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第四章
ゴブリンはたくさんの裏切りに遭いました
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「ユリディカ、こっそりとジャバーナのことを治してやれ」
「えっ、いいの?」
「ああ、少し離れてるができるな?」
「もちろん!」
敵の敵は味方という。
この調子でいけばジャバーナが蛇族と敵対することは間違いない。
たった一人で獅子族を相手取るような力が味方でいてくれたらありがたい。
治してしまうことのリスクはあるがドゥゼアはジャバーナを蛇族にぶつけるつもりだった。
こっそりとユリディカがジャバーナを治療し始める。
ある程度離れていてもユリディカは治療が出来る。
近づいて行うものより効率は悪いけれどちょっとしたおまけの治療みたいなものだから少し治ればいい。
ジャバーナも治療を受けている不思議な感覚はあるだろうが気づいていないのか、わざと無視しているのか何も言わない。
走りながら助けを求めてきたゴリラの獣人の話を聞く。
カジアとヒューリウを誘拐したゴリラの獣人たちは蛇族の町に向かっていた。
待ち受けていた蛇族たちは作戦の成功を祝い、お酒を用意してゴリラの獣人を労おうとした。
ゴリラの獣人はカジアとヒューリウを引き渡してお酒を飲み始めた。
作戦も成功したしジャバーナも帰ってくるものだと信じて疑っていないからだった。
助けを求めてきたゴリラの獣人はお酒が好きな大猩猩族の中にあって珍しくお酒が苦手であった。
だから他のゴリラの獣人が飲んでいたお酒の匂いも苦手で外に出ていたのである。
『あいつら……卑怯なマネを!』
助けを求めたゴリラの獣人が悔しそうに顔を歪める。
ゴリラの獣人に今回の事件の責任を押し付けるつもりだったユリディカはゴリラの獣人たちが飲んでいたお酒に毒が混ぜていたのだ。
ゴリラの獣人は体が強いのである程度毒に対しても抵抗できる。
しかし毒に侵された状態ではまともに戦うこともできない。
急に雪崩れ込んできた蛇族にゴリラの獣人は一方的にやられてしまった。
助けを求めてきたゴリラの獣人はその様子を外から見ていたが、一人だけでは何もできずにこっそりとバレないようにジャバーナのところに向かった。
『すいません……何もできなくて』
『いや、よく生き延びて助けを求めた。あとは俺に任せろ』
泣きそうな目をしているゴリラの獣人だがジャバーナは助けを求めてきてくれなければ獅子族に倒されていたかもしれないと思っていた。
蛇族の裏切りも知れて、結果的に思い通りにはならなかった。
むしろ一人でみんなを助けようと蛮勇を振るわず冷静さを保てていて褒めてやりたいぐらいである。
走っていくと完全に蛇族の領域に入り、町が見えてきた。
『ガラカンはどこだぁ!』
町の手前に蛇族の兵士がずらっと待ち受けているのが見えた。
やはりな、とドゥゼアは思った。
今回の件の黒幕が蛇族だとしたら獅子族も大猩猩族も裏切ったことになる。
となるとどちらも同時に相手にするのは大変である。
きっとどちらか、あるいはどちらも蛇族は片付けたいと思っているだろう。
ジャバーナと獅子族が戦うことになってどちらかは倒れると蛇族は踏んだ。
上手くいけば共倒れ、そうならなくとも残った方も満身創痍だろうと思っていた。
だから蛇族は戦いで残った方を倒そうと待ち構えていたのだ。
だがしかし予想外のことが起きた。
ジャバーナも獅子族も無事で、共に向かってきたのである。
ゴリラの獣人が一人生き残っていたことを知らず、さらにはジャバーナと獅子族の戦いも慎重なもので消耗が少なかったのだ。
『恐るな! 奴らも疲れて……』
『疲れているからなんだというのだ?』
『ひ、ひぃ!』
ジャバーナが地面が陥没するほどの力で踏み込んで一瞬で蛇族に近づいた。
一番近くの蛇族の頭を鷲掴みにして、そのまま果物でも潰すかのように頭を握りつぶしてしまった。
『貴様ら……覚悟はできているのだろうな!』
「これは……ひどいな」
獣人が圧倒的な強者に敬意を払う理由が分かる。
蛇族の兵士たちはたった一人のジャバーナになすすべもなくやられていく。
獅子族たちも警戒はしているがジャバーナの戦いに巻き込まれそうで手を出せずにいる。
一方的な虐殺。
こんなはずじゃなかったと蛇族たちの悲鳴が響き渡る。
恐怖に飲み込まれた蛇族たちがほとんど倒されるのにさほど時間はかからなかった。
『俺の仲間は、ガラカンは、さらってきた子供たちはどこだ!』
一人のヘビの獣人が頭を掴まれて持ち上げられる。
もはや恐怖しか無いヘビの獣人は情けなく失禁して震えている。
『そ、それは……』
『早く答えろ。お前もこいつらみたいになりたくなければな』
『ガラカン様は……ガキを連れて…………人間の国に向かいました。大猩猩族は……全員…………』
『もういい!』
結局、ヘビの獣人は仲間達と同じ運命を辿った。
『ああああああっ!』
ジャバーナは苛立ちのままに地面を殴りつけると大きく陥没する。
大猩猩族をたぶらかした黒幕は蛇族だった。
しかしそんな蛇族の裏にはさらに人間がいた。
いいように利用された。
怒りや後悔、仲間を失った悲しみや申し訳なさにジャバーナは狂いそうになっていた。
『全員根絶やしにしてやる!』
「えっ、いいの?」
「ああ、少し離れてるができるな?」
「もちろん!」
敵の敵は味方という。
この調子でいけばジャバーナが蛇族と敵対することは間違いない。
たった一人で獅子族を相手取るような力が味方でいてくれたらありがたい。
治してしまうことのリスクはあるがドゥゼアはジャバーナを蛇族にぶつけるつもりだった。
こっそりとユリディカがジャバーナを治療し始める。
ある程度離れていてもユリディカは治療が出来る。
近づいて行うものより効率は悪いけれどちょっとしたおまけの治療みたいなものだから少し治ればいい。
ジャバーナも治療を受けている不思議な感覚はあるだろうが気づいていないのか、わざと無視しているのか何も言わない。
走りながら助けを求めてきたゴリラの獣人の話を聞く。
カジアとヒューリウを誘拐したゴリラの獣人たちは蛇族の町に向かっていた。
待ち受けていた蛇族たちは作戦の成功を祝い、お酒を用意してゴリラの獣人を労おうとした。
ゴリラの獣人はカジアとヒューリウを引き渡してお酒を飲み始めた。
作戦も成功したしジャバーナも帰ってくるものだと信じて疑っていないからだった。
助けを求めてきたゴリラの獣人はお酒が好きな大猩猩族の中にあって珍しくお酒が苦手であった。
だから他のゴリラの獣人が飲んでいたお酒の匂いも苦手で外に出ていたのである。
『あいつら……卑怯なマネを!』
助けを求めたゴリラの獣人が悔しそうに顔を歪める。
ゴリラの獣人に今回の事件の責任を押し付けるつもりだったユリディカはゴリラの獣人たちが飲んでいたお酒に毒が混ぜていたのだ。
ゴリラの獣人は体が強いのである程度毒に対しても抵抗できる。
しかし毒に侵された状態ではまともに戦うこともできない。
急に雪崩れ込んできた蛇族にゴリラの獣人は一方的にやられてしまった。
助けを求めてきたゴリラの獣人はその様子を外から見ていたが、一人だけでは何もできずにこっそりとバレないようにジャバーナのところに向かった。
『すいません……何もできなくて』
『いや、よく生き延びて助けを求めた。あとは俺に任せろ』
泣きそうな目をしているゴリラの獣人だがジャバーナは助けを求めてきてくれなければ獅子族に倒されていたかもしれないと思っていた。
蛇族の裏切りも知れて、結果的に思い通りにはならなかった。
むしろ一人でみんなを助けようと蛮勇を振るわず冷静さを保てていて褒めてやりたいぐらいである。
走っていくと完全に蛇族の領域に入り、町が見えてきた。
『ガラカンはどこだぁ!』
町の手前に蛇族の兵士がずらっと待ち受けているのが見えた。
やはりな、とドゥゼアは思った。
今回の件の黒幕が蛇族だとしたら獅子族も大猩猩族も裏切ったことになる。
となるとどちらも同時に相手にするのは大変である。
きっとどちらか、あるいはどちらも蛇族は片付けたいと思っているだろう。
ジャバーナと獅子族が戦うことになってどちらかは倒れると蛇族は踏んだ。
上手くいけば共倒れ、そうならなくとも残った方も満身創痍だろうと思っていた。
だから蛇族は戦いで残った方を倒そうと待ち構えていたのだ。
だがしかし予想外のことが起きた。
ジャバーナも獅子族も無事で、共に向かってきたのである。
ゴリラの獣人が一人生き残っていたことを知らず、さらにはジャバーナと獅子族の戦いも慎重なもので消耗が少なかったのだ。
『恐るな! 奴らも疲れて……』
『疲れているからなんだというのだ?』
『ひ、ひぃ!』
ジャバーナが地面が陥没するほどの力で踏み込んで一瞬で蛇族に近づいた。
一番近くの蛇族の頭を鷲掴みにして、そのまま果物でも潰すかのように頭を握りつぶしてしまった。
『貴様ら……覚悟はできているのだろうな!』
「これは……ひどいな」
獣人が圧倒的な強者に敬意を払う理由が分かる。
蛇族の兵士たちはたった一人のジャバーナになすすべもなくやられていく。
獅子族たちも警戒はしているがジャバーナの戦いに巻き込まれそうで手を出せずにいる。
一方的な虐殺。
こんなはずじゃなかったと蛇族たちの悲鳴が響き渡る。
恐怖に飲み込まれた蛇族たちがほとんど倒されるのにさほど時間はかからなかった。
『俺の仲間は、ガラカンは、さらってきた子供たちはどこだ!』
一人のヘビの獣人が頭を掴まれて持ち上げられる。
もはや恐怖しか無いヘビの獣人は情けなく失禁して震えている。
『そ、それは……』
『早く答えろ。お前もこいつらみたいになりたくなければな』
『ガラカン様は……ガキを連れて…………人間の国に向かいました。大猩猩族は……全員…………』
『もういい!』
結局、ヘビの獣人は仲間達と同じ運命を辿った。
『ああああああっ!』
ジャバーナは苛立ちのままに地面を殴りつけると大きく陥没する。
大猩猩族をたぶらかした黒幕は蛇族だった。
しかしそんな蛇族の裏にはさらに人間がいた。
いいように利用された。
怒りや後悔、仲間を失った悲しみや申し訳なさにジャバーナは狂いそうになっていた。
『全員根絶やしにしてやる!』
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