歩でカジオが消えてしまうところまで来てドゥゼアたちもロープを握る手に力が入る。

「…………あれ?」

「……大丈夫そう、ですかね?」

 カジオが消えてしまうところにドッゴが足を踏み入れたけれど何も起こらない。
 ドッゴはそのまま扉の先にゆっくりと進んでいくが苦しむ様子もないし攻撃があるような感じもない。

「ドッゴ、大丈夫か?」

「平気だ。何もない」

 ドゥゼアが声をかけてみるとドッゴは普通に返事をする。
 周りを見回したりしても変化は訪れずドゥゼアたちは思わず顔を見合わせた。

 もしかしたらカジオが入った時点で罠が発動していてもう効果を失ったのかもしれない。
 ドゥゼアは再びカジオを呼び出してドッゴのところに向かってもらった。

「……カジオがダメなのか」

 ドッゴはなんともなかったのだけどカジオはまた消えてしまった。

『なぜかは知らないが俺のことを防ぐ何かがあるようだな』

 試しにドゥゼアも一歩足を踏み入れてみたがなんともなかった。
 どうにもカジオを出しておくことができないようだ。

「あっ、消えてしまいました……つかないな」

 とりあえず罠はなさそう。
 なのでみんなで進む。

 扉の中に入った途端にカワーヌが持っていた魔道具の明かりが消えてしまった。
 揺らしてみたり叩いたりしても明かりがつかない。

「ちょっと戻ってみてくれ」

「分かりました。……あっ」

 もしかしてとドゥゼアは思った。
 カワーヌが扉の外に出てみると明かりがついた。

「やっぱりな。魔道具……いや、魔法を封じる何かがあるみたいだな」

「あっ、本当です。魔法が使えません!」

 オルケが魔法を使おうとするけれど発動しない。
 ユリディカのヒールや強化も使えず魔道具も使えない。

 魔法全体を使わせないような魔法が扉の内側にはかけられているのだとドゥゼアは推測した。
 カジオも魔道具による召喚獣、一種の魔法のようなものなので効果が打ち消されて召喚が解除されてしまうのだろう。

「……前に進んでみるしかないか」

 ひとまず死ぬような罠ではない。
 色々と制限はかかるものの魔法を封じられたからそれで死に至ることはない。

 ドゥゼアはちょっとだけ心臓が心配であったけれど普通に動いてはくれている。
 ドッゴの鎧を多少解除して動くのに問題ないぐらい軽くして先に進んでいく。

「中に入るならちゃんとノックしろ?」

 進んでいくとドアがあった。
 これまでは金属の大きな扉であったのだが目の前にあるのは普通の家のドアである。

 ドア横には看板が掛けられていて『人の家に入ろうとするならばちゃんとノックするべきだ』と書かれていた。

「コンコン、失礼しまーす」

「あっ……」

 何かの謎かけだろうかとドゥゼアが看板を睨んでいるとユリディカがドアをノックした。
 罠かもしれないのによく正直にノックするものだと驚いた。

「あ、開いた」

 するとドアがガチャリと開いた。
 看板そのまんまの意味だったようである。

「よし、入るぞ」

 ここまで来たらためらっていられない。
 ドゥゼアは開いたドアの中に入っていく。

「……ここはなんだ?」

 ドアの先は部屋になっていた。
 ドゥゼアたちの明かりはないけれど壁にかけられている松明が一人でについて明るくなった。

 それほど広くない部屋で古びたソファーやテーブルが置いてあり、壁には絵なんかもあってあたかも普通の部屋のよう。
 警戒していたのだけど拍子抜けするような光景だった。

 正面と右にはまたドアがあって続いている。
 部屋には何もなさそうなので右のドアの方に行ってみた。

「ここは寝室か?」

 右にも部屋が繋がっていた。
 こちらの方が狭めになっていて部屋の中には大きなベッドが置いてある。

 サイドテーブルなんかも置いてあってこちらも普通の寝室のようだった。
 寝室には他にドアがなく、どこかに繋がっていないので一つ前の部屋に戻って正面のドアを進むことにした。
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