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第五章

ゴブリンは遺跡を進みます1

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 少しだけダンジョンっぽくなった。
 一つ前の階と同じように分岐と罠を繰り返している迷路のような作りになっているのだけど、前の階は壁が滑らかに建物のようになっていたのに対してここはゴツゴツとした洞窟のようになっている。

 綺麗な壁では無くなったので罠の痕跡が見つけにくくなった。

「……魔法使いが関わってるな」

「そうなの?」

「魔法による罠もあったからな」

 物理的なスイッチによる罠がほとんどだった中で魔法による罠が出てきた。
 やはり物理的な罠よりも見つけにくく引っかかるのか痕跡があってドゥゼアは事前に見つけることができた。

 危うく火の槍に貫かれてしまうところだった。
 魔法による罠は珍しい。

 多少実力のある魔法使いでなければ魔法による罠を設置することはできない。
 しかも大体の場合罠というのは一度限りの使い捨てになる。

 なのにまた発動しているということは自動でまた罠が復活するようになっている。
 誰かがメンテナンスしている可能性もないこととは言い切れないが、こんなところで魔法の罠を再設置して回る物好きはいないだろう。

 自動で再設置される魔法の罠はそれだけでもかなり魔法の技量を必要とされる。
 この場所を作った人が大金持ちですごい魔法使いを雇っていたか、すごい魔法使いがここを作ったかのどちらかである。

「まあ何にしてもヤバいやつがここを作ったことに変わりはない」

 罠を抜きにしても内部の広さもかなりのもの。
 まだ続いているというのだからちょっとドゥゼアもドン引きである。

「何者がこんなところを……」

 未だにこの遺跡の目的というものが見えてこない。
 侵入者を拒んでいることは確実なのだが理由が分からない。

 長く続く道を作り、家に見える不思議な建物で人の目を誤魔化した。
 さらにはそんな建物ごと魔法で覆い隠してしまった。

 そうまでして何を隠したいのか、何を守りたいのか理解が及ばない。

「何者にしても……あの罠はすごいです」

「分かるのか?」

「私も魔法使いですよ」

 オルケは生前魔法を習っていた。
 今も何とかスキルアップしようと努力はしている。

 理論的なことはしっかり学んでいたのでこれまで発動した魔法の罠を見て驚いていた。

「あの罠は時間経過で再設置されるだけじゃなく周りの魔力を集めてそれだけで成り立つようにできていました。半永久的に使えるものです。そんなの……そこらを歩いている魔法使いにできることじゃないです」

 魔法の罠と一口に言っても色々と種類はある。
 一回限りの使い切りで終わりの罠もあれば、モンスターから取れる魔石を燃料がわりにして何回か使える魔法の罠を設置することもある。

 ただし魔石の魔力が無くなれば魔法の罠は発動しなくなる。
 しかしここにある魔法の罠は今でも発動する。

 魔石を利用しているのではなく、自然に存在する魔力を集めて自己再生する魔法の罠なのである。
 そんな魔法の罠はかなりのとんでもない技術であり、オルケはそうしたすごい魔法の罠であることを分かっていた。

 ただどうやって作ればいいとかそんなことは一切分からない。

「天才魔法使いが関わってるってことだな」

 実力のある魔法使いよりも上の魔法使いがここを作ったようだ。
 また謎が深まったとドゥゼアは小さくため息をついた。

 物理的な罠もまた再設置されている。
 カラクリがあって自動で再設置されるものもあるけれどこうなると裏で魔法が作動しているのかもしれないと思った。

「でもこんな罠ばかりあって本来の主人はどうやって中に入るんですかね?」

 カワーヌが首を傾げる。
 経験豊かな冒険者でも少し気を抜くと死んでしまうような罠が並んでいる。

 たとえ罠があると知っていてもここを通っていくのは危険だ。
 ここを作った遺跡の主人はどうやっていたのかカワーヌは気になっていた。

「こういう場合は隠された裏口や安全な通路があるもんだ」

「裏口ですか? じゃあそれだけでいいんじゃ……」

 隠された安全な裏口があるなら危険な罠を設置した道なんか必要ないのではとカワーヌは思った。

「こうした表の道がなきゃ裏口を裏口と呼ばないだろう。ここは誰かに入ってほしくない場所なんだ。安全な裏口しかなければみな裏口を探す。だが危険でも目に見える表の入り口があるならどこにあるか分からない裏口よりも表から人は入るんだよ」

「そういうものなんですか……」

 安全な裏口を探す人もいるだろう。
 だが表から入るルートをこれだけ厳重にしているということは裏口もほとんど見つけられる可能性はない。

 となると結局表から入るしかない。
 これで表の入り口もなければ諦めるのではなく裏口を探し始める人も多くなってしまうのだ。

「また階段か……」

 進んでいくとまた下に降りていく階段が現れた。

「ここを作ったやつ、慎重なのはいいが勘弁してほしいもんだ」

 軽く舌打ちしてしまう。
 終わりじゃないだろうと感じていたもののまだ続きそうな雰囲気があるのは面倒に思う。

 ここまで来て引き返すこともできないので階段を降りていく。
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