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第四章
ゴブリンはカジアを追いかけます2
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『ガラカンを追いかけよう。今ならまだ人間の国に入る前に追いつけるかもしれない』
今ここで暴れても得をするのは人間になる。
ガラカンを止めることが今一番優先されるべきことなのだ。
『そうだな……ガラカンの頭を潰してやる』
未だ怒りがおさまっていないが矛先を何の罪もない蛇族から逸らすことには成功した。
ドゥゼアたちは蛇族の町から最短で人間の国に向かうルートを取った。
夜は移動が難しくなるので短い時間を休み、日が出ると同時に移動を開始する。
みな疲労は大きかったけれど蛇族、あるいは人間の思惑を止めるためにも必死になって走った。
「……町が……燃えている」
ひたすらに進んできた。
途中にある町で補給をしてさらに追いかけようと考えていたドゥゼアたちの目に衝撃の光景が飛び込んできた。
町が燃えていた。
遠くから見ていても分かるほどにひどく町が荒らされている。
倒れた蛇族の姿もある。
「人間の軍だな」
蛇族を切り付けている相手の姿も見えた。
それは人間だった。
『どういうことなのだ……』
ジャバーナすら目の前の悲惨な光景に驚愕している。
『まさか……和平を破って攻めてきたのか』
『ならば蛇族は? 今襲われているのは蛇族だぞ……』
ジャバーナもマルヤも状況が把握できない。
蛇族は人間と協力しているのではないか。
今襲われている町も多くの住民が蛇族であり、演技などではなく蛇族たちは切り捨てられている。
人間の兵士たちもかなり数が多い。
本気で獣人の国を攻めてきていることが規模からも分かる。
『……ともかくこのことを伝えねばならない』
複雑な状況にジャバーナは逆に冷静になっていた。
人間が和平条約を破って攻めてきたのだとしたら早くこのことを伝えて戦いに備えねばならない。
『獅子族はこのまま引き返してこのことを伝えるんだ』
『ジャバーナ、お前はどうするつもりだ!』
『おそらくあの人間の軍の中に子供たちもいるはずだ』
『一人でいくつもりなのか?』
『子供たちを助け出して俺が暴れる。そうすればこのことを伝える時間も少しは稼げるはずだ』
ジャバーナはまっすぐな目でマルヤのことを見た。
ヒューリウをさらったジャバーナであるが人間と組むつもりなど毛頭なかった。
ただ強い者が再び光を浴びるような状況を作り出すことがその望みであった。
むしろジャバーナは獣人という種族を大切に思っている。
こうなった原因はジャバーナにある。
もはや選択の猶予はなく、王の娘であるヒューリウを救い出して少しでも時間を稼がねば人間に攻め込まれてしまう。
ジャバーナはここで死ぬ覚悟を決めた。
『それはダメだ』
『ならばどうするという。獅子族は獣人にとっての象徴でもある。ここで多くを失うわけにはいかない』
『だがお前だけ暴れたところでヒューリウとカジアを救えるとは限らない。むしろ難しいだろう』
情報を伝えることは大切である。
その一方でヒューリウを相手の手の内にあるままにしておくこともできない。
『今ここは協力すべきだ』
『しかし……』
『ジャバーナ』
『……カジオ?』
このままでは話もまとまらない。
ドゥゼアはカジオの求めに応じてカジオを召喚した。
『なぜ……お前がここに』
ジャバーナは驚きに目を見開いている。
死んだはずのカジオが、しかも今までいなかったはずなのに急に現れた。
『今俺のことはどうでもいい。みんなで協力してヒューリウ……そしてカジアを助けてほしい』
『…………どうするつもりだ?』
たとえ一勝であってもカジオはジャバーナに勝ち越している。
強者には従う。
ジャバーナは全ての疑問を飲み込んだ。
『我々とて馬鹿ではないということを奴らに教えてやろう』
ーーーーー
蛇族の町を救うことはできない。
もはや完全に人間の手に落ちてしまっているので今からそこに突っ込んでいったところで無駄である。
戦闘態勢の相手に襲いかかっても効果的な結果は得られない。
ドゥゼアたちは一部の獅子族を周りの町や中央への報告のために向かわせて、残りで人間の軍をよく観察した。
蛇族の町で虐殺を行った人間たちは町からほど近いところにテントを張って休み始めた。
本気で攻めるつもりの人間はかなりの数の兵士がいる。
カジアとヒューリウがどこなのだろうかと敵陣を遠くから見ていたら二人の姿を見つけた。
兵士たちは悠々とテントの中で休んでいるのに二人は近くの木に鎖で繋がれていたのである。
『あいつら……!』
カジオの怒りが鼓動を速くする。
しかしここで焦って助けに行っていけない。
扱いは雑であるがちゃんと見張りは置いてある。
陣営周りにも見張りの兵士は多く、不用意に近づけば簡単に見つかって取り囲まれてしまう。
「あれって……」
『蛇族だな』
カジアとヒューリウの横に一人の蛇族も捕われていた。
カジオには見覚えがないらしく、誰なのか分かっていなかった。
マルヤの話を聞いたところ捕われた蛇族は蛇族の族長であるガラカンらしい。
カジオが活躍していた時よりも後に族長になった人なのでカジオは知らなかったのである。
「裏切り者の末路か」
ドゥゼアは冷たく吐き捨てた。
誰かを裏切るものは誰かに裏切られる。
きっとガラカンは言葉巧みに騙されて獣人を裏切り、最後には人間に裏切られたのだ。
今ここで暴れても得をするのは人間になる。
ガラカンを止めることが今一番優先されるべきことなのだ。
『そうだな……ガラカンの頭を潰してやる』
未だ怒りがおさまっていないが矛先を何の罪もない蛇族から逸らすことには成功した。
ドゥゼアたちは蛇族の町から最短で人間の国に向かうルートを取った。
夜は移動が難しくなるので短い時間を休み、日が出ると同時に移動を開始する。
みな疲労は大きかったけれど蛇族、あるいは人間の思惑を止めるためにも必死になって走った。
「……町が……燃えている」
ひたすらに進んできた。
途中にある町で補給をしてさらに追いかけようと考えていたドゥゼアたちの目に衝撃の光景が飛び込んできた。
町が燃えていた。
遠くから見ていても分かるほどにひどく町が荒らされている。
倒れた蛇族の姿もある。
「人間の軍だな」
蛇族を切り付けている相手の姿も見えた。
それは人間だった。
『どういうことなのだ……』
ジャバーナすら目の前の悲惨な光景に驚愕している。
『まさか……和平を破って攻めてきたのか』
『ならば蛇族は? 今襲われているのは蛇族だぞ……』
ジャバーナもマルヤも状況が把握できない。
蛇族は人間と協力しているのではないか。
今襲われている町も多くの住民が蛇族であり、演技などではなく蛇族たちは切り捨てられている。
人間の兵士たちもかなり数が多い。
本気で獣人の国を攻めてきていることが規模からも分かる。
『……ともかくこのことを伝えねばならない』
複雑な状況にジャバーナは逆に冷静になっていた。
人間が和平条約を破って攻めてきたのだとしたら早くこのことを伝えて戦いに備えねばならない。
『獅子族はこのまま引き返してこのことを伝えるんだ』
『ジャバーナ、お前はどうするつもりだ!』
『おそらくあの人間の軍の中に子供たちもいるはずだ』
『一人でいくつもりなのか?』
『子供たちを助け出して俺が暴れる。そうすればこのことを伝える時間も少しは稼げるはずだ』
ジャバーナはまっすぐな目でマルヤのことを見た。
ヒューリウをさらったジャバーナであるが人間と組むつもりなど毛頭なかった。
ただ強い者が再び光を浴びるような状況を作り出すことがその望みであった。
むしろジャバーナは獣人という種族を大切に思っている。
こうなった原因はジャバーナにある。
もはや選択の猶予はなく、王の娘であるヒューリウを救い出して少しでも時間を稼がねば人間に攻め込まれてしまう。
ジャバーナはここで死ぬ覚悟を決めた。
『それはダメだ』
『ならばどうするという。獅子族は獣人にとっての象徴でもある。ここで多くを失うわけにはいかない』
『だがお前だけ暴れたところでヒューリウとカジアを救えるとは限らない。むしろ難しいだろう』
情報を伝えることは大切である。
その一方でヒューリウを相手の手の内にあるままにしておくこともできない。
『今ここは協力すべきだ』
『しかし……』
『ジャバーナ』
『……カジオ?』
このままでは話もまとまらない。
ドゥゼアはカジオの求めに応じてカジオを召喚した。
『なぜ……お前がここに』
ジャバーナは驚きに目を見開いている。
死んだはずのカジオが、しかも今までいなかったはずなのに急に現れた。
『今俺のことはどうでもいい。みんなで協力してヒューリウ……そしてカジアを助けてほしい』
『…………どうするつもりだ?』
たとえ一勝であってもカジオはジャバーナに勝ち越している。
強者には従う。
ジャバーナは全ての疑問を飲み込んだ。
『我々とて馬鹿ではないということを奴らに教えてやろう』
ーーーーー
蛇族の町を救うことはできない。
もはや完全に人間の手に落ちてしまっているので今からそこに突っ込んでいったところで無駄である。
戦闘態勢の相手に襲いかかっても効果的な結果は得られない。
ドゥゼアたちは一部の獅子族を周りの町や中央への報告のために向かわせて、残りで人間の軍をよく観察した。
蛇族の町で虐殺を行った人間たちは町からほど近いところにテントを張って休み始めた。
本気で攻めるつもりの人間はかなりの数の兵士がいる。
カジアとヒューリウがどこなのだろうかと敵陣を遠くから見ていたら二人の姿を見つけた。
兵士たちは悠々とテントの中で休んでいるのに二人は近くの木に鎖で繋がれていたのである。
『あいつら……!』
カジオの怒りが鼓動を速くする。
しかしここで焦って助けに行っていけない。
扱いは雑であるがちゃんと見張りは置いてある。
陣営周りにも見張りの兵士は多く、不用意に近づけば簡単に見つかって取り囲まれてしまう。
「あれって……」
『蛇族だな』
カジアとヒューリウの横に一人の蛇族も捕われていた。
カジオには見覚えがないらしく、誰なのか分かっていなかった。
マルヤの話を聞いたところ捕われた蛇族は蛇族の族長であるガラカンらしい。
カジオが活躍していた時よりも後に族長になった人なのでカジオは知らなかったのである。
「裏切り者の末路か」
ドゥゼアは冷たく吐き捨てた。
誰かを裏切るものは誰かに裏切られる。
きっとガラカンは言葉巧みに騙されて獣人を裏切り、最後には人間に裏切られたのだ。
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